[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
日本に未だ残る秘境“鬼喰島”にその存在が確認されているという天狗の情報を求め、三人の若者が近くまで漁に出る漁船に乗せて貰い、大海原へと旅立った。
果たして彼等はその島にある“極楽岳”に居ると噂された天狗に会う事は出来るのだろうか!?
「いや、別に…普段なら近所のラーメン屋行けば会えるんやけどな」
「タマ…でも
「せやかてオグリんな、わざわざヒマな時にウチ等の予定揃ったからって『離島へ行こう!』なんていきなり言われても普通はビックリやで!?」
「だけど、タマは今日も付いて来てくれたんだ…本当にありがとう」
「…そもそも、鬼喰島…やったか? 前にキー坊が一度行ったっきりの場所やろ? 今日は案内させよ思って連れて来ても“ご覧のあり様”やん……」
「…うっぷ タマ、話し掛けんなや…気持ちワルぅ……」
「キー坊も船に弱いのに…付いて来てくれてありがとう 私は幸せ者だ」
「…鬼喰島はウマ娘であるお前等ですら本気で危険な場所や 前に来た時もワシ一人で行って正解やったと思っとる……案内は任せい」
そうして彼等は鬼喰島付近に到着したのだったがなんと! この島には船着き場が存在しないのであった!! そこで彼等がとった行動とは───
「よっしゃ、オグリ、タマ…水着に着替えたな!?」
「大丈夫だキー坊! “浮き輪”も準備万端だ!!」
「泳げんオグリんはそれでキー坊に引っ張って貰うからエエとして、ウチは普通に泳ぐからな」
「おうっ! それでも足攣らんよう気ぃ付けろや ほな、おっちゃん…“今回も”連れて来てくれておおきにな! 行ってくるわっ!!」
「いや、ワシも今回は“スターウマ娘”を二人も乗せれて良かったよ 前と同じ様に2,3日は周辺で漁をやってるから、無事で戻って来いよ」
「ウチからも礼を言わせて貰うわ オッチャン、あんがとな!」
「本当に今日はありがとう、おじさん…でも、心配はいらないよ 私たちにはキー坊が付いていてくれているんだからね」
笑顔で連れて来てくれた漁師に別れを告げた三人は遂に鬼喰島へと上陸したのだった。
そしてジャージに着替え終えるとそのまま島の極楽岳へと足を踏み入れたのだが…そこで彼等を待ち受けていたものとは───
【ブォオオ─── ブゥォオオオ───】
「うわぁあああ(PC書き文字) “また”アブの大群が来おったわい!!」
「キー坊任せろ! お父さんお手製の虫除けを散布する!!」
「クッサ!! “獣道の臭い”と静虎のオッチャンが本気で考えたであろう“フローラルな香り”が合わさってホンマ、クッサいわ!!!」
「前に来たときはここら辺で
「こら、随分と長い“一本下駄”やな しかも折り畳み式に改造しとるあたりキー坊…相当、この島に対してリベンジ狙っとったな?」
「子供の頃にみんなで遊んだ竹馬とバランスの取り方はあまり変わらないのだろう? それなら大丈夫そうだな」
「カカッ‼)……マジか なんや紐に足ひっかけた思たら苦無が飛んできたんやけど、この森ホンマに大丈夫なんか?」
「この先にある天空堂の師範代からすれば“害獣除けのトラップ”らしいわ 猪や野犬が近づかん様にとは言え、相変わらず殺意が高いのぉ……」
「猪か…この前、尊鷹おじさんが狩ったので作った牡丹鍋は美味しかったな」
「…方向感覚が狂う森だな キー坊の指示通りだから進んでいる筈なのに『同じ所を回ってる』ように感じてしまう」
「いやいや、ホンマにナビは大丈夫なんか? 『実は迷ってました』ゆうのはナシやで?」
「大丈夫や この森に入ってから聞こえとる“法螺貝の音”に従ってるようなモンやからな…待てや、そこら辺の草の色が違う 多分、そのまま行ったら“竹槍付きの落とし穴”が待っとるぞ」
数々の苦難を潜り抜け…遂に到着した天空堂で一人、待ち構えていた人物と彼等は出会う。
その人物の正体は天空堂の実質的な管理人であり、真魔流体術の師範代“安藤夢二”である。
「お久しぶりですね、宮沢さん 以前お会いした時よりも更に雰囲気が洗練されているのが見て分かりますよ」
「夢二も更に腕を上げた様やな…気配の消し方や足運びは勿論やが身体の中心に“芯”が出来とる 今のお前なら“幻突”も打てるんちゃうんか?」
「…御冗談を あの技を放てるのはお師様の“血”を継ぐあなた位の物でしょう」
「そんな事言いつつも、将来的には打つ気マンマンなんやろ?」
「…ええ、勿論 血は繋がっていなくとも、私とてお師様の“子供”のつもりですから」
久しぶりに再会した二人の男の爽やかさを感じさせるやり取りに二人の少女が参入する。
「君がキー坊が話していた夢二か…突然押しかけてしまって済まない」
「ウチ等の事は…修行一筋の生活みたいやし、テレビも観んやろうから知らんと思うけど……」
「存じていますよ 宮沢さんの妹である“怪物”オグリキャップさんと御二人の友人である“白い稲妻”タマモクロスさんですね」
「なんや夢二、知っとったんかい こない場所なら電波も通っとらんやろ?」
「いえ、頻度は少ないですがネットを利用する機会もあるので…その時のニュースでお二人の事は知っていましてね “有馬記念”を観た時など私も含め、天空堂の皆が目を奪われてしまいました」
穏やかながらもハッキリとした口調で夢二に褒められた二人は照れくさそうに耳を動かす。
「日々真剣に鍛錬している人達にもそう言って貰えるなんて、正直嬉しいな」
「キー坊と違っておちょくられんで褒められるんは…なんや、照れくさいなぁ」
「はい ですので…今回皆さんをご案内するのは“私一人”となります
「夢二…そう言うお前は良いんか?」
「私は問題ありません 何故なら“私の心を一番に動かす”のはいつだってお師様ただ一人だけですので」
夢二はそう言って三人を本堂まで誘導したのであった。
───────────────
「……成程、今日此方へ来た理由は『お師様を探して』の事だったと」
「せや、日下部覚吾…
「いえ…確かに少し前、此方に寄られましたが直ぐに
「…覚吾さん すれ違ってしまったか」
「そもそも何で
「私ごときがお師様の事情に口を挟むなどとても…いや、待てよ 心当たりならあります、しばしお待ちください」
突如立ち上がった夢二は三人を本堂に待たせるも、暫くすると小さな小包を持って戻って来た。
「何やコレ…(カサカサッ 振った音で察するに“紙”っぽいのォ……」
「はい…お師様が去った後に普段瞑想されている洞穴でこの小包が見つかり、我々が開ける訳にも行かずそのままにしていたのです」
「まぁ、ここの連中…特に夢二はあのオッサンの事を“神様”扱いしとるからの せやったら…“天罰”受けんのは息子であるワシ一人でエエか」
「…っ! あなたまさか……」
夢二は熹一がやろうとしている事を察し、瞬時に手を伸ばしたが熹一は“幽玄のかわし”を使ってそれを防ぎ、小包の中身を確認する。
すると其処から現れたのは───
「おい…オグリ、タマ “コレ”って……」
「“ラーメンのレシピ”、だな」
「何であのオッチャン、こんなモン仕舞っとんねん?」
頭に疑問符を浮かべた三人を尻目に遅れてレシピを確認した夢二は“その内容に”驚愕していた。
「こ、これは……食材がこの“鬼喰島で採れる物”ばかりだ!」
「……覚吾さん、夢二達に自分が作ったラーメンを食べて貰いたかったんだな」
「成程なぁ…一旦こっち来て食材の下調べ終わったから今はあっちこっち回っとんのやな」
「
それまで尊敬する“お師様の想い”を知って感極まっていた夢二であったが、熹一の『二人の息子』という言葉を受けると限界を迎え…遂にはその瞳から涙が零れていた。
「本来であれば…お師様の私物を勝手に開けるなど、私自らの手で処罰する対象なのですが…今回に付き、不問とします」
「おー、こわっ…しゃあけど良かったな夢二 好きな人に“愛されてる”って想われるのは幸せな事やからのう」
「夢二だって覚吾さん…いや、栖鳳さんか あの人の“息子”なんだから、ワガママはたまに言った方が良いぞ? 私だって
「オグリんの“ワガママ”なんて静虎のオッチャンからしたらカワイイもんやないか この前二人で話した時なんか、むしろ『もっと言って欲しい』って溢してたで?」
タマの発言に三人は…釣られて夢二も加わり四人が笑い声を上げ、本堂を暖かい雰囲気で満たしていた。
「……久しぶりに、大声で笑ってしまいました 御三方、本日はお越し頂いて本当にありがとうございます」
「修行続きで表情筋も硬くなっとったし、丁度良かったやん 偶には“俗世に触れる”のもエエもんやろ?」
「ええ、ですが…それでも私は“未熟者”ですからね 人里に下りるには未だ修練が足りていません」
「栖鳳さんもそれを分かっているから
「修行してる人達にラーメン…ってのが、あのオッチャンらしいけどな」
「立派であれど、極稀に見せる“愛嬌”も私があの方を慕っている理由の一つですから」
その後和やかな空気感での談笑の最中、『良い事を思いついた』とばかりに熹一が手を鳴らして夢二にとある提案をする。
「せやっ! 夢二、お前オグリと“LINE交換”せい!!」
「あー、パソコン使っとるって言っとったしな…って! ウチは無視かい!!」
「お前でも別にエエけど、
「成程、そういう事なら私の方は問題ないぞ 夢二の方はどうだ?」
「確かに、先程のお話の通り“息子”であるならば我儘の一つも言うべきですね……その申し出、お受けします」
こうしてオグリと夢二とのLINE交換を終えた後、三人は歩き疲れもあって天空堂で一泊してから極楽岳を下り、海上で待機していた漁船に再び乗り込んで鬼喰島を後にしたのであった。
オマケ
───帰りの船上にて
「…帰る前にキー坊がやったという“修羅場くだり”、私もタマと一緒にやってみたかったな」
「いやいや…険しい断崖絶壁に凹凸のない場所を“ロッククライミング”やって高濃度炭酸ガス充満の“危険地帯”を抜けた後はヘトヘトの所を“底なし沼”が待っとんのやろ? 話聞いただけでもウマ娘やからって挑戦する気起きひんわぁ……」
「……あくまで、“ショートカット”での手順を言っただけやが…挑戦する気ならワシは…灘の技使ってでも、お前等の事止めるからな……うっぷ」
「あー、ハイハイ そもそもウチはそんなんやる気ないし、そないグロッキーで格好付けても締まらんで……」
「心配させてしまって済まないキー坊……背中をさするから少しでも元気になってくれ」
書いてみたら三人のやり取りが一番楽しかったです。