[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
そんな中、何故オニ平さんを出したかというと私が書きたかったからです。
「熹一、荷物重くない? 今日は急に“色々あって”疲れたでしょ…やっぱり、私も少し持つ?」
「奥さん、すいませんねェ、オレの荷物まで
「かーっ、何言っとんねん
「…『ジイさん』か そりャ、そうなんだがネ」
「……熹一?」
「な、なんやもう…そないショック受けた顔すんなや二人とも……悪かったわ」
現在、夕飯の買い出しを終えた宮沢熹一とその母は帰り道に元・壊し屋の経歴を持つ“オニ平”こと鬼川平蔵と出会い、途中までの道程を一緒にする事になったのだった。
「いやネ…娘のアヤもすっかり大きくなって安心したのかオレも最近、体の節々に痛みが走るようになったし、“今の仕事”だって何時まで続けていけるのかねェ……」
「…ったく、“中央の正トレーナー”が何を弱気抜かしとんねん 娘さんの為に『日の当たる仕事やりたい』言うて合格した以上はキッチリ定年まで勤めて貰うで」
「…分かってるって、キー坊 オレのカミさんも、“仕事”を続けられる
「私もオニ平さんの奥さんや娘のアヤちゃんとはたまにオグリと一緒に食事に行きますけど、『お父さんの頑張ってる姿を見れるのは嬉しい』って話されてましたよ」
「奥さんも…いつもオレの家族を気に掛けてくれて感謝してんですヨ
そう言って頭を下げるオニ平に熹一達は慌てた様子を見せる。
「いえ! 私がお二人に最初に会ったのは偶然ですし、その後も親交を続けているのは二人とも“良い人”だからなんです! ですから頭を上げてください!!」
「せやで、オッサン!
「………熹一?」
「………
「…クェクェクェ イヤ本当にありがとうねェ、二人とも」
二人のやり取りを見て気を取り直し、最初の空気を取り戻す為に笑い声を上げたオニ平。
その結果、場の雰囲気が再び柔らかくなった三人に対し、少し離れた場所から声を掛ける人物が現れた。
「えっ!? キー坊とオニ平さんじゃない!? うわぁ、奇遇だね!!」
「…なんや、“コミちゃん”やないか
「…ひょっとして、キー坊の道場に用事があったのかい? それに…隣にいる“もう一人の女性”は確か……」
熹一とオニ平の同僚となる“コミちゃん”こと小宮山勝美の隣に立つ美女に見覚えがあったのか、オニ平は“その人物”を指差す。
「お久しぶりね、キー坊 最後に会ったのは“ジャパンカップ後”の帰りの空港だったかな?」
「……ん? アンタまさか…“オベイユアマスター”か!? なんや、日本に居た時は随分と『アメリカンな“演技”しとるな』とは思っとったが“今の状態”が素か!! 見違えるモンやのォ……」
かつて、オグリやタマとの激戦を制したアメリカからの刺客“オベイユアマスター”。
その時の派手な格好とは裏腹に現在の彼女は口調も髪型も服装も“落ち着いた”様子であった。
「まあね…自分を含めて『皆を騙しきれた』ってある意味満足してたのに、最後の最後で…少なくとも、アナタに見透かされていたと気付いた時は帰りの飛行機で随分と悔しい思いをしたわ」
「……なんや、ワシが尊鷹の指導法を訊いた時…逆に尊鷹の昔話をマシンガントークでねだったんは“意趣返し”やったんか…アンタ、エエ性格しとんな」
「格闘技の話とは言え、私の恩師を打ち破った男だもの ハイパー・バトルでその存在を知っていたというのに、“見た目”でアナタを過小評価してしまった事に対しての自責の念も勿論あったわ」
「ワシが舐められるんは“天然の擬態”らしいからのォ 『騙したアイツに騙された』ゆうなら…確かに悔しいやろな」
「そんなワケで、休暇を利用して折角だから『私を騙した相手を育んだ土地』でも見てやろうかと中央に案内をお願いしたのよ そうしたら……」
「タマちゃんも引退して丁度ヒマしてた私が指名されてたってワケ 気分としては色々と複雑なんだけど、『レースが終わればノーサイド』の精神で神戸の街を女二人で楽しもうと思ってねっ!」
そう言ってカラっと笑う小宮山にその場に居た全員が笑顔になった。
「あっ! 勿論、静虎さんや鉄山さんの道場には先に顔出したよ でも、アポ無しとはいえどっちも人が居なかったから観光に切り替える事にしたけど明日なら大丈夫?」
「あー…スマンのォ 今日は街のヤクザ
「えっ、そうだったんだ…まぁいいや 今日、タマちゃん達もハワイから帰って来るんでしょ? 明日は出来れば都合付けて貰いたいんだけど…大丈夫?」
「おうっ、任しとけや! オグリにもタマにも話はしといたる! それに、今度ハワイ行く時はコミちゃん達トレーナーの皆やワシも行けるよう頼んでみるかのォ?」
「ホント!? それって最高じゃないっ! やっぱキー坊は頼りになるなぁ~、このこのっ!(ペチペチ」
「いやあ、コミちゃん…もっと言うてくれやっ!!」
小宮山からの遠慮ないボディタッチに熹一は満更でもない顔を見せるも、それを咎める様な視線が母から送られる。
「熹一、あんまりデレデレしないの 息子の“そういう姿”って恥ずかしいんだから」
「お、おうっ…
「いやー…お母さん、すいません キー坊って話しやすくてつい、距離感間違えちゃうんですよ」
「気にしなくても良いですよ、小宮山さん
「クェクェ! “最強の男”も“母親”には形無しだねェ」
「早速、“弱点”を見つけられて得した気分ね…観光の続きをしましょうかMiss.小宮山 キー坊が“火消し”をしてくれたのなら、この街は安全なんでしょうし」
「あっ…そうだね! それじゃ、皆さん失礼しました!!」
その言葉と共に二人の美女は夕陽が傾きを見せる神戸の街へと消えて行ったのだった。
◇◇◇◇◇
「今日はゴメンね、ヤエノちゃん せっかく研修の為に本道場まで足を運んでくれたのに
「押忍っ! 大丈夫です、和香“先輩”!! 代わりに万次さんを含めた本道場の皆さんには大変お世話になりましたので!!」
「ヤエノちゃん…なんで和香さんの事『先輩』って呼ぶの? 他の道場生には基本、『さん付け』じゃない?」
「い、いえ…優希さん 昔から“キー坊の力になっている年上の女性”ですので、『先輩呼び』こそ相応しいと思いまして……」
「やめてって、もう…その条件ならオグリやタマちゃんの方が私より適任でしょ?」
「いえ、彼女等は私の“同世代”である以上、その呼び方は不適切…何より、私が和香さんから感じる“大人の女性としての魅力”に中てられて自然とそう呼んでしまうのです」
「小声)どうしよう優希ちゃん…
「小声)和香ちゃん、懐かれてるならまだ良い方だよ…“お姉さま役”やってあげなって」
“ヤエノムテキ”、“宮下和香”、“小倉優希”の三名が日も沈みかけた宮沢家の道場前に集まり、女子トーク(?)を行っていた。
其処にオニ平と別れて帰宅した熹一と母が現れ、脱兎と言った勢いで和香と優希が熹一に詰め寄る。
「帰ってきた! 今日は『本道場に顔出す』って言ってたのに何があったの!?」
「来てくれたヤエノちゃんほったらかしにして! たまたま来てた私も含めて道場の皆があの子の精神的フォローと送り迎え担当したんだ! 何か言う事は!?」
「…ホンマにスマン ヤクザ
「「…くっ!」」
熹一から聞かされた事情を聞き、状況を飲み込んだ二人はそれ以上の追及を口にする事が出来なくなった。
そんな二人に対し、前に出た母が少し離れた場所に居たヤエノを呼び寄せた後、三人が揃った所で頭を下げて謝罪した。
「三人とも…静虎さんも居ない中、私が熹一を急に呼び出してしまったから今日は皆に苦労を掛けてしまった様で…本当にごめんなさい」
「あ、頭なんか下げんなや、
「そうですよ、お母さん! 落ち込んでいたヤエノちゃんも万次さん達“道場生”の皆との交流で最後は笑顔になったので大丈夫ですって!」
「いや、むしろ仲良くなり過ぎちゃって! 夕飯は和香ちゃんと一緒に『由美子オバさんの所で食べない?』って話になった位なんで、ホンット気にしなくて良いですから!!」
「お母様…本日は私の心が未熟なばかりに皆様にご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありませんでした ですが、今は皆様のお蔭で充実した時間を過ごせて満足しております 何卒、お顔を上げてください……」
慌てた四人による必死さすら感じられるフォローにずっと頭を下げていた母がようやく顔を上げる。
「ありがとう…皆 本当に優しい子ばかりで、私も静虎さんもいつも助けられているわね」
「何言ってるんですか 皆、宮沢家の人達が大好きだから力になりたいって思ってるんですよ」
「そうそう、和香ちゃんの言う通り 私も含めてお母さんやオジさん、オグリやキー坊に助けられた人達が恩返ししてるだけなんだから、そんな気にしなくても大丈夫だって!」
「キー坊とオグリキャップの“強さ”を形作った人にお会い出来て、本日はこちらに足を運んで本当に良かったです」
「……三人とも、今日の“詫び”ってワケやないんやが…由美子おばちゃんの所まで送らせてくれや 皆、“強い女の子”ってのは分かっとるが心配でな…
「当たり前でしょう、むしろ『送らない』なんて言い出したらお説教コースだったわよ」
「ハハハっ! それでこそ
「いやー…女性の扱い方ヘタクソなキー坊が“エスコート”ってさ……」
「まぁまぁ、優希ちゃん…せっかくキー坊が気分良く『守ってくれる』って言うならお言葉に甘えちゃいましょう?」
「押忍っ!! キー坊の立ち振る舞い、勉強させて頂きます!!」
◇◇◇◇◇
こうして熹一が三人の美女を送って行った為、宮沢家には母一人が残る事になり彼女は現在、夕食の準備を行っていた。
「トントントントン)…本当に“色々あった日”だったわね これからオグリ達もハワイから帰って来るんだし、今日はそれで最後かしら?」
“長年の経験”から手際良く準備を進めていた彼女であったが、今日起きた事を思い返して僅かながら包丁の動きが鈍っていた。
「…それにしても、熹一ったら随分と女性の知り合いが多いわね 『ワシはモテへんねん』って昔は泣きながら言ってたけど…この前、親しそうにしてたベルノちゃんといい…“今は”どうなのかしら?」
以前、息子に『結婚する予定は無いの?』と聞いた事はあったが、返された答えは『モテへんから無理やろ、最悪“気の通じ合った
「オグリに“それ”を話したらあの子はあの子で……」
『えっ? それは困るな…私もキー坊がお嫁さんを見つけたら“そういう事”は考えるつもりだったんだけど…』という答えが返って来て、あまりの“似た物兄妹”振りに夫である静虎と共に頭を抱えたのである。
「あれだけ波長が合うんだから、血が繋がらなくても仲が良いんだろうけど…“合い過ぎる”のも考え物ね」
思考を終える頃には調理は完了しており、それと同時に家のドアをノックする音が聞こえる。
時間帯も考えて『家族が帰って来た』事を確信し、母が急いで扉を開けると───
「お母さん、ただいま! お土産をお父さん達といっぱい買って来たんだ!!(グゥー」
「なんや、オグリ…来る前にも腹いっぱい食って来たのに、もう腹が減ったんかい お母さんも料理作ってくれとるし、食べたら土産
“予想通り”、彼女の大切な家族が笑顔で帰って来たのであった。
「はいはい…夕食の準備は出来てるし、オグリは先に手を洗って来なさい」
「うんっ! 分かったよ!」
「それと静虎さん……お帰りなさい 本日も、お疲れ様でした」
「はい…只今、戻りました 熹一と共に留守を守って頂き、本当にありがとうございます」
多くを語らず見つめ合う、夫婦の絆が垣間見える空気感が出来上がっていたが、“それ”を壊したのは突如帰宅した息子の一言であった。
「うぉっ! エエ年した夫婦が玄関でイチャコラしとるやん 何年経ってもお熱いのォ…」
「き、熹一!? 居たんかい!?」
「おうっ
「え、えぇ…今、戻って来るとは思うけど……」
「あっ! キー坊、ただいま!!」
「おうっ、久しぶりやなオグリ ハワイで何か変わった事あったか?」
「実はそうなんだ ハワイで帰る前にアイアン木場が亡くなったビーチへ手を合わせに行ったら、なんと…そこで“レムコ”が屋台をやっていたんだ!」
「レムコって…昔、ワシと
「うん 『薬はもうコリゴリだネ』って苦笑いしながらだけど、お母さんと一緒に元気そうに働いていたよ」
「そうか…猶更、ハワイに行くべき“理由”が出来たようやのォ…」
「…? キー坊もハワイに行きたかったのか?」
「いや、それがのォ…今日の昼間なんやが……」
「ほら、玄関でいつまでも長話しない! オグリはテーブルに、熹一は早く洗面所へっ!!」
「…分かったっ!」
「…アカン、早よ手ぇ洗わんとなっ!」
思った以上に話し込んでしまった兄妹は母からのお叱りに慌てた様子で、それぞれの持ち場へ移動する。
「まったく…あの二人は時間が許す限り、いつまでも喋ってるんだから」
「幾つになっても仲が良いのはエエ事です そんなあの子等の幸せそうな顔を間近で見れるのは私にとって、何よりの“幸せ”ですから」
「あら? 静虎さん、それは私も一緒ですよ」
“特別”な様で“何処にでも居る”家族である宮沢一家は本日、この時を持って普段通りの賑やかさを取り戻した。
父と娘が持って来た土産物の包みを開けては一喜一憂し、身振り手振りで行う土産話に耳を傾けながら時には家族皆が笑いあう…暖かい雰囲気が宮沢家を包み、夜が更けていったのであった。