[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
「オグリ、キー坊、よう来たね 待っとったヨ」
「由美子おばちゃん、お邪魔します 元気そうで何よりやな」
「この前はデゴイチの散歩を任せてくれてありがとう、由美子おばさん これはお母さんが作った焼き菓子だが『宜しければ皆さんでどうぞ』だそうだ」
「あらっ、これは嬉しいわぁ! 優希と龍星もオグリのお母さんが作った物は大好きやからねぇ…今はデゴイチと散歩に行っとる二人が帰ったら有難く頂くわ」
「おばさん お母さんの料理を褒めてくれるのは嬉しいんだが、私もおばさんの作ってくれたお団子や草餅が大好きなんだぞ」
「はははっ! ほんに、オグリは“おねだり上手”やねぇ! お土産にでも渡そ思うとったけど、今から用意するさかい待っとってな?」
都内に構える整体道場兼、灘真影流の支部の管理を任された宮沢家の長女である“宮沢由美子”の家にオグリキャップと宮沢熹一が来訪し、現在はリビングに腰を落ち着けていた。
「ったく、オグリ…来て早々に食い
「何を言ってるんだ、キー坊 私は催促した覚えはないぞ でも…おばさんが用意してくれるというなら喜んで頂くつもりだ」
「せやで、キー坊 アタシもオグリが可愛い事言うんでついついあげてまうんよ さて…お菓子はこっちで用意するとして、お茶の方は……」
「用意デキテルゾ、ユミコ キーボー、オグリノ分ダ 熱イカラ気ヲ付ケロ」
最近になって宮沢家の一員となった医療用人型ロボット“トダー”こと“宮沢戸田亜”が現れ、淹れたお茶をオグリと熹一の前に用意した。
「ありがとう、戸田亜 ゴクッ)うん…丁度良い熱さだな」
「ズズッ)……確かに美味いが、由美子おばちゃん 何や、“コイツ”エライ馴染んどるのォ」
「鷹兄ィがフラっと来て置いて行ったっちゅう出会いやったけど、
「オグリ ソノ団子ハカロリー低メニ作ッテイルガ、オ前ノ摂取量ハ“異常値”ヲ超エテイル 食ベ過ギニ注意シロ」
「モグモグ)…むっ!? そうなのか? なら、帰りは長めにランニングをする事にしよう」
「…まぁ、『デリカシーが無い』所は流石ロボットや思うとるけどね」
「分かるわ…ワシが前に会った“別の”トダーもそんな感じやったしな」
“人型ロボット”と“ウマ娘”という不思議な組み合わせにすっかり慣れてしまった二人は生暖かい視線で見守っていたのだが、熹一が本来の来訪理由を思い出して由美子に話し掛ける。
「せやった、由美子おばちゃん 悪いんやが“コレ”見てくれへんか?」
「何や…道場生の本道場から
「さっきの会話でも『忙しゅうなった』って話になったっちゅうに申し訳ないんやが、一人でエエんや 預かってやってくれへんか? 出来れば住み込みでな」
熹一に差し出された道場生のプロフィールは以前、彼がメキシコで身柄を引き取って日本でオグリのセラピーを受けた年若いウマ娘の物であった。
「アタシは別に構わへんけど、わざわざこんな形式で頼む辺りキー坊も『大人になった』思えて嬉しいもんやねぇ…」
「おばちゃん…ワシだってもうエエ年なんや 仮にも“経営者”としてそこら辺はしっかりせなアカンと思うとんのやで?」
「…それもあるんやけどね キー坊がそう思えとるのもきっと『お母さんやオグリの為』なんやろ?
「なんや、否定できんのォ……確かにワシも
「……鬼龍の件もそうやね 何時までも悪ガキみたいに人様に迷惑を掛けとる
噛み締めるようにオグリとその母への想いを語る由美子に熹一の視界は気付くと“ぼやけており”、それを誤魔化すように天井を見上げた。
「あー…なんや、おばちゃん 最新型のロボットや若いモンと同居しとんのに電灯を含めて内装のセンスが軒並み昭和やで? 忙しさに比例した蓄えもあるし、そろそろ改装したらどうや?」
「アタシは“こういうの”が気に入っとるし、今のままでエエんヨ そんな事よりキー坊、今度
熹一が天井を見上げて少しだけ皮肉気に話す言葉の意図を理解していた由美子は“それ”に気付かない素振りを見せて甥っ子に話題の変更を勧める。
「……おうっ、この子の事なんやが外国で出会った時に身寄りを失っとってな “住んでた所の治安が悪い”のと“年も若すぎる”っちゅうんでワシ等の責任で本道場に連れ帰ったが、心が弱っとってのォ…帰国する時にオグリのレースを観せたら元気出た様で、本人に会わせたら大分喜んでくれたんや」
「そら良かったねぇ
「いや、聞いてくれやおばちゃん ソイツがとんだ“じゃじゃウマ娘”でな! 元気になったら勝気な性格が前に出て『オグリのレースがテレビでしか観れないこんな山奥イヤ!』とか言うんやでっ!?」
「…随分と日本語が上手な子なんやね、アタシも“外国人”や思て少しだけ身構えとったんヨ」
「あぁ、親が日系人だったらしくてな…ってそれはエエ 挙句ワシに『キーボーともあんまり会えないなんて“約束”と違うよ!』なんて言われたら……コッチも近場に連れて来るしかない思うたんや」
そう言って頭を抱える熹一に“気になるワード”を拾った由美子は疑問を投げかけた。
「なんよ、アンタ『約束』って…“また”女の子に『勘違いさせる様な事』言ったんやないやろな?」
「いやいや、おばちゃん…“また”も“勘違い”も意味わからんって……ただワシはあの
「……成程、そら言い方悪いけどあんな“秘境”で身体鍛えとる生活ばっかしとんのやったら『騙された』思うのも仕方ないやろな」
「…あの
「分かったわ そう言う事情なら“アタシ達”も協力したろやないの」
事情を聞き終えた由美子は胸を叩き、笑顔で新たな同居人への受け入れを快諾した。
「ホンマかっ!? イヤ、おばちゃん助かるわ…真っ先に神戸の支部を考えてたんやが、
「…
「そらエエわっ! そん時は頼むで、由美子おばちゃん!!」
「なんだ? 二人とも話は終わったのか?」
用意されたお菓子を食べ終えて戸田亜と談笑していたオグリは熹一と由美子が穏やかな雰囲気になった事を察して会話に入って来る。
「済まない…二人が真面目に話をしていた物だからどうしようかと思っていたら、戸田亜に話し相手になって貰ってたんだ」
「二人トモ オグリガ寂シソウニシテイタゾ」
「おや、悪かったねぇ…オグリ」
「せやな “あの
「そうだったのか、それは良かった」
「キーボー、目尻ニ泣イタ跡ガアルゾ 何ガアッタ?」
「うるさい、ほっとけ! オグリ、気にせんと
先程の涙の痕跡を戸田亜にデリカシーなく指摘され、顔を真っ赤にした熹一はオグリに実家への連絡を催促し、オグリは頭に疑問符を浮かべながらも指示通り携帯を取り出した。
「? ああ、キー坊が大丈夫なら良いんだが……待ってくれ、お母さんからLINEが来ていた」
「なんや? 帰りになんぞ『足りない
「……『突然だけど今から静虎さん、尊鷹さんと中国へ行く事になったけど二人ともお土産は何が良い?』だそうだ」」
「!? 何があったんや!?」
「どうやら、要約すると…お父さんが急に“仮面を付けた集団”に襲われたから事情を聞くと、以前の仕事で中国の武術集団から恨みを買ったので『話を付けに行こう』という事になり、お母さんにも護衛が必要になったんだが…たまたま居合わせた尊鷹おじさんが『折角だから夫婦水入らずで旅行がてらに一緒に行くと良い、私が護衛に付こう』という話になってしまった……と、言う事らしいな」
オグリからの説明を聞いた熹一は目を覆い、頭の奥から来る鈍痛に耐えていた…。
「アカン…“ツッコミ所”が多すぎて頭が追い付かんわ」
「……鷹兄ィなりに二人の仲を心配しての提案なんやろうけど、世界中回ってからなんやもう“自由さ”が更に上がっとる気ぃするわ」
「いやいや、由美子おばちゃん…あのオッサン、自分で『夫婦水入らず』言うてんのに“一緒に行く”のがホンマ訳分からんぞ」
「でもキー坊 尊鷹おじさんなら二人が気にしないように“空気に溶け込む”くらいの事はやりそうだぞ」
「オグリはオグリで尊鷹を何やと…いや、確かにソレ位やっても不思議やないなあの“妖怪”は……」
“偉大なる長兄、宮沢尊鷹”に対して各々の思いを巡らせていた三人であったが、空気変えるように由美子が手を打ち、熹一 とオグリに提案する。
「よしっ! 今日は二人ともアタシん
「えっ! 良いのか由美子おばさん」
「こうなったら、しゃあないわ “今日持ち込んだ話”もキー坊から
「…そうさせて貰うわ 悪いのォ、おばちゃん」
「それに今度来る子が“選手志望”なら丁度エエ子もおるしな なんせ……」
由美子が言葉を言い終える前に玄関が開く音が聞こえ、現在の同居人である“長岡龍星”と“小倉優希”が買い物袋を片手に下げて“デゴイチ”と共に帰って来た。
「ただいま、由美子さん デゴイチの散歩と夕食の買い出し終わりました」
「ただいまー! ほらデゴイチ、足拭いてから上がってね」
「ワンッ!」
「お帰り二人とも、お邪魔させて貰ってるぞ」
「えっ!? オグリさん!? 熹一さんまで!!」
「うわぁ、珍しい! 最近は良く
「バウッ! ワウッ!」
驚く二人を他所に気配に気付いていたデゴイチは『よく来たな』と言わんばかりの嬉しそうな鳴き声を上げてオグリに駆け寄って行き、彼女から撫でられる手を気持ちよさそうに受け入れていた。
「せやった、龍星……お前サラっと“中央の資格”持っとったな」
「え? いきなり何ですか、熹一さん 確かにこの前、そこそこ苦労して資格は取りましたけど…腹違いとは言え、弟の姫次が取っていて俺が取ってないのは悔しかったですからね」
「まだ十代やっちゅうに“鬼龍の子供”はどいつもこいつも頭エエのォ しかも取った理由が『弟への対抗心』なんやから大したモンや」
「いえ…別にそれだけじゃないですよ 人間の可能性を知れる“武術の探求”への興味は失われていませんが、それと同じ位“ウマ娘の不思議”にも興味を惹かれます 『人間とは違う彼女たちの力の源とは?』とか『相性の良いトレーナーとの“絆”で引き上げられる
熱弁する龍星を横目に熹一は『色々理屈を捏ね回しとるが“中央の”資格を取った一番の理由はオグリの近くに居れるからやろがい』という思いを感じていた物の、今回は“お願いする立場”である事を意識して口には出さなかった。
「…しゃあけど、姫次といい
「いやいや、今の理事長さんも幼いながらも尊鷹さんみたいに懐広いらしいし、そもそも
「ゆ、優希ちゃん…それ、フォローなの?」
「ルーセー、細カイ事ハ気ニスルナ」
「ハハハ…ありがとう、戸田亜……あっ、熹一さん 戸田亜で思い出したんですけど、今度中央で『“トダーシリーズ”が何体か配備される』って話聞いてますか?」
突如、龍星から語られる衝撃的な話題に熹一は『AIの反乱』というワードが頭をよぎり、思わず聞き返してしまった。
「は!? 何やその“トダーシリーズ”って、ワシは知らんぞ!?」
「いえ、この前…理事長の秋川やよいちゃんと秘書の駿川たづなさんが
「…オイオイ、“製作者”言うのはアレか?」
「ハイ…“ゴア博士”です どうやらサポート科の技術顧問に収まる様で鬼龍も『俺が目を光らせておいてやる』とか言ってますけど、正直期待なんか欠片もしてないので俺も監視に回る事にします」
「…分かった 中央寄ったらワシも気を付けるし、
「えっ? 静虎さん、今海外なんですか?」
龍星の疑問に答えるように鍋を鳴らした由美子が現れ、本日の予定を説明する。
「今日から
「えぇ!? そ、そうだったんですね……」
「そういう事になったんで、今日はよろしゅう頼むわ 礼の一つに組み手位なら付き合ったるで」
「本当ですか!? 是非、お願いします!!」
「おうっ! お勉強ばっかで腕が鈍ってへんか確かめたるわ」
「オグリがこっちで泊りなんて初めてじゃない? 今日は朝まで話そっか」
「うん 優希とデゴイチ、それに由美子おばさんとも沢山話したいと私も思ってたんだ」
「ワンッ!」
手伝いの要請をしたというのに親戚同士の集まり特有の高揚感で一向に動く気のない“子供達”に由美子はため息を一つ吐くも……
「ユミコ、布団ノ準備ヲシテクルゾ」
「はいヨ、よろしくな戸田亜」
賑やかになった家の雰囲気に満足し、笑顔で夕食の準備に取り掛かるのであった。
読み直してみたら由美子叔母さんって宮沢家の人間と思えない位、真っ当な人でした。