機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-29 燃える砂塵

 

 

 

 アンドリュー・バルトフェルド。

 ザフト北アフリカ駐留軍の司令官で『砂漠の虎』の異名を持つエースパイロットでもある彼は今、駐留地である拠点を離れ、砂漠のど真ん中でコーヒーを嗜んでいた。

 何故コーヒーなのか、と言えば何を隠そう彼、非常にコーヒーマニアだからである。

 残念ながらマニアなだけで味が良いかはわからないが、自分が満足するブレンドを日々探求する程のコーヒーマニアだ。

 そのマニアっぷりには部下も苦情を入れるくらいである。

 

 

 そんなことはさておき、彼の視線の先には白亜の戦艦が夜の砂漠に鎮座していた。

 

「どうかなぁダコスタ君。噂の大天使の様子は?」

「はっ! 依然、なんの動きもありません!」

 

 双眼鏡でアークエンジェルを覗いている副官のマーチン・ダコスタに問うと、元気の良い返事が返ってくる。

 分かりやすく模範的な軍人である彼の応答が、バルトフェルドは好きであった。

 

「暢気なものだねぇ。地上はNジャマ―の影響で電波状況が無茶苦茶だから仕方ないと言えば仕方ないが──むっ!?」

「はっ!? 何かありましたか!」

 

 バルトフェルドが唸った瞬間、何か変事かとダコスタは双眼鏡を覗いた。

 しかし、特にアークエンジェルに変化はない。

 ダコスタは何かないかとくまなく視線を回す。

 

「うぅむ。今回はモカマタリを5%減らしてみたんだがね……こりゃいいなぁ」

「たっ、隊長!!」

 

 思わず真面目にやってくれとダコスタから叱責を込めた声が飛ぶ。

 それを受け流してバルトフェルドは後方の部隊の面々の下へと向かった。

 

 そこには戦車や戦闘ヘリ。

 そして地上における局地戦様に設計されたMS“バクゥ”が鎮座していた。

 

「ではこれより、地球軍新造艦、アークエンジェルに対する作戦を開始する。

 目的は敵艦、および搭載MSの戦力評価である」

「それは隊長、倒してはいけないと?」

 

 1人の隊員の声に、続くように嘲笑が挙がった。

 バルトフェルドの部隊の面子は負けず嫌いが多い。特にバクゥのパイロット達は地上戦における王者はバクゥだと信じている者もいる。

 最強を自負するプライドが、生ぬるい作戦目標に意を唱えるのは当然の反応でもあった。

 

「ん~まぁその時はその時だが、あれはクルーゼ隊が仕留められずにハルバートンが第8艦隊を犠牲にしてまで地球に降ろした艦だ。実力は折り紙付きだろう。それを忘れるな──では、諸君の無事と健闘を祈る」

「総員、搭乗!」

 

 ダコスタの声に隊員が一斉に動き出し、バルトフェルド隊はアークエンジェルへの攻撃作戦を開始した。

 

 

 眠れる天使は、未だ動きがないままに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は深夜帯。

 アークエンジェルの艦橋クルーも交代での休憩に入っており、艦橋にはわずかな人員しかいなかった。

 

 そんな中、CIC席でアラームが鳴る。

 

「本艦、レーザー照射されています! 照合……測的照準と確認!」

 

 それは艦船からの攻撃目標の可能性がある知らせであった。

 CIC席に座っていたチャンドラが報告を挙げ、即座に第2戦闘配備が発令されると艦内にも一斉にアラームが鳴った。

 

「イーゲルシュテルン起動急げ! ノイマン曹長、機関始動の準備を!」

「了解!」

 

 ちょうど交代で艦橋の担当であったナタルが初動を指示し副長席に着くと、再度CICのチャンドラから報告が挙がる。

 

「第1波ミサイル攻撃、6発! 来ます!」

「イーゲルシュテルン、迎撃開始!」

「はい!」

 

 何とか対空迎撃が間に合い、ミサイルの第1波を迎撃する事に成功するアークエンジェル。

 丁度そこへアラームに応じたマリューも艦橋へと着いたところであった。

 

「状況は!」

「第1波ミサイル6発を迎撃!」

「砂丘の影からの攻撃で発射位置、特定不能!」

「第1戦闘配備発令! 機関始動! フラガ少佐、ヤマト少尉は搭乗機にてスタンバイ!」

 

 矢継ぎ早に指示を出していくマリュー。

 

「フラガ少佐は出られるか!?」

『まだ無理です! 弾薬の積み込みだって間に合ってませんよ!』

 

 ナタルの問いに通信越しでマードックが返すのが聞こえ、マリューもナタルも苦々しく表情を歪めた。

 敵がどこかわからない以上、足の速いムウのスカイグラスパーで少しでも詳しい敵の情報が欲しかった。

 それができないとなれば、ただただ敵の攻撃を防ぐだけの後手の戦いに陥ることになる。

 

「5時の方向に機影3、ザフト戦闘ヘリと確認!」

「ミサイル接近!」

「フレア弾散布! 迎撃!」

 

 ナタルの指示が間に合いアークエンジェルは再び攻撃を迎撃することに成功する。

 だが、この状況は何度も続かないだろう。

 次なる対応が必要であった。

 

『ストライクで出撃します! 行かせてください!』

「状況を理解しているのか? まだ敵の規模もわかっていないんだぞ!」

『このまま身動きが取れないよりは良いはずです! ストライクならPS装甲もありますし、敵の攻撃を引きつけられます──時間さえ稼げれば、スカイグラスパーもすぐ出られるはずです」

「マードック曹長、スカイグラスパーの状況は?」

『出るだけならあと5分もあれば。弾薬は積んでませんよ!』

「フラガ少佐、出られますか?」

『大丈夫だ艦長。攻撃できなくてもやりようはある!』

「わかりました。ハゥ二等兵、ストライク発進です!」

「了解!」

 

 マリューの指示に従い、ミリアリアの誘導の元ストライクが発進準備に入った。

 

『ハッチ解放、ストライク発進! 目標はあくまで時間稼ぎの迎撃だ。深追いはするな! 重力に気を付けろ』

「了解!」

『カタパルト接続、ランチャーストライカースタンバイ、進路クリア、ストライク発進。どうぞ!』

「キラ・ヤマト。ストライク、行きます!」

 

 ランチャーストライクを駆り、キラは夜の砂漠へと飛び出した。

 

 だが、着地した瞬間、ストライクは砂漠の砂に足を取られて体勢を崩してしまう。

 

「くっ!? これは……」

 

 これまで宇宙での戦闘がほとんどであり、ヘリオポリス以来地に足を付ける事もなかったストライクにとって、高い粒状性を持つ砂地は初である。

 人間の足ですら舗装された道路と砂地では感覚が違うと言うのに、巨大な鉄の塊であるMSが何もなしに砂地に適応できるはずが無かった。

 

 そんなストライクの姿を遠巻きから見ていたバルトフェルドは、興味深そうに双眼鏡を覗いたまま次なる指示を出した。

 

「バクゥを出せ。反応を見たい」

 

 応ずるダコスタの声に従い、バルトフェルドの背後からバクゥが一斉に飛び出していく。

 まるで餌に植えた獣の様に、攻撃目標であるストライクへと向かうバクゥ達。

 

「あれは!?」

「TMF/A-802──ザフト軍MSバクゥと断定!」

 

 バクゥはキャタピラによる無限軌道でストライクを取り囲むように動き回り、次々とミサイルを打ち出した。

 

「くっ、こいつら!?」

 

 発射されたミサイルをストライクは対艦バルカンで迎撃するが一斉に放たれたミサイルを全て撃ち落せるわけもなく、いくつかをもらってしまう。

 

「ぐっぅう!!」

 

 振動をこらえながらキラは状況を把握した。

 取り囲んでいるバクゥはまるで獲物をいたぶる様にストライクを取り囲み、次々とミサイルを放つがその狙いはどこか甘い。

 一挙に攻める気が見受けられなかった。

 

「(何のつもりかはわからない──だがチャンスだ)」

 

 様子見か、それとも甘く見ているのか。

 理由は分からないが、砂地に足を取られるストライクにとって敵が苛烈に攻めてこないのはチャンスであった。

 

 キラはストライクにアグニを構えさせると、周囲に居並ぶバクゥを追い払う様に数発乱射する。

 狙いをつける必要は無かった。

 これは敵を引き離すことと砂を巻き上げ視界を奪う事だからだ。

 

「どこを狙ってる!」

「そんな攻撃が当たるかよ!」

 

 バクゥのパイロット達が嘲笑を浮かべる中、キラはストライクを上空へと思い切り飛翔させた。

 

 巻き上げた砂を隠れ蓑に空中へと逃げ、更に自由落下による時間を稼ぐ。

 そしてその間に──

 

「接地圧が逃げるなら、合わせればいいんだ! 逃げる圧力を想定して摩擦係数を砂の粒状性マイナス20に設定!」

 

 恐るべきスピードでキーボードを打ち込み終えると、ストライクは着地。

 そして今度はもう、砂地に足を取られることは無かった。

 

「いける!」

 

 電光石火のOS調整がハマったことを悟り、キラは即座にバクゥへと意識を向けた。

 

「腕の1本でも頂くぜ!!」

 

 背後から迫るバクゥを肩のコンボウェポンポッドに備えられたシールドで振り向きざまに弾くと、あおむけとなったバクゥへとアグニを構えた。

 

「まず1機!」

 

 閃光が迸る。

 至近距離で何が出来るわけでもなく、バクゥはアグニのビームを受け爆散。

 再び巨大な砂柱が上がる。

 

「なにっ……この短時間で運動プログラムを砂地に適応させた?」

 

 ストライクの急な変化に、双眼鏡を覗いていたバルトフェルドは驚愕を見せていた。

 ストライクが発進してからまだ僅かな時間しか経っていない。

 足を止めて、しばらく時間をかけなければOS調整などとても出来るようなものではない。

 少なくとも、敵機に狙われる戦闘中に出来る事ではないはずである。

 

「どうなっている……あれが本当にナチュラルか?」

 

 驚きと疑念に染まるバルトフェルドをよそに、キラのストライクは次なる行動に移っていた。

 

「足さえ取られないなら!」

 

 アグニを構え、ストライクはバクゥを狙う。

 正に地に足が付いた状態である。射撃体勢が固まれば射撃精度は高まる。

 良く狙いをつけて、キラはトリガーを引いた。

 発射されたアグニはバクゥを捉えるとまではいかなかったがその付近の砂地を狙う事には成功した。

 

「こいつ、急に動きが!?」

「慌てるな、まだ射撃は甘い!」

「(取り回しが悪いアグニだけでは地上を動くバクゥは狙いづらい。それなら!)」

 

 キラは思考を回す。

 アグニを構えたままランチャーストライクの武装をチョイス。

 肩に備えられたコンボウェポンポッドの使用であった。

 吐き出されるバルカン砲でバクゥを追従し、即座に放たれたミサイルランチャーがバクゥを追い込む。

 誘導性のミサイルに平面で追われれば逃げ道は一つである。

 

 ──跳躍。

 バクゥは追い込まれミサイルを回避するために砂地を離れた。

 

「今っ!!」

 

 待ちかまえていたその瞬間を狙って、アグニを発射。

 空中へと逃げ、身動きのできないバクゥをアグニの閃光が貫いた。

 

「これで、2機!」

 

 再びバクゥを撃墜したキラは、ストライクのコクピット内で、どこか鬼気迫るものを感じさせていた。

 冷静に、思考を100%戦闘に集中させて、必死に勝機を手繰り寄せる。

 

 苦戦などしていられなかった。

 ストライクの背後には……キラの背後にはアークエンジェルがいるのだ。

 

 アラートがなる前、キラはタケルの見舞いに医務室へと向かっていた。

 だが、医務室のドアを開けたところでキラは医務室に入るのを止める。

 傷ついた心を癒すために、タケルが静かに眠っていて。そんな兄をカガリが静かに見守っていたのだ。

 

 2人をそのまま静かに休ませてあげたかった。

 キラが辛い時、苦しい時。いつも支えてくれたのが2人であったから。

 

「守って見せる──アークエンジェルを僕が」

 

 大切なはずの妹に怯え、涙を浮かべていた友が。

 大切なはずの兄に拒絶され、涙を浮かべた友が。

 戦いの事など気にせず安心して、一緒に居られるように。

 

「だから──」

 

 キラは残りのバクゥを視界に入れた。

 仲間を討たれたからだろう……退く気を見せずむしろストライクに全力の敵意を向けてきている気がした。

 

 

「お前達は、僕が討つんだ!」

 

 

 僅かに浮かんだ憎しみが、キラの心にある扉をこじ開ける。

 2度目となったクリアな感覚。

 敵が見え、自分が見え、戦いが見える──その圧倒的な全能感。

 

 もたらされた感覚に従い、キラはアグニを中空へと撃ち放った。

 夜の砂漠を爆炎の花火が彩る。

 砂丘の影から放たれていた、敵艦船からのアークエンジェルに向けた砲撃であった。

 

 その光景に、バクゥが一瞬動きを止める。

 余りにも無造作に打たれた1射だったからだろう。

 その1射がもたらした超長距離からの砲撃を迎撃という異次元の所業に、目を奪われてしまったのだ。

 

 だがその一瞬は──

 

 今のキラを前にしては命取りになる。

 

「なにっ!?」

 

 急速接近する機体のアラートにバクゥのパイロットが気づいた時には、ストライクはもう目の前に来ていた。

 

「この距離なら!」

 

 ストライクはコンボウェポンポッドの兵装を一斉射。

 至近距離でのランダム照準による面制圧で、また1機のバクゥを確実に屠る。

 距離が近すぎて爆発の衝撃を受けはするが、多少の自滅はPS装甲でどうにでもなる。

 

 バクゥの残りは──2機。

 

『ヤマト少尉、出過ぎているぞ!』

「ッ!?」

 

 ハッと気が付いたようにキラは状況を省みた。

 確かにアークエンジェルに被害が出ないようにと前に出過ぎていた……だが、今この状態で後退すれば、敵機はストライクだけでなくアークエンジェルも狙ってくるだろう。

 

「アークエンジェル! ストライクが今いる位置にミサイルの斉射を! 発射と同時に後退します!」

『何をっ!?』

「大丈夫ですから!!」

『艦長!』

『最悪はPS装甲があるわ! やって、ナタル!』

『了解!』

 

 一瞬判断に迷ったナタルを、マリューの判断が後押しする。

 出撃から然程時間をおかずに、キラはバクゥ3機を撃墜している。

 先の、砲撃を迎撃した1射も鑑みても今のキラが断言するのなら信じる事が出来た。

 

「スレッジハマー装填。目標点をバクゥではなくストライクがいる位置に固定しろ!」

「了解!」

 

 数秒、普段と異なる目標設定にも迅速に対応し発射の準備が整う。

 

「ヤマト少尉、備えておけよ! てぇー!」

 

 ナタルの声に合わせてアークエンジェルはミサイルを斉射。

 現在キラとストライクがいる位置に、ミサイルが殺到する。

 

 ナタルの通信を受け取ったキラはミサイルを確認。同時に僅かな距離を後退する。

 バクゥを寄せる誘い水であった。ストライクを狙う為距離を開けるのを嫌うだろう。

 その目論見通りバクゥはストライクの後退を察知して距離を詰め始める。

 

「ここだ!」

 

 キラはストライクを反転。

 アークエンジェルから迫りくるミサイルを確認すると、対艦バルカンで極一部のミサイルだけを撃ち落しミサイルの雨に飛び込んでいった。

 

 見えていた。ストライクに被弾するミサイルが。

 わかっていた。ストライクに当たらないであろうミサイルが。

 画して、キラのストライクはまるですり抜ける様にミサイルの雨を躱し切った。

 

 後を追うバクゥのパイロット達は完全に虚を突かれることになる。

 自機への照準反応もなかったまま、ミサイルが降り注いでくるのだ。

 そもそも味方機がいるのに諸共撃ってくるわけがないという固定観念がある。

 

 ミサイルが起こす砂柱に包まれながら、また1機バクゥが爆散していく。

 運よく生き残った最後の1機も、被弾はあったのか要であるキャタピラを損傷して身動きが取れない状態となっていた。

 

 キラはそれに、アグニを向けた。

 

「っ!? やめ──」

 

 バクゥのコクピットでパイロットが息を呑むのがわかる気がした。

 友軍を助けるため、戦闘ヘリが煩わしくバルカンでストライクを狙うがPS装甲に任せ全て無視。

 

「決めたんだ──もう頼らないって」

 

 チャージしていくアグニ。狙いをつける時間が妙に長く感じる。

 

「選んだんだ──自ら戦う事を」

 

 自らの選択を尊敬すると言ってくれた。大切な友の顔を思い浮かべた。

 

「だから討つんだ──お前達は、僕が!」

 

 躊躇せず、キラはトリガーを引いた。

 大きな閃光が夜の砂漠を奔り、バクゥを貫いた。

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 僅か、集中していたせいか疲労を覚えて呼吸が早まる。

 倦怠感は多少あるが、まだバクゥ以外にも自走砲や戦闘ヘリがいる。

 ストライクを駆ればなんてことはないだろうが、アークエンジェルを狙わせるわけにもいかない。

 

 キラは操縦桿を握り直し、戦闘を再開しようと周囲を確認した。

 

 

 その時、ストライクのセンサーが接近する反応を確認する。

 

「っ!? なんだ?」

 

 直後、ストライクを狙っていたヘリの1機が爆散する。

 周囲にMS反応は無かったが、代わりにMSよりずっと小さな反応が範囲内にあった。

 

「あれは、車両?」

 

 

 

 

「何事だ!?」

 

 アークエンジェルでもまた、戦況の変化にナタルの声が飛んだ。

 反応を拾った場所へと光学カメラを向けてモニターに映し出されるのは、車両に乗ってロケットランチャーを構える集団の姿であった。

 

「あれは……レジスタンス?」

「狙いはザフトの様ですが……」

「とにかく警戒は厳に。こちらを撃ってこないとは限らないわ!」

 

 

 

「隊長、明けの砂漠の奴らです」

「何? 潜んでいたのか……全くつまらん横槍を入れてくれる」

 

 飄々としながら、どこか声音に侮蔑を混ぜたバルトフェルドは、戦場へと背を向けて歩き出した。

 

「ダコスタ、部隊を撤収させろ。この戦闘の目的は十分に果たした。残存部隊をまとめてレセップスに帰還する」

「了解!」

 

 思わぬ横槍に多少の不快感は覚えたが、バルトフェルドの興味はストライクから離れなかった。

 

 砂漠への適応の早さ。バクゥの機動への対応の早さ。降り注ぐミサイルへの対処の早さ。

 既にバルトフェルドは、ストライクのパイロットをナチュラルではないと確信していた。

 それこそ、コーディネーターですら怪しい。それほどに異次元の戦いを見せていたのだ。

 

 果たして出来るか……同じことが自分に。

 

 否である。

 エースパイロットと呼ばれる自負があるバルトフェルドであっても、ストライクのパイロットには完敗の一言に尽きた。

 

「地球軍にいながら、コーディネーターすら霞むようなパイロット……興味が尽きないよ、奇妙なパイロット君」

 

 恐るべき強敵の出現だと言うのに、バルトフェルドは帰還するまで終始笑顔を崩さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 守れなかった少女。それは、向けられた想いと共に、少年達の胸を苛んだ。

 砂の戦場を駆ける人々もまた、自分達の未来を守る為に銃を取る。

 立ち直り赴く彼等の地で、獅子の子達は、思いもよらぬ懐かしき再会を果たす。

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED

 

 『支配の砂漠』

 

 誓いを胸に、飛べ、ガンダム! 

 




強くなるんだ。守るために。
そんなお話

感想お待ちしております。

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