機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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幕間 新たなる剣

 

 砂漠の夜は冷え込む。

 昼の灼熱とは真逆の顔を見せる夜の砂漠。それはレジスタンスの拠点であるここも例外でなく、皆火を焚いて暖を取っている。

 

「それで、なんとなく察したが一体どういう状況なんだお前達?」

 

 小さな焚火を囲んで顔を突き合わせる3人。

 朗らかな様子は鳴りを潜め、サイーブの真剣な眼差しがタケルとカガリを捉えていた。

 

「さすがにカガリの本名は明かせないよ、おじさん。オーブにとっても巻き込んだ地球軍にとっても爆弾の種だもの。カガリにはあくまで、巻き込まれた民間人の1人で居てもらう必要がある」

「そう言う事だ。察してくれて助かった」

 

 カガリ・アマノ。本名をカガリ・ユラ・アスハ。

 未だマリュー達に隠し通しているカガリの正体である。

 

「わかり易く偽りのフルネームを告げてきたからな。事情があるのは容易に察せられたが……それにしても驚いたぞ。タケルはしっかり軍人になって、お転婆のカガリは喋らなければ美人のお姫様ときたもんだ」

「喋らなければは余計だ」

 

 ふんっと鼻を鳴らして憤りを見せるカガリを窘めながら、タケルもまたサイーブに倣い真剣な表情を見せて口を開いた。

 

「ところでおじさん、1つ確認したいことがあるんだけどさ」

「ん? なんだ一体?」

「砂漠の虎を相手に、まともにやりあえているの?」

 

 タケルの問いかけに、サイーブは動きを止めた。

 真剣な声音で問われた内容。煙に巻くような解答は許されない雰囲気を纏い、タケルはサイーブへと問いかける。

 

「僕はMSの開発を知っている人間だ。僕から言わせてもらうと、精々がお情けで1機やらせてもらえるかどうか。自走砲も携行火器も数は多いけどバクゥとやりあうにはまるで足りない」

「言いたい事は痛い程身に染みている。だが、俺達は戦い続けなければならん。支配者の手に振り回されぬようにな」

「それは命より重要な事?」

 

 至極落ち着いた声で投げられる言葉に、再びサイーブは身を固める。

 一言一言に、何故か重みがある。

 まだまだ少年の域を出ないはずの目の前の子どもが、まるで責めるかのようにサイーブへ言葉を向けていた。

 

「──それは、俺にもわからん。

 虎に従えば安息を得られるかもしれん。だが、いつ手を翻されるかと怯えながら生きる事にもなる。ここに居る者達はそれを危惧して戦う事を選んだ。だが、街に居る者の中には戦って失う事を恐れ、降るべきと言う者もいる」

「僕はここまで、必死に戦っても守れなかったものがたくさんある。無為に散った命を目にした事も……まともに戦える相手ならまだしも、敵わない相手に挑むのは自殺と何も変わらない」

「──兄様」

 

 直近で経験した事が、勝ち目の薄い戦いに身を投げるレジスタンスの戦いを度し難いものだと断じていた。

 それで死ぬのは彼等だけではない。本当に牙を向けられれば彼らの大切な人達にだって危害が及ぶ。

 戦いに巻き込まれるのは、何の罪もないはずの人々なのだ。

 

「本当に、戦うしか道はないの? 向こうが本気になったらこんな前線基地1時間もかからずに殲滅できるんだよ」

「言いたいことはわかる。だがお前の様に聞き分けが良い連中ばかりではないんだ。勝てないとわかっていても大人しくしていられない奴らが居る。そいつらをまとめなければ、なりふり構わないテロにでも走ってしまう。あのブルーコスモスの様にな」

「それは……そうかもしれないね」

 

 憤りの捌け口。

 その意味を理解しタケルは引き下がった。

 確かに、ため込めば暴走する人間もいる。古今東西、そんな事例は数多く存在する。

 ブルーコスモスなど、それが当たり前とさえなっているだろう。

 そんな凶行に走らせない為にも、彼らの憤りを受け止める受け皿としてレジスタンスは必要であった。

 

「俺だって本当なら、こんな事をしてカミさんや息子に心配を掛けたくはないさ。だが、やらなきゃ守れないものがある。勝ち取りたいわけじゃないさ……守りたいんだ」

「そっか……」

 

 サイーブが厳しい戦いに身を投じている事を理解した上で戦っていると知り、タケルは一先ず険悪な雰囲気を抑え込んだ。

 理由を聞けば納得もできる。認めたくはないが必要な組織であり必要な活動だということがわかった。

 

「お前達みたいにMSを扱えりゃ良いんだがな……生憎ここには虎と戦ってくれるような都合の良いコーディネーターは居ない」

 

 ハッとした様にタケルは顔を上げた。

 聞き間違いか、取り間違いか。だが、今のサイーブの言葉にはある可能性が眠っている気がした。

 

「──ん? 待っておじさん、それってつまりパイロットが居れば動かせる機体があるの?」

「あ? あぁ、まぁ。以前に襲撃を掛けた拠点で奪取したザフトのMSがな。あの一番出回っている、ジンって奴だ。何とか使えないかと色々やったんだが、さすがに俺達にアレを扱えるような奴は居なくてよ……なんだ、お前達?」

 

 再会した時と同じような喜色を浮かべる2人に、サイーブは疑問符を浮かべた。

 

「いや……やっぱりおじさん達と手を組んだのは間違いじゃなかったんだなって思っただけだよ」

「あぁ。サイーブ、そのMSがあるところまで案内してくれないか?」

「それは構わないが──もしかしてタケルが使うってのか?」

「勿論。こう見えても優秀なパイロットだよ」

 

 大気圏突入時にボロボロになったアストレイ。

 ストライクの予備パーツを使おうにも、損傷している部位を考えるに殆どストライクで作り直しみたいな状態であった。

 さすがにストライクの予備パーツとてそこまで潤沢ではないため苦しい。

 最悪はスカイグラスパーの2号機を引っ張り出すのも視野に入れていたが、やはり艦を守るためにもMSが欲しかった。

 そんな時に使われていないジンがあるなどと、正に渡りに船である。

 

「兄様、使うにしても搬入や置き場の事もあるしラミアス艦長にも来てもらった方が良いんじゃないか?」

「あ、そうだね。使うにしろ使わないにしろ、お伺いは立てないと」

「私が行ってくるよ。兄様はサイーブから詳しく話を聞いておいてくれ」

「ありがとう。それじゃお願い」

「あぁ」

 

 そう言ってその場を足早に離れていくカガリを見送ると、タケルもサイーブと先の指令所へと向かいながら詳しい話を聞くのだった。

 

 

 

 2人と別れたカガリは急ぎ足でマリュー達を探す。

 流石にアークエンジェルクルーとレジスタンスがごった返しとなっており、目に付く軍服を目印に探すがなかなか見つからない。

 そんなおり、周囲へ視線を投げながら歩いていたカガリは岩場の陰から出てきた少年とぶつかってしまった。

 

「うわっ!? と、すまない。急いでたものだから」

 

 カガリの方が歩く勢いが早かったのだろう。

 尻餅をついた少年を見止めて、カガリは謝罪をしながら手を差し出した。

 

「──いてて、全く何処見て歩いて」

「悪かった。怪我は無いか?」

 

 少年、アフメド・エル・ホズンは思わず言葉を失った。

 心配そうに見下ろしてくる整った顔立ち。

 周囲の火に照らされて見える金色の髪が、まるで太陽の様な色彩を放ち、火に照らされた瞳はまるでその火を取り込んだかのように綺麗な茜色に揺れている。

 

「──太、陽」

「ん?」

 

 アフメドは太陽の様な少女だと思った。

 夜の帳が降りたというのに、彼女は何故か輝いて見えて。

 周囲が騒がしいというのに、彼女の声は妙に良く聞こえて。

 心配そうに覗き込んでくる表情がどこか母性を感じさせて。

 小首を傾げる姿がまたなんとも羞恥心をくすぐった。

 生まれてこの方見たことがないような綺麗な少女に見つめられ、アフメド少年は夜の砂漠でも分かりそうなくらい気恥ずかしさの熱で顔を赤く染めた。

 

「い、いや。何でもない。気を付けろよ」

「あぁ……悪かった、な」

「別に良い……それじゃ」

 

 逃げる様に去っていくアフメドを見送ったカガリはそのつっけんどんな態度に少しばかり頬を膨らませる。

 

「なんだよ、愛想悪いなぁ」

 

 悪態の1つも吐きたくなるというもの。

 努めて今のを忘れようとしながら再び歩き出すと、少し歩いたところで目的の人物を見つけ声を上げる。

 

「あっ、いたいた。おーい、ラミアス艦長!」

「あら、カガリさん?」

「なんだなんだ、あんなに慌てて」

「何か、あったのでしょうか?」

 

 態々遠目で見つけた途端声を上げるカガリ。

 そして急ぎ足で向かってくる様子に、3人は疑問を覚えながらも立ち上がった。

 

「ラミアス艦長、バジル―ル中尉にフラガ少佐もいたか。丁度良かった」

「丁度良い? 何かあったんですか、カガリさん?」

「兄様の機体が手に入るかもしれないんだ!」

「はぁ? 機体って、アストレイがか?」

「いや、そういうわけじゃないんだが……サイーブ達が以前、ザフトを襲撃した時にジンを奪取していたんだ。それで使える人もいなくてずっと倉庫に眠っているらしくて」

 

 カガリの言葉に、3人は顔を見合わせた。

 何を言われたのか改めて理解をしたようで慌てた様子で口を開いた。

 

「それを、使わせてもらえると言うの?」

「あぁ! ここじゃ誰も扱えないからって。詳しい状況は今兄様が聞いているが、艦に乗せるならラミアス艦長達にも聞いておかないとと思って」」

「それはありがたい話だわ。カガリさん、案内してもらえる?」

「俺達も見に言って良いか?」

「私も同行させてもらいたい」

「あぁ、一緒に来てくれ。こっちだ」

 

 とんとん拍子で話が進んでいく。

 慌ただしく動き出した4人は、急ぎタケル達がまつ指令所へと向かっていった。

 

 そんな4人を……否、その先頭を歩くカガリを、アフメド少年が岩陰から見ているのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅん、まるまる一式ねぇ」

 

 手元にあるリスト化された紙を見ながら、タケルは感嘆の声を漏らした。

 サイーブが持ち出してきた仕様書と使える兵装のリスト。

 その上整備用の部品までがあるのだと知り、予想を超える充実さに思わず唸った。

 

「最初はそれこそウキウキ気分で全部奪ってやったんだがよ、俺達じゃてんで使えねえときたもんだ。それでいつか日の目を見る日が来るまで保管しておくってなってな」

「そりゃあね……MSを扱うのは現行の軍事における最先端。ザフトはそれこそ一歩先に言ってるけど連合だってようやくXシリーズの機体ができたばかりで、OSは未完成。こんなところでジンを扱うノウハウがあるわけないよね」

「手厳しいなおい」

「修理用のパーツまでごっそりとは本当に怪我の功名だよ。アストレイの無事な部分と合わせて折角だから色々注ぎ込もうかな」

 

 素のままのジンを使っても仕方ない。

 使える部分だけ上手く組み込んでできる限りのスペック求める。

 元々兵装はシンプルで貧弱だったアストレイにとって、ジンのバリエーション豊かな兵装が使えるのはかなり嬉しい事である。

 タケルの脳内で、ジンの活用方法が次々と浮かび上がっていった。

 

 

「兄様! 連れてきたぞ!」

「アマノ二尉、使える機体が見つかったと聞いたのですが」

「あぁ、ありがとうカガリ。はい、そうなんです。おじさん達が倉庫に眠らせていたジンと、その修理用のパーツから兵装まで一式。豪勢なものです」

「マジかよ」

「そんなものを良く……」

 

 思わぬ収穫と予想外の事態にやはりムウとナタルも驚きを隠せないようであった。

 

「使えないとわかって暫く放っておかれていたみたいなので、使う前にメンテは必要でしょうが……今アストレイの無事なところと合わせてどう使おうか考えてます」

「どう使うって……そのままでは使わないのですか?」

「せっかくの機会ですからね。ザフトのMSが手に入ったなら徹底的に有効活用してアストレイに組み込みます」

「またそんな整備班泣かせな事を……」

「そんなこと言ってラミアス少佐だってちょっと興味津々な顔しているじゃないですか。同じ穴のムジナでしょう?」

「それは……確かにアストレイを開発したアマノ二尉がどんな改造をして見せるのか、非常に興味はありますし、何なら近くで見せてもらいたいですが」

「あらま、本音を言っちゃった」

「隠す気もなく言いましたね」

 

 タケルの提案に、僅かばかり声が上擦っていたのをタケルは聞き逃さなかった。

 同じ技術士官同士、やはり敵陣営の機体の解析と言うのは興味が尽きない。その上マリューからすれば、オーブとザフトの機体の合いの子となるわけだ。ストライクしかしらないマリューからすれば正に未知の機体なのである。

 そんなマリューの本音が漏れて、ムウは苦笑。ナタルはどこか白い目線を向けていた。

 

「とりあえず、サイーブさん。ジンの状態を見せてもらっても?」

「あん? お、おおう、良いぜ。こっちだ」

「艦長、私はマードック曹長と話を詰めておきます。この分なら、譲っていただく事になるのでしょう?」

「ええ、お願い」

「俺も戻っておくか。タケルの様子をキラにも伝えておきたいしな」

「よろしくお願いしますね。頼れるお兄さん」

「あいよー」

「では」

 

 状況を把握したところでナタルとムウは艦へと戻る事に。

 僅かに高揚した気分を隠せないマリューは、タケルと共にサイーブに連れられ倉庫へと向かった。

 

「こっちだ」

 

 案内された薄暗い倉庫。

 自走砲や携行火器がたくさん置かれているその一角に、大きな巨人の姿があった。

 ほう、と小さく息をつくタケルとマリュー。

 見た感じ何処にも損傷はないし、保管されてから大して時間も経ってないように思えた。

 これならすぐにでも動かせるだろう。

 

「多少ホコリは被ってるけど、全然問題なさそうですね」

「武装までしっかり。本当に不幸中の幸いね」

「ラミアス少佐、それでは」

「ええ、明日朝一で搬入してアストレイの修復に移りましょう」

 

 1つの問題が片付いたことに喜色を浮かべる2人。

 案内をしてくれたサイーブをそっちのけに、2人はどんな使い方をするのかで大いに盛り上がるのであった。

 

 

 

 

 

 

 明るく周囲を照らす火を囲み、キラを含むヘリオポリスの学生仲間6人は静かに雑談していた。

 

 第8艦隊との合流後、各々が自ら戦う事を決め、結果的には全員残る事となった6人。

 本来ならアラスカへの降下となり、今頃は地球軍本部だったはずだが、こうなった以上は再び戦いを潜り抜けて目的地へと向かう事になるのだろう。

 やはりどこか、先行きへの不安は隠せないでいた。

 

「はぁ……」

「キラ、ため息多いぜ」

「やっぱり、残った事を後悔してるの?」

「えっ? ち、違うよミリアリア! そんな事じゃないんだ」

「それじゃ、どうしたんだよ。昨日の戦闘の後からか……ずっと浮かない顔してるじゃないか」

 

 サイの問いに、少しだけキラの心持ちは上向いた。

 良く見てくれている。サイだけでなくフレイやカズイまでも心配の声を挙げてくれる。そんな友人達の声が嬉しくないわけがない。

 おずおずと、キラはため息の理由を語り始めた。

 

「昨日の戦闘中さ……なんか、違ったんだ」

「違った?」

「何て言うのかな。今までと違って、相手を討つ事にためらいが無くなったというか……」

「それって、おかしい事なのか? だって戦闘に出たら向かってくる敵を討つなんて当たり前の事じゃん」

 

 キラは僅かに息を呑む。

 トールに悪意はないだろう。本人としては思い悩んでいるキラを悩ませたくないと考え発言したに過ぎない。

 だがそこに、キラはどこかトールとの一線を感じてしまった。

 敵であろうとも命を奪う事への忌避感。艦橋のクルーである彼等にはまだそれが現実的なものとして根付いていない。

 志願する前のキラはそれこそ吐きそうになりながら敵を討ったのだ。

 命を奪った事への後悔や疑念。痛さは討った当事者にしかわからないのだと、キラは理解した。

 

 そして昨夜のキラは、明確に敵機を撃墜する事への躊躇を捨てていた。

 

「守らなきゃいけないって思ったんだ……怯えるタケルと、それを見守るカガリを見て」

「キラ……」

「不安にさせたくなくて、タケルが戦わなくても大丈夫だって思って欲しくて……そしたら、タケルとカガリの平穏を邪魔するバクゥに憎しみが向いて……」

「そしたら、敵を討つことを躊躇わなくなった?」

「うん……今までだったら少なからず辛かったはずなんだ──人の命を奪ったことが」

 

 キラの言葉にサイ達もまた息を呑む。

 意図したわけではないが、キラの琴線に触れた彼らとの認識の違い。その一端に触れる言葉であった。

 敵を討つ──相手の命を奪う。

 そのトリガーを引くことの重さ。想像しかできなくても重い事は容易にわかる。

 そして、それに忌避感を失ってしまっている事を、キラが悩んでいるのだと理解した。

 

「憎しみで戦ってしまった……そう思ってるのか?」

「──うん」

 

 サイの問いに、キラは静かに頷いた。

 沈黙がその場を支配した。

 キラが言う事は理解できるが、それに対して彼らは何を言う事も出来なかった。

 討った事のないものに、言えることなどないのである。

 

「あぁ、ごめん。嫌な空気にしちゃって……別に僕は大丈夫だから気にしない──」

「気にするな、なんて無理な話だよな」

「フラガ少佐!?」

 

 突然肩に手を回され耳元から聞こえる声にキラは驚きを見せる。

 サイ達も同様、突然の上官の乱入に大慌てだ。

 そんな彼らを尻目に、ムウは陽気な雰囲気を崩さずに口を開く。

 

「悩めるヤマト少尉に朗報だ。タケルの奴、もうすっかり大丈夫そうだぜ」

「えっ、そう……なんですか?」

「何があったかは、副長の威厳の為にも言わないでおくが、とりあえずキラが言ってたような状態からは脱したと思って良い──まぁ、未だにちょっと無理してる感じはあるけどな」

「そうなんだ。それなら、とりあえず良かったです」

 

 本当に安心したようにキラは大きくため息をついた。

 知らず知らず、タケルが戦えない事に不安を覚えていたのもあるだろう。

 昨夜の戦いを一人で戦い抜けたことは嬉しくもあったが、終えた時には心の底から一人で戦い抜けたことに安堵していた。

 

「んで? 憎しみで戦ってしまったって?」

「──聞いてたんですね」

「聞いて欲しかったんだろ。友人達に」

「それはそうですけど……」

「お前もタケルも、本当に背負い込みがちだよな……だから、先輩からのありがたい助言だ」

「はい?」

 

 組んでいた肩を離してキラに向き直ると、ムウは居住まいを正して口を開いた。

 

「お前は、勝手に出撃して敵を討っているのか?」

「──そんなわけないじゃないですか」

「それが答えだろ……憎しみを向けた? 大いに結構。それでもお前は艦を守るMSのパイロットとして命令に従い敵を討っている。

 お前が独断専行でもして勝手に敵を討たない限り、その責は全て艦全体。もっと言うなら地球軍全体のものだ。どんな風に戦おうが一個人であるお前が背負うものじゃない」

「確かに、そうですよね。俺達はMSに乗れないから、キラが代わりに戦ってくれてるわけだけだし……少なくとも俺達は、キラの事を人殺しだとか思ってないんだぜ」

「トール……」

「ほら見ろ、お前よりよっぽど友達の方が良く分かってるぜ──背負うのはお前だけじゃない、皆なんだよ」

 

 ストンと心の中にムウの言葉がハマっていく。

 先程まで思い悩んでいたのが嘘のように心が軽くなっていくのをキラは感じていた。

 

「ありがとう、ございます。少佐……なんか、ちょっと軽くなりました」

「志願するまではそれこそまだ民間人だったからな、そんな意識も強かっただろうが、お前はもう軍人だ。引きずるなとは言わんが、敵を討った責を背負うのはお前じゃない事は良く自覚しておけ。まぁ、タケルみたいに守れなかった事を悔いるのも、また同じことが言えるだろうけどな」

「だったら少佐……なんでタケルにも同じ事を言ってあげなかったんですか?」

「そんなもん決まってるだろ────今考えたからだ」

 

 たっぷりと間を置いて悪びれもなく答えたムウに、思わずキラは苦笑した。

 どこか抜けてるムウらしい答えだが、それすらもきっとキラを気遣っておどけて見せているのだろう。

 残念ながらその発言は真実であるがキラがそう思っているのなら、そうなのである。

 そんなムウに感謝しながら、キラは一つまたため息をついて空を見上げた。

 

 乾いた空気が魅せる綺麗な星空。

 それが悩みが晴れたせいか殊更輝いて見えた。

 つい最近まであの星々の合間で戦っていたと言うのに……

 

 宇宙からみる地球も、地球から見る宇宙も、戦いなどまるで感じさせない輝きに満ちている。

 

 それがキラは、どこか虚しく。だけど嬉しく思えた。

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか
期待外れ? ごめんなさい
ご都合展開? 許してください
流石にストライクのパーツではもう補修は無理だろうと考えた末のこの展開です。
本当の新たなる剣はまたいずれ出ますので。今回はジンで勘弁してください。

感想、お待ちしております。

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