機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-34 平和の仮面

 

 

 

 

「キラと一緒に護衛に?」

 

 アークエンジェルの格納庫で、タケルは疑問符を浮かべて聞き返した。

 通信の相手はマリューとナタル。

 そしてタケルのすぐそばにはムウも居る。

 

「そっ、日用品の買い物ついでに少し羽を休めてこいって話だ」

「いや、僕は降りてきてからこっち戦闘もしてないし羽休めも何も……」

『肉体的にはそうでしょうが、精神的には参っていたでしょう? 貴方にも一度、休んでおいてもらった方が良いと思ってね』

『私も同意です、アマノ二尉。ジンの搬入がされる前からもずっとそちらで作業をしていたでしょう。少し休まれては?』

「ですが……」

「本当の所は、キラの為なんだ。アイツ、昨日の戦闘でちょっと明けの砂漠の奴と揉めたみたいでな──珍しく、怒鳴り散らしたんだとよ」

「キラが?」

 

 俄かには信じられないと、タケルは意外そうな目を向けてムウへと聞き返した。

 あの温厚の塊の様な少年が声を荒げて怒鳴り散らす。

 想像できない光景ではあった。

 

「意外だろ? 俺もそう思う。なもんでキラには少し落ち着く時間が必要だと思ってな」

「それで、僕と一緒に気晴らしにと?」

『護衛と言う名目ですが、ヤマト少尉にそれは難しいでしょう。向かう先は砂漠の虎の本拠地という事ですし万が一があっても困ります。なので、アマノ二尉にもお願いしようかと』

「そう言う事ですか」

「こっちはもうマードック曹長とも詰めたんだろう? 出来上がってからの調整はお前の仕事かもしれんが、出来上がるまではお前も少しくらい離れたって大丈夫だ」

 

 そう言って、ムウは格納庫の一角を見あげた。

 

 そこには魔改造を施されている“ジン”の姿があった。

 

 ボロボロになったアストレイをベースとするよりは、完全な状態であるジンをベースにした方が楽だと判断したのだ。

 アストレイのジェネレーターや機体各部のブースター。武装等をそのまま運用できるように無理矢理取り付けていく、正に魔改造である。

 バランスが悪い。見栄えが悪い。

 そんなアストレイの開発者としてはやや憤慨する部分もあるが背に腹は代えられないと、求める機能を追求したジン・アストレイとも言うべき機体である。

 

「確かに、曹長とはもう完成図まで共有していますが……僕まで気晴らしというのは」

『アマノ二尉。朗報か悲報かは判断が付きませんが、向こうのたっての希望でカガリ・アマノも同行することになっております』

「はっ? 何でカガリが……サイーブおじさんからですか?」

『いえ、案内役で同行する明けの砂漠メンバーの少年との事です』

「分かりました。すぐ護衛の準備をして出ます」

 

 間髪入れずの返答だった。

 いやな予感を瞬間で察知したタケルは、まるでこれから出撃すると言わんばかりに気配を鋭くさせる。

 

「お、おいタケル。護衛の意味と言うか対象を履き違えるなよ!?」

「安心してください。ちゃんと守りますよ。大事な友人と妹と、虫の一匹くらい──それでは、フラガ少佐、こちらはお願いしますね」

 

 有無を言わさぬ勢いで、タケルは格納庫を後にした。

 

『これで……問題はないかと』

『貴方、随分扱いなれてきたわね』

「っていうか本当に大丈夫かアレ……下手するとタケルも揉めそうだぞ?」

『艦長、では私も取引の為に明けの砂漠の面々と街へと赴きます』

『ええ、お願い』

『はっ!』

「おいおいおい、我関せずかよ!? ったく本当に大丈夫なのかねぇ」

『ご心配なさらずとも、流石にその辺の分別は付くでしょう。結局アマノ二尉はカガリさんが心配なだけですもの』

「それはそうだが……」

『少佐も同行しますか?』

「そいつは勘弁。あんな若い連中の中に入っていく勇気はないって」

 

 なんてことないと構えるマリューに対して、どこか一抹の不安を隠し切れないムウであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂漠の街バナディーヤ。

 オアシスによる豊富な水源を押さえた、砂漠の中でも豊かな街である。

 人々は賑やかで平和な街の生活を享受しており、十分に発展した都市と言っても過言ではないだろう。

 

 その街の背後に、ザフトの戦艦レセップスが鎮座していなければ……ではあるが。

 

 そう、バナディーヤは砂漠における豊かな都市であるのと同時に、砂漠の虎アンドリュー・バルトフェルドの根城でもあるわけだ。

 

 

 そんな都市を、ハーフトラックに乗って進むサイーブ達。

 大通りの真ん中で車を止めると、アフメド、キラ、カガリ、タケルの4人はその場で降りた。

 

「じゃあ4時間後だな」

「大丈夫だとは思うが──問題は起こすなよ、アフメド」

「わかっているさ」

 

 小さく返すアフメドの視線には、まだどこか飲み下しきれていない想いが見え隠れしてキラを見つめていた。

 

「タケル、悪いが護衛を頼む。アフメドだけじゃ不安だからな」

「わかってるけど、僕2人の間に何があったか知らないんだけど……」

「護衛に徹してくれればいい。あとは本人達の問題だ」

「──わかったよ」

 

 ふぅ、と息をついてタケルは今日のお出かけが気疲れするものになりそうな気配を感じた。

 

「ヤマト少────少、少年。君もしっかり頼むぞ」

「えぇ……まぁ、はい」

 

 階級を呼びそうになって慌てて誤魔化したナタル。根っからの軍人である彼女らしい姿である。

 隣に座っていたトノムラは、そんな彼女の挙動に驚愕の表情を隠せなかった。

 

「行くぞ!」

「あ、あぁ、頼む」

 

 気恥ずかしさを誤魔化すように声に平静さを乗せて、ナタルは返した。

 サイーブの運転で車が去っていき、残された4人はその場で微妙な空気を纏う。

 

「さっ、行こうぜ。買い物リストはあるんだろう?」

「あぁ、私が持っている」

「そうか。それじゃ見せてくれよ」

「あぁ、これが──」

「はい、ストップ。カガリはメモを渡してあげて。わざわざ一緒に頭並べてみる必要も無いでしょ」

「むっ、何だよ兄様。それはそうかもしれないが……」

「それとキラ。いつまでもボーっとしてない。一応僕達、今日は護衛できてるんだよ」

「あっ、うん、ごめん……でも」

 

 でも? 

 続いた言葉に、タケルもカガリもキラへと意識を向けた。

 どこか心ここにあらず。キラはそんな印象を抱くような雰囲気であった。

 

「ここ、本当に虎の本拠地なの? 随分にぎやかで、平和そうで」

「なるほどね。アフメド君だっけ? キラが聞きたいみたいだけど?」

「はっ、平和そうね……付いてきなよ」

 

 そう言ってアフメドは大通りから1本小道へと入って抜けていく。

 するとそこには、恐らくは爆撃で跡形もなく吹き飛んだであろう区画があった。

 平和な日常から僅かに逸れただけで顔を覗かせた攻撃の跡に、キラは息を呑む。

 

「これがこの街の真実だ。逆らう者は容赦なく殺される──ここは砂漠の虎が支配する街なんだよ」

「でも、虎が支配することが戦う理由になるの?」

「なに?」

「ここの人達は逆らわないからこうして平和に暮らせているんじゃないの?」

「バカかお前。支配されてるって事は逆らわなくても連中の掌の上だろうが! いつ何を言われて、こうして殺されるかわからない。それで本当に平和な街だって言えるのかよ」

 

 悔しそうに、アフメドは表情を歪めた。

 アフメドとて何度か、タッシルで耳にはしている。

 砂漠の虎に降れば、安定した暮らしができると。理解はできるし、魅力的な話でもあった。

 それで本当に生活が安定するならば、だ。

 

 未だ飲み下せぬ思いを吐き出すように、アフメドはキラへと詰め寄った。

 

「今だって、皆笑顔の裏で怯えている人がたくさんいる。連合だザフトだ、支配者は移り変わっても、俺達の状況は何も変わらない。

 だから、支配されない為に俺達は戦っているんだ」

「でも! それで死んでしまったら何の意味も──」

 

 キラも負けじと言い募ろうとしたところで、だが2人の間に2人が割りこんだ。

 

「はい、ストップ」

「そこまでだ、お前等」

 

 言い争いになる雰囲気を察して、兄妹らしく揃ったタイミングで割り込んだタケルとカガリは、それぞれの前で頭を振った。

 

「なんだよ」

「タケル、カガリ……」

「キラ、僕達に他人が戦う理由を否定する権利はないよ。必要だから、皆戦ってるんだ。それ以上は、僕達が踏み入る領分じゃない」

「お前も、ちょっとはキラの気持ちを考えろよな。キラは、お前達に死んで欲しくないから言ってるんだぞ」

「へっ、知るかよ」

「別に僕は……」

 

 やはり、互いにどこか納得できていない気持ちが見える。

 負けん気の強いアフメドは鼻息を荒くしてそっぽを向き、キラはタケルに窘められてどこか罰が悪そうに俯いた。

 そんな2人をみて、カガリはため息を。タケルは苦笑を見せると、互いに顔を見合わせて頷いた。

 

「ウダウダ言うのはやめだ。私達は今日やるべきことをやるだけ。そうだろう、えっと……アフメド?」

「あぁ、そうだな……えっと……か、カガリ!」

「あん?」

 

 とっさに隠し持っていた銃へと手が伸びかけるタケルを慌ててキラが止めた。

 

「タケル……さっきまでの流れからその変わり身はどうかと思うよ」

「──っと、失礼。とりあえず行こうか。時間を無駄にはできないでしょ」

「そうだな!」

「おう」

「うん」

 

 言い争いを思考の隅に追いやることができたか、わだかまりも少しは消えた2人を伴って大通りへと並んで歩き始めた。

 

 快活で愛想よく笑うカガリに、終始ドギマギするアフメドを見てタケルがキレたり。

 街の小さい子に懐かれるタケルにアフメドが文句を言ってキレられたりしたが、おおむね順調に買い物は進んでいく。

 砂漠の虎の本拠地とは言っても街はただの発展した都市でしかない。

 4人は久方ぶりにのんびりとした時間を過ごしていた。

 

 キラが護衛として、タケルからアフメドを救った回数を数えるのを止めた辺り。

 ちょうど時刻はお昼時を迎えていた。

 とある店の屋外席で、4人は1つのテーブルを囲みながら少しばかり疲れた様子で休んでいた。

 

「ふぅ、大体買い揃えたか……」

「本当か? メモ、見せてくれ」

「ん、ほら。一部わかんないのがあるんだけどな」

「あー、乳液だの化粧水だのは……まぁ仕方ないだろうな」

「俺、ブランドとかわかんねえし」

「いや、気にするな。こんなもの注文してくるフレイが悪い。砂漠のど真ん中の街にこんなのあるものか」

「カガリは、わかるのか?」

「ん? あ、あぁ一応な……と言うか失礼だぞ、その質問。これでも私だって女なんだからな」

「カガリ、だったらまだ赤の他人に近い男の子へのその距離感をやめてくれる? そろそろ僕キレるよ?」

「タケル──いい加減そろそろ僕がキレそうなんだけど?」

 

 どっぷり疲れたように、肩を落としてテーブルに突っ伏したキラ。その背後にはどこか黒いオーラが漂っている気がして、タケルは銃へと伸ばしかけた手を引っ込める。

 

「はい、お待たせねー」

 

 予想外の苦労に堪忍袋の緒がキレそうだったキラを止めてくれるように、少々陽気な声と共に皿が運ばれてくる。

 薄い生地の上に肉と具材を乗せたキラ達の見知らぬ食べ物であった。

 

「おっ、来た来た」

「何だこれ?」

「ドネルケバブだ、美味いぞー。

 疲れたし腹も減った。ほら、お前達も食えよ。ソースはこのチリソースを──」

「あいやまったぁ!!」

 

 突然の少し大きな声が割って入り、4人は視線を向ける。

 通りがかりだろうか……アフメドが言ったケバブを手に持っている、帽子とサングラスをかけた怪しげな男性がそこに居た。

 その手には、いつの間に取ったのかテーブルにあったはずの白いヨーグルトソースの容器が握られている。

 

「何を言ってる少年達。ケバブにはこのヨーグルトソースを掛けるのが一般的だろう」

「はっ? なんだよお前」

「いや、一般的というかもっとこう……そう! ヨーグルトソースを掛けないなんて、この料理に対する冒涜だ!」

 

 まるで演説の様に己の趣向を力説する男性に、キラ達3人は置いてけぼり。

 邪道だの冒涜だのと。そもそも初めて目にした料理にそんな話を聞かされても何もわからない。

 だが、この料理を知っているアフメドからすると、男性の言葉は聞き捨てならない様で訝し気に睨むと口を開いた。

 

「なんだよそれ。見ず知らずの変な奴にケバブの喰い方をとやかく言われる筋合いはない!」

 

 見せつける様に、赤いチリソースを己のケバブにぶちまけてアフメドはおいしそうにそれを頬張った。

 

「あぁ、何てことを……」

「ん~、うめぇ! ほら、お前達も食えよ。ケバブにはチリソースが当たり前だ」

「待ちたまえ! 彼らまで邪道に堕とす気か! えぇい!」

「あっ、お前! 何を勝手に! このっ!」

 

 何の対抗意識かこの2人。己が推すケバブの味に絶対の自信を持っているせいかテーブルにあるキラ達のケバブ目掛けてソースをぶちまけ始める。

 既に食すであろう3人は置いてけぼりだ。彼らの戦いはいかに己のソースでケバブを占領できるか。

 さながら陣取り合戦の様相を呈している。

 

「させるか!」

「やらせんよ!」

 

 最後の1皿。そこに2人は乾坤一擲でソースをぶちまけた。

 キラ達は、目を点にして茫然としていた。

 目の前にはチリソースに占領されたケバブが1つ。ヨーグルトソースに占領されたケバブが1つ。

 そして……現在紅白の合戦場となってしまったミックスソースのケバブが一つである。

 

 はぁ……そんな大きなため息をこれ見よがしに吐いて、タケルはぼそりと口を開いた。

 

「──カガリはチリね、キラはヨーグルト。僕は……ミックスをもらうよ」

「ありがとう、兄様」

「助かるよ、タケル」

 

 異様に疲れた雰囲気を纏いながら、タケルは紅白に彩られたケバブを食べ始めるのだった。

 

 

 

 そんな馬鹿なやり取りをしている彼らを、向かいの建物の屋上から見つめる者達がいた。

 2人、いや3人だろうか……傍らには携行のロケット砲やマシンガンなど物騒なものが揃えられており、見るからに危険な空気を感じられる。

 

「いい気なもんだな。へらへらと」

「あのテーブルに居る子供は?」

「その辺のガキどもだろう。どうせ虎とヘラヘラ話すような奴だ」

「なら行くか。開始の花火を頼む」

「魂となって宇宙へ還れ。コーディネーターめ!」

 

 彼等の正体はブルーコスモス。

 コーディネーターを忌み嫌い、過激な手段による排斥を厭わない、コーディネーター排斥主義者達である。

 

 そんな彼らの視線が、ケバブを食べているタケルたちを見据えていた。

 

 

 

 

「いやぁ、悪かったね。特にそっちの少年」

 

 声を向けられて、黙々と食べていたタケルは口の中の物を水で流し込み答えた。

 

「別に……と言うか、意外とミックスありですよ」

「ホントかい? さすがにそこまでの邪道には踏み込んだことが無かったが。それなら僕も後で試してみようかな?」

「逆にミックスを試していないなんて、ケバブの探求者とは言えないのでは? 可能性があるうちはどれが一番かなど決められないでしょう」

「なるほど、探求者ね……良い響きだ。それにその言い分も良くわかる。なんだか君とは気が合いそうだよ。今度、僕のコーヒー談義にも付き合ってもらえるかな? 君ならいい感想が聞けそうだ」

「あっ、僕基本的に苦いの嫌いなんで」

「何とっ!? 苦さの美味さを理解できないとは。今時の少年は全く嘆かわしい」

「そんな事より何なんだ、お前は? いきなり私達の間に入ってきて、何のつもりだ」

 

 カガリが視線鋭く、警戒を露わにして声を挙げた。

 アフメドはケバブの事もあって同様に視線鋭くなっており、キラもまた何者かと疑うくらいの感触が見て取れる。

 平然とケバブを口にしながら会話をしているのはタケルぐらいである。

 

「ケバブを好む同士としては動かずにはいられなかったんだ。許してくれたまえ。

 ところで、凄い荷物だね? パーティーでもやるの?」

「そちらが主催で開いてくれるなら喜んで伺いますよ?」

「ほぅ、それじゃ開いてみようかな──早速、この後にでも?」

「催しものは何ですか? 僕としてはカガリを加えて美少女コンテストなんてどうかと思いますが」

「良いねぇ、そちらのお嬢さんは光るものがある。だが私の周りでは流石に美女はいても美少女は居ないかな? お嬢ちゃん、美女枠で出てみる?」

「ば、ばばバカな事を言うな! 絶対出ないからな!!」

「あれま、残念。それじゃあ──」

 

 小気味よく続いていた会話が途切れた。

 視界の隅で閃いた光。そして僅かに聞こえた鈍く響く音。

 

「伏せろ!」

「伏せて!」

 

 男がテーブルを蹴り上げ、タケルが座っていた椅子を蹴り飛ばすのは同時であった。

 向かいの建物の屋上から放たれたロケット弾。タケルが蹴り上げた椅子がそれを防ぎ、男が蹴り上げたテーブルが盾となって爆風と衝撃から彼らの身を守る。

 

「カガリ、無事!?」

「あ、あぁ、だがアフメド達は──」

「キラ!」

「こっちも大丈夫!」

 

 全員の無事が把握できたところで、タケルは懐に忍ばせていた銃を今度こそ本当に取り出した。

 そこへ、先程テーブルを蹴り上げた男も寄って来る。

 

「死ね、コーディネーター!!」

 

 響き渡った怒声に、カガリは襲撃者の正体を察する。

 

「まさか、ブルーコスモスか!?」

「無事かね君達。それにしてもこんな街中で派手な連中だよ全く……」

「全く、巻き込まれたこっちは良い迷惑ですよ……とりあえず、この際隠し事は無しですよ虎さん。右からお願いします」

「あれま、やっぱり気づかれちゃってたか……じゃあ、左を頼もうか、奇妙なパイロット君」

「──? それじゃ、行きますよ。いち、にの……」

 

 テーブルを盾に背中合わせでタイミングを計る、タケルと男──否、アンドリュー・バルトフェルド。

 

「「さんっ!!」」

 

 直後、タケルはテーブルの左から俊足で飛び出し、バルトフェルドは右側から身を乗り出して応戦を始める。

 

 周囲のテーブルを踏み台に跳躍し、タケルは数を把握しながらトリガーを引いた。

 

「(屋上に1人。駆け込んでくるのが4人……この開けた場所での襲撃なら、別方向からも……)」

 

 1人を撃ち抜きながら視線を巡らす。その間にバルトフェルドの方でも屋上の1人を片付けていた。

 この鉄火場へと向かってくる集団を見止めて、タケルは一瞬血の気が引くが、すぐにその懸念を排した。

 

「(増援……違う、援軍か!)」

 

 彼等が銃口も向ける先がタケル達が狙う先と一致していた。

 

「隊長!」

「構わん、全員排除しろ!」

 

 バルトフェルドの声がその証左であった。

 次々と残る襲撃者も撃ち抜かれていく。

 

 そんな最中、店の背後の路地裏から新手が出てきたことに、タケルもバルトフェルドも気が付かなかった。

 唯一それに気が付けたのは、キラ・ヤマトのみ。

 

「はっ!?」

「お、おいお前。何を!!」

 

 先程爆散した椅子の破片を手に取ると、キラは駆け出した。

 射線を躱す様に1転2転と切り返す。

 そして、破片を全力で件の襲撃者に投げつけた。

 バルトフェルドを狙っていた銃を強かに弾いた事で一瞬の隙が生まれ、その間にキラは距離を詰めていた。

 キラに軍人としての経験はない。出来ることは一つだった。

 その類稀なる身体能力を生かしたスピードでの体当たりである。

 

「ぐっこのガキ!」

「キラっ!」

 

 声を聞き取ったタケルがすかさず狙いすましてトリガーを引く。

 適格に眉間を射抜いた射撃。キラの目の前で命があっさりと消え去った。

 

 

 それが、最後の1人であった。

 状況が終わり、沈黙が辺りを包んだ。

 バルトフェルドの元へと副官のダコスタが駆け寄ってくると、それに倣う様に他数名のザフト兵が集う。

 

「隊長、御無事でしたか!」

「そう慌てるなダコスタ君。この通りピンピンしている。まぁ、彼等がいなかったら、危なかったかもしれないがね」

 

 そういって、タケル達へと向き直ったバルトフェルドは、帽子とサングラスを外した。

 その姿に、アフメドは驚愕で目を見開いた。

 

「お前は……アンドリュー・バルトフェルド!!」

「──砂漠の、虎?」

 

 

 平和な街で、キラは初めて敵と相対した。

 

 

 




カガリは渡さん。そんなお話
妹離れができない兄である。
あと、「ヤマト少ー少年」のシーンのナタルさんが可愛すぎて5回見直す。そんなお話

感想よろしくお願いします。

あと作者はヨーグルトソース派です(戦争不可避


読者の皆様元気がでる感想をお願いします。
楽しみの声がいただけると作者頑張れますので、何卒

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