[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
「…ようこそ、中央の“生徒会室”へ 本来であれば“中央の施術師”としてだけではなく、他にもお仕事を抱えている多忙な貴方に対し私の方から出向くのが礼儀なのですが…何分、最近は仕事量が増えてしまった所為か
「いえ、お気になさらず この学園の象徴の一人である“生徒会長”がご多忙であるという事はウマ娘、皆の為に頑張っているという事なのですから私の方から出向くのが“筋”という物です しかし会長…見たところ本当に体調が優れない様子だ 宜しければ時間の空いた時で良いので私の施術を受けては頂けないでしょうか?」
「それは大変有難い申し出です…必ず予定を空けて伺いますのでその時は是非 しかし、こうして直接お会いするのは初めてですがその身から立ち昇る“オーラ”…と申しますか雰囲気から感じる印象は正しく“質実剛健”…“静かなる虎”の異名通りですね」
「いえ、そのような…会長こそまだ若い身の上でありながら正に“皇帝”と呼ばれるに相応しい覇気をお持ちだ 貴女の『すべてのウマ娘に幸せを』という理念には私も共感しているのです…貴女はきっと“死して後已まで”その歩みを止めない覚悟をお持ちなのでしょうが、“一念天に通ず”事を願っています」
「…“宮沢静虎”さん、今日は貴方の様な素晴らしい方にお会い出来て良かった 本日、この場で出会えた幸運に心からの感謝を」
「“シンボリルドルフ”さん、私のような年配者に対する多大な心遣いに此方こそ感謝致します 私の方こそ、今日貴女に会えて本当に良かった」
今まで“中央”という一つの場所に居ながらも今日というこの日をもって初めて会合した二人は瞬時に互いの高潔さを理解し、気付けばどちらともなく固い握手を行っていた。
そして、そんな二人を“どこか呆れたような目”で眺める
「ルドルフと静虎さん…ちょっと“固すぎ”じゃない? もっとフランクに行きましょうよ、やわらか~くね♪」
“スーパーカー”マルゼンスキー。 生徒会室に居たもう一人の人物は目の前の“堅物二人”に快活さを含む朗らかな笑みを浮かべた。
「…いや、これは失礼した 年長者である上に高名な武芸者にして求道者に、私もいささか緊張していたようだ」
「…いやはや、私もただでさえ娘と年の近い女性と話すだけでも緊張するというのに、更にはそれが娘のこれから通う学園の“頂点の一人”と思うとその…お恥ずかしい限りです」
自身の言葉である種の“険”が抜けた二人にマルゼンは優しく微笑み、静虎に話し掛ける。
「ふふっ、屈強なオジサマの“カワイイ所”が見れて面白かったけど、そんなに緊張しなくても大丈夫よ むしろ…こっちの方がある種の“負い目”はあるワケだし」
「…“限定的”とはいえ、一流の施術師としてこの中央で多大なる貢献をしてくれていた静虎さんの娘であるオグリキャップを半ば無理やりといった形で
「…構いません つ、つ、妻とも兄である私の息子とも話し合って決めたのです 『
「そうですか…懐広いご家族の対応に、感謝致します」
「(ヤダ…“妻”ってワードに恥ずかしがっちゃって…この人、ホントにカワイイわ)」
静虎の言葉に二人のウマ娘は各々に感じ入ってそれ以上の言葉が出なかった為、その場には“何とも言えない空気”が漂い始める。
するとそれに耐えられなかったのか静虎がしどろもどろといった調子で話を続ける。
「そ、その…オグリもですね、私個人としては息子である熹一の様に『視野を広げるべきではないだろうか』といった思いもありまして ですので、今回の中央へのお誘いは正直有難かったのです」
「……でも静虎さん “娘を持つパパさん”としては色々と複雑よね?」
「…はい、お恥ずかしながら ですがオグリも良い子ではあるものの若干“世間知らず”な面もありまして、成長の為には私の個人的な感情は無視して皆さんの居る荒波に揉まれるべきだと考えています」
「……実は昔、私は貴方と御子息である熹一さんとのハイパー・バトルでの闘いを観させて貰った事があります」
「あっ! ソレ、私も観たわっ!! お互いがお互いの事を大切に想ってるのが“殴り合い”を通じてこっちにも伝わってきちゃうんだもの…“アレ”のお蔭で私も格闘技に対する見方、ちょっと変わっちゃった」
「…マルゼン、私も同意見だ そして静虎さん…その時に私は貴方という一人の男に無条件で“尊敬の念”を抱いた そんな貴方が我々に対してそこまでの信頼を寄せてくれるのであれば此方としても全力を以って
ルドルフの真っ直ぐな視線を受けた静虎に最早“照れ”など微塵もなく、逆に同等の覚悟を伴った視線を返す。
「はい…『地獄を見せる愛もある』という言葉もありますが地獄というのは詰まる所、“この現世”なのです であればこそ、
静虎が言葉を言い終わるとルドルフは目頭を押さえ、マルゼンは天を仰いでいた。
「…素晴らしい たまに此方に出向いては無茶な要求をする前理事長であるお兄さんやトレーナーとしての手腕は素晴らしい物の性格に難があり過ぎるもう一人のお兄さんに比べて静虎さん…“人間性”という点では貴方はあの二人とは比べ物にならない方だ」
「…そうね そもそも、あの二人のお蔭で“益”も“不利益”も同時にやって来て仕事量が増えちゃうんですもの 本来、部外者である私も駆り出されて最近じゃ睡眠不足よぉ…静虎さん、私も今度アナタの施術を受けても良い?」
「…はい、それは勿論 いやしかし、済みません…私の家族がとんだ御迷惑をお掛けしてしまって」
「いえ…マルゼンも言っていたでしょう? 『“益”もやって来る』と…それに今後は更なる“益”も待っているのですから」
「…それは今度この中央に来るオグリの事でしょうか?」
静虎の言葉にルドルフは肯定の意味を込めて頷いた。
「はい…更には近々、腕の良い“新たな施術師”がこの学園に入ってくれるのです これ以上の“益”は今現在無いと私は考えています」
「あっ! “宮沢熹一”さんねっ!
「あのアホゥは全く……受け入れてくれた事には感謝しておりますが、何か問題を起こしたら直ぐに叩き出して頂いて構いませんので」
「いえいえ、ご安心ください 私としては決してその様な事にならないと信じておりますので」
「私の知り合いのウマ娘も神戸で熹一さんの施術を受けて『引退も考えていた不調が無くなった』って喜んでいたんだもの! きっと
「……お二人程の方が、そう言うのであれば」
満面の笑顔を浮かべる二人に静虎は怒るべきか喜ぶべきか判断が付かない複雑な表情をしていたのだが、ふとルドルフの方が表情を消して静虎に対し、とある質問をする。
「…折角の機会だから聞いておこうと思うのだが、静虎さん…最近この中央周りで出没する“ウサギ面の男”に心当たりは無いでしょうか?」
「……いえ、私には見当も付きません」
「それ、聞いた事あるわ 私たち“ウマ娘”が気性や法律の関係で暴力がダメだからって“ちょっかい”掛けてくる悪い人達を“寸止めのパンチ”で大人しくさせちゃう正義の味方の事でしょ?」
「まあ、恩恵を受けているのはウマ娘ばかりではないというのは聞いているが…それでも“不審者”である事には変わりないからな 一応の調査はしているが現れては煙のように消えてしまうので、ある意味“都市伝説”になってしまっているのが現状だ」
「と、都市伝説…ですか では…お話も終わった事なので私はそろそろ施術を待ってくれている方達の所へ戻りますね」
「ええ、今日は本当にお話しする事が出来て良かったです それと静虎さん、これは最後になりますが…」
「は、はいっ! 何でしょうか……」
「もし、“ウサギ面の男”に会う機会があればで良いのですが…『私達ウマ娘の事をいつも守ってくれてありがとう、貴方のその“優しさ”に心から感謝しています』と伝えてくれませんか?」
「……はい、会えたのであれば伝えておきます それでは…」
その言葉と共に静虎は生徒会室のドアを閉め、この場にはルドルフとマルゼンの二人しか居なくなった。
「…あんな言い方しちゃって、静虎さんも“見逃されてるのに”気付いたんじゃないの?」
「
「その言い方、ちょっとだけ“シリウスシンボリ”っぽいわね~」
「フッ…たまには良いだろう “心から尊敬する人”に出逢えたんだ これ位の“私らしくなさ”も愛嬌の内さ」
「…そうね “堂々とした顔でダジャレを披露する”よりは可愛げあるんじゃないの?」
「なっ!? そ、そんな事は決して無いぞっ!!」
こうして本日の宮沢静虎の生徒会室訪問は終わりを迎えた。
後日、中央周辺に“ウサギ面の男”の他に“天狗面の男”と“猿面の男”が新たに出没する事になるのだがそれはまた今後…。
オマケ
「あ、覚吾さん…キー坊までお面を付けて何をやってるんだ?」
「なにっ!? ひ、人違い…いや! 猿違いやぞオグリ!!」
「…私の名は“竹神栖鳳” 人違いではないか?」
「そうか、栖鳳さん 先日、夢二からLINEが来てな『たまには鬼喰島に顔を出して欲しいですとお伝え下さい』だそうだ それじゃ、私は帰るから二人とも程々にするんだぞ」
「………分かった」
「………