[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

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はーっ 鬼龍よっ たまには良い目に会えっ!


オグリと悪魔を越えた悪魔おにぎりおじさん

───多分、私とってはこれが初めてなのだろう。

 

「おい、オグリ ここからは草木が更に多くなる 虫に気を付けろよ」

「大丈夫だ鬼龍おじさん 合宿ではよく森の近くに行くからな、お父さんお手製の虫除けはいつも持ち歩いているんだ」

 

 目の前にいる叔父、“宮沢鬼龍”と本当の意味で二人きりになったのは。

 今朝の事になる。 日課のランニング中に偶然鬼龍おじさんを見つけたのだが、この人には珍しい疲れ切った顔をしていたので心配になりつい、声を掛けてしまった。

 するといきなり……

 

『ドライブに付き合ってくれ』

 

と、誘われてしまったのだ。

 私としては別に誘いを断る理由も無かったし、早速おじさんの持つ高そうなスポーツカーに乗り込んだのだが、するとあれよあれよという間にランニングをしていた市街地があっさりと過ぎ去って行き、辺りを見回しても林しかない田舎道へと連れて来られた。

 そうして到着した森林地帯を私は着の身着のままのジャージ姿でおじさんと共に歩いている、というのが現状だ。

 

「フンっ静虎(アイツ)のお手製とは…年頃の娘に与えるんだから匂いはちゃんと大丈夫なんだろうな?」

「ああ、そこはお母さんとキー坊が口を酸っぱくして言っていたから大丈夫だと思う 私は別に気にしないんだが…」

「ウマ娘というのは鼻が良いからな、同性の集まりでわざわざ少数派(マイノリティ)になる必要などない」

「……My海苔?」

 

 鬼龍おじさんは頭がいい。

 たまに私が分からない言い回しで喋る時があるが、すぐに意味を教えてくれる。

 

「ああ、“仲間はずれ”という事だ」

 

 ほらな。

 

「しかし…お前は危機意識が無いのか? 俺のいきなりの誘いに即答して周りがほぼ木しかない、こんな場所に連れて来られたんだぞ」

「家族にはおじさんの車に乗る前に連絡したから問題ない いや…ずっと着信やメールが届いてたのが怖かったけど、“ここ”に来たら電波が悪いのかすっかり途絶えてしまったな」

「この場所は『昔ながらの風習を尊ぶ、霊験あらたかなる聖地』らしいからな 神を愚弄する俺からすれば文明に取り残された、ただの田舎にしか過ぎん」

「…でも私は好きだな、ここ たまにお父さんや由美子おばさん、尊鷹おじさんが教えてくれる、ダムに沈んだ“故郷(ふるさと)”ってこんな感じだったのかな?」

 

 そうだ…この場所に居ると何故か落ち着く。

 宮沢家の人達が教えてくれた今は無き“故郷(ふるさと)”…行った事の無い私にもそう感じられる程にきっと、ここにはその雰囲気が残っているのだろう。

 

「……ふんっ “アイツ等”揃いも揃ってお前に感傷を語るとはな…あんな田舎での思い出など、碌な物じゃ無かっただろうに」

「だったら、鬼龍おじさんは何故この場所に私を連れて来たんだ?」

 

 私はそう言って鬼龍おじさんの目を真っ直ぐに見る。

 そうすると普段は皮肉や悪態ばかりしか付かないおじさんの口から素直だと思える言葉が聞ける事は、今までの経験で分かっていたからだ。

 

「……都会に居ると煩わしい物ばかりが目に付く事がある “敵を作ったほうが人生退屈せずに済む”が俺の生き方だが、それでも疲れる時はあるんでな たまには…敵の居ない所で休みたいと思っただけだ」

「そうか なら私はおじさんの敵じゃないから大丈夫だって事なんだな?」

 

 ハッキリ言うと、私の家族は鬼龍(この人)が持ち込んで来るトラブルのあまりの多さに辟易し、姿を見かければ敬遠している所があるのだが…私自身は不思議とこの人の事が嫌いではない。

 おじさんが私達に向ける親愛は間違い無く本物であると常に感じてはいるし、悪い人ながらも悪い人なりの“純粋に生きようとしている姿”に、好感すら持っているくらいだ。

 …それを家族(みんな)に言ったら『鬼龍、許さん!!』という空気になってしまったので二度と言うつもりは無いけれど。

 

「……まぁ、お前は純粋(バ鹿)だからな 俺の傍に居る事を特別に許してやってるのさ」

「むっ! バ鹿とは失礼だぞ、おじさん」

 

 すっかりいつもの鬼龍おじさんに戻ってしまった事に私が頬を膨らせていると、いつのまにか開いた道に出たようで目の前には……

 

「田んぼが、広がっているな」

「作り方も今時、機械を使わない手作業とはご苦労な事だな…何だ? てっきり、一面の田畑に腹でも鳴らすのかと思ったら違うようだな?」

「おじさん、流石にそれは私をバ鹿にし過ぎだ……」

 

 またしても飛んで来た悪態に私が文句でも言ってやろうとおじさんの方を向くと……

 

「…ん? どうした、オグリ?」

 

 今まで見た事が無いくらい優しい表情をした“宮沢鬼龍”が、そこに居た。

 

「…やっぱり、鬼龍おじさんとお父さんは双子なんだな 今、そっくりな表情(かお)をしてるぞ」

「……フンっ! 下らない事を言うなオグリ! 虫酸が走るっ!!」

 

 まずい…私の言葉でおじさんの機嫌を損なってしまった…どうすべきか考えていると、すぐに救いの(?)主が現れた。

 

「オグリ…? あんらぁ~“オグリキャップ”かい!?」

「う、うん そうだが…」

「アタシら、アンタん活躍テレビで見とってね! 会えるなんて運が良いよぉ! ほらぁ皆、“オグリキャップ”がここに来てっぞぉ!」

 

 どうやら私とおじさんとの会話で農作業中のお母さま方に気付かれてしまい、私達は取り囲まれる事となってしまったのだ。

 

「なんよぉ ほんに、真っ白でかわいい(めんこい)ねぇ(ナデナデ」

「ど、どうも…」

「お、おいオグリ…見つかったのはお前だろう 何で俺まで取り囲まれてるんだ」

「こっちも良い男よぉ ホレこの胸板、カッチカチねぇ!」

「はうっ ま、待て! オグリ、何とかしろ!!」

 

 年齢を感じさせない圧倒的な力強さに、私とおじさんは為す術もなくもみくちゃにされてしまった。

 米農家の人達って凄いんだな…。

 

「……おじさん、大丈夫か?」

「……あ、当たり前だ 俺を誰だと思ってる」

「あれまぁ…ごめんねぇ お詫びになるか分からんけど、私らが作った米で何かご馳走してやっから」

「だ、だったら…“おかかのおにぎり”を頼む そこに居る私のおじさんの好物だと昔、聞いたんだ」

「そうかい! アンタ、いっぱい食べんのは知ってるからねぇ 用意するから待ってなよ」

「…尊鷹か由美子あたりが喋ったのか ふんっ…生憎、今の俺の好みは鰹節から白トリュフをたっぷりとふりかけたキャビアに変わったんだよ 残念だったな」

「この山奥で用意できるわけないだろ 昔の好物でガマンしてくれ、鬼龍おじさん」

 

 

 こうして本日、私たちはお母さま方が丹精込めて作ったお米で握られた色々なおにぎりを堪能し、再び“自分たちの戦うべき場所”へと帰っていったのだった。

 ちなみに、家に帰ったら家族(みんな)にとても怒られて、少しだけ…ションボリした。

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