[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

32 / 53
シングレでは絡んでない二人を書いてみました。


“見土”“聴雷”

「アンタがキー坊…“宮沢熹一” 覇生に居た時から話には聞かされてたが、見れば見る程『強そう』ってカンジには見えねぇな 今()ればミノル兄さんが勝っちまうんじゃないか?」

「なんや“イナリワン”言うたか…ミノルさんに負けず劣らず口の減らん娘やのォ ガタイはエエようやが、小柄過ぎてこの前ヤクザ(モン)撃っ(ハジい)てきた豆鉄砲(チャカ)を思い出すわ」

「あぁん!? アンタその発言はミノル兄さんの前にあたしと()りたいって事かい!!」

「おうコラ、キー坊! アンタが口喧嘩買うのは勝手やが…『身長の話』はウチにも刺さるからそれ以上はやめとけや」

「おっと、今は引退したとは言え一線を走ってた“覇気”は健在のようだな “タマモクロス”…やっぱ、テレビよりも実物見た方が参考になるね」

「…お褒めに預かり光栄やな、“ミノル”さん キー坊から『静虎のオッチャンが昔世話になった』聞いとったし、礼の一つでもと思っとったけど…なんや随分と気持ちが良い男やないか」

 

 現在、会話により“嘲り”、“応酬”、“激昂”、“窘め”、“関心”が渦巻く虹色(レインボー)の空気感を生み出された都内のファミレスで発生源となった“元・覇生流”の鈴木ミノルとイナリワン、“灘のオグリの関係者”である宮沢熹一とタマモクロスの四人が同じテーブルに座っていた。

 そもそもの発端は熹一が『一度キチンとイナリに会ってみたい』という要望からの集まりであったがイナリの大井、中央の担当を務める“梼原親子”は用事が入り不在。

 熹一側もオグリが急な遠征の為に来れなくなった為、たまたま居合わせたタマに声を掛けた結果の面子であったが、『覇生流にゴタゴタを持ち込んだヤツの関係者』と『妹と出掛けられる機会が無し(フイ)になった』不機嫌な二人が顔を合わせた事により、出会いの時点で一触即発。

 残りの二人が“緩衝役”になるという地獄の様な状況が出来上がっていた。

 

「いや、そう言ってくれんのは当然だな 俺ってば天才の上、思慮深いからよ キー坊に倣って『タマ』と呼ばせて貰うぜ?」

「構へんよ、ウチもその方が気楽でエエわ…ったく、キー坊もエエ年なんやしミノルさんみたいに“大人の対応”見せんかい」

「…せやな イナリ、出会い頭にスマンかったわ」

「……あたしも別にアンタに原因があるワケでもねぇってのに絡んじまって悪かったよ」

「その通りだぜ、イナリ それにキー坊(コイツ)は『弱そうに見えて強い』ヤツなんだ 見たまんまの感想言っちゃあ、俺の評価も下がるだろうが」

「…分かったよ、ミノル兄さん あたしだって映像だけどキー坊(ソイツ)の闘いは観てんだ 『アホ面引っ提げても強い』ってのは重々承知の上さ」

「なんやもう…結局、二人してワシの事バカにしとんのやないか」

「“NEO宮沢熹一”の時は強そうな雰囲気出とったけど、同時に“近寄りがたい雰囲気”もあったからな 結局キー坊は今の坊主頭で丁度エエ言うこっちゃ」

 

 タマのフォロー(?)に納得いかないという表情を浮かべるも頭を掻いて気持ちを切り替えた熹一は覇生の二人に話を振る事にした。

 

「…で? “覇生を抜けた(モン)同士”、その後は何かちょっかい受けとんのか?」

「あー…あたしが大井に居る時も中央に移るって話になってからも細々と嫌がらせは受けてたが、直接的なのはミノル兄さんが片付けてたんだ けどね、世話になってる“姐さん”と“(ぼん)”にまで手が及んだ時は流石のあたしも我慢の限界ってヤツでよぉ……」

「なんや、カチ込みでもやったんか? 武術を修めてるとは言えウマ娘“らしくない”事やるんやな」

「ソイツは誤解さ、タマ イナリ(コイツ)は俺やキー坊と違って根っからの“アスリート”だ 俺も行ったが正に『爽快』の一言だったぜ」

「……まさか、親父(おとん)もやったっちゅう“アレ”か!?」

 

 熹一の驚いた顔を見たミノルが『待ってました!』とばかりに指を鳴らし、イナリが起こした偉業を語って聞かせる。

 

「そのまさかよっ! 覇生流の秘儀“風当身”による天鳴大太鼓の連続50回叩き!! 覇生の山に“一週間の大雨警報発令”だぜっ!!」

「ま、マジか…親父(おとん)も20回と聞いとったが、“倍以上”とは恐れ入ったわ」

「なんやキー坊? 太鼓叩くのにそこまで驚いてる所見るに…『バチがエライ重い』とかなんかか?」

「ちゃうわい バチなんぞ使わず己の手から出した風圧、“風当身”のみで大太鼓を鳴らす覇生の雨乞い兼、会得までの通過儀礼や」

「な、なんやて!? イナリ、アンタとんでもない事やるんやなぁ……いや、静虎のオッチャンも人間で20回も鳴らすんやから大したモンや」

「…風当身(あんな技)レースじゃ使い(モン)にゃならねぇし、ウマ娘のパワーを使っても“センス”がなきゃロクに数も打てねぇんだが、習得しといて良かったよ でもさ……」

 

 己の偉業を誇る訳でもなくむしろ『悔しそうな気持』を隠し切れないイナリに疑問を浮かべた熹一とタマの二人にミノルが“補足説明”を入れる。

 

「イナリが連続で打ち込んだ風当身は“15発”なんだよ そうすると、50発まで数が足りないよな…?」

「なんや、ミノルさんも手伝ったんか?」

「いやいや、タマ 流石に絶賛成長中である天才の俺でも追加で静かなる虎に並ぶ“20発”で限界を迎えちまった するとよ……」

「成程のォ…それは、確かに“偉業”やな」

「キー坊…今回はオチまで言わず感謝してやるよ その通り! 俺達の風当身に触発された“門弟達”が協力してあのイヤミったらしい狐面4人の前で“残り15発”を打ち込んでやったのさっ!!」

 

 そう言って大笑いするミノルに釈然としない表情を浮かべるイナリ。

 

「けど、ミノル兄さん あたしは『覇生を抜けたけど、それでもここまで成長できた』って事を見せつけてやりたくて“50発”って宣言をしたんだ それなのに最後は兄さんや皆に手伝って貰っちまったなんて、そんなの……」

「打った風当身の“数”が重要なんじゃねぇんだ、イナリ お前の“泥臭さ”が着いて行った俺と見ていた門弟共の心を動かして保身ばかりのバ鹿共の鼻を明かしてやったんだ! これ以上に爽快な事があるかよっ!!」

「せやのォ…オグリやタマもそうやが、“時代を動かす選手”言うのは“華”がある イナリ(お前)はまるで泥から咲くキレイな……タマ、あの花の名前なんやったっけ?」

「…ったく、カッコ付けるなら最後まで決めんかい…“蓮の花”やろ? 仏さんも座っとるヤツや」

「おうっ! ソレやソレ!! イナリ、お前は人を動かすことが出来る立派な“華”を持っとる!! オグリの好敵手(ライバル)として相応しい相手や思うとるでっ!!」

「ウチも引退してなんや寂しさみたいなモン感じ取ったが…イナリ(アンタ)みたいな“強いヤツ”見たら、もっかい『オグリと纏めて相手したい気持ち』になってまうな」

「な、なんでい…アンタ等、急にあたしの事を褒めやがって」

 

 急に熹一とタマの二人から送られた賞賛に動揺し、しどろもどろといった様子になるイナリ。

 そんなイナリの背中を叩いていつもの不遜さを含んだ爽やかな笑みを見せたミノルは再び大声で笑い出す。

 

「はっはっは! こりゃあ良い! “畑違い”と“引退者”の心も惹いちまった!! 正しくお前は泥に咲く“蓮の花”だっ!! 決めたぜ、お前の“二つ名”……」

 

 そして“風のミノル”はイナリを指差し高らかに宣言する。

 

「“(ダート)のイナリ”だっ!! 適正も考えればピッタリだろ?」

「“二つ名”…ミノル兄さんと同じ、“あたしだけの”二つ名……」

「ワシもエエ名前やと思うが…エエんか、ミノルさん? 今は居らんトレーナー(二人)に許可も取らんと勝手に決めて」

「エエんやないか、キー坊……ウチもそうやけど、二つ名なんていくつあっても良いんや せやったら自分が気に入ったモン使い分けるのも“アリ”やで?」

「…そういう“ファッション感覚”は流石女子やな ま、本人が気に入っとればそれでエエか」

 

 熹一とタマとの会話を尻目に当のイナリは体を震わせ…ついに我慢できなくなったのか天に拳を突き上げて『宣言』する。

 

「あたしはイナリ! “(ダート)のイナリ”だっ!! 待ってなオグリキャップ!! 中央の“強者(ツワモノ)共!! 正々堂々と真正面から勝負だっ!! あたしは中央(ここ)に在りと教えてやらぁ!!」

 

 こうして、店内での『選手宣言』を終えたイナリ達は他の客から『うるさい』と苦情を受けて店から退散する事となったのだった…。

 

 

オマケ

 

「…ったく、料理も食わんと店から追い出されるんは二回目やぞ…腹減ったわい」

「あの時はキー坊が悪いんやろが…アカン、思い出したら腹立って来たわ」

「いや、悪ぃ…今日はせっかく誘って貰ったってのにあたしの所為で……」

「へっ、気にすんなよイナリ いつの世だって声がデカイヤツは排斥されると相場が決まってんだ お前のレース見せて鼻明かしてやりゃあ良いだろ?」

「み、ミノル兄さん…ありがとうよ」

 

 元・覇生流の仲の良さを見て心が温まっていた熹一であったが一つ気になる事を感じ、イナリに質問する事にした。

 

「そういや、イナリ お前の“狐面”やが…覇生を抜けたならいつまで付けてんのや? 正直あんまエエ思い出無いやろ」

「あん? この面は覇生のじゃねぇやい あたしが小さい頃に今世話になってる梼原の…姐さんと(ぼん)と夏祭り行った時に買って貰った“思い出の品”さ 今じゃサイズが合わねぇんで、衣装に取り入れてんだよ」

「子供の頃の思い出っちゅうヤツか…分かるで ウチもオグリと初めて“かけっこ”した時のシューズは未だに捨てられへんからな」

「ワシも同じや 親父(おとん)がワシの為に用意してくれた“パワーちゃん1号”も……久々に神戸の倉庫から引っ張り出すか」

「いやっ! この流れで明らかに大事にしてない物挙げるとか空気読めて無さすぎだろうがっ!! ミノル兄さん、ホントにキー坊(コイツ)大丈夫なのかいっ!?」

「…まぁ、杜撰なのは“強さ”とはあまり関係無いしな 話に聞いた限りじゃ、血の繋がった幽玄の当主も世界中フラフラしてたって言うし…案外、適当な方が良い時もあるのかもな」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。