機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-39 無情の決戦

 

 

 背後を取られたアークエンジェルを守る為、スカイグラスパーに乗って出撃したカガリ。

 ハッチから飛び出したと同時に、火砲が飛び交う戦場に一瞬だが呑まれるも、すぐに戦闘ヘリ部隊を捕捉してそれらを縫うように回避。

 

「6時の方向、敵艦──あれか!」

 

 センサーが拾う戦況を把握して操縦桿を操ると、スカイグラスパーは戦闘機らしくその高い速力で一気にヘンリーカーターへと向かう。

 

「支援機がもう1機? 隊長!」

「あちらもまだ戦力を隠し持っていたか! やられる前に艦を墜とせ!」

 

 

「レセップス艦上にデュエルとバスターを確認! バスターからの側的照準、来ます!」

「スラスター全開! 上昇してゴットフリートの射線を取って!」

「やっています! しかし、船体が何かに引っかかって……」

 

 ザフト側はスカイグラスパーの出現を確認。

 アークエンジェルも、デュエルとバスターを確認しそれぞれ動く。

 移り変わっていく戦況の中、キラのストライクはバルトフェルドのラゴウと激戦を繰り広げていた。

 

「今日はなかなか冷静だな」

「くっ、バクゥよりもずっと早い!」

 

 放たれるビームライフルが掠りもしない。

 キラは高速で動き回り接近してくるラゴウに対して、ライフルによる戦闘を諦めビームサーベルを抜いた。

 バルトフェルドもまた、ラゴウの口元に備えられたビームサーベルを出力させ、すれ違いざまの攻撃を敢行。

 

 汎用機とは言え十分な機動力をもつエールストライクと、無限軌道で砂漠では圧倒的な機動力を誇るラゴウが、互いに向かい合い距離を詰めていく。

 

 ぶつかり合う直前、ストライクは跳躍。ラゴウの背を飛び超えて攻撃を加えようとした。

 だがバルトフェルドはその動きを先日の戦闘でも見ている。

 ストライクの動きを読んでいたラゴウもまた、ラゴウの背を狙って跳躍したストライクの直上を取っていた。

 

「なっ!?」

「読み合いは、私の勝ちだ!」

 

 4脚をフルに活用したラゴウのケリがストライクを地上へと吹き飛ばし砂上へと叩きつける。

 更にそこへ数は少ないが備えられたミサイルを一斉射。

 即座に動き出そうとするストライクの機先を制して、次々と爆発が襲う。

 

「ぐっぁあああ!!」

 

 揺れるコクピット内で必死に耐えるキラ。

 視界の端で、PS装甲に回されたエネルギーの消費でゲージが次々と消えていく。

 エールのスラスターを全開。その場から逃れて距離を取った。

 

「動きが読まれていた──僕の動きが単純なのか」

 

 キラはその才覚故に、高い反射能力や適応力でこれまで戦ってきているが、それでも彼は元が民間人。

 戦闘訓練を受けた軍人ではない。戦闘における読み合いや駆け引きに強いであろうはずがない。

 

 砂漠に降りてきた日も含めて都合3度目となる戦場での邂逅は、バルトフェルドにとって動きを読めるに足る回数なのであった。

 

「だったら!」

 

 シールドを構えストライクはラゴウのビーム砲を警戒しながら突撃。

 バルトフェルドも、応ずる様に再び向かって行く。

 

「破れかぶれか、だがその程度では──なに!?」

 

 互いがぶつかり合うギリギリ。まさに交錯するその刹那。

 バルトフェルドが衝突を避けたその瞬間を狙い、キラはその驚異的な反応速度にものを言わせて、僅かに機体の機動を逸らし返した。

 相手の動きを見てからの反応。それにより隙を見出しビームサーベルを振るう。

 ラゴウの背面にあるビーム砲が切り落とされた。

 

「後出しでその反応とはね……とんでもない奴だよ彼も」

「また、嬉しそうな声をしちゃって」

「真っ直ぐな奴は、嫌いじゃないんでね」

「素直に好きとは言わないのね」

「僕は逆に真っ直ぐじゃないから」

 

 アイシャは、聞こえる嬉しそうな声の分だけ、バルトフェルドが悲しみを湛えている気がした。

 

「できる……僕もまだ、負けてはいない」

「行くわよ、アンディ」

「あぁ、ケリがつくまでな」

 

 悲しき戦いは、熱砂と共に熱を増していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でぇええい!」

 

 気合い一閃。戦闘機でありながら、ソードストライカーを装備したカガリのスカイグラスパー2号機は、シュベルトゲーベルを展開しすれ違いざまにヘンリーカーターの砲門を切り落としていく。

 

 砲門を減らせばアークエンジェルへの脅威が減る。

 ムウの様に大出力の火砲を備えていない以上、艦を撃破ではなく武装を狙う選択ができるあたり、初陣でありながらカガリは冷静に戦えているとみられた。

 

『よし、嬢ちゃん。十分な戦果だ。一旦艦の方へ戻れ!』

「なっ!? なんでだ! 私はまだまだやれる!」

『慌てるな、帰投しろってんじゃない。アークエンジェルの底部に何かが引っかかって動けないようなんだ。助けに行ってくれ! 生憎こっちはレセップスの相手で手一杯だ!』

「なにっ! わかった!」

 

 戦艦は巨大だ。動けなければ本当に良い的にしかならない。

 事態の重さを理解して、カガリは直ぐにスカイグラスパーを翻した。

 

 

 

 

「これで、終わり!!」

 

 戦場を駆けていたバクゥの5機目。キラが2機を墜とし今タケルが3機目を墜とし、これでザフト側の地上戦力は壊滅。

 タケルは暴れ馬のジン・アストレイにようやく慣れてきた感触を得ながら、僅かばかり息を吐く。

 

 状況を把握。アークエンジェルの対応にカガリが動き、ムウはレセップスへの牽制に飛び回っている。

 キラは、恐らくはバルトフェルドが乗っているであろう隊長機と戦闘中。

 となれば、キラの援護に行くべきか……

 そう思った次の瞬間である。

 

「くっ、砲撃!?」

 

 ジン・アストレイの近くに着弾するビームによる砲撃。振動に揺れるコクピットの中、タケルはセンサーが拾う情報を確認した。

 

 センサーと同時に光学カメラが拾う映像。

 そこにはこちらへと向かってくるデュエルと、超高インパルス狙撃砲を構えるバスターがいた。

 

「デュエルとバスター……レセップスから降りてきたのか!」

「ディアッカ、ちゃんと当てろ!」

「うるさい! 減衰率も照準のズレもひでえんだよ!」

 

 動きを止めていたところを狙撃砲で狙われていた。

 命拾いをした事を認識して、タケルは一際気を引き締めた。

 

「ジャカジャカと砂漠を走って向かってくるとはね。デュエルと、バスター……か」

 

 バスターを見て、一瞬胸が痛むのを感じながらもタケルはその感情を卸しきる。

 終わった事だ。終わらせた事なのだ。

 あれは……自らの責であり、バスターのせいではない。

 そう言い聞かせ、湧きあがる感情を抑え込む。

 今ここで戦うのは、自らの罪の清算の為ではない。

 今ここで戦うのは、自らが守りたい者達の為。

 

「それでも……」

 

 タケルはジン・アストレイのスラスターを吹かして、向かってくるデュエルではなくバスターへと狙いを定めた。

 卸しきった感情とは別に、砲戦仕様のバスターの脅威は結局の所見過ごせない。

 

「戦術的に、君を狙うのは仕方ない事だ!」

「なっ!?」

「やっぱり俺かよぉ!!」

 

 眼前をバスター目掛けて全速力で通り過ぎていくジン・アストレイ。

 振り上げた拳の下ろす先を見失ったデュエル。

 そして、いまだ砂漠の熱対流でビームの照準がずれるバスター。

 ディアッカ・エルスマンはやはり、タケル・アマノにとって目の仇となる。

 

「くっそぉ、こっちだってお前の接近は想定済みなんだよ!」

 

 レセップス艦上にいる間は狙撃砲がメインだったバスターはここに来て一気にミサイルポッドからの一斉射で弾幕を張る。

 近づかせなければやりようはある。そう思っての弾幕であったが、タケルとて、その対応は想定済み。

 爆裂的なスラスター噴射でバックフリップ。

 スラスターによって砂を巻き上げると同時に、更にジンの装備であったマシンガンを砂漠へ掃射。立ち上る砂の壁を盾としてミサイルを防ぐ。

 

「(昨日カガリのシミュレーションの為にキラの戦闘記録も閲覧しておいて良かった)」

「お前は本当にいつもいつも何なんだそりゃ!?」

 

 ディアッカの嘆きがタケルに届くことはないが、目に見えて動きに精彩さが欠けたバスターへと再び突撃し、アストレイから移植したビームサーベルを抜く。

 

「今度こそ仕留める!」

「そっちがそう来るならこっちだってやってやる!」

 

 接近してきたジン・アストレイに対し、分離したガンランチャーと収束火線ライフルで、その前面の砂漠を射抜くバスター。

 ジン・アストレイとは比べるべくもない火力の攻撃が砂漠を爆発させ、ジン・アストレイの行く手を遮った。

 

「くっ、見事にやり返された。しかも足まで止められ──」

「この俺を、無視するな!!」

「くそっ、追いつかれたか!」

 

 背後よりジン・アストレイはデュエルに急襲される。

 ビームサーベルとシールドをどちらも構え、バスターを捨て置いて対峙することをタケルは余儀なくされた。

 

「この至近距離なら援護射撃もしにくいはずだけど──PS装甲、ずるいなぁ」

 

 バスターがデュエルごとミサイルで攻撃してもデュエルは無事だろう。

 味方諸共など普通はしないだろうが、PS装甲持ちであればそれが選択肢に入ってくる。

 タケルはバスターの援護射撃も気にしながら戦わなくてはならなかった。

 

「ディアッカ、手を出すなよ! こいつは俺がやる!」

「好きにしろったく。そう言うくらいならしっかり前で抑えてくれって話なんだよ」

 

 そんなタケルの懸念など露知らず、1対1にこだわるイザークと、余計な手出しをすればイザークもジン・アストレイも何するかわからないと、手が出せないディアッカ。

 

 デュエルに集中しきれないタケルによって、戦闘は膠着状態へと突入していった。

 

 

 

 

 

 

 身動きが取れないアークエンジェル。

 それを囲むように、戦闘ヘリや戦闘車両が次々とアークエンジェルへと襲い掛かっていく。

 明けの砂漠の面々も、必死にそれを迎撃するが元々正規軍とでは数も質も違う。

 迎撃が追い付かないのが現状であった。

 

「アフメド、艦の真下にまわりこめ!」

「了解だ!」

 

 サイーブの指示に従い車両を走らせるアフメド。

 工場区跡地に残された建物の残骸が邪魔をして高度を取れないアークエンジェルを助けに行く気であった。

 

「だめだ、俺達の武装ではどうにもならん!」

「どうするんだサイーブ!」

「反転離脱だ。こっちが危険になる!」

 

 アフメドとサイーブはアークエンジェルの援護を断念。

 そこへカガリが乗るスカイグラスパーが到着する。

 

「アークエンジェル……あれか!」

 

 すぐさま問題の場所を見つけると、カガリは一度目標地点を定めて大きく旋回。

 

「アークエンジェル、今から問題の場所へミサイルを撃ち込んで爆発させる。衝撃に備えろ!」

『カガリさん!? この状況でやれるの!』

 

 周囲は戦闘ヘリの部隊が囲んでいる。

 カガリの思惑がわかれば、ザフトとてその妨害に動くだろう。

 敵の攻撃を回避しながら狙ったところへとミサイルを撃ち込む技量が問われた。

 だが、やらなければアークエンジェルはじわじわと攻撃を受けて沈む。

 カガリは固唾をのんで空を駆けた。

 

「行くぞ。しっかりつかまってろよ!」

『底部イーゲルシュテルン撃ち方やめ! 総員衝撃に備えろ!』

 

 ナタルの指示が飛ぶと同時に、スカイグラスパーは地面とアークエンジェルの底部の狭い隙間へと突入していく。

 

「あの戦闘機でどうにかしようってのか!?」

「サイーブ! 戦闘機を狙ってるのが!」

「させるかよぉ!!」

 

 横槍を入れようとする敵機に対して、サイーブとアフメドがロケット砲を放ち迎撃。

 その存在を知らせた2人が攻撃に見舞われるも、開かれた血路を突き進み、スカイグラスパーは対艦用のミサイルを発射。

 大きな爆発と共に、アークエンジェルが捕らわれていた建物を爆散させる。

 

「くっ……艦の姿勢、制御可能! いけます!」

「面舵60! ナタル!」

「ゴットフリート照準。てぇー!」

 

 飛翔と同時に溜まっていた鬱憤を晴らすかのような射撃。

 巨大なビームがレセップスに突き刺さり、大きな爆発を起こす。

 

「レセップスが!?」

「ちっ、足つきの野郎!」

 

 タケルと戦闘中だったイザークとディアッカも戦況の変化に驚く。

 

「まずいわ、アンディ!」

「くそっ、あれだけの攻撃でもまだ墜ちんのか!?」

 

 バルトフェルドもまた、自由になったアークエンジェルの脅威。そして母艦であるレセップスの事実上の大破に表情を歪めた。

 

 バクゥも全て撃破され、MS部隊はバルトフェルドのみ。

 ピートリーもヘンリーカーターも動けはするが既に武装の大半を失い戦闘能力は半減。

 戦闘車両とヘリは多少残っているが、それだけでアークエンジェルを堕とせるはずもない。

 

 戦闘はザフト側の完敗であった。

 

 

「状況報告!」

「第4、第9区画消失! 第3区画大破!」

「火災発生、機関及び振動モーター停止!」

 

 レセップスでオペレーターから報告を受けたダコスタは、その内容に打つ手がない事を悟る。

 

「くそっ!」

『ダコスタ君』

「は、はい!」

 

 そんな中、神妙な表情が映し出されるバルトフェルドの通信。

 その先に続く言葉を、ダコスタは言われずともわかっていた。

 

『退艦命令をだせ。勝敗は決した』

「隊長……もうしわけ」

『相手が上手だっただけの話だ。それに、そのセリフは隊長である私のセリフだ。責任能力の逸脱は感心せんぞ、ダコスタ』

「──はい」

『残存兵をまとめてバナディーヤへ引き上げろ。ジブラルタルと連絡を取れ』

「隊長!」

『以上だ』

 

 一方的に切られる通信に名残惜しさを感じてる暇もなく、ダコスタは最後の命令に服して指示を飛ばした。

 

 指示を出し終わり、動き出したクルーを見届けてから、ダコスタは暗くなった通信画面へと静かに敬礼をする。

 

 

 

 ジン・アストレイと激戦を繰り広げていたイザークとディアッカも状況の推移を知り、やるせない気持ちと共に怒りをあらわにしていた。

 

「くそっ、また足つきに良い様にやられてたまるか!」

「今からでも遅くはない。俺がここから墜として──

『こらこら、ここの指揮官は私だぞ』

「バルトフェルド隊長!」

『ジュール君に、エルスマン君も良く戦ってくれた。君達はクルーゼ隊だ……撤退してジブラルタルへと帰投したまえ』

「しかしっ!」

『こんなところで無駄に命を捨てるもんじゃない。僕はクルーゼは嫌いだが、君達の様な若者は嫌いじゃないんでね』

『やっぱり、好きとは言わないのね』

『アイシャ、そこは御愛嬌だろう』

『ふふふ、そうかしら?』

 

 軽いやり取りに、イザークとディアッカは覚悟を感じた。できるのであれば共に戦いたい。

 だが軍人である以上、上官からの命令は絶対。

 2人にバルトフェルドの命令を無視して戦い続ける事は出来なかった。

 

「──了解しました」

「帰投します。御武運を」

『うむ。君達と一緒に戦えて良かったよ』

 

 通信越しに、最後の敬礼を返して、イザークとディアッカもまた撤退していく。

 

 

 

 戦場に残るのは、彼等だけだった。

 

「さて、アイシャ……」

「嫌よ」

「まだ何も言ってないだろう?」

「死んだ方がマシ」

「話を半分くらい飛ばさないでくれるかね?」

 

 真面目な話をしようと思ったのに、とバルトフェルドは残念そうな表情へと変わった。

 彼にとっての最も大切な人。彼女との最後のやり取りだというのに、ペースを握られっぱなしで面白くはなかった。

 

「あの少年みたいな事はしないでくれ」

「その方がアンディも嬉しいかと思って」

「彼は彼、君は君だ……あーだが」

 

 言い淀むバルトフェルドに、アイシャは訝しむ。

 言い残したいことがまとまらないのだろうか……そんなアイシャの疑問は次のバルトフェルドの言葉に裏切られる。

 

「やはり、君は脱出してくれ」

「アンディ?」

 

 先程までそんな雰囲気ではなかったというのに、手のひらを反す様なバルトフェルドの雰囲気と言葉がアイシャを惑わせた。

 

「どういうつもり?」

「あの少年達に君まで討たせたくはない。彼等の事だ……私達を討てばその重荷を背負うだろう。君には生きて、いずれは彼等を許し、彼等とわかりあって欲しいと思ってね」

「アンディを討たれて、私が彼等とわかりあえると思う?」

「僕を想えばこそ。僕の代わりに、彼等とわかりあって欲しいんだよ」

 

 拠って立つ陣営が決めた戦いの定め。

 だがそれを外れたのなら、わかりあっても良いだろう。

 先日の様に笑い合っても良いだろう。

 

 軍人として生きているバルトフェルドには、ここで生きようとも死のうともそれが叶う事はないが、彼女であれば……そんな道が許されて欲しい。

 

 

 それが彼女を愛するバルトフェルドの願いであり、彼女に望む未来は、バルトフェルド自身が望んだ未来であった。

 

 ここで死ぬ自分の、正しく代わりとして……彼女に生きて欲しかったのである。

 

 

「それが、アンディの望みなのね?」

「君への願いであり、私の望みだ」

 

 死んだ方がマシ。アイシャはずっとそう思っていた。

 だが、バルトフェルドはアイシャが生き残る事を望み、アイシャが彼の代わりに生きる事を望んだ。

 彼が死しても尚、彼の為に生きる事ができる。

 そう考えた時、固まっていた決心は解きほぐされた。

 彼の願いであり望みなら、その為に生きても良いと思えた。

 だから──

 

「わかったわ、アンディ」

「すまないね。君を少しだけ悲しませてしまう」

「少しだけ、ね。さよならは言わないわ」

「あぁ、私は常に君の側にいるさ」

 

 簡単なやり取りの別れであった。

 複座式のラゴウから脱出装置によってアイシャが離れていき、バルトフェルドは眼前のストライクを見やる。

 

 

「待たせてしまったかな?」

『バルトフェルドさん。やっぱり降伏はしてくれないんですね』

「あぁ……これは軍人としてのけじめだ」

 

 脳裏に過る、大切な部下たちの顔。

 最初の戦闘で5人。その次に2人。そして今日この日も、10や20で下らない数の部下が死んでいる。

 大切な部下たちであった。部隊配属から長い期間を共に過ごした、正に同胞と呼べる者達。

 いくら戦争だからと……敵同士だからと免罪符を張ろうが、バルトフェルドはもうキラやタケル達とわかりあえることは無いと思えた。

 

 彼等とまた、くだらない事で語り合いたい。

 その願いを、他ならぬバルトフェルド自身が否定していた。

 アイシャへの願いは、そんな彼の捨てきれない想いだったのかもしれない。

 

 

 

 機体の限界を絞り出し、ラゴウを加速させる。

 既に機体各部の負荷は限界状態。次々とセンサー類がレッドゾーンに降り切れていく中、バルトフェルドはストライクだけを見据えていた。

 

 キラは、それをバルトフェルドの死への覚悟と受け取った。

 

 “いつか分かり合えると思ってる”

 

 “でもそれは今じゃない”

 

 “今は、戦う時”

 

 脳裏に起こされるタケルの言葉。

 バルトフェルドの覚悟と、タケルの言葉が、迷うキラの背中を僅かながら後押しする。

 

 向かい来るラゴウ。

 ビームライフルを撃とうとしたがエラー音と同時にエネルギーが切れフェイズシフトがダウンする。

 

 キラはエールストライカーをパージし身軽になったストライクにアーマーシュナイダーを手に取らせ走らせた。

 

 射程距離──ラゴウがストライクへと飛び掛かる。

 ストライクはそれを屈んでラゴウの真下へと潜り込むと、逆手に持ったアーマーシュナイダーでラゴウの喉元から腹部にあたる部分までを切り裂いた。

 

 すれ違う2機。

 ラゴウは、着地と同時に砂地へと崩れ落ちた瞬間、爆発した。

 

 

 

 

「どうしてだよ……なんで……」

 

 ストライクのコクピットで、キラは少しだけ痛む胸を押さえながら、コクピットのコンソールへ拳を叩きつける。

 わかりあえるなら、なんで投降してくれないのか。

 なぜ、無為に命を捨てようとするのか。

 先日の明けの砂漠を助けた時と同じであった。

 

 その行いで、一体何が守れるのか、キラには理解できなかった。

 理解できない分だけ、キラにはやり場のない思いだけが募った。

 

 

「なんでなんだぁああ!」

 

 

 消えてく命に、キラは悲しみの咆哮をあげることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 選択の理由。それは本人だけの不可侵域

 どれだけ想いを募らせても、たどり着けるはずのない答えに、少年たちは迷う

 新たな地へと向かう先、新たな敵との邂逅は、少年たちにどのような決意をもたらすのか

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED

 

 『紅に燃える海』

 

 揺れる水面、切り裂け、ガンダム! 

 




いかがでしたか

第1部宇宙編 主人公メインな戦い
第2部砂漠編 キラがメインの戦い

と言う感じで描かれております。

原作よりも戦う事に疲れておらず、追い込まれてもいない。
それ故に、戦う意味と無意味さを感じ始めている。そんな感じ

あと魅力的なお姉さん生存ルートです。ご都合ごめんなさい

感想よろしくお願いします。

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