[ウマ娘×TOUGHシリーズ] オグリ家と宮沢家との日常シリーズ 作:日常系好き
キー坊の“オリジン”という話だったのでオグリにとっても同じであればなという感じで。
日が昇り始めた朝の冷たい空気を吸っては吐き、吸っては吐きを繰り返しオグリキャップ足を動かし続ける。
今日も自分の足は動き、自分の望むままに動くのを確認し、動ける事に感謝して、彼女は目的地も定めないままに宮沢家から出たその身を風にさらし続ける。
しばらくすると自分が見覚えのない場所に来た事に気付いたが彼女にとってソレは何時もの事で特に気にする様子もなく、普段通り近くの交番にでも道を聞きに歩を進めるとその途中で小さな公園を見つけた。
常であれば気にしない場所に何故か心動かされて彼女が立ち寄ると其処には一人の“隻腕の外国人”が佇んでおり、それは彼女にとって懐かしい人物であった。
「ひょっとして…“ミハイル”さんか?」
「君は…オグリ」
…しばらく二人は見つめ合う。
その間にお互いは思い返していた、もう10年以上も前になるだろう自分たちの出会いを。
「まだ、
「そう言う君は…もう、すっかり走れるようになったんだな」
「ああ、お父さんとお母さんとおジイちゃん、それにキー坊の…“家族”のおかげでね」
「キー坊か…ハイパー・バトルは私も見たよ あの強いお父さんに勝利した姿をね…本当に、立派になった」
「あの時は二人とも、とっても辛そうだった 見ている私達もそうだったけど、『それがきっと…格闘家って生き物なんだね』って言いながらお母さんが手を血が出るまで握りしめていたから、私も決して目を逸らさなかったんだ」
「そうか…君もお母さんも強い人なんだな」
「そんな事ないよ お母さんはともかく私は昔、ミハイルさんとお父さんの戦いを見てなかったらきっと…目を逸らしていたと思う」
「あの時は、まだ子供だった君達に凄惨な戦いを見せてしまって…本当に済まない」
「ううん、ミハイルさんにも理由があったんだってお父さんから聞かされて当時から納得していたし、私もキー坊もあの経験があったから、だれにも負けない位、“与えられる人”になりたいって思えたんだ」
「…それならばもう叶っているよ 私も君のレースは見ているんだ…随分と、元気を貰っている」
「そうなのか でも、私はまだ満足しないぞ」
「…それも確か、君のお父さんの教えだったね」
「うん、『勝っても驕ってはいけない、負けても卑屈になることはない』あの時のお父さんの言葉は今でも私達兄妹の心に残っているからな」
「道理で元気を貰えるわけだ…あの日、君達に会えたのは私にとって幸運だったのだな」
「…お父さんが殴られた事は少しイヤだったけど、ミハイルさんがあの日、キー坊や私とお絵描きしてくれたり砂のお城を作ってくれたのは私にとっては良い思い出なんだ」
「そう言ってくれて、ありがとう では…そろそろ行かないとな」
「ミハイルさん、どこへ行くんだ?」
「いや、国で私関係のゴタゴタが片付いたと連絡を貰ってね ようやく“家族”に会えるんだ」
「そうか…良かったな」
「国を発つ前に君に会えるとは、この幸運を神に感謝せねばな…さようなら、オグリキャップ」
「ああ、ミハイルさんも元気でな」
公園を出た二人は別れの言葉と共に互いに背を向けて歩き出した。
そしてオグリキャップは歩を徐々に早め、遂には走り出す。
交番で聞く筈だった道の事も忘れてどこまでも、どこまでも駆ける、胸に湧いた不思議な充足感をその身に抱えて。
「オグリ、お帰り 今日は遅かったの?」
「ただいま、キー坊 あのね、今日…」
妹が久しぶりに見せた“屈託のない笑顔”に熹一の表情は自然と崩れ、彼女の話す言葉を静かに聞く事にした。