機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-5 ヘリオポリス崩壊

 

 

 

 発進したキラとタケルは直ぐに別れ、キラはアークエンジェルの上に。タケルは半無重力空間となったヘリオポリスの空で、一気に飛翔してジンへと接近していく。

 

「そぉらくらえ!」

 

 ミゲルが乗るジンが持つ大型ビーム砲が火を噴く。

 とっさに躱すものの、ビームは背後にあったコロニーを支える巨大なケーブルを潰してしまう。

 

「くっ、この威力……アークエンジェルを堕とすために拠点破壊用の高火力装備を持ち出してきたな」

 

 流石に対ビームコーティングを施しているシールドとはいえ、これ程の高火力ビームを防ぎきれはしない。

 取り回しが悪い大型ビーム砲は命中率が悪いだろうが、回避すればコロニーが被害を受ける。

 

「狡い事を考える」

 

 アークエンジェルもまた、ヘリオポリスのダメージを考えて殆どの艦載砲を封じられている。

 対して相手はアークエンジェルを堕とすために、コロニーなどお構いなしに大型兵装を持ち込んできているのだ。

 進化した新たな人類が聞いて呆れると、タケルは冷めた目でジンを射抜いた。

 

 次射に入ろうとするジンを補足して即座にビームライフルを放つ。

 予想外だったのだろう。ミゲルのジンはビーム砲をキレイに射抜かれ慌てて捨てた。

 

「何だと? アイツ、まさか正確に武装を狙ったのか……」

「不測の事態かい? 動きを止めるとは……ッ?!」

 

 センサーの察知に反射的に回避するアストレイ。

 見れば、イージスがビームライフルを放ってきていた。

 

「こいつが、オノールのジンを破壊した例の……」

「イージス……新型だとしても、機体への慣熟は足りないはず」

 

 瞬時にタケルは思考を回した。

 ジンの1機はメイン武装を破壊した。他の携行火器でアークエンジェルを堕とすには、対空砲火を潜り抜けピンポイントで艦橋でも破壊しない限り無理だろう。

 PS装甲の無いジンでそれは至難の業だ。

 もう一機のジンもメインの火器は見る限り巨大なミサイルが4基。アークエンジェルの弾幕用兵装で迎撃は十分に見込める。

 PS装甲を持つストライクなら、ジンの武装との相性は最良であるし、後顧の憂いは無くなると言って良い。

 

 ならば、ここでイージスを抑えるが最善。

 

 タケルはジンからイージスへと標的を変えてアストレイのスラスターを全開にした。

 迎撃に放たれるビームライフルをシールドでいなしながら、一気に接近戦へと持ち込んでいく。

 肩にマウントしたビームサーベルを抜くと、イージスへと切りかかった。

 対するアスランもイージスの腕に仕込まれたサーベルを出力。タケルのアストレイを迎え撃つ。

 互いのサーベルがぶつかり合い、ビームの干渉がスパークを起こした。

 

「ここで仕留めさせてもらうよ!」

「こいつ! いきなり!」

 

 競り合う中でタケルはアストレイの姿勢を緻密に制御。押し合いを往なし、受け流してイージスの背後を取った。

 

「なっ!?」

「もらった!」

「アスラン!!」

 

 イージスを仕留めようとサーベルを翻したところで、横合いよりミゲルが乗るジンの突撃を受けて吹き飛ぶアストレイ。

 地表へと落ちていくアストレイを見ながら、ミゲルは通信を開いた。

 

「甘く見過ぎだアスラン! あの機体とパイロット……情報にはないが、簡単じゃないぞ!」

「すまないミゲル。機体性能に胡坐をかいて侮っていた」

「お前はオノールとあっちに回れ。奴は俺が抑える」

「何を言うんだ。あの機体、少なくともジンよりは……」

「メインの武装がお釈迦になってるんだ。俺があっちに行っても何もできないからな……忘れるな、優先するのは戦艦の方だ」

「くっ、わかった……死ぬなよ」

「誰にもの言ってんだヒヨッコが!」

 

 悪態に背中を押されアスランがアークエンジェルへと向かった。

 残ったミゲルは、体勢を立て直しこちらへと再び舞い戻ってくるアストレイを見据える。

 

「勝手に戦力外扱いとは頂けねえ。お前の相手はこの俺だ!」

 

 マウントされた重斬刀を手にして、アストレイを迎え撃つべくジンも突撃していく。

 

 

 戦闘は、まだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

「対MS戦闘用意!」

「イーゲルシュテルン起動。その他兵装は準備だけをして待機。フラガ大尉、なんとしても敵機を退けてください」

「無茶言うなよ、俺はMA乗りだぜ!」

「大尉の経験則を頼ります!」

 

 マリューの声を合図にナタルが戦闘準備を進める。

 CICに乗るムウへの無茶振りは彼女らしくない冗談なのか、それとも冷静に考えた上での本気なのかわからないが言われたムウもモニターを見ながら作業を進めた。

 

「ストライクのバイタルは常にチェックを。民間人で初の実戦よ。異常があったらすぐに戻して!」

「艦長、それでは艦の防衛が──」

「アマノ二尉もいます。ザフトはこの艦とストライクの両方を狙うでしょう。どちらも失えません」

「──了解しました」

 

 

 

 アークエンジェルの艦上で身構えているキラは、周囲の状況をセンサーで拾いながら、心を落ち着けて待ち続けていた。

 飛び出した勢いそのままに敵機へと戦闘に入ったタケルのアストレイの状況も確認しつつ、他の敵機が近づいてきたら今度は自分の番だと覚悟を決めていた。

 

 コクピット内に警告音が鳴り響く。

 センサーが接近する機体を拾ったのだ。

 巨大なミサイルを装備したジンと……新型機のイージスであった。

 

 戦う覚悟はしていた。だが、いきなりイージスかとキラは1人表情を歪めるも、先のタケルの戦闘がキラの勇気を後押しする。

 イージスは攻撃行動に入らず、こちらをうかがっている気がした。

 

 フットペダルを踏んで、キラのストライクは何かに引き寄せられるようにイージスへ向かって飛翔する。

 背に負う実体剣シュベルトゲベールを構えたストライクは、そのまま突撃していった。

 

「この感じ、やはり」

 

 だが対するアスランはストライクの構えに攻撃の意思を感じられず、一つの確信へと至る。

 

「やはり君か。キラ……キラ・ヤマト」

「やっぱり、そうだったんだね……アスラン・ザラ!」

 

 ストライクとイージスがすれ違う。

 キラ・ヤマトとアスラン・ザラはヘリオポリスの空で、久方ぶりの再会を果たした。

 

 

 

 

 

 アストレイのコクピット内でタケルは冷や汗を流していた。

 

 まただ……さっきから目の前のジンの動きが格段に良くなってきている。

 機体の性能を、機体の運動性を余すことなく発揮しているような、そんな変化だった。

 

 先の一撃で右足の駆動部に異常をきたしている今、万全じゃないアストレイで目の前のジンを仕留めるのはなかなかに難しくなる。

 

 距離を取ってビームライフルを放つが、ジンはまるで機体を躍らせる様に躱して見せた。

 機体の重量と重心を理解した綺麗な回避だった。

 スラスター任せの雑な回避ではない。

 

「さっきの射撃は見事だったぜ。だが、コロニーの被害を考えて武装を先に狙ったのは間違いだったな!」

 

 武装が破壊された事での重量の軽減もあるが、何よりタケルがイージスとの戦いで見せた動き。

 ミゲルはMSがただの機動兵器ではなく人の形に近い、“人型機動兵器”だと改めて理解した。

 

 機体の重量、機体の重心を把握すればより人に近い動きが可能なのだと。

 そこに気づいたとして、戦闘中にそれをモノにするのは天性の才能だろう。

 目の前でタケルがアストレイによる手本を見せているのもあるがそれにしても、驚異的な学習速度だった。

 

 まずい……イージスがアークエンジェルに向かってからここで足止めをされ続けている。これ以上の時間を取られるわけにはいかなかった。

 

「次で仕留める」

 

 ひっそりと吐き出された冷たい声のままに、タケルはアストレイを動かした。

 ビームライフル片手に突撃。チャージも施されエネルギーが充填されていく。

 

 接近しながらの射撃で来る気か? ミゲルは回避行動を念頭に重斬刀を構えた。

 だが──

 

「撃ってこないだと」

 

 疑問符を浮かべた時にはもう遅かった。

 後退して距離を取りながらの回避を考えていたミゲルは、かなりの距離まで接近されそのままアストレイにライフルを投げつけられたのだ。

 反射的に、投げつけられたライフルを重斬刀で両断する。

 十分にエネルギーを蓄えていたライフルは、ジンの至近で大きく爆発を起こした。

 

「ちぃ、小賢しいまねを!」

 

 爆煙を逃れ、回避したところをサーベルで切りかかってくるのだろう。

 そうはさせるかと警戒して機体を動かそうとした時にはもう遅かった。

 

「がっ!? なん、だとぉ!?」

 

 強烈な衝撃がジンとミゲルを襲う。

 なんとアストレイはライフルの投擲と併せてスラスターを全開。爆煙を目くらましにして、爆発後の一瞬の隙を突くようにシールドごと体当たりをしたのだ。

 MS一機の質量が最大戦速で突撃した衝撃の凄まじさ。もはや語る必要もないだろう。

 ジンの装甲はひしゃげ、内部フレームもガタガタ。

 正面から受け止めたために、スラスターは生きていたが、それだけだった。

 猛烈な勢いで地表へと吹き飛ばされるジンを捨て置いて、タケルとアストレイはアークエンジェルへと向かっていく。

 

 ミゲルの心をどす黒い感情に染め上げたまま……

 

 

 

 

 

「ストライク、イージスと交戦に入りました!」

「援護射撃の用意を」

「了解。スレッジハマー装填。バリアントと併せてストライクからイージスを引き離す」

「オーライ!」

 

 システムがイージスをロックする中、ストライクとイージスは、どこか惑う様に互いの機体を行き来させては小さなぶつかり合いを見せていた。

 

「キラ! 君がなぜ地球軍にいる!」

「君こそ何でザフトに何か……なんで戦争なんかしてるんだ! 戦争なんて嫌だって君も言ってたじゃないか!」

 

 キラの言葉に、アスランは昔の記憶がよぎる。

 ユニウスセブンの悲劇。失われた母の命と、復讐を誓う父の姿。

 平和で穏やかだった生活が戦争に染め上げられたのは、あの悲劇のせいであった。

 

「連合が……ナチュラルがこんなものを作るから!」

「ヘリオポリスは中立だ! 僕だって……それなのになんで!」

「キラ!!」

「タケル!?」

「もう大丈夫だからアークエンジェルの防御に!」

「で、でも……うん、わかった!」

 

 まだ聞きたいことは山ほどあったが、それよりも優先するべきことがある。

 キラは、親友への想いを押し殺し、友人達を守る任務に戻る。

 

「ミゲルは……やられたのか!? くっ、貴様!」

「今度こそ仕留めるぞ、イージス!」

 

 再びサーベルをぶつけ合う二機。

 

「答えろ! キラが……なんで地球軍に!!」

「接触回線? 戦闘中に何を!!」

 

 モビルスーツが至近距離にいる時、様々な電波が飛び交う中で、極短距離でのみ繋げられる接触回線によって、アスランからの声を受けたタケルは効く耳持たないと距離を引き離した。

 

「答えろよ……一体キラに……何をした!!」

 

 イージスが変形する。

 Xシリーズにおいて唯一、イージスはMAへの可変機構を搭載した機体である。

 そしてその変形によって解禁されるのが──

 

「巨大なビーム砲? くっまずい!?」

 

 大口径の複相列ビーム砲“スキュラ”である。

 その気になれば戦艦ですら頭から足までぶち抜くような、超高出力のビーム砲だ。

 エネルギー消費が激しく乱発こそできないが、アグニ同様コロニー内で使うような兵装ではない。

 

 受け止められるような代物ではなく、タケルはアストレイに回避起動させるが、すぐさまビームの軌道を追う。

 コロニーを支える重要なシャフトへの直撃コースであった。

 

「しまった!? シールドを失ってでも防御しておけば……くっ」

 

 後悔に塗れるが不運は続く。

 アークエンジェルの護衛に回ったキラとストライクが、ミサイルを積んだオノールのジンを撃墜。

 シュベルトゲーベルで真っ二つにされた拍子に、巨大なミサイルが暴発し、シャフトへ追撃を与えたのだ。

 

「オノールが!? くっそぉお!!」

 

 イージスが再びMS形態となってアストレイに向かおうとするが、それを止める大きな振動と地響きが発生してくる。

 

 シャフトを破壊されたヘリオポリスが、崩壊を始めていた。

 

 豊かに再現された自然を伴う大地が割れていく。

 崩壊の異常事態に、ヘリオポリスの安全システムが避難民を抱えた脱出艇を一斉に射出。

 この判断がされたという事は、ヘリオポリスの崩壊はもう止められないという事である。

 

 亀裂と共にエアーが抜け、コロニー内の気圧は一気に低下。

 気流に流されるように、オノールのジンを討ったストライクも、地表で横たわるミゲルのジンも、そしてにらみ合うイージスとアストレイも。すべてが宇宙へと放り出されていく。

 

 

 戦火に焼かれ、ヘリオポリスは完全に崩壊してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 失われたもの。それは当たり前の時間と信じていた未来。

 戻らぬものの大きさを、虚空に散る大地に知った時、少年達は何に向かおうとするのか。

 止まらない──無情に迫る現実は彼らを追い立て。

 開くゲートの先に広がる戦いの闇は果てしなく暗く、深い。

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED

 

 『止まらない世界』

 

 その闇を、切り裂いて開け! ガンダム! 

 




いかがでしたか。

ぶっちゃけますが、戦闘シーン難しすぎて困る。
この先の更に人数増えるやつとか考えたくもないですね。
というか、機体名で書くかキャラ名で書くかすごくゴチャります。
心情表現にはいるとキャラ名が入るし、動きが入ると機体も入るしで……

感想、よろしくお願いします
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