[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

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デビデビの短編に出て来た天心さんのフワッとした雰囲気が好きで書いてみました。


灰色のオッドアイが“怪物”を見抜く

「さてオグリ、この絵画の“価値”…どう見る?」

「前に鬼龍(おじさん)が見せてくれたカタログでも同じ物を見たけど…“それ”と比べると周りの花の大きさやモデルの表情が違うな」

「…つまり、“贋作”って事だな?」

「そうなるな けど“天心”さん…モデルが笑顔だし、周りの花もそれを引き立てている“良い絵”だって私は思うよ」

「……この絵は素人目に見ても明らかな“贋作”だが、描かれた年代とその国の背景を鑑みると名画を使って人民に対する癒しを目的とした物であるのが見て取れる つまり…当時の鑑賞者からすれば、お前さんの言う通り“良い絵”だったって事だ」

 

 此処は骨董屋である“極楽地獄堂”。 店長である“朧天心”の虹彩異色症(オッドアイ)が映すのは対象の“外側”だけでなく、同時に“本質”をも見抜く卓越した審美眼を持つ。

 そんな彼と“怪物”オグリキャップとの出会いは彼女の父である宮沢静虎が“仕事”の報酬で貰った骨董品の数々を処分する為、兄である熹一と共に偶々立ち寄った極楽地獄堂で鑑定を頼んだ事から始まった。

 その折に天心はオグリと熹一を“一目見て”気に入り、店に骨董品が届くと二人…特にオグリに対して“鑑定”を頼むという間柄になっていた。

 

「…天心さん 何時も思うんだが、そこまで分かっているのに何で私達に“鑑定紛い”の事を頼むんだ? 私やキー坊だって美術品の価値に関しては別に詳しくないんだぞ」

「ははっ! そんなの“見れば”分かるよ けど、まぁ…俺の道楽にちょっと位付き合ってくれても良いだろ? なんせお前等が持って来た品を高値で取引してやったんだからさ」

 

 天心の言った通り、彼が買い取り業者への仲介を行った事によってオグリ達は目が飛び出そうな金額を目の当たりにする事となったのだ。

 

「…天心さんのお蔭で都内に“灘の道場”を増やす事が出来たんだ 私達家族としても感謝はしてるよ」

「だろ? 確かにどれも“良い品”だったが、仲介にも才能はいるからな」

「それなんだが……天心さん」

「ん? どうしたんだ、オグリ」

 

 ニコニコと笑顔を浮かべながらオグリが話す事を待っている天心。

 オグリとしては目の前に居る男に『自身の考えは見透かされているのだろうな』という思いはありつつも、それでも聞かずにいられなかった疑問をぶつける事にした。

 

「私達が持って来た骨董品だが…あれの何割かは“贋作”だったんだろう?」

「やっぱり、お前さんには“本質を見抜く目”を持ってるな 今でも良いから中央のスター選手辞めて俺の弟子にならないか?」

 

 天心の口から出た事実上の肯定にオグリは『やはりな』という思いで頭を抱えてしまった。

 

「持って行く前に自分達でも調べたんだ…その内の幾つかに“違和感”はあったが、天心さんが全部『本物だ』と言ってたからずっとモヤモヤしていたんだが…やっぱりか」

「さっきも言った通り、お前等が持って来たのはどれも“良い品”だった 俺はそれに“世間的な価値”を付与して高値に変えたんだ これも才能…ってのもさっき言ったか」

「骨董屋というのは“そういう事”がまかり通る物なのか?」

「…結局な、人間ってのは『見たい物しか見えない』生き物なんだ “贋作”だってその人が心から信じてりゃ立派な“本物”さ お前等兄妹だって俺からすればちゃんと本物に“見えて”るんだからな」

 

 天心の最後の言葉にオグリは思わず息が詰まった…。

 兄である熹一との血の繋がりが無いという事を彼に語った事は一度も無かったのに“それ”を見透かされていた事…そして、その関係を『本物だ』と認めて貰えていた事に対してである。

 

「色々な“紛い物”を見て来た身としてはさ…お前等みたいな“本物”同士が仲良くやってるのは本当に目の保養ってヤツなんだ これでも感謝してんだぜ?」

「待ってくれ、天心さん……気持ちが追い付かない」

「まぁ、聞けって 『偽物』って言葉はどうにも悪いイメージが付きがちだが、お前が鑑定してくれた絵と同じで『当人が満足してるならそれは本物の“幸せ”』なんだ」

「…確かに、私は宮沢家のみんなと家族になれて嬉しいと思っているよ」

「贋作ってのも大抵が『本物を超えてやろう』って気概で作ってる その結果、部分的には本物を上回る傑作が世に出るのも珍しい事じゃない」

「天心さんは…私達が“そう”だって言ってくれるのか?」

「それこそ、世の人間が付ける価値なんて様々だが…少なくとも俺はお前等の関係が“大好き”だぜ」

 

 オグリはその言葉を聞いて大きく息を吐き出す。

 自身がある種の尊敬を抱いている“鑑定士”の口から出た感想に安心したからであった。

 

「…なんだか、とっても疲れたよ 世の中の美術品に心があるのなら、鑑定中はこんな気分なのかな?」

「どうだかな? 作者の魂が乗り移ったなんて言われてる品も珍しくないし…案外、人間が付ける身勝手な価値に怒り心頭かもしれないぜ?」

「ふふっ…だったら、これからはもっと大事に扱ってあげないとな」

「あぁ、そうしてくれ 美品の方が鑑定士(こっち)もサービスで褒めてやりたくなるからな」

 

 天心のその言葉にオグリはツボに入ったのかお腹を抱えて笑い出す。

 それを微笑ましそうに見ていた天心はふと、現在店に居ない“二人”の事を思い出した。

 

「そういや…うち唯一の従業員とキー坊はどこまで行ってんだ?」

「お店に来るなり『美術品の搬送に人手が足りない』ってキー坊を連れて行ったが、場所が遠い訳では無いんだな?」

「あぁ、近場だが物品が多いんでな…ったく、帰って来たらラーメンでも奢ってやろうと思ってたのによ」

「! 天心さん“オススメ”のお店か!? 楽しみだな!」

「…お前にも奢ってはやるが一杯までだ その後はキー坊にでもねだれよな」

 

 目を輝かせたオグリに天心がウンザリとした視線を向けていると店のドアが開いて熹一と従業員の二人が帰って来た。

 

「オグリ! 天心さん! 帰って来たでっ!!」

「天心さん、取り敢えず荷物は量も量なんで近場のコンテナに運びましたんで 後で確認よろしくっス」

「よしっ、戻ったな 取り敢えずラーメンでも…いや、待て キー坊、ちょっとオグリの隣に立ってくれ」

「な、なんやのん 天心さん…」

 

 天心からのいきなりの指示に、熹一は困惑した表情を浮かべるも言われるがままオグリの隣に立つ。

 

「……うん やっぱりお前等は“良いな”」

「天心さん よく二人の事見てますけど、どういう意図なんスか?」

「せや 急にオグリの隣に立て言われてもワケ分からんぞ」

「いや、キー坊……天心さん曰く“傑作”らしいぞ」

「なんやオグリまで……まぁ、エエわい」

 

 納得はしてはいないし、聞きたい事も数多くあった熹一であったが(オグリ)の“満足そうな笑顔”を見てそれ以上、何かを言うのを止めたのであった。

 




結局、仲介への“グレーゾーン”に関してぼやかす辺り天心さんは大人です。
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