[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
「いや、こんな所に新しく沖縄料理店が出来てたとはな…紹介してくれたキー坊に感謝しないとな さて…今日の仕事も終わりだし泡盛でも頼んじまうか」
「奢って貰っている立場ですから一杯だけ目をつむりますけど…トレーナー、“指導者”としての節度は守ってくださいね?」
「なに、キタハラなら大丈夫だろう それよりベルノ、この“ジーマミー豆腐”というのは甘い物らしい 頼んだ料理が来たら、これだけ一緒にデザートで追加しよう」
現在、練習を終えたカサマツ所属のウマ娘であるオグリキャップとベルノライトは担当トレーナーの北原穣に連れられ、近所に出来た沖縄料理屋へと足を運んでいた。
担当の財布を慮り、厳選した注文量を店員の女性に伝えた後にワクワクと言った様子で二人と共に料理を待つオグリは気持ちを抑えきれないのかメニューを見直している。
「それは良いけどオグリちゃん…頼んでから結構な時間だし、そろそろメニューを閉じよう?」
「まぁ…デザート一品くらいなら追加しても大丈夫だが、ベルノの言う通りだ 良い匂いもしてきたし、そろそろテーブルと俺等に目を向けとけ」
「…済まない二人とも、沖縄料理なんて滅多に食べないからか恥ずかしい所を見せてしまった」
そう言って少しだけションボリとした姿を見せるオグリに対し、二人が苦笑を浮かべていると遂にテーブルに料理が到着した。
「! 待ち侘びたぞ、どれも美味しそうだな」
「…お待たせしました」
ようやく届いた料理の数々に目を輝かせていたオグリであったがふと、配膳している男の“爪”に違和感を感じてその姿をまじまじと見ると思い当たる事があったのか男に質問する。
「“研ぎ澄まされた爪”、“鍛え上げられた指”…そして“見事な出っ歯” まさか君はキー坊が昔、話していた“人差し指のゲン”か?」
「あ───っ!! やっぱりバレちまった!! なるべく顔合わせたくなかったから接客には行きたくないって言ったのによ!! しかもなんだ“出っ歯”ってよぉ…そこは別に伝えなくても良いだろうが!! キー坊のヤツめ……」
オグリの指摘により突如、頭を抱えだしたこの男は“笘篠源内”。
そしてオグリの兄である熹一と闘った後は敵でありながらも協力関係を結ぶという不思議な関係を築いた相手であった。
「えっ!? オグリちゃん、この店員さんと知り合いなの?」
「いや…お互いの話し振りからして“キー坊の知り合い”って感じだが……」
「キタハラの言う通りだ この男の事はキー坊がお父さんの治療費の為に参加してた
「ダークファイト…? 私は聞いた事ないけど、トレーナーさんは?」
「いや…俺も初耳だ 名前の響きからして“非合法”な感じはするが…」
「…アンタ等、一般人には関係ない話さ その後のハイパー・バトル日本予選にも参加したが、何だかんだでキー坊とつるむ事になって最後は鬼龍さ…鬼龍のヤツに足蹴にされるわで…ホント、散々だぜ」
そう言ってゲンは当時の事を思い出したのか己の後頭部を擦る。
その様子を見つつも並べられていた料理に何時の間にか口を付けていたオグリはゲンに対し疑問を投げかける。
「モグモグ)…それで、その後はどうしていたんだ? 今はこうしてお店をやっているという事は鬼龍おじさんの不良グループから抜けられたという事だろ?」
「いや、“不良グループ”ってよぉ……ま、あの後流石に『もうウンザリだ』って思って道場のある沖縄に帰ったんだよ 追手が来なかった所を見るに
「パクパク)……それは良かったですね でも、何でお店を地元じゃなくてカサマツ近くに開いたんですか?」
せっかく来た料理が冷める事に申し訳なさを感じたベルノはオグリに倣って食事を始めたが、ゲンの話に気になる部分を感じて質問を行う。
「それがよぉ、お嬢ちゃん……『語るも涙聞くも涙』って話でな オグリの兄貴であるキー坊の生き様を見て俺なりに今までの人生を“悔い改めて”生きてたんだよ そしたらな“アイツ”がやって来たんだ」
「…“アイツ”ってオグリの叔父の鬼龍って人ですか?」
続く北原の質問にゲンは頭を振り、体を震わせながらその人物の名を答えた。
「“鬼塚姫次”だよ! よりにもよって“鬼龍の息子”が俺の前に現れやがったっ!! しかも
「……そう言えば姫次がしばらく前に顔を腫らしながらニンジンを届けに来た時だったか、『ちょっと沖縄へ旅行に行ってくるんで』と言ってたが…ゲンの所に行ってたんだな」
「ただでさえ鬼龍の息子なんて“厄ネタ”に関わりたくなかったってのに『
「姫次…『
「…“最初の内だけ”な 時間の掛かる部位鍛錬以外はあっという間に習得して、後は俺を小間使いみたいに扱いやがったんだ! 親父譲りのイヤな
親子二代に渡って“下っ端扱い”されたという屈辱にゲンは顔を真っ赤にして
「…でもよ、修行中に料理を振る舞ってやったら良い笑顔で『美味いな、店開いたら来てやるよ』なんて言いやがって それで久しぶりに話でもしたかったし姫次を経由して師匠であるキー坊に相談したんだよ、そうしたら……」
「
「お嬢ちゃんの言う通りだ 『こない美味いなら
「それは…なんだ、済まない キー坊のワガママに付き合わせてしまう形になってしまったな……」
「オグリちゃん…お兄さんの行動力が凄いよ ある意味でオグリちゃんの為にお店をプレゼントしたような物なんだから」
「まぁ…キー坊も有名な格闘家なんだし、今やってる施術院も盛況だからゲンさんの店に投資して税金対策していると思えば別におかしくはない、のか?」
三人がゲンの店の成り立ちに各々の感想を抱いていると当の本人は照れくさそうに頬を搔いていた。
「まぁ…そんなワケでよ、俺も
「そうか ゲンが満足しているなら良かった」
「それによ…昔、
「…そうか 鬼龍おじさんの“アドバイス”のお蔭でゲンが今の様な良い顔が出来ているのなら本当に嬉しいよ」
「小声)ベルノ 多分…それって“アドバイス”じゃないよな?」
「小声)トレーナーさん、指摘しないでおきましょう…オグリちゃんも店長さんも本当に良い顔してるんですから」
「さて、折角来てくれたんだからな
「い、いや! ゲンさん、俺は嬉しいんだがその発言はちょっと……」
「そ、そうですよ店長さん! お兄さんからどれだけオグリちゃんが食べるのか聞いてないんですか!?」
「…えっ? 俺は『満足するまで食わせてやってくれ』としか聞いてねぇんだが…」
「…ありがとうゲン、キー坊 どれもこれも美味しそうで選ぶのに迷っていたんだ 食べ放題なら“全部”食べても良いんだな…?」
その後…用意されていた店の食材は全てオグリのお腹に収まり、店長であるゲンは放心した様子でオグリ達を見送ったのであった…。
オマケ
「おうっ! やっとるようやな、ゲン!!」
「約束通り、食べに来てやったぜ」
ゲンの店に宮沢熹一と鬼塚姫次は爽やかな笑顔で来店した。
そんな二人に対して店長であるゲンはと言うと───
「聞いてねぇぞ!? お前の“妹”があんなに食うなんてよぉ!!」
「ヒャハハっ! ビックリしただろ? 俺も初めてオグリの食事を見た時は度肝を抜かれたぜ」
「…ワシはちゃんと『食材多めに用意しとけよ』って言っとったやろ」
「ああっ! 用意したよ!! “普通のウマ娘”が満足する量をなっ!! 巷じゃ“怪物”なんて呼ばれてるようだが食欲も半端ねぇな……」
「食費は確かに掛かるが…
「出たよ、師匠の“妹贔屓”…弟子である俺にもその優しさ、分けてくんねぇ?」
「イヤじゃ お前は龍星と同じく『恩を仇で返すと武術家としてレベルが上がる』みたいに思うとるフシがあるからのォ…今日みたいに飯連れて来ただけで十分やろ」
「…ま、俺も急に師匠が優しくしてきたら気持ち悪ぃからそれで良いけどね」
師匠と弟子との物騒な会話に若干、引き気味になりながらも“店長として”気持ちを切り替えて対応する事を決めたゲンは二人に注文を尋ねる。
「……それで? 今日のご注文は?」
「おうっ! せやな…この前オグリが『豆腐のデザートが種類あって楽しかった』言うてたし、今日は“豆腐料理のフルコース”と行こかっ!!」
「ゲェーっ! 正気かよ!? オグリが居ないとアンタ本当に食に関して適当だな……食い出がある豚とか行こうぜ!?」
「なんや姫次、お前ケチ付けよって 今日は動物性より植物性のタンパク質摂りたい気分やねん」
「だからってよぉ…限度ってモンがあるだろ!?」
「なら、ワシだけ注文するからエエわい 代わりにお前は自腹で好きなモン頼んだらエエやん?」
「きったねぇなぁ……おいゲン、俺も“豆腐料理のフルコース”だ 代わりに
「お前なぁ…師匠に対して“コイツ呼び”はないやろ」
「俺だってお前より年上なんだ、いい加減“呼び捨て”はやめろ」
「オグリに呼ばれたら鼻の下伸ばしてそうなオッサンが凄んでんじゃねぇよ
「「 ったく…最近の若いヤツは 」」
同時に“オッサン臭いワード”を口にした事に気付いた熹一とゲンは憮然とした表情で押し黙り、それを見た姫次は店内に大声で“年相応の笑い声”を響かせたのであった。