プラント国防委員会本部は、現在大きな混乱の途にあった。
満を辞して発動されたオペレーション・スピットブレイク。
その結末が、失敗で終わったためである。
降下した部隊の大凡6割が通信を途絶。同様にカーペンタリアから出撃した部隊もその多くが通信を断ち撃墜されたと思われている。
また軌道上では、アラスカ基地から膨大な熱量と光を感知したという。
何が起こったのか。その仔細がわからないまま、ただ曖昧な数字と憶測が飛び交い、真偽の程に苦労しながら情報分析に追われていた。
そんな中へ、カーペンタリアより特命を受け帰還したアスランとミゲル。
アスランはストライク撃破の功績を認められて、ザフト特務隊FAITHへと配属。
ミゲルもまた、その高いパイロット能力を買われて最新鋭機の受領。そのまま国防委員会直属の部隊へと転属となった。
そんな2人もまた、目の前の慌ただしい惨状に状況がわからず怪訝な表情を浮かべていた。
「一体全体何なんだこりゃ。薄らと聞くにスピットブレイクの話っぽいが」
「どうしたんでしょう。こんなに騒ぎになってるなんて」
誰かに聞こうにも、誰も彼もが忙しなく動き回っていた。
どうするかと立ち往生していた2人だが、アスランは視界の中に見知った顔を見つける。
「ユウキ隊長!」
「──アスラン・ザラ。どうしたんだこんな所で」
アスランの声に振り返るのはレイ・ユウキ。特務隊FAITHの隊長であり、今後はアスランの直属上司ともなる。
アスランにとっては嘗て同期と切磋琢磨した訓練校時代の教官でもある。
「地球から戻ってきたばかりなのですが、ユウキ隊長……この騒ぎは一体?」
アスランとミゲルの元へと歩み寄ってきたユウキは、アスランの問いに少し声を潜める様にして答えた。
「スピットブレイクが、どうやら失敗したらしい」
「えぇ!?」
「そいつは、本当何ですか?」
予想外の事実に、2人は驚きを隠せず声を上げてしまう。
無論この騒がしい場では特に目立つ様なことはなかったが、努めて2人は気持ちを落ち着けるように一息ついた。
「詳しいことはまだ判明していない。だが一部の情報には全滅の報告もある」
「そんな」
「一体何がどうしてそんな事になるってんだ? 地球軍の新兵器かぁ」
全滅という言葉に、気持ちが重くなる。
スピットブレイクは今までに類を見ない大規模作戦であった。
その作戦で、参戦部隊の全滅……全滅が言葉通りであるのか、作戦行動上の全滅に該当するかで少し意味合いは変わってくるが、それでも失われた仲間の命は決して小さい数字ではない。
戦況を、大きく変える事になる予感がした。
「アスラン」
「はい」
アスランを呼ぶと、ユウキは少し屈んでアスランの耳元へと身を寄せる。
同行しているミゲルに聞かれないための配慮だろうと考え、ミゲルは一歩下がった。
「君にはもう一つ悪いニュースになるが……極秘開発されていた最新鋭の機体が1機。何者かに奪取された────その手引きをしたとされるのがラクス・クラインだという事で、国防委員会は更に混乱している」
ユウキの言葉に、先のスピットブレイク以上の衝撃を受けてアスランは思わず手に持っていた荷物を取り落としてしまう。
呆然と、焦点の定まらない視線が彷徨い、今聞いた事を脳内で反芻する。
「ラクスが……そんな……まさか……どうして」
あの、戦争とは無縁な無垢な笑顔を浮かべる少女。
箱入り娘で世間を知らず、だが時折鋭い視線と言葉を見せた彼女が。
プラントを裏切る様な行為に加担していた。
あり得ない。そう思わずにはいられない事実である。
驚愕に顔を染めるアスランの胸中を察したか、ユウキはアスランの肩に一度手を置いてからその場を離れていった。
「おい、アスラン。聞いちゃまずいなら聞かないが、大丈夫か?」
「あ……あぁ。大丈夫、だ」
事情を聞かないでくれるミゲルの気遣いに感謝しながら、アスランは何とか荷物を拾って立ち上がった。
「すまないミゲル。ありがとう」
「何がだよ」
「いや、なんて言うかミゲルが傍にいてくれると助かることが多いなって思って」
「何言ってんだヒヨッコが。後輩を助けてやるのは、先輩の勤めだろうが。まぁ、そんな先輩様を追い抜いて特務隊になるんだ。しっかりやれよ、アスラン」
そう言ってミゲルはアスランへと背を向けた。
特務隊となるアスランはこれから国防委員会を動かす父の元へと向かい指示を受ける事になる。
ミゲルはこのまま所属する部隊へと向かう手筈になっている。
頼れる先輩がついてきてくれるのもここまでであった。
「死ぬなよミゲル。あと、これまでありがとう」
「お前の方こそ死ぬなよアスラン。俺よりよっぽど危なっかしいんだからよ」
こうして、これまで共に戦ってきたザラ隊は名実共に解散となる。
スピットブレイクの失敗。ラクス・クラインの反逆行為。
これらはきっと、大きなきっかけとなる。
戦争は……今後の情勢はこれまでよりもずっと混迷を極めていくだろう。
見知った仲間達はもう傍にはいない。
特務隊となったアスランは今や、指揮官となるか単独での特務に当たるかである。
胸中に沸いた小さな寂しさを押し殺して、アスランは父が待つ執務室へと向かうのだった。
「大丈夫ですか。しっかりして下さい!」
目の前で横たわるパイロットに、キラは必死に呼びかけた。
あの時、サイクロプスが発動してから。
ギリギリの所で間に合わず、マイクロ波によって破壊されかけたジンを見つけたキラは、まさに手を伸ばしてジンを捕らえ、そしてサイクロプスの範囲外まで脱出した。
しかし、そうして逃げ切れてはみても、コクピットから連れ出した彼が満身創痍だということは一目でわかった。
あと数秒──機体が破壊される前に手を伸ばしていれば間に合ったかもしれない。
後悔が、キラの胸に募る。
「君が、あのMSの……パイロットか?」
「はい」
虫の息の中、彼はキラへと問いかける。
「何で、助けたんだ」
「そうしたかったからです」
地球軍なのになぜ助けてくれたのか。そういう問いだとわかる。
そしてキラの答えはシンプルに過ぎる。
ただ、命を目の前で失わせるのが我慢できない。ただ、それだけ。
誰かのためではない。何かのためではない。
ただ、自分が我慢できずそうしたかっただけ。
「そうか。そのまま死んだ方が……呆気なかっただろう……な……」
そのまま、彼の瞳からは光が消えていく。
息を引き取った。救い切れなかった事実に、キラは怒りを覚える。
これもまた、戦争だから。地球軍が悪いのだからと言って片付けられるのだろう。
彼の命が失われた意味。それが、次なる憎しみを生む原動力となるであろうことに、嫌な気持ちを抑え切れなかった。
キラは湧き上がる憤りをどうにか抑えて、待人がいる方へと振り返る。
サイクロプスから辛くも逃れ、着地してきたアークエンジェルの姿があった。
艦内クルー達は一様に歩いてくるキラの姿を、信じられないものを見るかのように見つめている。
マリューを先頭にして、キラを待ち構えていた。
「間に合ってよかったです……本当に」
「本当に、キラ君なのね?」
「──はい」
静かに淡々と答えたキラ。
ちゃんと受け答えできるその様子に、ようやく現実味を帯びてきたのか。
感極まったミリアリアを皮切りに、クルー達が次々と駆け寄っていく。
「キラっ! 良かった!」
「お前、よく無事で」
「本当に、幽霊じゃないんだよな」
次々とかけられる声に答えながら、キラは少し離れた所で遠巻きに見ている友人達を見つける。
「サイ、カズイ」
「良く、生きててくれた」
「本当に、良かった。生きててくれて嬉しいよ」
「うん……ごめんね。それと、ありがとう」
騒ぐでもなく淡々としたやりとりだが、心底からくる安堵と嬉しさが2人の声音から感じられる。
それだけで、どれ程悲しい思いをさせたのかがよくわかる。キラにはただ、謝罪と感謝の言葉しか紡ぐことはできなかった。
互いに言いたいことはたくさんあるけど、こうして顔を突き合わせると言葉が出てこない。
そんな何とも言えない空気がむず痒くて、キラは2人から視線を逸らしてマリューへと向き直る。
「お話ししなきゃいけないことがたくさんありますね」
「そう、ね」
「僕も、お聞きしたいことがたくさんあります」
「キラは、ザフトにいたのか?」
「はい」
少し鋭い声音で問いかけてくるムウに、キラは真っ直ぐ見つめ返して答える。
「ですが僕は、ザフトではありません。そしてもう、地球軍でもないです」
僅かに、マリューもムウも。そして周りにいたクルー達も息を呑む
今の発言はいわば勝手に軍を抜けると宣言した様なものだ。
生半で吐ける台詞ではない。
「どういう意味かは、わかってるんだよな?」
「はい、わかっています」
キラの迷いのない答えを聞いて、ムウはマリューと視線を交わした。
一先ず話をしなければならないだろう。
どの道、今はアークエンジェルも損傷で動けないし、動いた所で、今すぐどこに行こうという場所も考えつかない。
ある意味、話し合う時間はたっぷりあった。
「わかりました。一先ず、艦の方でゆっくりと話をしましょう。お互いにね────あの機体はどうすれば良いかしら?」
フリーダムを見上げながら、マリューは問いかけた。
見るからに高性能。最新鋭機であることは先の戦闘で如実に見せつけていた。
間違いなくザフトが開発した機体だろう。
どの様に扱っていいか、マリューの一存では決められない。
「補給や整備の事を行っているのでしたら、今の所不要です。損傷も受けていませんし、あれにはNジャマーキャンセラーが搭載されていますから」
「なっ!?」
「Nジャマーキャンセラーだと!?」
一様に驚きの声が上がる。
Nジャマー……地中深くに埋め込まれた核分裂抑制機能をもつ装置である。
そしてNジャマーキャンセラーとはそれを無力化、つまりはNジャマーの影響を受ける事なく核分裂反応を制御できるということだ。
この地球において使用が不可能となっている、核エネルギーをフリーダムは動力としているという事である。
「お前、そんなものをどこで」
「データを取りたいというのなら、僕はお断りしてこの場を離れます。奪おうというのなら、敵対してでも守ります。それが、あれを託された僕の責任です」
あの内気なはずの少年が見せる強い言葉。
背負う責任と覚悟をそこに見て、マリュー達は息を呑んだ。
Nジャマーの無力化。そしてそれによる核動力搭載機──そんなものが地球軍に露見したら今の地球軍は嬉々として核兵器を持ち出すだろう。
目には目を。核兵器には核兵器を。
そして、そうなればプラントもまた同様に次なる手段を講じる。
その先は──戦略兵器の撃ち合いという、互いを滅ぼす終末戦争へと至る。
フリーダムは、そのトリガーとなり得るのだ。
「──わかりました。機体には一切手を触れない、これを約束します。マードック曹長、整備班には厳命とそれから格納庫の監視をお願いします」
「あいさぁ、艦長」
「ありがとうございます」
マリューの号令に、頷くとクルー達にも特に反感の様子はなく、快く受け入れてもらえることわかる。
キラはそれに僅かだが安堵し、マリュー達と共にアークエンジェルへと乗り込んでいくのだった。
「失礼します」
敬礼と共に、アスランは入室する。
ここはプラント国防委員長の執務室。
同時に現在は、最高評議会議長の執務室でもある。
「使用されたのはサイクロプスの様です。基地地下にかなりの規模で……」
「アイリーン・カナーバ以下数名の議員が、事態の説明を求めて……」
数名の報告をまとめて聞きながら、それぞれにパトリックは対応を急がせる。
そうしてようやく部屋から人がはけたところで、パトリックは疲れたのか執務室の椅子に崩れる様に座った。
「はぁ……」
ぐったりと言った様子が相応しいだろうか。
先の報告のやりとりを聞いてみても、恐らく父の立場はかなり危うい状況だとアスランは察した。
オペレーション・スピットブレイクの失敗。その事態の説明を求め穏健派の議員が臨時の議会を要請しているという。
国防委員長として、スピットブレイク失敗による戦況の立て直しも考えなきゃいけない時に、穏健派の議員とのやりとりまでせっつかれるとあっては、疲れるのも当然だろう。
そして、アスランにとっては未だ信じられない、ラクス・クラインの件。
聞き及んでいた最新鋭機の奪取だけに止まらず、スピットブレイクの情報漏洩にも関わってる可能性がある。それが今目の前で行われていたやりとりからわかった。
信じたくはない。だが、現実としてこれ程までにプラントは混乱の極みに陥っている。
そんなことがあるはずないと、感情のままに断じることはアスランにはできなかった。
「父上……」
「何だそれは」
息子として、疲れた様子を見せる父への心配の念が表へ出てしまい、公務中の父を父と呼んでしまった。
途端に、鋭い声でパトリックはアスランを睨みつけた。
「失礼しました。ザラ議長閣下!」
「状況は認識したな?」
「はい……ですが、私には信じられません。ラクスが、スパイの手引きをしたなんて……」
アスランの言葉に、パトリックは小さくため息を吐きながら端末を操作して、執務室のモニターに映像を出力した。
工廠の、フリーダムが置かれていた格納庫の映像である。
そこには遠目からでもわかるピンクの髪の少女が映っていた。
「工廠のカメラの記録だ。フリーダムの奪取はこの直後に行われた。証拠が無ければ、誰が彼女に嫌疑をかけるものか。お前が何と言おうが、これは現実であり事実だ」
「し、しかし」
「ラクス・クラインは既にお前の婚約者ではない。まだ非公開だが、国家反逆罪の逃亡犯だ。特務隊となったお前は、奪取されたX10Aフリーダムの奪還と、そのパイロット及び接触したと思われる人物、施設、その全ての排除にあたれ。
工廠でX09Aジャスティスを受領し、準備が済み次第任務にあたれ。奪還が不可能な場合は、フリーダムは完全に破壊しろ!」
一息に任務を告げたパトリックだが、アスランは疑問符を浮かべた。
奪還はわかる、だがその他人物や設備への排除指令の意図がつかめない。
「接触した人物、施設までも排除とは一体……l
パトリックは再びモニターに映像を出力する。
今度はMSの図面。今名前が上がったフリーダムとジャスティスのものである。
そしてそこには、Nジャマーキャンセラーの文字があった。
「父上、これは!」
「わかっただろう。この2機にはNジャマーキャンセラーが搭載されている」
「何故ですか、プラントは全ての核を放棄すると!」
「勝つために必要となったのだ。あのエネルギーが……お前の任務は重大だぞ。心してかかれ!」
アスランにそう告げると退室を促して、パトリックは次なる対応に追われ通信端末と向き合った。
アスランは、父の様子とここまでに見聞きした様々な状況に、言い知れぬ危機感を覚えながらパトリックの執務室を出て行く。
退室すれば、未だスピットブレイクのことで大騒ぎの状態が続いていた。
中には罵声や怒声の様な声も聞こえ、どうしても刺々しい雰囲気が否めない。
父や国防委員会に蔓延する、戦争に取り憑かれた様な空気がどうしてもアスランの気持ちを重く苦しいものにさせるのであった。
アークエンジェルの艦橋にて。
キラはマリュー達から事の経緯を聞かされた。
「それが……作戦だったんですね」
「恐らくはな。司令部がもぬけの殻だったのを俺はみている」
「私達とユーラシアの部隊には、何も知らされずに、ね」
「あれだけの規模のサイクロプスだ。ザフトの攻撃がパナマではなくアラスカだと、本部は早くから知ってたんだろうよ。じゃなきゃあんなもん用意できるわけがない」
それが有効なら味方ですら使い捨てる。
確かに戦闘損失を考えれば合理的ではあるのだろう。
数で勝り質で劣る地球軍が、ザフトに大きな打撃を与えるのなら、今回の様に味方を囮に誘引し自爆するのは有効なら戦略だ。
同数の被害であれば実質地球群の勝利といえる。
“我々はザラに欺かれた! 発動したスピットブレイクの目標はパナマではない、アラスカだ! ”
プラントも同じである。
味方を騙して、より有効に戦いを進めようとして。
そして誰かが裏切り、情報を流していたのだ。
「プラントもそうでした。プラントも、勝つために味方でも騙して」
「そう、なのね」
「プラントも連合も、勝つためにどんどんおかしくなってきています──そんな中で、僕達は。マリューさん達は何と戦わなければいけないと思いますか?」
何と──戦うか。
マリューもムウも、その他その場にいたクルーも皆考えた。
信じた軍服に裏切られた。今やアークエンジェルは敵前逃亡という重罪を犯した艦。
戻れば査問会などと生温い、軍法会議ものである。
今の連合上層部の腐敗を考えれば、先の戦闘による被害の責任をもなすりつけてくるだろう。
銃殺刑が確定している様な状態であった。
とても、これまでの様に地球軍として戦う様な気にはなれない。
「私たちは何と……何のために戦ってきたんでしょうね」
「そして、これから何を信じて戦えば良いのか、だな」
マリューとムウの言葉に、一同沈黙した。
誰も答えが出なかった。
考えても考えても、失った戦う理由を埋めるものは見つからず、その場はお開きとなった。
「オーブへ、ですか?」
艦長室で、マリューとムウは一先ずどうするべきかと話し合う。
戦う理由を失ったとは言え、マリューには艦長としてクルーの命を預かる責任がある。
今後のことは未だどうして良いか見えないが、少なくともこの場に居て良いことはない。
パナマから部隊の偵察でも来たら、逃げる事は叶わないだろう。
ムウが提案してくるオーブへの寄港は、今取れる唯一の安全策だと言える。
「事情を話せば、オーブは受け入れてくれるだろう」
「アマノ二尉や、カガリさんに間に入ってもらえれば、話もつきやすいかも知れませんしね」
「正直、軍に戻る気にはなれないしな」
「銃殺刑は確定している様なものですから」
ヘリオポリスからこれまで、激動をくぐり抜けてきたというのに。
偏に、地球軍のため軍務を全うしてきたというのに。
報われないものだと、マリューは小さく自嘲した。
「そんな顔するなって。むしろ俺達は早々に知れて、その上生き残れたんだからラッキーだろう? 向こうにいたらまたどこで使い捨てられるか、わかったもんじゃないしな」
「前向きですね、少佐。私はそこまで楽には受け止めきれませんよ」
「そりゃそうだろうけどさ……」
艦長として、皆の拠り所であり皆の戦う理由のまとめ役であるからこその苦労だろう。
こんな時、ナタルが居れば理路整然と今後のことも上手くまとめてくれて、マリューはそこに少し付け足す様な程度で良かったのだが。
生憎と今ここに彼女はいない。
「彼女なら、こんな時なんて言うかしらね?」
「彼女? あぁ、副長の事ね」
「どうすると思います、少佐?」
「うーん、そうだなぁ」
ひとしきり唸り考える素振りを見せるムウ。
同時にマリューも脳内で、よく知る彼女の対応を想像してみた。
「あー、色々と対策込みで上層部に腐敗を正すとか言って噛みつきに行きそうだな」
「ふっ、ふふふ。私も同じ様な事を思いました」
「あーやっぱり?」
「道理に合わない事は許せない質ですものね」
「査問会でも、凄かったしな」
「あぁ、帰ってきてくれないかしらね」
「無茶言いなさんな。副長が転属命令を俺みたいに蹴って戻ってくるわけないだろう」
「そんな変わり者は少佐ぐらいですものね」
「あらきっつー。傷ついちゃうぜ」
「嘘おっしゃいな」
いつの間にやら、軽い空気と軽いやりとりに変化していき、マリューは胸の内で静かにムウへと感謝した。
一杯一杯となってしまってるマリューを、いつも気持ちの面で緩めてくれるのが彼であった。
引き絞めてくれるナタルと、緩めてくれるムウ。
困窮した状況もそうしてどうにか乗り越えてきた。
色々とあって、とにかく精神的に参ってきている今のマリューには本当に助かる存在であった。
いつのまにか、マリューの口元には小さな笑みがこぼれていた。
アニメ見直してて思ったけど、父上って呼ばれてオコなパトリックがどうしても小物感強いと思う。
なんかあのシーンのせいで議長になった優越感というか、立場への固執が滲み出てきて、、、
あの「なんだ、それは?」ってセリフ絶対いらない気がします。
それはさておき。
感想を何卒、よろしくお願いします。