[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

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可愛げあるけどガラの悪い二人の話です。


肉切包丁の黒い煌めき

「ヒャハハっ! 大量大量!! 笑いが止まんねぇぜっ!!」

「…無駄にテンション(たけ)ェな、オイ “運転中”だろうが…事故ンなよ?」

「気にすんなよ、“ブラッキーエール”! こんな良い気分で運転してんだ、俺が事故るなんてありえねぇって」

「…ったく、“姫次” アンタが“人参掘り”にそこまでご執心とはアタシも思わなかったよ」

 

 現在、鬼龍の息子の一人である“鬼塚姫次”は愛車であるハマーを駆り、後部座席に積まれた大量の人参に大変ご満悦といった表情を見せていた。

 そして、そんな彼の隣に腰掛けて冷めた視線を向けていたのは若くして中央トレーナー資格を持つ姫次の担当である“ブラッキーエール”、整った顔立ちに少しだけ粗暴な雰囲気が滲むウマ娘である。

 

「イヤ、俺も子供(ガキ)の頃に“色々”あってよ こういうイベント行事ってロクに参加した覚えもねぇから無駄にテンション上がっちまった」

「“色々”ってなンだよ……ま、チビッ子共にビビられてしょげるアンタが見れたのは正直、笑えたけどな」

「あの時はお前が笑顔でファンサービスしてくれたんで助かったわ やっぱ“中央の選手”ってのは何だかんだで愛想良いな 今日は誘って正解だったぜ」

「休みだからって、いきなり『人参掘りに行こうぜ』なンて連絡来た時は『コイツ頭に変なモンでも湧き始めたか?』とか思ったが…まぁ、アタシもイベント事は嫌いじゃねェし、たまにはこういうのも悪くなかったよ」

 

 二人が本日の成果と感想を語り合っているとパーキングエリアが見えたので休憩の為に一旦駐車し、時間も昼を回っていたのでフードコートへ向かう事にした。

 

「そもそも、今更だがアタシと年もそう変わらないアンタが“車持ち”ってのも変な感じだな ハマーなんて外車、中古でも結構すんだろ?」

「あぁ、あの車は俺が子供(ガキ)の頃にちょっかい掛けて来た子悪党が今度は親戚に手を出そうとしたんで…ボコった後に“慰謝料代わり”に貰ってやったんだ」

「オイオイオイ…随分と物騒な話じゃねェか」

「コイツは“親父の”…つーか、“血筋()のサガ”だな 程度の差はあれ、普段温厚な人ですら身内に手を出したヤツは無性にブチのめしたくなるんだよ……あ、何食う?」

「アタシも大概、『血の気が多い方』って自覚はあるが“マジモン”はやっぱ違うな…よくもまぁ、中央はアンタを受け入れたモンだ……ん? 地方限定の肉まんがあるじゃねェか、腹もあんまり減ってないしアレにすっか」

 

 姫次から語られる物騒な話を最早、“普段通りのやり取り”として受け入れていたブラッキーは気にする素振りも無く、フードコート近くの看板に貼られていたメニューを物色する。

 

「じゃ、限定肉まん二つ頼むわ……いや、俺だって、まさか受かるなんて思ってなかったつーか…『試験の難易度が激ムズ』って聞いたから『なら、挑戦してみっか』程度の気持ちで受けただけっつーか……」

「冷やかし目的で受けて合格したンなら蹴っちまえば良かったのによォ、何でアタシっていう担当が付くまで残ってたんだよ?」

「……そりゃお前、俺も最初は『ガラじゃねぇ』ってバックレるつもりだったけどよぉ…ブラッキー、“お前の走り”を一目見て気に入っちまったからだよ」

「ハァ!? ンだよそれ!! アタシは初めて聞いたぞ!?」

「何つーか…人間って『いつ死んじまうか分かんねぇ』だろ? 俺はいつもそんな事を考えて生きてるから、“その時”が来るまで『やりたい事は絶対やり切ってやろう』ってのが人生の最優先目標にしてんだよ」

「……それが『アタシの担当になる』って事かよ?」

「自分で言うのも何だが、俺はロクな人間じゃねぇ…そんな人間でも“キラキラしてる(モン)”には憧れちまうんだ さっさとバックレようとした“あの日”、走ってるお前の姿が“他の誰よりも”輝いて見えて…担当トレーナ―になりてぇなって申請書出しちまった」

 

 生まれつき心臓の疾患を持ち、明日とも知れない己の命の使い道を常に考え、どう言い繕っても『自分は一人の人間を死なせた』という罪悪感を抱え続けていた鬼塚姫次という人間は普段、人前で被っている“悪党ぶった仮面”を外して担当であるブラッキーエールに本心を打ち明けていた。

 それを受けた彼女の反応だが───

 

「………あのよォ! 姫次、アンタ“自己評価”低すぎンじゃねェか!?」

「えっ!? そ、そうかぁ?」

「アンタがなに抱えて生きてンのかなんて知らねェし、聞く気もねェ!! アタシがアンタを担当と認めてんのは『鬼塚姫次は“凄いヤツ”』って思ってるからなンだよ!! 次にその評価を下げる様な舐めた事抜かしやがったら張っ倒すからなっ!!」

 

 姫次を叱り飛ばし、更には胸倉を掴んで彼の目を真っ直ぐに見据えていた。

 

「アタシが知ってるアンタは『いつだってヘラヘラ笑ってる自己中野郎』なんだ! それが今のアンタ…“アタシが信頼してるトレーナー”なンだよっ!! シャキっとしなっ!!」

「……ヒャハ、ヒャハハハハ!! そうだよなっ!! あー、悪ぃ悪ぃ…マジで“らしくねぇ”事言ってたわ、忘れてくれよ」

「ハッ! あんな“面白い姿”忘れたくても忘れられるかっての せいぜいアタシの心の中だけで楽しませて貰うさ」

「ま、言い触らされるよりはマシかね…オイ、もし誰かに喋ったら次の“オグリキャップ対策”はお前だけで考えろよな」

「あぁンっ! そういやアンタ、アタシが初めてオグリのヤツと勝負するって時に親戚だって事隠してやがったな!? アレはどういうつもりだ!!」

「ありゃあ、『舐めてた田舎者に粟食わされるお前が見たかった』からに決まってんじゃん」

「チックショウ! その“憎々し気な所”、流石アタシのトレーナーだ!! 詫びとして肉まんの代金はアンタ持ちで勘弁してやるよ!!」

「その程度なら別に構わねぇっての…ったく、こう見えて俺だって結構な金持ちなんだぜ? もっと高い(モン)ねだれよな」

「バァカ、アタシ等の関係に“そんなン”持ち込んだら白けンだろ 相方(ダチ)と遠慮せず言いたい事言い合えンのが一番の贅沢って頭イイ癖に知らねェのかよ?」

 

 そう言ってブラッキーが姫次に見せたのは普段、彼女がレース勝利後に数多くのファンを魅了する“輝く笑顔”であった。

 “それ”に『目を奪われた』とは気恥ずかしさを感じて言い出せなかった姫次であったが、代わりに普段よりも素直な気持ちで自分の“愛バ”であるブラッキーエールに向き合う事にした。

 

「おー、これでも感謝してんだぜ 何時だって“俺の世界”を広げてくれるお前の存在にはよ」

「ハハッ! だったら感謝の一つに飲み(モン)も奢りな、喋ってたら喉渇いちまったンでよぉ」

「お安い御用だ 代わりと言っちゃなんだが、帰りに静虎さん達の所に人参お裾分けすんで手伝ってくれや」

「アァン? 静虎って…“オグリの親父さん”の所かよ、別にアタシは構わねェぜ」

「あの人達にも子供(ガキ)の頃から世話になってるし、息子である宮沢熹一は俺の師匠だからな 両親に恩を売っとけば油断して今度の“師匠越え”の勝率も上がるかもと思ってよ」

「……ンな事言って、アンタがあの兄さんにボコられて帰って来ンの何回目だァ? アタシが知ってる限りじゃ両手の指でも足ンねェぞ」

「ヒャハハハ! 毎回俺にトドメ刺さねぇ、あの人が悪いんだよっ!! 現在、この世で最強の男である『宮沢熹一を超えんのが』俺の武術家としての最優先目標なんだからなっ!!」

「…ったく 『勝手にやってろ』って言いてぇンだが、あの兄さんも中央に来てから今やオグリのヤツに負けねェくらい“人気(モン)”だ あんまちょっかい掛け過ぎてファンに後ろから刺されンじゃねェぞ」

「安心しろよ 子供(ガキ)の頃の経験上、“後ろから刺される事”には常に警戒してんだ ンなヘマはやらねぇっての」

「だから、アタシが言いてェのは……ってもういい さっさと食い(モン)買って車に戻ンぞ」

「お、おうっ…分かったぜ」

 

 『いつの時代でも変わらぬであろう男のバ鹿さ加減』に呆れ果てたブラッキーは姫次との会話を打ち切り、止めていた足を再び動かして本来の目的地であるフードコートへと向かう。

 そんな“愛バ”の不機嫌そうな姿を見た姫次は慌てた様子で彼女の後を付いて行くのであった…。

 

 

 

オマケ

 

「あらっ! こんなに沢山の人参…いつも何かある度にお土産ありがとうね、姫次君」

「いや、いいっスよ 俺も今日は調子に乗って掘り過ぎただけなんで、奥さんが喜んでくれんなら持って来て良かったっス」

「姫次…今日も家には寄って行かないのか? 普段から良くして貰っている以上は此方としても、もてなしの一つでもしたい所なのだが……」

「イヤイヤ、静虎さんも俺みたいな“超危険生物”に気ぃ使う必要ねえって 今日だって立ち寄ったのは単なる気紛れなんだからさ 今は担当も付き合わせてるし、さっさと帰るよ」

「そう…なら、今度来る時はお腹を空かせて来なさい そっちのお嬢さんとまとめてお腹いっぱいにしてあげるから」

「“心ある人”から受けた恩に報いるのは人間として当然の事だ 中央で何か困った事があって熹一にも頼れない時は私の所に来なさい……力になろう」

「あー……“機会があれば”頼むわ じゃあ二人とも、またな」

 

 笑顔で親愛の情を向けて来る宮沢夫妻に対し、曖昧な返事で濁すと逃げるようにハマーを走らせる姫次に隣に座っていた彼の“相方”は口を押さえて必死に笑いを堪えていた。

 

「ククククク……何だよアレ! 何が“超危険生物”だっつーの!! 照れて親戚とマトモに喋れねェただの“甥っ子”じゃねェかよ!!」

「うっせぇ、うっせぇ、うっせーっ!! あの人達、俺がどんなに悪ぶっても『分かってるから』って態度崩さねぇから苦手なんだよっ!!」

「ククク…で? それでもちょくちょく通ってンのはあの人等の事が“好きだから”なンだろ?」

「ちげーって! 来る前にも言った通り宮沢熹一を油断させる“罠”だって言ってんだろっ!?」

「いや…そもそもアンタの髪型一つ取っても、あの兄さんへの“リスペクト”が隠せてねェし…どんだけ師匠の事が好きなンだよ」

「だーかーらっ! ちげーって!! あんな“バ鹿強いだけの甘ちゃん”好きなワケねーだろうが!!」

「あー、笑ったわ…ま、どっちでもいいけどよォ、今は随分と“不機嫌”だし…事故ンなよ?」

「余計なお世話だ、ブラッキーエール! 気分最悪で運転しようが、俺が事故るなんてありえねぇって!!」

 

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