[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

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龍星とタマの組み合わせを試しに書いてみたかったので。


稲妻龍、ハワイに出没注意

 ハワイ・オアフ島のホノルル空港に降り立ったオグリキャップ。

 彼女の格好はアロハシャツとサングラス、首には花飾りであるレイを下げているという所謂“バカンスモード”に入っていたのだが、表情は有馬の決戦時を思わせる“必死”と言わんばかりの物であった。

 それもその筈である、何故ならば彼女は現在───

 

「お父さん、しっかりしてくれ! 空港に到着したからなっ!! 気をしっかり持つんだ!!」

「オ…オグリ、心配を掛けて済まない ワシは…大丈夫や」

「ちょちょちょーい! そない“グロッキーな状態”で言うても説得力ないで!? 静虎のオッチャン!!」

「静虎さん…この前、『中国へ行った』って話を聞いて克服したと思ってたんですが…“飛行機嫌い”、治ってなかったんですね」

 

 親友であり宿敵(ライバル)であった“タマモクロス”と従弟である“長岡龍星”と共にストレッチャーに乗せられた父、“宮沢静虎”に付き添って彼を運ぶ救急隊員と並走していたからであった。

 

「皆…今回は折角ハワイに来れたというのに私の所為で済まない…調子が良くなるまで観光をして来るといい……」

「いや…お父さんを一人残して私達だけで楽しむ訳にはいかないよ せめて私だけでも残っているからタマと龍星だけでも楽しんで来てくれ」

 

 『お父さんを放っておけない』というオグリの強い希望により、結果としてタマと龍星の二人はハワイの空港に取り残される事となったのであった…。

 

「…龍ちゃん、静虎のオッチャン大丈夫やと思うか?」

「俺は今日、静虎さんの“仕事”の手伝いでの付き添いだったから『残るなら自分が』って思ってたんですけど…活法の練度はオグリさんの方が俺よりも上なので、恐らく問題は無いと思いますが…」

「せやった、“活法”ゆうのはオグリんが宮沢家で一番上手いってキー坊から聞いとったわ なら、これ以上の心配は無用やな」

「はい…しかし、タマさん 今日は本当にすみません…本来であればオグリさんと一緒のバカンスを楽しみたかったでしょうに、俺と一緒になってしまって」

「気にすんなや、龍ちゃん! ウチが引退したからってみんなが気ぃ使ってくれるんはホンマに嬉しいんやで? その上、今回は『ハワイへご招待』と来たもんや 家族には土産(モン)ぎょうさん買うてやらんとアカンなっ!(バンッ」

 

 そう言って笑いながら力強く背中を叩くタマに龍星は少しむせ込んでしまうも、彼女の笑顔につられて端正な顔に年相応の笑顔を浮かべる。

 

「ゴホゴホッ)…はいっ! 俺も今日の手伝いを終えたら、『由美子さんや優希ちゃん達にお土産を』と思っていたので…折角ですから早目の品定めに行きましょうか、タマさん」

「それでこそやで、龍ちゃん! 頭エエって聞いとるし、英語もペラペラなんやろ? ホテルに荷物置いたらガイドは頼むでぇ!」

「いえ…それなんですが、静虎さんから事前の説明を受けていまして…今回は『“こちらの”知り合いがガイドを買って出てくれた』との事なんです」

「なんや、そうやったんか? ほなら、ウチ等はこのまま空港(ここ)で持っとればエエんやな?」

 

 龍星からの説明を受けたタマは辺りを見回したが“それらしき人物”は見受けられず、場所を移動すべきかと考え始めた頃に二人の背後から“少女の呼び声”が聞こえた。

 

「あの、“おじちゃん”…いえ、宮沢静虎さんと一緒に来られたんですよね?」

「…そうやけど、お嬢ちゃんが今日のガイドさんなんか?」

「はい、私の名前は“マナ”って言います 昔、静虎さんにはお世話になって…今ではこのハワイで叔母さんと一緒に生活をしてるんです」

「あなたが…お初にお目に掛かります 今回、お世話になる長岡龍星と申しまして…隣に居るのは日本で“スターウマ娘”と呼ばれたタマモクロスさんです」

「タマモクロスさんの事は私が小さい頃に静虎さんから聞かされていましたし、有馬記念でのオグリさんとの手に汗握る戦いは叔母さんと一緒にテレビで観てたんですよ」

「そら、嬉しいわ 娘のオグリんだけやなくウチの事も宣伝してくれるんやから、静虎のオッチャンにはホンマ感謝やな」

「はい……えっと、龍星さんは静虎さんの親戚ですよね? 雰囲気がとっても似ているので一目で分かったんですよ」

「えっ!? そうなんですか? よく『父親の方に似てる』とは言われるんですが……静虎さんに似てるって言われるのは初めてで…正直、嬉しいです」

「ホンマか、マナちゃん? こない“眼帯ボーズ頭”がホンマに静虎のオッチャンに似とるんか?」

「ちょっ…タマさん!?」

「ふふふっ…はいっ! 見た目は確かにちょっと怖いですけど、『優しそうな感じ』が“おじちゃん”を思い出して…安心できるから声を掛けようと思ったんです」

 

 朗らかな笑顔を見せるマナに龍星とタマが僅かに感じていた異国への緊張感は霧散し、その空気のまま彼女に今回のガイドをお願いするのであった。

 

──────────────────

 

「おじちゃん……“また”病院に運ばれちゃったんだ 大丈夫だといいけど……」

「心配あらへんって、マナちゃん! 今、あのオッチャンには世界で一番カワイイ“娘”が付いとんのやから、あっちゅう間に元気になるわ!!」

「うん、ありがとうタマちゃん 今日のお仕事を頼んだ“メリー叔母さん”にはおじちゃん達の居場所を伝えておいたから、後は『二人のエスコートを続けなさい』って言われてるし、このまま観光を続けよっか?」

「俺としても丁度良いですよ 今日の俺の仕事の一つは『マナちゃんの護衛』ですからね…図らずとも望む状況になった以上、二人の事は全力で守りますから」

 

 しばらくハワイの街並みを散策してすっかり打ち解けた三人は今後の予定を話し合っていた。

 

「そういや龍ちゃん、今更やけど…静虎のオッチャンが受けたっちゅう仕事の内容って何なんや?」

「それは私の方から説明するね、タマちゃん 私って今一緒に暮らしてるメリー叔母さんと血は繋がってるんだけど…ちょっと“複雑な関係”って言うか…“それ”を嗅ぎ付けた人達がおじいちゃんの代からやっている事業に口出ししてきたらしくて、最近は暴力事件にまで発展しちゃったの……」

「なんや、『南の楽園』言われてるハワイ(ココ)でも“下らんトラブル”って起こるんやなぁ……」

「その時に私を守ってくれた“デューク”さんも怪我をしちゃったから、どうしようかって話になって…そのデュークさん本人から『日本に居るセイコ・ミヤザワに頼んではどうだろうか?』って提案されたから叔母さんが依頼する事になったの」

「“ハワイアン・ブレード・スター”のデュークさん…ですね? 俺も『素晴らしいナイフ使いだった』と静虎さんから聞かされていましたから……怪我をしていなければ、仕事の後に手合わせをお願いしたかった位です」

「私としては周りに居る人達に迷惑を掛けるくらいなら、いっそ家を離れてまた『一人に戻ろうかな』って考えてたんだけど…それを知ったメリー叔母さんが“悲しそうな顔で怒ってくれた”から……結局、皆に甘えてハワイ(ここ)に居させて貰ってるの」

 

 “その時”の事を思い出して嬉しい様な、悲しい様な表情を浮かべたマナを見てタマは鼻をすすり、龍星は呼吸を整えて瞳に“闘る気”を漲らせていた。

 

「ズズッ)……許せへん 『“想い合っとる家族”をカネの為に引き離そう』なんて人の皮を被った畜生やっ! 安心せぇ、マナちゃん!! 静虎のオッチャンは“そういう輩”を絶対に許さへんからなっ!!」

「はい…タマさんの言う通りです 俺も同じ気持ちですし、“金の動かし方”であれば鬼龍(父親)から不本意ながら手解きを受けています…悪党共(そいつ等)が静虎さんの“肉体的制裁”で反省しない手合いであれば俺が“社会的制裁”を加えますから…安心してください、マナちゃん」

「あ、ありがとう…二人とも でも…龍星さん、顔が恐くなってるよ…?」

「…マナちゃん分かったやろ? 確かに静虎のオッチャンみたいに優しい所はあるんやけど、龍ちゃんって基本的に“ヤバい奴”なんやで?」

「そういう人道的な優しさはオグリさん、優希ちゃん、そして…タマさんみたいな“良識ある同世代”が居てくれるので俺は全力で、心のままに突っ走れるんですよ」

「あのなぁ、いいかげん“外付けのストッパー”に頼らんと自分で止まらんと早死にすんで?」

「その時はその時ですよ だって…俺は静虎さんを心から尊敬し、彼の薫陶を受けているとはいえ…“悪魔の息子”なんですから」

「龍ちゃんは頭エエんやけど、『付ける薬が無い』レベルの大バ鹿(モン)やからなぁ……」

 

 タマの心底呆れかえった表情を見ても爽やかに笑い返す龍星を見てマナは『確かにおじちゃんとは違う』という思いはあった物の、同時に『おじちゃんと同じ“真っ直ぐさ”を持つ人』だという安心感を覚え、今回の依頼が成功に終わるだろうという確信を持ったのだった。

 

──────────────────

 

「メリーさん…病院までご足労をお掛けして、申し訳ありません」

「調子は…というか、今回の“依頼”は大丈夫なのかしら、宮沢さん?」

「大丈夫だ、メリーさん 私の活法が効いてくれたようでお父さんは完全復活したよ」

「アナタがオグリキャップ……テレビで観ると雄々しさすらあったのに、実際に見ると随分とキュートなのね?」

「むっ! 何を言ってるんだ! 私なんかよりお父さんの方がずっと可愛いぞ!!」

 

 今回の依頼主である“メリー”との会話でオグリキャップは彼女の持つ謎の逆鱗に触れられた為か、父である宮沢静虎の『可愛らしさ』を熱弁し始めた。

 

「そもそも、今回の体調不良だって飛行機内で握った手が私のだから効果が無かっただけで“お母さんの手”だったらお父さんは大丈夫だったんだ! そんなお父さんはとっても可愛いと思う!!」

「お、オグリ……それ以上は勘弁してくれんへんか…?」

「アハハハっ! 分かったわ…初めて会った時はそんな事思わなかったけど、アナタのお父さんもとってもキュートねっ! でも、そんなアナタ達よりも私の“姪”の方がもっと可愛いわよ」

「メリーさん…マナちゃんの“その後”は……」

「私達に気を使って塞ぎ込む事が多くなったけど、バ鹿な子よ…『あの子が再び一人になる』っていうのは『私を再び一人にする』って事に思い至らないんですもの……」

「マナちゃん…か メリーさんはその子の事を大切に想ってるんだな」

「“血が繋がっているから”ってだけじゃこんな関係にはなれないわ 私もマナ(あの子)も『一人ぼっちは寂しい』って思いを共有する“仲間同士”ですもの…なら、お互い助け合わないとね」

「うん、『血の繋がりが重要じゃない』っていうのは…私も分かるよ」

「そうやな…オグリ メリーさん…マナちゃんを悲しませる事にならぬ様、本日の仕事…“全力を以って”取り組ませて頂きます」

 

 メリーの(マナ)に対する想いを聞いた二人の心に灯がともった所で、当のマナ(本人)が笑顔で手を振りながらタマと龍星を伴って病院へ向かっていた。

 

「おじちゃーん! 久しぶりだね!! 元気になった!?」

「はいっ! お久しぶりです、マナちゃん!! オグリのお蔭ですっかり元気になりましたよ!!」

「オグリん、お疲れさん! “浮かれたカッコ”でオッチャンの施術やったから大変やったろ?」

「…そうだ、すっかり自分の格好を気にしてなかった 病院の周りに下げてたレイの花びらは落ちてないか?」

「気にしなくても良いんじゃないですか? 『お父さんの為に必死になる娘』を咎めるなんて野暮な真似、“南の楽園”には似つかわしくないでしょうし」

 

 各々が会話に花咲かせていた頃、メリーが乗って来た車に積んでいたであろう“ウサギの縫いぐるみ”をマナの前に持って来ていた。

 

「えっ? これ…“ウサピョン”? メリー叔母さん、どうして……」

「アナタの大好きな“おじちゃん”の知り合いだからって今日は初めて会う人ばかりで気疲れしたでしょ? アナタのお母さんが作ってくれた“この子”も一緒に連れて行ってあげなさい」

 

 マナは受け取った“ウサピョン”しばらく見つめ、一回だけ抱きしめるとその後はメリーに優しい手つきで返却する。

 

「ありがとう、メリー叔母さん でも、これからおじちゃんと龍星さんは“お仕事”なんだから、私もオグリとタマちゃんをエスコートする“お仕事”を頑張らなきゃ だから…ウサピョンはしばらくお留守番ね」

「そう…マナもすっかり大きくなったのに、初めて会った時と同じ感覚で接しちゃったわね…ごめんなさい」

「もうっ、ホントだよ! ウサピョンは今でも大事な友達だけど、今日は同じ位“信頼できる人達”ばっかりで私、寂しくないんだから!!」

「OKOK…お詫びと言ってはなんだけど、今日の観光費用は全額こっちで持つわ “怪物”のお腹をいっぱいにしてあげなさい」

「えっ!? メリー叔母さん、本当に良いの?」

「マナを久々に笑顔にしてくれたお礼も込めてよ それに…アナタも信じてるんでしょ? 『この人達に任せれば今日の仕事は大丈夫だ』ってね」

「うんっ! 勿論っ!!」

 

 その後の仕事の結果は二人が確信した通りの“大成功”であったが、オグリの食事に関する請求費を見たメリーが頬を引き攣らせながら『高くつき過ぎたわ…』と溢していたのをマナは聞かなかったことにし、成功を祝う会食場で大騒ぎするオグリ達と共に笑顔で乾杯の音頭を取ったのであった。

 

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