[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ   作:日常系好き

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パラタフの二人が登場でやんス。


光見えぬ者達の社会貢献

 宮沢家玄関前でオグリキャップの親友であるベルノライトは対応したオグリの兄である宮沢熹一から聞いた親友の近況に驚きの声を上げる。

 

「えっ? オグリちゃんって今“ハワイ”なんですか!?」

「おうっ、“プール”やないで? ホンマモンのハワイやぞ なんや…休暇申請したとは聞いとったがオグリ(アイツ)、ベルノちゃんに行き先を話しとらんかったんか」

「いえ…『今度、お父さん達と出掛けるからお土産は何が良い?』とは訊かれたんですけど、まさかハワイとは……」

「オグリは昔っから言葉が足りんからな……今頃は飛行機の中やろうし、携帯も繋がらんから実家(コッチ)に来たんやろ? 遠出させて悪かったのォ」

「あっ…大丈夫ですよ 今日、用事があったのは“熹一さんの方”だったので」

「…ん? せやったら、猶更悪かったの…ワシの携帯番号教えとけばこんな手間掛けんでも良かったし、今からでも連絡先を交換…ってその前に(ウチ)に上がってくれや、立ちっぱも疲れるやろ?」

「は、はい…お邪魔します」

「決まりやな…お袋(おかん)! オグリの友達来たんで、お茶を頼むわ!!」

「任せなさい、熹一 この前、姫次君達が持って来てくれた人参で作った“キャロットケーキ”が冷蔵庫に残ってたし、それも出しちゃうからね」

 

 現在、家長なき宮沢家を取り仕切る熹一の声が玄関に響き、笑顔で母がそれに応えるのであった。

 

◇◇◇◇◇

 

「……ごちそうさまでした お母さん、とっても美味しかったです」

「ふふっ、ありがとうベルノちゃん 喜んでくれて嬉しいわ」

お袋(おかん)の作る(モン)は絶品やからな、褒められるとワシも自分の事の様に嬉しいわい……で? ベルノちゃん、今日はワシに『何の用事』があって来たんや?」

 

 オグリの母から出された数々の創作料理に舌鼓を打ってすっかり、リラックス状態となっていたベルノに熹一は今回の来訪の目的を尋ねる。

 

「そ、そうでした……あの、熹一さん 最近、都内複数の託児所に出没する“盲目の達人の噂”ってご存じですか?」

「……いや “盲目の達人”なら、昔の知り合いにおるが、連絡を取り合う関係でもないしのォ…何や、ソイツがその託児所でなんぞ“悪さ”でもしとんのか?」

「いえ、そういう訳ではなく…むしろ『そこにいる子供達と遊んでくれている』らしいです」

「なら、別にエエんやないか? ベルノちゃん的にはどこら辺が引っ掛かるんや」

「はい、“託児所”というからには子供が…勿論、“ウマ娘の子供”も預けられている訳で…その子達に“変わった走法”を伝授しているという噂を耳にしまして……」

「ソイツは…“微妙なライン”やな “トレーナーやった”としても、若い娘っ子に変なクセ付けるのは褒められた行いやないし……」

「“トレーナーでなかったら”それこそ、大変な行いですので……噂の真偽を確かめたく、サポート科の人達と協力してその人物の情報を集めていたんですが…来訪した施設の職員さんに聞いた限りでは『正体が分からない』と言われ…目撃情報があって尾行を試みるも、いつも『途中で見失ってしまう』という結果になってしまったんです」

「……真っ当な身体能力なら人間を超えとるウマ娘を撒ける技術(ワザ)持っとんのやったら、ソイツは確かに“達人”やな……オモロイやん」

 

 ベルノの口から聞かされた“謎の達人”の情報に熹一の胸は躍り、顔は自然と笑顔を形作っていた。

 

「…随分と“楽しそうな顔”してるようだけど熹一、アンタ今日はどうするの?」

「決まっとるやろ、お袋(おかん)! ソイツが“エエモン”か“ワルモン”かワシがキッチリ、見極めて来たるわいっ!!」

「まったく、夕飯までには帰って来なさいよ 後、ベルノちゃんもしっかり守ってあげる事 出来なかったら…帰って来た静虎さんとオグリも交えてのお説教だからね」

「……分かっとるって、そない条件付けんでもベルノちゃんの事はキッチリ守ったるわい」

「熹一さん、協力してくれるんですね! ありがとうございますっ!!」

「おうっ! ほな、行こかベルノちゃん!!」

 

 こうして本日、“名探偵ベルノ”と“助手兼護衛の熹一”による『盲目の怪人』の捜索が始まったのであった。

 

◇◇◇◇◇

 

 都内の喫茶店に到着した二人はテーブルに座り、今後の展開を話し合っていた。

 

「…で? ベルノちゃん、今日は何処を探索するんや?」

「はい、熹一さん “こちら”をご覧ください」

 

 そう言ってベルノがテーブルに広げたのは“地図”であり、そこには様々な色ペンで『盲目の怪人』が今まで回った場所へのマーキングが付けられていた。

 

「おぉ、なんや…本格的やのォ」

「いえ、タブレットじゃ色々と不便なので……それで、見て貰えれば分かるんですが…実は都内の託児所にランダムで出現する訳ではなく、『決まったルートを周回している』のを最近になって気付いたんです」

「…せやったら、次来るとこに網張って人海戦術で捕まえられんのか?」

「流石に“疑惑”の段階でそこまで本気にはなれませんよ ですが、“タダ者じゃない”のは間違いないので…ルートが決まった以上、後は熹一さんにお任せしようと思いまして」

「おうっ、任せてくれや それで、今回の“行き先”は……」

「はい、順当に行けば本日はこちらの託児所…“スーパークリークさんのご実家”に来ると思われます」

 

 ベルノが差した“予測地点”を見て熹一が不敵な笑顔を見せると、急に周りから“黄色い歓声”が聞こえ始めた。

 

「うおっ!? な、なんや…この店、アイドルでも来店しとるんか?」

「あの…多分、皆さん“熹一さんを見て”だと思うんですけど…」

「ベルノちゃんも冗談キッツイわ…今日のワシは“長髪のヅラしか被っとらん”で? 顔も普段に近いヘラヘラしたモンやし、女の子からキャーキャー言われるなんてありえへんって」

「いえ、今日のはちゃんとした変装よりも“隙のある感じ”で女性受けはむしろ良いというか……なんでもありません」

「大体…ヅラ被っただけでモテるんやったら、ワシは学生の頃に髪伸ばしとったわ………うっし! 気を取り直して行くかっ!! ベルノちゃん!!」

 

 “探偵”の提示した推理を『ありえへん』の一言で片づけた“助手兼護衛”に一抹の不安を抱きつつも、ベルノは女性達の惜しまれる声を背中に受けた熹一を伴って“目的地”へ足を運んだのだった。

 

◇◇◇◇◇

 

「……熹一さん、居ました! “あの人”ですっ!!」

「よっしゃ! 『写真も撮れなかった』言うんでベルノちゃんの記憶頼りやったが、見つかって良かったわ!! どれ……」

 

 目的地付近でターゲットを待ち構えていた二人であったが、ベルノが指差した人物を熹一も確認すると……喜びに満ちた表情は徐々に“訝し気な物”に変わっていった。

 

「…ベルノちゃん ホンマに“アイツ”が今回追っとる『盲目の達人』か?」

「はい、そうですけど…もしかして“お知り合い”でしたか?」

「まぁ…そうやな 悪いんやが、ちょっとワシが話して来るわ」

 

 熹一はそう言うと消していた気配を現して無造作に“その人物”へと歩を進めていく。

 

「んっ? こいつぁは何とも懐かしい気配だ…たまに感じていたあっしを観察するウマ娘みたいな気配、体臭、口臭、髪や服の擦れる音なんかを今の今まで“消して”この距離まで近づけている…随分と腕をあげやしたね、キー坊」

「ホンマ、久しぶりやのォ…話に聞いた時は『ひょっとして』とは思ったが、会えて嬉しいで“帯刀右近”」

 

 帯刀流棒術宗家にして“盲目の奇術師”と呼ばれた達人、帯刀右近。

 かつて熹一とハイパー・バトル日本予選で激闘を繰り広げた男は見えずとも正確に熹一の方を向いて再会を喜ぶ笑顔を見せていた。

 

「実はと言うとね…こうやって待ち伏せされるのも“二度目”なんでやスが、今回は為す術もなく負けそうな気配を感じるんでやんスよ」

「勘違いすんなやオッサン ワシは別にアンタと()り合うつもりなんぞ……」

 

 熹一が言葉を言い終える前に彼の眼前には右近が持っていた長杖が繰り出されるも、その攻撃ははまるで幽霊の如き“かわし”の技術を持った熹一には通用せず、躱した本人が呆れたような視線を右近へと向けていた。

 

「…だから、()り合うつもりなんぞ無い言うとるやろ? “本気の速度”で打ち込んで来んから躱すだけで済ませたが…これ以上来るようならベルノちゃんが見てる手前、手荒にはやらんが一発で終わらせんぞ」

「いやいや、すいやせん……本当に“以前とは”比べ物にならない位に腕を上げやしたね 今のは『挨拶代わり』の一撃という事で大目に見てくだせぇや」

「ま…“こういうやり取り”の方がワシ等らしいか 相変わらず、飄々とした態度と裏腹に好戦的な性質(タチ)でむしろ安心したわ」

「そりゃそうですとも 盲目だからってバ鹿にして暴力に訴える輩は何時だって現れやスからね そういうのに一番効くのは“それを超える暴力”なんですから、世知辛い世の中でやんス」

「せやったら、ウマ娘のレースでも見れば…いや、アンタからすれば『感じる』か……ん? 待てや?」

「…熹一さん 何か気付いたんですか?」

 

 右近との会話で何かに気付いた熹一は思考状態に入っていたのだが、彼の隣には二人のやり取りに剣吞な気配が消えた事を察して近くに来ていたベルノが何時の間にか立っており、熹一に疑問を投げかける。

 

「おうっ、ベルノちゃんか…この人はワシの昔の知り合いなんやが、回っとる託児所に居る“ウマ娘の指導”をやっとるんやろ? ちなみに聞くが…指導されたウマ娘の“特徴”って分かるか?」

「えっと…全員は分からないんですが、調べた限りでは『身体的な障害を持っている』子ばかりで……あっ!」

「やっぱり同じ事思ったか! オッサン、アンタ回った所で身体が不自由な子に“動き方”を教えてんのやろ!?」

「ご明察ですよ、お二人さん 目の視えないあっしでもウマ娘のレースは最高の娯楽でやスからね ハンデがあるからって諦めちまってる子を一人でも見かけると寝覚めが悪くなるんで、“最低限の身体の動かし方”を我流ではありやすが指導してたんですよ」

 

 右近からの答えに二人は納得するも、ベルノはふと疑問に思った事を訊く事にした。

 

「でも…“我流”と言うからにはやっぱり“癖”は付いちゃいますよね? そこは大丈夫なんですか?」

「おや、よくよく“感じて視れば”可愛らしいお嬢さんでやスね…いえ、安心してくだせぇや あっしも後天的に盲目になってから動ける様になるまで医学書の内容を頭に叩き込んだんだ…さっきも言った通り、教えるのは『最低限』だけでやんス」

「成程のォ…初めて会った時からワシはアンタを尊敬しとったが、ますますその念が深まるわ」

「いえ、別にあっしも善意だけでやってるワケじゃなく“社会貢献”ってヤツをやっておくと障碍者の心証が良くなるからなので極論、『自分の為』なんでやんスよ」

「それでも“私達”ウマ娘の力になって貰ってる以上は感謝の念しかありません…本当に、ありがとうございます」

「…昔、キー坊に“似た様な事”を言われた時は『侮蔑の言葉』に感じてしまいやしたが、今では素直に受け取る事が出来る…あっしも、ちったぁ“成長”出来たって事でやんスかねぇ……」

「何言っとんのや “可愛い女の子”に感謝されれば男やったら誰だって嬉しいモンやで」

「ちょっ…! 熹一さん!!」

「はっはっはっ! 違いねぇ!! キー坊だってカツラを被っておめかしする位の美人さんだ、あっしの気分が悪くならねぇ理由がねぇや!!」

「ちゃうねん…“コレ”は変装で…いや! ベルノちゃんが『美人さんやない』って言っとるワケちゃうぞ!?」

「もうっ! 二人ともいい加減、『美人』って言うのやめてくださいっ!!」

 

 熹一とベルノのやり取りがツボに入ってしまったのか更に大笑いする右近を見た熹一は困った様に頭を掻き、ベルノは顔を真っ赤にして怒りを表すも彼の笑い声が止む事は暫く無かった…。

 

 

 

オマケ

 

“スーパークリーク”実家の託児所

 

「おりゃ! “フジモン”、スキあり!」

「ボコッ)はうっ! ず、ずるいぞ! ワイの“視えん所”から攻撃してくるとは!!」

「こらーっ! 遊びに来てくれた“藤垣”さんに何てことするの! 謝りなさいっ!!」

「ええってクリークちゃん ワイも結構、鍛えてるんやから全然平気やし」

「そんな…せっかく柔道の試合の為に上京されたのに子供達の相手をしてくれてるんですから失礼の無い様にしないと……」

 

 視覚障害を持つ柔道家、“藤垣總”…徳島からやって来た彼は以前、闘いを挑んだ帯刀右近がやっているという『託児所巡り』に参加し、先にスーパークリーク実家の託児所に到着していたのだが…一向に右近は現れず、子供達の襲撃に遭っていた。

 

「子供言うんは、明るく元気が一番やけん “そう振る舞える”のもクリークちゃん達が此処を安心できる場所として作ってくれとるからや…それがワイは凄い事やと思っとります」

「そう言って貰えると私達もとっても嬉しいです……いつも来て下さる右近さんもですが、今日は来て頂いて本当に感謝しています」

「いやいや…右近さんと違ってワイは“動きの指導”とかは出来んのやけど、それでもこうやって『自分は十分に動けてる』って所を見せて皆に元気を与えんとなっ!」

「藤垣さんの様な方達って故障が隣り合わせの私達ウマ娘にとっても身近な存在で…仰る通り、“笑顔で生活されてる姿”を見れるだけでも元気を貰えていますから」

 

 そう言って笑ったクリークの気配を感じた藤垣は慌てた様にポケットにしまっていた“ルーペ”を取り出して弱視となっている右目に当て、彼女の微笑みを確認すると釣られて笑顔になった。

 

「うーんっ、良い笑顔や! レースに勝った時のもキレイやが、今のクリークちゃんの顔もええモンやな!」

「あらあら~、ありがとうございます…あら? 藤垣さん、私のレースを“ご覧になった”んですか?」

「流石にワイは右近さんみたいに視覚以外の全てを使って“視る”様な真似は出来んが、テレビですら感じられる選手達の“気迫”みたいなモンは分かるけん クリークちゃん達が必死にやっとる姿にはワイも元気を貰っとるんや」

「…そうだったんですか でしたら、今日は私達ウマ娘が走る事への意義の一つを新たに発見する事ができて良かったです」

 

 藤垣は笑顔で話すクリークの様子に頬を緩めていたが、ふと彼女の視線が自身の“脚”に向けている事に気付く。

 

「そやったな…クリークちゃんも“脚の不調”を克服して今を頑張っとる()やったのォ」

「はい…私が今も走れているのは“私の魔法使いさん”に出逢えたからですから」

「ワイも周りに居る友人や応援してくれとる人がおるから今、こうして笑顔で生きていけとる…“それ”に気付けてるキミならきっと『歴史に名を残す』ウマ娘になれると思うけん」

「藤垣さん……ありがとうございます」

「ナハハっ! そう言っとるのは『自分にも当て嵌めたかった』からで“ゲン担ぎ”みたいなモンやけん! お互いに頑張ろうや!!」

「うふふっ、はいっ! お互いに頑張りましょう!!」

 

 晴れ渡る空の下で笑いあう二人…そんな彼等をようやく本日の目的地である託児所に到着した右近、熹一、ベルノの三人が見つけると一人は“感じて”、残りの二人は“見て”状況を確認する。

 

「なんや、パラ柔道の“フジモンさん”やん 右近のオッサンの知り合いってあの人やったんか?」

「ええ、あっしが前にお遍路さんの“逆打ち”やってる時に勝負を挑まれやしてね それから、ちょくちょく付き合いが続いてるんでやスよ」

「…スーパークリークさんとフジモンさん、ですか 何か笑顔でお話しされてるようですけど…内容が気になりますね」

「せやったらベルノちゃん、近付いてみようやないか そもそもワシ等も今日は予定を変更して『子供の遊び相手』になりに来たんやし、職員さんに挨拶すんのがスジやろうからな」

「はいっ! 今日は“探偵さん”みたいでとってもワクワクしましたけど、“子供と遊ぶ”のも同じくらいワクワクしますね!!」

「なら、今日の遊び相手はお二人にお任せするとして…あっしは身体が不自由な子達の面倒を見させて貰いやしょうかね……」

 

 こうして本日、集まった三人が各々の方法で子供達と触れ合った結果…託児所内の子供達と職員を含めた全員が笑顔で一日を過ごす事が出来たのであった。

 

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