[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
「タマ、今から五皿何注文するが…何が食いたい?」
「うーん…光り物頼もうかと思ったけど、今んとこウチは茶碗蒸しだけでええよ」
「分かった サイドメニュー頼んどくんで適当に摘まんでくれ」
その言葉と共に店内に備え付けられていたタブレットを操作したのは宮沢熹一。
現在、彼は友人である“白い稲妻”タマモクロスと共に回転寿司での食事の最中であったが、そもそも彼らが本日一緒に居た理由とは───
「大体、オグリんといいアンタ等兄妹はウチの事遊びに誘い過ぎなんちゃうん? 『アクション映画の新作見に行こう』なんていきなり言われても普通、こっちにも予定ってモンがあるやん」
「無いから付き合ってくれたんやないんかい ワシもオグリも
「それはそれで『ウチ以外のヤツ誘うんかい』ってビミョーな気分になるやんか そういうフクザツな乙女心いうのをアンタ等二人共理解しとらんやろ」
「(メンドクサイのォ)…そうか」
「顔! その『メンドクサイ』って顔やめろや! そんなんやから女の子にモテへんのやぞ!!」
「わーっとるわい タマは相変わらず
「誰がオカンじゃコラァ!!」
二人にとっては“何時ものやりとり”を繰り広げているとテーブルから注文したサイドメニューが届く予告音が鳴り、その瞬間に言い争いをやめた二人が手際良く届いた料理をテーブルに並べて手に取り始めた。
「パク)…で? 今日は何で“映画鑑賞”なんや? 気晴らしに見る分にはええけど、キー坊はあんま映画館行かないタイプやろ」
「タマ、お前映画終わりのクレジットが英語やったら見ぃひんタイプやろ……見ろや! “アクション監修”の一覧に『KIICHI MIYAZAWA』って載っとるやんけ!!」
反応の悪さに業を煮やした熹一が購入していたパンフレットをテーブルに広げて指を指したので食べていた茶碗蒸しを横に置いたタマが覗き込むと、そこには確かに熹一の名が表記されていたのだった。
「うわ…マジやん 昔、『夢はアクションスター』や言うとったアンタが映画の仕事しとったんか…まだ諦めとらんかったんやな」
「昔の話は蒸し返さんでエエ 少し前に外国行ってアクション監督と知り合いになってな…少しの間、撮影に関わったんで名前を載せてくれただけなんやが…どうやった?」
「…役者さんの中にウマ娘のヒトもおったけど、“空中でジャンプ”してたシーン…アレ“ガチ”なん?」
「せやで ワシがやってたの見て『私もやりたいです!』言うたから思わず熱入れて指導したんやが…めっちゃ才能に溢れたヒトでな、コツを掴んでからはワシより高く跳んどったわ」
「……普通のヒトも映画ん中で結構な人数が“壁走り”やってたな アレは……」
「日本の俳優も何人か素でやっとんのは知っとったからな ワシが『わざわざワイヤー使うんか?』って“実例”を見せて質問したら皆やる気になって出来るまで指導したんで監督から『経費削減できた』って褒めて貰えたんや」
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
笑う熹一の声と店内に響く他の客への呼び出し音を聞きながらタマは深い溜息を吐くとテーブルに並べられた唐揚げをつまようじで一つ刺し、それを目の前の男に突き付けながら質問する。
「それは“灘の動き”を教えたんか?」
「いや、あくまで“身体の使い方”を教えただけや 下手に“実戦的”な動き方を学んでも逆にパフォーマンスが落ちるからな」
「…なら、ええわ アンタが考え無しに武術を広めるなんてアホな事やらかしとんのやったらウチが静虎のオッチャンの代わりに説教したろ思ったけど…杞憂やったな」
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
その言葉と共に唐揚げを口にしたタマに熹一は不敵な笑みを見せ、彼女に倣って自身も唐揚げを一つ頬張った。
「ワシかてそないアホな事せんわ “半端な暴力”を齧ったヤツ等の相手なんぞ、それこそ学生時代に飽きる程相手にして来たからのォ…自分からリスクを振りまくマネなんぞせぇへんって」
「分かっとんならええねん 最近じゃアンタもマトモに喧嘩出来る相手が居らんで退屈そうに見えたからな、“魔が差す”って事もありえるかも思って一応、聞いたんや 気ぃ悪くさせたら謝るわ」
「気にすんなや 確かに満足いく喧嘩は最近ご無沙汰やがワシも中央での“今の立ち位置”には満足しとるんで迷惑を掛ける様なマネはせんから安心せェ」
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
熹一の答えを聞いたタマは安心した様に再び茶碗蒸しに口を付け始めるも目の前の男は“何か”を求める視線を送っており、ウンザリとした視線を返す。
「…何やねん、ジロジロと」
「んな事より“映画の感想”やろ ほぼCG無しの大迫力アクションやで? 面白かったやろ?」
「……アクション面は見応え十分やったな “迫りくる刀を避けてのカウンター”や“燃え盛る炎からの大脱出”なんかをノースタントでやっとったんなら、そら驚きやったで?」
「せやろっ!」
「せやけど、話はオモロないな よくあるB級ストーリーなんは目を瞑るけど何やねん“二段ジャンプした後フツーに降りて銃乱射”して『私の跳躍力を舐めないでよ』って アンタの話を聞いたら“やりたかった感”全開やんか せめて跳んでる時に銃撃っとくべきやん?」
「…せやな あん時はワシも含めて皆アドレナリンドバドバやったから気にせんかったけど、実際見てみるとおかしかったな……」
「後な、壁走りに関してやけど…主演はともかく“一般人まで壁を走り出す”んはハッキリ言って異常やで? デート中のカップルまでやりだすんで『いや、忍者ムービーかい!?』って心の中で思わずツッコミ入れてしもうたやんか」
「…アレは壁走んのが現場でブームになってな、誰が一番距離稼げんのか競っとった位なんや 結果として監督が変なスイッチ入って『折角だから皆でやろう!』とか言い出したんでそのままって流れやったわ……」
「つまり、総評で言えば“笑えるバカ映画”やな」
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
乞われた感想を言い終えると喉が渇いたのか茶をすするタマを横目に熹一は目に見えてテンションが下がっており、それを見たタマは面倒そうに頭を掻くと一つため息を吐いた。
「…ま、役者さんが皆ええ顔で演技しとったのは良かったな
「…タマ お前ホンマ、エエ奴やなァ」
「当ったり前やろ! せやから、そんなウチに敬意っちゅうモンを持ってココの支払いは頼んだで?」
「おうっ! 任しとけ…って、何時もワシはお前に奢ってやっとるやんけ」
「アホゥ! いつもはアンタが勝手に“奢ってる”だけでウチが“奢らせる”となったら心持ちが全然ちゃうわ! こういうビミョーな乙女心に気付かんからアンタは女の子にモテへんねん!!」
「わーっとるわい タマは相変わらず
「誰がオカンじゃコラ……って」
「「 このやり取り、さっきもやったな…… 」」
先程と同じやり取りを行ってしまった事に気付いた二人は顔を見合わせて自嘲を込めた笑い声を上げた。
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
「…喋ってたら何や、腹減って来たのォ 今更やけどタマ、折角奢ったるんやしもっと高い
「かまへんよ、下手に高い
「オグリと違ってお前は小食やしな 現役の時はコミちゃんが栄養管理しとったらしいが引退した今となれば自己管理せなアカンやん?
「…静虎のオッチャンは野菜中心のメニューばっかやし、アレはアレでウンザリするんやけどな……分かった、そこまで言うならキー坊おススメのヤツを注文してくれへん?」
「うっし! せやったらまずは低脂肪高タンパクの“タコ”から…いや、消化に悪いから初っ端はマズイか しゃあけど、タンパク質が多い魚言うと…ブリ、イワシ、ヒラメ…タマ、サーモンはイケるか?」
「勝手に注文してくれてええよ
「……おうっ、そこは安心しとけや」
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
そう言いつつも視線を逸らしながら備え付けのタブレットを操作し始めた熹一に『やれやれ』といった視線を向けて新たに淹れたお茶を啜るタマであったが、先程から“気になっていた事”を遂に訊く事にした。
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
「キー坊…さっきから“この席番”呼ばれ過ぎなんちゃうん? なんやスパンも早くなってるし」
「回転寿司言うても食いたい
「……ウチ、“心当たり”あんねん 行ってみるか?」
「…確認するだけ、してみるか」
◇◇◇◇◇
≪09番テーブルにご注文の品が届きました≫
「…来たか」
「お寿司は取っておくけどテーブルが埋まりそうだし、そろそろ店員さん呼ばないと……大丈夫?」
「ありがとう、ベルノ 私のお腹はまだまだ大丈夫だぞ」
「それは…分かってる そうじゃなくてオグリちゃん、今度のレースの傾向の説明なんだけど…ちゃんと聞けてる?」
「それも大丈夫だ、ちゃんと聞いてるぞ それよりベルノも何か注文しないか? 私ばかりで申し訳ない気分になるんだが…」
「ううん、私は十分食べたし…それに、オグリちゃんを見てるとそれだけでお腹いっぱいになっちゃうよ」
「そうか? それなら次の注文も私の食べたい物を頼むか……」
そう言って9番テーブルでタブレットを操作し始めたのは“怪物”と呼ばれたスターウマ娘…オグリキャップであり、共に来店して現在目の前に居た親友であるベルノライトの為に『何か甘い物でも頼もうか』と思案し始めた時であった…彼女等に“二つの人影”が近付いて来たのは───
「相変わらず、気持ちのエエ食いっぷりですなァ…ワシも見てて幸せな気持ちんなりますよ、タマさん」
「ホンマですねぇ、宮沢熹一サン ウチと違ってぎょーさん食えて体重を気にせんのやから羨ましい限りですわ」
「イヤ、何でワシの事フルネームで呼ぶねん 壁作られてるみたいで気分で悪いやん」
「イヤイヤ、“キー坊さん”呼んだら可笑しいやないか “ア〇ネス・チャンさん”くらい違和感バリバリやで?」
「お前、よりにもよってその例え出すんかい…ソレ言われたらワシ何も言えんくなるヤツやんけ……」
「アホ、そこで『誰が“坊さん”じゃい』くらいの返しは見せんかい 全く、“最強の男”もギャグセンスはまだまだやな」
宮沢熹一とタマモクロス、オグリにとって大切な兄と友人が“漫才染みたやり取り”を行いながら現れたのである。
「キー坊にタマ、
「おうっ! ワシ等は映画帰りでな オグリとベルノちゃんは…勉強会か?」
「何や、ベルちゃんのタブレットはマジメな事しか書いてへんのにオグリんのは“次のメニュー”しか書いとらんやんか」
「いや、違うんだ二人共! 私はベルノの話はちゃんと聞いていて……」
「そ、そうなんです! 私だけ気分が焦っちゃって、オグリちゃんがご飯を食べてるのに勝手に話し始めちゃっただけで……」
「ぷっ…ハッハッハッハ! 悪いのォ、二人共」
タマからの指摘に焦る二人のウマ娘の姿を熹一は笑い飛ばし、それを見て『からかわれたのだ』と気付いた二人は安心した様に溜息を吐く。
「イヤ、からかってスマンかったな お詫びと言ってはなんやけどさっきまでウチ等が行って来た映画の感想でも教えたるわ “アクション監修のやらかし”も添えてな」
「んなっ!? タマ、お前……」
「え? 何の話なの?」
「…あれか? キー坊がこの前『ようやく封切りやー!』と叫んでいた映画の事か?」
「あ、あのなオグリ…それ以上その話は……」
「オラァッ!(バシィン! 話の出来はともかく役者さんはイイ顔してた言うたやんか! もちっと自信持てや!!」
こうして…まごつく様子を見せる熹一に業を煮やしたタマは彼の尻をスリッパで叩き、悶えるその様子を尻目に先程の映画鑑賞の感想をオグリとベルノの二人に話す事にした。
そしてそれを聞いた二人の驚きと笑い声が店内へ朗らかに響いたのであった。