[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
「“奇人”、朝昇さん…TDKの準決勝を観て、感動しました お会いできて光栄です(ガシッ」
「はいっ、北原穣さん…オグリちゃんのカサマツ時代のトレーナーですね キー坊からあなたのお話は聞いていますよ、よろしく(ガシッ」
「(うぉおおお……関節技の達人、朝昇に握手して貰えるとは…感動だ! 指とか変な方向に曲がってないよなっ!?)」
「北原のオッチャン…何自分の手ぇ見てニヤついとんねん、ハッキリ言ってキモイぞ?」
「タマちゃんも久しぶりですね 芝に行ってからの活躍は私も聞いてますよ 頑張っているんですね」
「まぁな! 普段は海外に居る朝昇サンにもウチの評判が届くとは光栄なこっちゃ! けどな…ウチの大躍進はまだまだ続くでぇ!!」
「……タマちゃん、兄弟子のボクよりも朝昇さんとの距離、近くない?」
「しゃーないやろ“キンちゃん” 体格に恵まれへんかったタマからすりゃ、朝昇みたいな同タイプにはシンパシー感じて当然やん」
「モグモグ)そうだぞ、キンちゃん 南京町の豚まんでも食べて元気を出してくれ」
「……あんがとなオグリちゃん 年下の子に慰められるとは、ボクってば未だにメンタル弱いなぁ(モグモグ」
「おーいオグリ、ワシにも豚まんくれや 今、手荷物持って両手が塞がっとんねん」
「分かった ほらキー坊、あーんしてくれ」
此処は神戸、熹一とオグリキャップが幼少期から育ち、友人にして宿敵でもあるタマモクロスと出会った思い出の場所である。
オグリのトレーナーを務めていた北原穣が『彼女達の育った環境を見てみたい』との希望を受け案内する事となったが、その際に偶然帰国していた“朝昇”こと朝田昇と世話になっている拳術館の掃除に来ていたタマモクロス、彼女と共に居た兄弟子に当たる“人間凶器”金田長英に出逢い、こうして神戸の街を歩く運びとなっていた。
「なぁ、タマモクロス…あれって“兄妹の距離感”で、良いんだよな?」
「北原のオッチャン、別に他の皆と同じタマ呼びで構へんよ いや、ウチが子供の頃からあの二人は“あんな感じ”やったし、ウチにも弟妹おるけどあれ位普通やで普通」
「ボクとの戦いの後もお父さん達と一緒に涙目で包帯巻いてたし、ホント仲の良い兄妹ですよ」
「ちょちょい、金田の兄さんには師匠の代わりにウチが看病してやったやろ」
「いや…タマちゃんの看病はオカンっぽさがあって、“妹っぽさ”は無かったんよ……」
「クソボケが───っ!!」
兄弟子の心無い一言に怒ったタマが常に持ち歩いているスリッパによるツッコミを行うも、食らった本人である金田は平然としていた。
「しゃあっけど…タマちゃん、威力が足りんからもっと強く打ち込んで貰って良いよ」
「アホゥ 兄弟子に、ましてやツッコミに本気出すウマ娘なんかおらんやろ ウチは鉄山師匠と比べたらお優しい女やさかいな」
「(いやいやいや……今、タマのスリッパから凄い音出てたぞ? やっぱり鍛えた空手家ってのは半端じゃねえな)」
「本当に凄いですよね、北原さん あの耐久力は巻き藁を巻いたバットで顔面を叩く等の修行で培われるものらしいですから」
「いっ!? 顔面を、バットで…?」
「せや、ホントは恐怖感を払拭したいって理由でウチもやりたかったんやけど、師匠と金田の兄さんから珍しく本気で止められてなぁ…」
「ウマ娘の選手ってのは顔が命な所もあるからね それにボクも師匠も分かってたんよ…タマちゃんは気概だけで言えば間違い無く“拳術館最強”だから、あの鍛錬は意味を為さないってね」
「に、兄さん…師匠……ありがとうございますっ!!」
「………これ、ウマ娘の競技者が見せるワンシーン、だよな?」
「いや北原、私と競い合ったヤエノムテキの所もこんな感じだったとキー坊が言ってたぞ」
「おうっ、せやな ワシもたまに他流派との交流はやるが、この前に行った金剛八重垣流のヤエノちゃんは“溢れ出そうな獣性を武道によって戒める事が出来る”良い武術家や」
「…その話を聞くと、なんだかお父さんみたいなウマ娘なんだなヤエノムテキって」
「ハイパー・バトルでワシは確かにおとんを武術家として超えたが、人間としてはまだまだや 近い世代に居るあのヤエノちゃんとならワシはまだまだ高みを目指せると思うねん」
「……そうだな でもキー坊、私だって一緒に高みを目指せるんだぞ?(ペシペシ」
「わあっとるって、オグリと一緒ならワシはどこまでだって強くなって見せるわいっ! せやからシッポでワシのケツ叩くのやめてくれんか? 痛いねん……」
オグリと熹一の強く結ばれた信頼関係、それを北原は何とも言えない表情で見ていた。
「………」
「元担当として、複雑な気分ですか? 北原さん」
「いえ、朝昇さん…それもあるんですが、オグリが強い理由を知る事が出来て今日は本当に、この神戸へ来れて良かったなと思っているんです」
「今の担当はあなたの叔父である“魔術師”六平銀次郎 たとえ中央トレーナーの資格を得ても超えるには高すぎる壁でしょうね」
「それでも、あの兄妹を見て改めて決心しました 私は必ず中央へ行き、オグリと“あんな関係”になるんだと」
「…それは結構 でしたら、私があなたの勉強のお手伝いをさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「えっ!? それは……」
「以前からキー坊に頼まれていましてね これでも私、東大法学部を卒業して司法試験も合格している完璧な人間なんですよ 勿論、北原さんが良ければになりますが…」
「いえっ! 是非お願いします!!」
「…最初から完璧な人間なんて居ない 完璧を目指し続ける姿勢こそがその人の人生を輝かせる事を私はキー坊から教わったんです やっと彼に恩返しが出来そうだ」
「おーいっ、北原さん! タマ達これから道場に行くちゅうんで此処で解散になるから、ワシ等の実家の道場も掃除に行きたいねん 付いて来てくれるか!?」
「私とキー坊でやるから手伝ってくれなくても良いんだが、ただ北原に私達が育った場所を見て欲しいんだ…良いだろうか?」
「…いやっ! 俺も手伝うよ!! 二人の思い出の場所連れて行ってくれっ!!」
「でしたら、私も行きましょうかね 寺で修業した身の上として北原さんにはまず掃除の仕方を教えてあげましょう」
「げっ!?」
神戸の晴れやかな空の下で笑う兄妹の後を、肩を落とした一人の中年と楽しそうに嗤う奇人が付いて行ったのだった…。