[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
タマモクロス、鉄山師匠の教えを受けていた概念導入。
此処は都内の喫茶店、一つのテーブルに向かい合って座るのは今世間を賑わせている“怪物”オグリキャップと“白い稲妻”タマモクロス。
『美人の多いウマ娘だから』という理由では説明できない程にタイプの違う整った顔立ちをした二人が顔を突き合わせるもその表情は神妙そのもの、果たして彼女たちが話している内容とは……
「最近、キー坊がモテているかもしれない」
「藪から棒に何やねん あの万年振られマンがモテとるとかありえへんやろ」
「いや…最近、女性関係のゴシップ記事に振り回されてうんざりしてしまったらしく、外へ出る時はよく変装するようになったんだ」
「ゴシップ…ウチの相方のコミちゃんも巻き込まれたけったくそ悪いアレか で? キー坊がたまにヅラ被って外出てんのはウチも知っとるけど、何でそれがモテに繋がんのや」
「あの姿を見た知り合いやクラスメイトが『カッコイイ』、『影があってステキ』と言っているのを耳にした」
「…それ聞いてオグリはどない思ったんや?」
「キー坊は確かに格好良いが本当の格好良さはそんな表面的な所じゃ決して無いと思ったんだ」
「まぁ…確かに口を開けば下らん事ばっか喋るわ、デリカシー無いわでロクな男やないが、同時に噛めば嚙む程味が出るおかしな男ではあるな」
「そうだろう! 流石タマだ、分かってくれるか!」
「イヤ、褒めとらんし…しっかし出会った頃から振られ続きのアイツがキャーキャー言われるとは驚きやな」
「そうだな、私が思い出す限り………」
~『ワシな! 大きくなったらおかんとケッコンする!』~
~『ごめんなさい、熹一君 私は静虎さんと結婚しているからそれは出来ないの』~
~『そ、そんな…ワシ、ふられたんか』~
~『キーボー、元気だして(ナデナデ』~
「うん、初めて振られたのはお母さんにだな」
「ぶはっ! それアレやろ! オグリのお袋さんがキー坊を君付けしとった頃やろ!? 腹捩れるわ~…」
「あの頃のワシにとって
「お? ようやっと来たか“NEO宮沢熹一”」
「キー坊、今日はその恰好なんだな」
謂れのないゴシップ記事の所為で最近は変装に凝り始めて変わった形のグラサン、祖父譲りのニットキャップにアレンジを加えるなど等、様々な方法を試していた熹一であったが今回彼が選択したのは長髪のカツラ、Vネックシャツ、叔父である鬼龍が愛用している物に酷似したコートという“NEO宮沢熹一”スタイルであった。
「まぁな、なんやかんやでこの姿が一番バレへんねん 後タマ、その名前で呼ぶのはやめぇや ワシの機嫌がメチャクチャ悪くなるぞ」
「あー、スマンスマン まぁ、確かにまじまじと見たら割とイケてる方やな」
「何やねん、今日は用事があるって言うんで時間作ってわざわざ来たっちゅうに 馬鹿にするだけならワシはもう帰るぞ」
「待ってくれキー坊 今日、私達は訊きたい事があってキー坊を此処へ呼んだんだ」
「おー、そやそや 笑ってスマンかった ま、ウチの隣にでも座ってや(ポンポン」
「…ったく、お前等じゃなけりゃホンマに帰っとったからな で? ワシの何を訊きたいんじゃ」
「うん、キー坊…」
「お、おう…」
未だかつてない程、神妙な顔をした妹に数多くの戦いを繰り広げてきた格闘家としての本能が警鐘を鳴らし、熹一は居住まいを正して話を聞く体制に入ったのだが……
「最近、好きな人はいないか?」
「………は? はあっ!? いきなり何を言っとんじゃいオグリ!!」
妹の口から出たあまりに突拍子もない言葉に仰天し、危うく座っていた椅子から転げ落ちそうになってしまった。
「いやな、最近のキー坊はキレイどころに囲まれてるやろ? ほなら、エエなと思う人が居てもおかしくないとウチ等は思ったんや」
「タマまで何を言っとんねん…いや、昔ならいざ知らずワシもエエ大人やぞ そない浮ついたこと…」
「例えばベルノなんてどうだ? この前、新しいシューズを一緒に買いに行っただろ」
「アレはオグリのシューズを買いに行く“ついでに”ワシのも選んで貰っただけやん しっかし、ベルノちゃんの専門知識の豊富さと気遣いは大したモンや 学生の頃のワシやったら間違い無く惚れとるわ」
「ウチの相方のコミちゃんはどうや? 報道写真で満更でもない顔しとったやないか」
「コレも“灘の整法と活法”を教えに行った際にすっぱ抜かれただけや! それにあんな美人が近くに居たら…男ならお前、表情筋ガッチガチやぞ!」
「…これは尊鷹おじさんから聞いたんだが、ジャパンカップで私とタマに勝ったオベイユアマスター…彼女が帰国する時に二人で何か話していたらしいじゃないか」
「ソレこそお前等に勝った“尊鷹の教え子の一人”に話聞きに行っただけやんかっ! ちゅうか、尊鷹居たなら出てこいや! あの姉ちゃん、ワシに尊鷹の事しか訊いて来んかったぞ!!」
「そうか…そうだったのか」
「(イヤ…おかしいやろ 昔のキー坊なら目の色変えてプロポーズしに行く面子ばかりやぞ?)」
「せや 分かってくれたか、オグリ」
「(今まで女に振られ続けた人生…格闘技に全てを捧げてきた青春…何より、子供の頃からずっとそばに居た美人のお袋さんと妹のオグリキャップ…!)」
「タマ、お前も分かったやろ?」
「(今のコイツの精神状態は限りなく静虎のオッチャンに近いっ…!)」
「…タマ、どないした?」
「しゃーない…ここはウチが一肌脱ご」
「な、なんやのん…」
「キー坊、ウチと付き合ってくれへんか?」
「えっ? タマ!?」
「おうっ この前、隣町に出来たお好み焼き屋やろ? 奢ったるさかい、遠慮せず食えや」
「クソボケが──────っ(スリッパ殴打)!!!」
「灘神影流“弾丸すべり”! お前何すんねん! 一瞬、鉄山のオッサンかと思って思わず人前で灘の技使うてしもたやないか!!」
「せっかく! ウチがお前の中の“雄”を呼び覚まそうと恥を忍んで告白まがいの事までしたっちゅうのになんやその対応は!! こんなん師匠なら一升瓶で殴り掛かって来るぞ!!」
「いや『“雄”を呼び覚ます』ってお前はワシにとって妹分やぞ!? タマだけは無いわっ!!」
「オグリを前にして屈辱の極みやろそれはーっ!! もう許さへん!! 〇の穴に手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわしたる!!!」
「待てやタマ! 女の子がそんな言葉使うんやない!!」
「こんな時だけ女の子扱いすんなやボケ──────っ!!!」
“ウマ娘のトップアスリート”と“古来より受け継がれてきた暗殺術の現当主”、店内で繰り広げられる“超人達の喧嘩”を尻目にテーブルから離れなかったオグリは一人、安堵のため息をついていた。
「(キー坊に今、好きな人はいない…)だったら私はまだ、キー坊の一番の妹でいられるな(グゥ~」
今回の悩みで最近は食欲も僅かばかり減退していたのだが杞憂だと分かると彼女のお腹は音を鳴らし始めた。
「あの…お客様」
そこへおずおずといった様子でこちらへ近付いて来た店長らしき人物が現れたのでオグリは注文をしようと……
「すまない 急にお腹が空いてしまって、何か頼んでも良いだろうか?」
「出て行って頂けませんか?」
「………ごめんなさい」
深い謝罪の後、オグリは二人を連れて店を後にしたのだった…。
この後パパラッチの追撃に会い、ゴシップ記事により二度愚弄されるタマに人生の悲哀を感じます。