[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
午後を回って日も高く昇り、夏の日差しが照り付けるアスファルトを熹一とオグリは額から流れ出る汗を拭いながら歩いていた。
「熱い…あっついのォ…ホンマ、お天道さんもワシ等が“墓参り”行く時に限ってこない照り付けんでもええやろがい……」
「仕方がないだろう、キー坊…私達の用事がようやく片付いて今日になったんだ 今を逃せばお盆休みを過ぎてしまうぞ…」
「しゃあけど、今日は猛暑も猛暑過ぎてこのままやと熱中症になってまうわ ちょっと涼んで行かんか?」
「キー坊…そう言って“2回も”休憩を挟んだから現在の気温が最高潮なんだ もうすぐお寺も近いんだし、“コレ”でも舐めて手持ちの水分で我慢してくれ」
そう言ってオグリが熹一の口に放り込んだのは“塩飴”で熹一も不承不承といった様子で飴を嚙み砕き、腰に下げていたミネラルウォーターで流し込む。
「ボリボリ)…なんや、こんな
「タマから『外出る時は気ぃつけや』って貰ってたんだ 私も舐めてみたが中々の効果だったぞ?」
「なんや…頭がスッキリしてきた気ぃするのォ タマには今度何か礼でもしてやらんとアカンな」
「そうしてくれ タマはきっと『気にすんな』と言うだろうけど、氷屋さんのかき氷でも目の前に置けば喜んでくれるだろう」
「それ、お前が今食いたい
「本当かっ!? 何だ…今から楽しみになって来たぞ」
自分達に降りかかる熱さを忘れる様に涼し気な話題を行う兄妹であったが、遂にはその足が宮沢家の墓が待つ寺へと到着したのだった。
◇◇◇◇◇
「オグリ、線香に火ぃ付けたか?」
「ああ、バッチリだ キー坊もバケツに水は入れたか?」
「おうっ! 雑巾も家から持って来とるし準備万端やな、ほな……」
「うん “おジイちゃん達”に会いに行こう」
墓参りへの準備が終わった事をダブルチェックで確認した二人は先祖達の待つ墓へ手向かう事にした。
「しっかし…ジイちゃんもワシが“灘・真・神影流”興す前に逝くんやから、タイミングが悪かったのォ」
「きっと、おジイちゃんも『もうワシが居なくても大丈夫や』って気持ちで旅立ったんだろうけど、正直…寂しかったな」
「…オグリ、今更聞くんやが お前ってジイちゃんの事“どう”思っとったんや?」
「そうだな……」
~『オグリ、コレ
~『うわぁ、いっぱいのお饅頭だ! おジイちゃん、ありがとう!』~
~『オグリ! 銃を持っとるヤツはワシが引き付けておくからお前は回り込んで首を極めて一瞬で落とせ! お前にもお前の
~『分かった! おジイちゃんも気を付けてくれ!!』~
「たまにちょっとだけ冗談が過ぎる時があったけど、基本的に私やお母さんに優しくしてくれて…うん、大好きだったよ」
「……そうか」
~『熹一、落ち込んどんのか…? ホレ! ジイちゃんの“セクシーポーズ”で元気出せや!(プリッ』~
~『目の前で“ケツ”出すなやクソ爺!
~『熹一…お前もエエ年なんや “コレ”でも読んで発散せぇ』~
~『当たり前の様に孫に“エロ本”を勧めるんやない!! 万が一でもこんな
「…良かったのォ
「うんっ! 今日だってお母さんがおジイちゃんの為に綺麗な花や美味しい物を用意してくれたんだ 喜んでくれると良いな」
祖父である宮沢金時の“下品さ”を言及せずに思い出を語るオグリに対して思う所は多々ある物の、妹の笑顔が曇る事を良しとせずに熹一は余計な言及なく彼女の話に笑顔で相槌を打つ。
そして、そんな会話を続けている内に二人が宮沢家の墓まで到着すると其処には二人の“参拝者”が彼等に先んじて墓の前で手を合わせていたのだった。
「…こんにちは “君達二人”をこのお墓の前で見るのは初めてになるな」
「…せやな しっかし…変な感じやろ? 目の前に“自分の墓”があるっちゅうのもな」
「……気にしてはいない 私はキー坊、君と闘った“あの日”に一度死んだんだからな むしろ、“人間”として自分の今まで生きた証を静虎さんに刻んで貰ったんだ…この墓の存在には喜びしかない」
「“ガルシア”が今日は『
「“28号”もお疲れ様だな 身体がいくら頑丈だからってこんな炎天下だと汗もかいてしまうだろ? 二人とも塩飴でも食べて日陰で休もう、冷たい水もあるからな」
「ありがとう、オグリ 今日は日差しが強くて正直、“辛かった”んだ」
「シ…オ…アメ…? それが何なのかは分からないが、オグリが勧める物なら美味しいのだろう…頂こうか」
かつて熹一とTDKの決勝で闘い、優勝を果たすもバースト・ハートと長年の投薬実験、過酷な訓練により若くしてその命を散らした“筈の”エドガード・C・ガルシアとガルシアのクローンとしてこの世に生を受け、バースト・ハートを克服した超個体…米国の忠実な“兵器”として数多の戦場を渡り歩くもNEO宮沢熹一との闘いの後に身柄を保護された『識別番号28号』、ガルシア28号が笑顔で休憩を勧めるオグリに対して“人間味”を感じさせる微笑みを返してその誘いに乗ったのであった。
◇◇◇◇◇
「良いのか、キー坊? 今日はオグリと二人で墓参りに来ていたのだろうに私と二人で話していて……」
「こうやってお前と二人きりになる機会なんぞ滅多に無いからのォ オグリには悪いが28号の相手して貰うわ」
「そうか…しかし不思議なものだな 私は一度間違い無く死んだ身であるというのに今はこうしてキー坊、君と普通に話す事が出来るんだからな」
「ワシもじゃ…お前が死んだ“あの時は”心底後悔しとったし、お前の胸に蠢蟹掌を打ち込んだこの手を潰そうとも考えた 止めようとしたオグリに泣きながらビンタされんのもアレが初めてでな…ホンマ、“苦い経験”ってヤツやで……」
「しかし、私は“蘇生”された 君の…私の叔父でもある宮沢尊鷹の手によってだ」
「当時は『ガルシアの遺体が消えた』って病院中が大騒ぎになってな 皆で大捜索したっちゅうに見つからんで途方に暮れとったが、まさかの尊鷹の手による“持ち出し”や 大分後から本人に聞かされて心臓が飛び出るかと思ったわい」
当時の事を思い返して熹一は深い溜息を吐くもガルシアはそれを苦笑して眺める。
「…あの人は自由な人ではあるが、あの時は私と『米国の繋がりを切る為』、秘密裏に身柄を匿う必要があったんだ 許して欲しい」
「…済んだ事やし、それはもうエエわい で、蘇生されたお前が尊鷹に連れて行かれた場所がまさかの……」
「“米国のネバダ州”だな 日本の諺にある『木を隠すなら森の中』を地で行く大胆さだったよ そこでの尊鷹は“ナバホ族のチャベス”を名乗って私を同じ部族の仲間として生活させていたのだが…何とも不思議な体験だったな」
「あのオッサンはコロコロ顔や名前変えて生活しとるから今でも見つけるとなると一苦労やからな……いや、スマン お前の話がまだ途中やったわ」
「ああ、原住民としての生活だったが…ビルや機械から距離を置いた“広大な自然”や部族の者達がただ在るがまま流れを受け入れる“死生観”に私の心だけに留まらず、ボロボロであった筈の身体すらも癒されて自分がこの地球上に存在する『一人の人間』でしかないという事を思い、知る事が出来たんだ」
そう言ったガルシアの表情はとても晴れやかな物であり、それを見た熹一は釣られて笑顔を返す。
「…そら、良かったわ でも驚いたで、そんなお前と再会する事になったのがワシと鬼龍の息子である“ジェット”との“ハイパー・バトル決勝戦後”やったんやからな」
「尊鷹に連れられて赴いた試合会場だったが、銃撃戦が始まるとなればつい身体が動いてしまい…気付けばキー坊達や
「結果としてやが、お前が乱入してくれたお蔭で鬼龍を庇って撃たれたジェットも“軽症”で死ぬのは免れたが…来てくれんかったらと思うと、今でもゾッとするわ」
「私もキー坊に恩を返せて良かったと思えたし、鬼龍…“父”の驚いた顔も見れたからハッキリ言って『痛快』の一言だったな」
「今の言葉もそうやが、オグリの誘いにも『辛いから』って正直に口に出せる様になったお前は誰が何と言おうが“人間”や 辛い事や苦しい事ばっかりやった人生が終わって、ようやく人間として生きる事が出来たんやな」
瞳には僅かに涙を浮かべ、破顔する熹一にガルシアは照れくさそうな表情を浮かべて補足の説明を入れる。
「いや…実はと言うとな 私が“それ”を実感出来るようになったのはキー坊のお母さんのお蔭なんだ」
「んっ? 『
「キー坊達の助けに入った後一人で居た時の事なんだが…私の姿を見掛けたお母さんが私の事を泣きながら抱きしめてくれてな 『生きていてくれて良かった』と耳元で言われた瞬間、“心を抱きしめられた”事を…私が母の様に想っていた“ドクター・クリス”の事を思い出してしまって、彼女の前だというのに大声で泣いてしまったんだ」
「…ドクター・クリスって言うとガルシアを担当してくれた
「ああ、誰もが私の事を『兵器』としてしか見ていなかった中で唯一、『人間』として見ていてくれた
「ズズッ)…流石は
自身の母が持つ“愛の強さ”に感極まった熹一の瞳からは遂に涙が零れ、鼻をすすっているとガルシアが『仕方がないな』といった表情でポケットから取り出したハンカチを彼に差し出す。
「……相変わらずの情深さだな ほら、
「…ガルシアはホンマ“気遣い”が出来る様になったのォ “中央”でもその調子でモテモテなんちゃうか?」
「いや…尊鷹の勧めにより日本である種の“治外法権”を確立している中央に籍を移したのだが、あの場所は実に興味深い 人間を遥かに超える能力を有しながらも人権を持って生活している“ウマ娘”と深く関わる事によって主に資料でしかその概要を知らなかった私に新たな気付きを与えてくれるのだからな」
「実はな、ワシが『中央に施術師として入ろう』って思った理由の一つはお前等が居るからってのもあるんやで?」
「よく言うよ…一番は『可愛い妹の活躍を近くで見たい』って理由だろうに」
「ハッハッハ! それはそうやろ!
自信の言った皮肉気な言葉にも一切気にする様子を見せず、後ろめたさの欠片もない爽やかな笑顔で妹への想いを語る熹一をガルシアは満足そうな顔で何時までも見続けていたのだった…。
◇◇◇◇◇
「どうだ、28号 塩飴は美味しいか?」
「コロ…)悪くない 体外へと流れていた塩分が補充されるのを味覚的にも実感できる合理的な食物であると推察される」
「そうだろう、私もタマから貰って食べてみたんだが効果がスゴイんだ 冷たい水と併せるとまるで生き返った気分でな…練習の後は最近、この組み合わせにしてるよ」
「…それでは脳が満足感を与えているに過ぎないので後から他の栄養素を追加で摂る事を勧めるぞ」
「うん、分かった 28号は相変わらずトダーみたいな固い喋り方をするんだな? 中央に居るトダーともそんな感じで他のウマ娘に“指導”してるのか? ちゃんとみんなと馴染めてるのか?」
「…そうだな 尊鷹に連れて来られた中央での生活は不思議な物だ 『機械の様な人間』と呼ばれたワタシが『人間の様な機械』と評されたトダーのサポートという形でウマ娘達の指導に入っているが…“オリジナル”のガルシア、龍星、姫次が気を遣ってくれているので何とかやれている…と、思う」
「そうか、それなら良いんだ 今まで生きて来て“色々あった”とは思うが28号がみんなに“必要とされる人間”として中央に居られるなら私は嬉しいよ」
そう言って屈託なく笑うオグリを28号は変わらぬ表情ではある物の優し気な瞳で見つめている。
「ワタシと闘った後身柄を匿ってくれた“灘の男達”には勿論だが、その後にワタシに関わってくれたオグリ、キミのお母さん、優希…“灘の女性達”にも感謝している キミ達のお蔭でワタシは今の生活を送れているんだ」
「キー坊が“NEO宮沢熹一”なんて変わった名前にしてまで頑張って助けようとした人なんだ 私たち家族が君に優しくするのは当たり前だよ」
「…礼になるのかは分からなかったが、弱視になっていた龍星の右目にワタシの角膜を移植したのだが…その後の経過はどうだ?」
「それは大丈夫だ むしろ…龍星曰く『今まで視えなかった物まで見える様になった』とか言っていたが、尊鷹おじさんと“同じ物”が見えてるようだし多分、大丈夫だろう」
「……そうか」
『それは本当に大丈夫なのだろうか?』という思いはある物のオグリが気にしている様子が無いので28号はそれ以上の言葉は不要と判断して話題を変更する事にした。
「…後、オグリ これは最近になって気付いたのだが、ワタシはキミに詫びなければならない事がある」
「……“悪魔王子”の事か?」
「ああ…“11号”は米国によって廃棄処分されたワタシ達“ガルシア・シリーズ”の生き残りだ ヤツが抱えている『世界に対する恨み』を一身に背負わせてしまった事を同じ“兄弟”の一人として深く謝罪したい…」
「気にしなくて良いよ
「しかし…」
「それに、“オグリ・ラッシュ”も別に悪い物だと思ってないんだ 最近では世の中の不幸になってるウマ娘を
「そうか、
オグリの口から出た『鬼龍』というワードに28号の声が自然と沈む。
彼が今まで米国からどんな非人道的な扱いを受けて来ても“人間性”を失わずに居られた要因の一つとして鬼龍から受けた『優しい言葉』があり、それらが全てが『嘘』であった事を知った時には自身のアイデンティティが崩れる程のショックを受けた事は彼の記憶にまだ癒えずに燻っていたのだった。
「…済まない、28号 鬼龍おじさんの話題を出してしまって…私だって流石におじさんの
「いや、構わない 実は…最近の私には
「…そうなのか?」
「ああ、代わりに聞こえるのはこうやってワタシに話し掛けてくれる
「…だったら、良いんだけど」
「オグリ…キミの存在はワタシ達にとっての“光”だ 11号だってきっとそれを分かってくれるとワタシは信じている」
「…うんっ! 私が“光”だなんて自覚は無いけど、君がそう言ってくれるなら信じる事にするよ!」
「…そう思ってくれると助かる もう不用意に“暴力”には頼らないと戒めているワタシだがオグリ…キミに何かあれば全力を以ってこの力を振るうと約束しよう」
「いや、それは危ないからやめて欲しいんだが」
未だに“兵器気分”が抜け切っていない28号の発言に真顔で拒否するオグリであったが、彼の瞳には“からかいの色”が覗いており『冗談』であった事を察したオグリは苦笑を返すのであった…。
◇◇◇◇◇
その後、合流して墓参りを終えた四人は帰り道を一緒に歩いていたが、今度は互いに話し相手を変えての道中となっていた。
「済まなかったな、オグリ お兄さんを独り占めしてしまって」
「良いんだ、ガルシア キー坊は私とはいつでも話せるけど君とは中々時間が取れないからな」
「28号もオグリと二人っきりにさせて悪かったのォ…なんぞ、会話は弾んだんか?」
「ああ、とても ある意味では
「なぬっ!? 言う様になったやん……ま、楽しかったならそれでエエわい」
「私達はこれから家でお母さんのご飯が待ってるけど、二人も良かったら一緒にどうだ?」
オグリからの夕飯の誘いに微笑みを返すも、二人のガルシアは首を横に振った。
「いや、気持ちは嬉しいのだが今度中央に来る予定のマーシオ“ジェット”内藤の為の書類を作成しないといけないからな 私達はこれから職員寮に戻らなければいけないんだ」
「…ジェットが中央に来るんかい!? アイツ“耳が聞こえん”やろ、大丈夫か!?」
「
「鬼龍おじさんから…ガルシアと28号は大丈夫なのか?」
「心配してくれてありがとう、オグリ だが“仕事”をする上でプライベートの問題など些末な事だ 気にしてなんかいられないさ」
「私も同じ気持ちだ それに、今日はキミ達二人と偶然会えた事で気分が高揚している 何の問題も無い」
「そうか…なら二人とも、気張って来るんやでっ!!」
「暇が出来たら由美子おばさんの所にも寄ってくれ おばさん達も…デゴイチも二人に会いたがっていたからな」
「ああ 今の仕事が片付けば纏まった休みも貰えるだろうし…その時にでも寄らせて貰うよ」
「D-51…デゴイチにもそう伝えておいてくれ、オグリ」
こうして、盆の暮れに出逢った二人のガルシアは現在の“自分たちの居場所”である中央へと戻って行った。
残されたオグリと熹一はすっかり温くなった夏の空気の中で再びタマから貰った塩飴を口に入れて家族が待つ宮沢家へと足を運ぶ。
「ジェットが中央に来るんだったら…キー坊、また闘ってあげたらどうだ?」
「オグリ、冗談言うなや ワシは
「ふふっ、そうだった ジェットは本当に強い人だったからな」
帰り道で今度から中央に来るであろう従兄のジェットの話に花を咲かせ、二人は笑顔でその歩を進めるのであった。
サラっとジェットも生存設定を入れました。