[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

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覚吾さんって二親揃っていたら絶対にキー坊に声掛けられるキャラじゃないと思ってます。


日下部覚吾、お母さんと会う

 かつては世界中を回り、血と硝煙と振るった拳で上がる悲鳴を聞いた。

 今はかつての弟子達と共に一件の店を構え、油と湯気と奮った麺で上がる感謝の声を聞いている。

 私の名は“日下部覚吾”訳あって今はラーメン屋“幽玄”の店主だ。

 今、私の目の前にはある意味で珍しい客人が来ている。 それは……

 

「ぷはーっ! 久しぶりの一人飲み、美味しい!」

「チャーシューお待ち…良い飲みっぷりですね」

「あ、あら…ごめんなさい覚吾さん 久しぶりに家族みんなが家にいないからお邪魔させて貰ったのにお恥ずかしい所をお見せして…」

「いえ、お気になさらず しかしお酒に強いですね それもやはり、人より耐性が強いウマ娘故ですか?」

 

 そう、彼女はウマ娘であり、今世間を賑わせている“怪物”オグリキャップの母親だ。そして…

 

「いえいえ、弱い子は本当に弱かったりしますが、私は嗜む程度ですよ でも…静虎さんは中々付き合ってくれなくて、結婚したての頃は金時さんが秘蔵のお酒を振る舞ってくれたんです」

 

 そして彼女は灘神影流の先代当主、宮沢静虎の妻であり…

 

「熹一も最近の母の日には『おかん、飲み過ぎたらアカンぞっ!』って小さいけど高いお酒をプレゼントしてくれたんですよ」

 

 現当主の宮沢熹一…私と私が愛した女性(ひと)である喜恵さんとの間にできた息子の義母だった。

 

「…それは、良かった しかし貴女も二人の母とは思えない程若々しい オグリさんから昔は競技者だったと聞きましたがそのお蔭ですか?」

「いえ、競技者と言っても私は早くに膝の不調を抱えてしまったのでそのまま…それが子供の頃のオグリにも引き継いでしまったのか、苦労をかけてしまって…」

「しかし、貴女と静虎さんの按摩で今は思い通りに走れる脚になったとオグリさんは笑って言っていましたよ」

「…あの子がそう言ってくれるのがせめてもの救いです 熹一も昔からオグリを支えてくれて、血は繋がらなくても本当の兄妹として、あの二人は仲良くやっている…それが私には一番嬉しい」

 

 『血が繋がらなくても』

 この言葉に私の心は重さを増し、目の前が僅かばかり暗くなり始めた時───

 

「覚吾さんのお蔭なんですよ 熹一の優しさを形作ったのは静虎さんだけれど、あの子が静虎さんの優しさを受け入れられる器を作ってくれたのは覚吾さんと喜恵さん、二人のお蔭なんです」

 

 一瞬で、目の前が晴れた気がした。 

 

「小さい頃から苦労続きだったオグリと熹一、お互いが支え合ってこれた理由に…恩人の一人に改めて感謝をと思って、今日は来ました」

 

 そう言って一礼する彼女に私は……

 

「私は…熹一(あの子)が生まれているのを知っておきながら、自分が父親である事を名乗りもせず…ただ、貴女達夫婦やオグリと楽しそうに笑う熹一を眺めるしか出来なかった男なんです」

 

 情け無い言葉を吐く事しか、出来なかった。

 

「しかも私は貴女達が愛してくれていた熹一と本気の立ち会いまで…」

「ウマ娘と違って男…取り分け“格闘家”は殴り合いでしか分かり合えないのには『本当に不器用な人達なんだな』とは常々思ってますよ 静虎さんとの時も気が気じゃありませんでしたし」

「それは、本当に申し訳ない……我々のような人種は走りで物事の優劣を決められない物で…」

「だから、私もオグリもあの時は信じて見守りました 熹一が覚吾さんを超える強い男になってくれるんだって」

 

 その言葉に私は上を向き、年甲斐も無く溢れ出しそうになる涙を堪えながら理解した。

 この女性(ひと)に育てられた熹一に破れたのは必然であり、同じく育てられたオグリの走りに私が救われていたのもまた、必然であったのだと。

 

「覚吾さんもまだ気にしているのかなと思って…はいっ! コレで水に流しましょう」

「これは…」

 

そう言って彼女が来店時から提げていた鞄から取り出したのは小振りながらも上等な酒だった

 

「喜一からの…“母の日のプレゼント”です 『おとんも飲まんし、おかんが誰かに振る舞ったれや』ですって」

「そう…だったんですか」

「父の日が終わったら静虎さんも多分来ると思うので、その時は今度こそ喧嘩しないでくださいね?」

「はい…その時は是非、男二人で話し合いたいと思います」

「ええ…あら、いけない! 閉店間際だからって持ち込みしちゃいましたけど大丈夫でしたか?」

「は…はははっ! 構いませんよ では、早速開けましょうか」

 

 娘であるオグリキャップを思い出させる、少しだけ間の抜けた反応に私は久しぶりに、本当に久しぶりに笑い声を上げて彼女からの酒を受け取った。

 

「なぁ、春草 宮沢静虎ってヤツは良い嫁さん見つけたんだな」

「ああ、あれ程の良い女は中々お目に掛かれないだろうな 大観…男は“ああいう女”にモテてこそだぜ」

「大蛇よぉ…オグリが勝つ度にやってる“食べ放題パーティー”だが、食材をさらに奮発しなきゃならなくなっちまったじゃねぇか」

「鼬、そんな事は気にするな…真の母の愛を見せて貰った礼と思えばいい しかし、金城はこんな時に出掛けてるとは運の無いヤツだ」

 

 

オマケの宮沢家

同時刻 都内 某焼き肉店

 

「キー坊、肉が良い感じだ ひっくり返すぞ」

「おうっ! 秘技、十連返しじゃい!!」

「熹一、野菜が足りひんぞ もっと注文せい」

「おとんは草食系気取っとらんと、もっと肉食えや」

「いや二人とも、バランスが大事なんだぞ?(山盛りの焼き肉と焼き野菜)」

「お、おうっ」

「せ、せやな…」

「……お母さん、『今日は一人で行くから』って言ってたけど、大丈夫かな?」

「あぁ、それなら心配あらへんわ」

「せや、熹一の言う通りや」

「「我が家で最強なのは、お袋(おかん)やからな」」

「うん、それもそうだったな」




意地でもオグリを入れたいという衝動に駆られたオマケでした。
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