[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

33 / 53
トダーの概念は以前、掲示板で見かけた物を使わせて頂きました。


機械のチカラ

 快晴の空の下、平日で貸し切り状態となっていた運動場のグラウンドにて“オグリキャップ”は降り注ぐ太陽にも負けない、とびきりの笑顔でとある相手との“駆けっこ”に興じていた。

 その相手とは───

 

「ふぅ……また私が勝ってしまったぞ、“デゴイチ” 本気を出せば私よりも早いんだから気遣いなんて無用だからな」

「ワンッ!」

「何だ? 走るよりも遊びたいのか? いいぞ、来いっ!!」

「バウッ!」

 

 オグリの声に応えるように嬉しそうな鳴き声を上げ、デゴイチと呼ばれた“犬”は彼女に駆け寄る。

 しかし、デゴイチは通常の犬では考えられない速度で、あわやオグリの身体を“貫こう”かとでも言わんばかりの勢いで向かって行ったのだが…まるで彼女の身体が“幽霊のように”すり抜けた事に驚き、辺りを見回した。

 

「!?(キョロキョロ」

「こら、デゴイチ! いくら私がウマ娘だからって今のは勢いが付き過ぎだ! 幽玄のみんなから“かわし”を習っていなかったら今頃、大変な事になっていたぞ!!」

「…クゥーン」

「うん、反省しているなら良いんだ デゴイチは“AI犬”だからな…最近まで“大変な場所”に居たんだし、力加減もまだまだ練習中なんだからそこまで落ち込む事は無いぞ」

「! ワフッ!!」

 

 かつては“最新の軍事兵器”として身体の殆どを機械に置き換えられた軍用犬『D-51』、通称“デゴイチ”は悲しそうに顔を伏せていたがオグリの『気にしていない』という態度を敏感に感じ取り、今度は“普通の速度”で彼女の身体に向かって行った。

 

「…ははは! そうだデゴイチ、“それ位”の強さなら大丈夫だ…こ、こら! 顔を舐めるな! くすぐったいだろ」

「バウッ! ワウッ!」

 

 そんな元・軍用犬と少女との触れ合いを少し離れた所で『引き気味』と『微笑ましそうに』という、各々が真逆の感想を抱いて眺める“二人”の姿があった。

 

「あの…“尊鷹”さん デゴイチちゃん、ですか? あの子が軍用犬って話は私も聞いてたんですけど…何て言うか、“凄い”ですね」

「そうだな、“ベルノ”君 私もこの“義足(メカ・フット)”を手掛けた男に改造を施されたという話は聞いていたが、我々武術家では太刀打ち出来ない程の戦闘力を持っている事はその目で確認している」

 

 本日、オグリの外出に付き合う事となった彼女の親友であるベルノライトと叔父である宮沢尊鷹が備え付けのベンチに腰掛けてデゴイチの感想を言い合っていた。

 

「熹一さん達よりも強いワンちゃんかぁ……って尊鷹さん! 何で義足を外して会話してるんですか!?」

「いや、年頃の娘さんの前で申し訳ないな 最近、“脚の調子”が悪くなってしまって小まめにメンテナンスはしているのだが…そろそろ、限界の様だな」

 

 ベルノの指摘通り尊鷹は自身の左足を取り外し、何処から出したか工具や油を使ってのメンテナンスを行っていたが付け直しても本人の納得が行く調子では無かったらしく、不満気な様子を見せている。

 

「……私も中央に行ってから聞いたんですけど、尊鷹さんって“元・理事長”さん何ですよね? 左脚もその時に…?」

「いや、脚に関しては中央に入って初めて担当した娘が『移植が必要になった』という話が出て私が立候補したからだな 『“彼女”の辛そうな顔をこれ以上見たくない』と言う個人的な理由であったが……私も活法を施し、担当した医者の腕も良かったのだろうな…その後は問題なく過ごせているよ」

「……性別も種族も違うのにそんな事が出来るなんて、凄い話ですね」

「勿論、丸々取り換える訳ではなく靭帯や諸々を部分的に交換したという物であったし、私の脚も鳳腿(ファルコン・フット)と呼ばれる特殊な物であったからなのだが……それでも十分無茶ではあったし、成功したのは正しく“奇跡”としか言いようが無い」

 

 オグリの事を語る以外での人間味が薄い尊鷹が見せた『憂いと喜びの感情』にベルノは静かに息を飲んだ。

 

「その後が少々面倒でな 私は変わらずトレーナーとして活動したかったのだが、理事が突然引退する事になったので他に候補もおらず『“彼女”を育て上げ、復活させた実績を持つ』という理由で一部の者から白羽の矢を立てられてしまったのだ」

「…あれ? でも、経歴を見ると理事になった後も何人か担当はされてましたよね?」

「そうだな 『片足だから』や『理事になったから』という理由など私を縛り付ける理由にはならない 雑務の殆どは私の秘書になってくれた“彼女”に任せて私は私の心の赴くまま、好きにやらせて貰ったよ」

 

 そう言って朗らかに笑う尊鷹にベルノは遠い目をする…。

 

「何と言うか…本当に尊鷹さんってオグリちゃんが言っていた通り『“自由”を愛している人』なんですね」

「ふっ…済まないが、褒められても何も出せないぞ……いや、待てよ? ベルノ君は確かスポーツ用品に関しての造詣が深いとオグリや熹一から聞いたが…本当かな?」

「えっ!? そ、それは…普通の人と比べればって程度ですけど……」

 

 『いえ、褒めてる訳ではありませんが』という思考に耽っていたベルノは尊鷹に振られた突然の質問に意識を戻し、慌てて質問に答える。

 

「何…今日は脚のメンテナンスに出向くつもりであったし、丁度良いと思ってな 私の脚やデゴイチの製作者である“ゴア博士”を君に紹介しようと思ったんだ」

「えーっと…お話の所々から察するに“軍事関係者”の方なんですよね? 本当に私がお会いして大丈夫なんでしょうか…?」

「問題は無いだろう 彼が在籍していたエリア52(研究所)は国の証拠隠滅の為に爆破され、彼自身も国の裏側に関わってしまったお尋ね者…つまり、私と同じく『フリーな立場』という訳だな』

「いえいえ、問題あり過ぎますよ!! 私みたいな一般人が会って良い存在じゃないですって!!」

「我々、宮沢家の者が国に殴り込んで諸々の“話し合い”は済んでいるからな むしろ国に代わって我々が彼の問題行動を監視している立場なんだ ベルノ君に何かあれば即座に“対処”する事を約束しよう」

「………そこまで尊鷹さんが仰るのであれば」

 

 拾った『対処』というワードに物騒な物を感じ、心から『行きたくないんですが…』という思いはあるも、同時に『これ程のすごい技術を持ってる人に会いたい』という思いも芽生えていたベルノは尊鷹の誘いに渋々といった様子で了承したのだった。

 

「いや、本当に安心してくれて構わないぞ 彼が医療用に制作した人型ロボットである“トダー”も私の妹である由美子の所に居るが問題無く同居していると聞いたし、同じく世話になっているデゴイチもオグリや龍星達に懐いているから一般人に危害は加えていないからな」

「す、凄いですね…宮沢家って でも、デゴイチちゃんは何でオグリちゃん達に懐いてるんですか?」

「それはデゴイチの“これまでの経歴”が関係しているのだが…オグリに関しては“見ての通り”さ」

 

 そう言って尊鷹はデゴイチと戯れるオグリに視線を向け、ベルノもそれに倣った。

 

「よしっ、デゴイチ! 次はボール投げだ! それっ!!」

「ダダダッ)…ワウッ!」

「ボールが地面に付く遥か前に先回りしてのキャッチとはやるな…ボールも傷付いていないし、合格だ!」

「ハッハッハッ…ワフッ!!」

 

「あっ…なるほど、分かりました」

「オグリの真っ直ぐぶつかって来る“親愛”はデゴイチにとっても心地良いのだろう あの姿を見て『数多の戦場を渡り歩いた軍用犬だ』等と思う人間はいないだろうな」

 

 その後、二人は遊んでいたオグリ達に声を掛けると皆で『脚とデゴイチのメンテ』、そして『ベルノの社会見学』の為にゴア博士の居る隠れ家(研究所)へと向かったのであった。

 

 

オマケ

 

 都内、ゴア博士の隠れ家(研究所)───

 

「フォフォフォ Mr.尊鷹…そろそろ来る頃だと思ったよ」

「流石に“製作者”ともなれば私が訪ねるタイミングもお見通しか…脚のメンテナンスを頼むぞ、“ゴア博士”」

「久しぶりだな博士…今日は龍星達の代わりに私が来た デゴイチの定期診察も頼む」

「フォ! これは珍しい、オグリキャップじゃないか!? 相変わらずの底知れぬ可能性を秘めた素晴らしい肉体だ! 君が良ければで良いんだが採血の一つでも……」

 

 見た目は小柄な老人ながらも全身をほぼ機械で置換した見るからに『マッドサイエンティスト』と言った風貌の“ゴア博士”はオグリを見るなり興奮した様子で彼女に駆け寄るも、それを阻んだのは尊鷹とデゴイチの一人と一匹であった。

 

「グルルルゥ…!」

「気が合ったな、デゴイチ ゴア博士よ…オグリ(私の姪)に手を出すのであれば、今此処に居る我々だけではなく鬼龍を含めた“灘の一族”全員を敵に回す事を忘れたのか?」

「い、いやっ! ジョーク…ジョークさ!! イヤだなぁ…彼女にあるのはあくまで“一流のウマ娘のアスリート”としての学術的興味ってだけで邪な気持ちは無いんだ ホントだよ?」

「尊鷹おじさん、私は別に構わないぞ? 健康診断みたいな物なんだろう?」

「いや、駄目だ あくまでゴア博士に協力するのは“監視”の意味も込められている 実験動物扱いされるのは恩義を受けた私達“灘の男達”だけで良い」

「…実験動物とは心外だね、君達程の優れた人材を私は知らないんだ 助けて貰った借りもあるんだし、君達が嫌がる事は決してしないよ……でもさ」

 

 そう言ってゴア博士は彼にとって初めて出会うベルノライトに目を向ける。

 

「“彼女”はどういう意図で連れて来たんだい? 自分で言うのも何だが、私も『まともな人間』じゃない 一般人と会っても恐怖こそすれ、興味を持ってくれるとは思えないんだがね」

「ああ、それなんだが今回ベルノ君を連れて来たのは……」

 

 尊鷹が言葉を言い終える前にこれまで辺りを見回した後、終始無言だったベルノは普段では考えられないスピードでゴア博士に近づき、その手を取る。

 

「凄い…凄いですっ!! その機械の手足、触ってみて分かりましたけど肌へのダメージが掛からないようにコーテイングされてるし、動作への負担が体に来ない衝撃吸収の処置も施されてるっ!! 周りに並べられた靴にしても履く人種を考えて様々な種類を取り揃えてるし、掛けてある中敷きも見た事が無い素材ばっかりです!! ゴア博士!! 靴にはお詳しいんですか!?」

「あ、あぁ…如何せん個人で工房を営む事になった以上、一番の儲け頭は“ウマ娘関連の品”だからね…昔取った杵柄から、オーダーメイドで靴を作って生計を立てさせて貰ってるよ…」

「いえっ! どれもこれも履く人の事を考え抜かれた素晴らしい品ばっかり見れて…私、本当に嬉しいです! 尊鷹さん、今日は連れて来て下さりありがとうございましたっ!!」

「……尊鷹、彼女は一体?」

「オグリの友人だが…ベルノ君であればこの“靴工房”を気に入ると思った私の考えに間違いは無かった様だな」

「あんなに嬉しそうなベルノは滅多に見れないんだ 尊鷹おじさん、私からもお礼を言わせてくれ」

「バウッ!」

 

 こうして本日、ゴア博士が営んでいる工房に常連としてベルノが加わったのであった。

 

 

オマケのオマケ

 

 都内、灘真影流の施術院───

 

「由美子さん…また腰痛めちまって、施術でも……うわっ!?」

「イラッシャイ」

「あら、北原さん久しぶりやねぇ “戸田亜”にビックリしたのん?」

「いや、戸田亜って…“人型ロボット”ですよね!?」

「少し前に兄から送られて来てねぇ 『医療用だから仕事を手伝わせてやってくれ』って言われたんで任せてみれば…気が利くエエ子でね、今では“宮沢戸田亜”として立派な我が家の一員なんよ」

「……何か、目の前にロボットが居るって変な感じですね」

「細カイコトハ気ニスルナ」

「こら、戸田亜! お客さんに何て口聞くんや!!」

「済マナイ、ユミコ」

「まぁ…取り敢えず、施術お願いします」

 

 その後、北原穣は全快した己の腰を擦りながら釈然としない気持ちを抱えたまま帰路に付いたのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。