[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
人は、ウマ娘は生きるために食べるのではない、己が目の前に出された料理に感謝し、其処にある幸せを享受して己の力と為す、故に食べるのだ。
今現在、積みあがる皿を生み出している彼女にとっての“食事”とはそういうものであった。
「モグモグモグモグ……ゴクンッ)うん…パリパリの皮がとても美味しかったな 北京ダックをおかわりだ」
「くぅ~っ! いつ見てもオグリちゃんの食いっぷりは気持ちが良いなっ! うちの道場生にも見習って欲しい位だぜっ!」
「うちのエクササイズ部門にもウマ娘の子はいるけれど、オグリちゃん程の食欲の持ち主はお目に掛かれないからね 払いは俺が持つからいくらでも食べてくれよ」
「“ヨッちゃん”も“クロちゃん”も相変わらずオグリには砂糖菓子のように甘いのぉ……そんな事言うたらコイツ調子に乗ってこの店の食材全部食ってまうぞ?」
「何言ってんだ、キー坊 オグリちゃんに一番甘いのはお前だろ?」
「フッ…それはそうだろう キー坊が喧嘩三昧に明け暮れてた時も、いつも後ろを付いて来た可愛い妹なんだからな」
「キー坊は昔から自分より強そうな人を見かけたら喧嘩を売っていたんだ それを止めるのは家族である私の役目だからな」
「…あの頃は帰ってから
「「ほらな?」」
「うんっ! 学生の頃は喧嘩ばかりだったキー坊だけど、昔から変わらず優しいのは知ってるよ」
「アホゥ…二人ともワシをイジる為にお前に話を振っとんじゃい 律儀に付き合ったる必要ないやろ……」
事の起こりはオグリキャップのトレーナー、北原穣の希望で宮沢熹一の戦友との食事会が企画されたのだが、呼び出された“人喰い義生”こと高石義生と“灘心陽流当主”、黒田光秀の二人がセッティングした中華料理店へ向かうと、其処には何故か何故かオグリキャップと彼女の友人であるベルノライトも来ており、理由を尋ねると『オグリちゃんの近況も知りたかったから』と言われ、そのまま食事会が始まったのだった。
そして現在会話に入れていない北原とベルノはというと……
「(うぉおおおっ! マジで生の“人喰い義生”じゃねーか! 身体のあちこちから覗く傷の多さが半端ねぇ! 後でサイン貰えるかな…?)」
「(な、何で私がこんな所に…!? オグリちゃんが『友達とご飯を食べに行くから一緒に来ないか?』って誘われたから付いて行ったけど、お兄さんや北原トレーナーはともかく明らかに只物じゃない二人組と会っちゃうし、訳分かんないよ……)」
違う意味で言葉を失っていた…。
「ベルノちゃん、悪いの うちの
「い、いえっ!? お気遣い無く……」
「ったく、ヨッちゃんの所為やぞ? 年頃の娘っ子にそんな凶悪な筋肉見せつけおってからに…早よ、しまえや」
「お、おうっ! ベルノちゃん、だっけ? 悪いな…すぐになんか着るからよ……」
「す、すいません! 着る前に筋肉で刺さった刃物を抜くって技…見せて貰って良いですか!?」
「キタハラはいきなり何を言ってるんだ? あんなのヨッちゃんが痛そうなだけで何も面白くなかったぞ」
「オグリ! お前、見たのか!! どんな感じで抜いてた!?」
「…なぁキー坊、オグリちゃんのトレーナーさん……ひょっとしてヤバい人なのか?」
「いやクロちゃん、ワシもようけ知らんのやけど…オグリが信頼しとるならまぁエエかな、みたいな」
「わ、私もあんな北原トレーナーの姿は初めて見たので……意外な一面を見ました」
「そうなんだ…それにしてもベルノちゃん、俺達が考え無しにオグリちゃんを誘ったから今日は来る事になっちゃったけど、大丈夫?」
「はいっ、お話しされてる皆さんの空気がとっても柔らかかったのでようやく慣れて来ました」
「そら良かったわ 何やかんやでワシ等のような格闘家とベルノちゃん達のようなアスリートじゃ水…ちゅうか、空気感が違うからな あんまり会わん方がエエのかと思っとったんじゃ」
「いえ…確かに最初はちょっとだけ怖かったですけど、段々皆さんが…お兄さんみたいな人達なんだなって思えてきて、その……」
「…ベルノちゃん 今、キー坊って彼女居ないんだよ」
「えっ!? そ、そうなんですかっ!?」
「何やのんクロちゃん! ワシの事いきなり攻撃しよって!! ワシの事嫌いになったん!?」
「いや…むしろキー坊をサポートしようと思ったんだけど」
「モテる奴の考えは訳分からんわ! どうせワシの周りに居る異性は
「いや、タマちゃんも居るだろ?」
「しゃあけど、アレはもうお前“妹分”やん? 女として見るのはむしろタマに失礼やんケ」
「……ベルノちゃんがキー坊の事、どう思ってるのか俺にはまだ良く分からないけど、キー坊は“こういう奴”だから…後それとね、うちの道場フィットネスもやってるから良ければ友達でも誘って一度、是非」
「あ…パンフレット? どうも、ありがとうございます(ちゃっかりしてる人だなぁ…)」
こうして各々が会話に花を咲かせていたのだが、店側の食材不足で敢え無く本日の食事会は終了となった。
「…まだ少し、お腹に余裕があるな」
「しゃーない、“いつものラーメン屋”行くか?」
「! それはいい考えだ 北原とベルノもどうだ?」
「あ、はいっ! ここ、背中に『北原 穣へ』でお願いします…え、何だ? ラーメン!?」
「私はお話ばかりでほとんど食べれてなかったし、付いて行こうかな」
「北原さん、今度のラーメン屋もとびきり強い格闘家が経営しとんのや 行くやろ?」
「えっ! マジかよ!? だったら、行こうかな…」
「俺達はこれから夜の部の仕事があるから、お先に失礼させて貰うよ」
「おうっ! じゃあなオグリちゃん! 北原さんもうちらの団体の試合、絶対に見に来てくれよな!!」
そう言い残すと、久しぶりに昔馴染みの兄妹に揃って会えた事に満足げな顔を浮かべた二人は夜の街へと消えていったのだった。
「なあ、キー坊? 次はタマも誘ってどこかへ行きたいな」
「せやな、機会があったらな」