今日も日向は暖かい   作:licop

13 / 27
奴隷との会合

推しキャラに会う日を迎えることもあり、ほとんど眠れない夜を過ごした次の日。

 

「フェンさん、目の下のクマすごいですけど。どうかしたんですか?」

 

「心配かけてごめんなさい。大丈夫なのだけれど、緊張しちゃって眠れなかったのよ。でも、大丈夫だから。」

 

心配してくれるボガードさんと横で鼻をほじくっているガープを横目に、今後の内容を考える。

やめろ、鼻くそをこっちに飛ばしてくんなジジイ!!

 

 

と言っても考えなきゃならない事はあまり多くはない。

海軍での今後の指導内容と、帰宅後の動向である。

 

現代武術の技術は目新しく、センゴクの言う通りで直接内部へと攻撃を通せる技術や、真正面から叩くことをスタンダードと考えている世界での奇襲方面の技術などはまさに目から鱗の技術であろう。

 

ただ教え過ぎれば、今後に自分が戦わなくてはいけない状況になった時に自分の首を絞めることにも繋がってしまうことだってあり得るわけだ。

 

いまだにスーロン化の手札は切っておらず、エレクトロでの身体能力上昇値にも振れ幅があることも、奥の手にはなるだろう。

だが、それ以外でも手札は多く持っていた方が有利に働く内容や状況は多い。

 

それ故に、結果いい塩梅に気をつけなくてはいけない。

今までの通りで進めていくつもりではあるものの、発勁などの浸透系の武術を教えてしまったのは今考えれば痛手になるのかもしれない。

 

武装色の覇気をもらっている都合上トントンか。

 

海軍に伝手を持っていることは、状況の位置早い情報の入手とか、物の仕入れとかの面で非常にお世話になっていることも多いため。その点を考えるのであればプラスだろう。

 

あとは、帰宅後は定期的に海軍支部に顔を出すこと以外は普通の日常か。

 

 

 

考えているうちに、昨日の部屋へと到着していた。

 

「センゴク大将!中将と、フェン殿をお連れしました!」

 

「開いているから入ってくれ。」

 

「失礼します!」とボガードと共に室内へと入っていくのだが、すでに今回の主目的であった三姉妹はセンゴクの右側に控えていた。

 

「ほう。これは、流石に絶世と書かれるだけのことはある。」

 

感嘆の声をあげるガープを見て、センゴクに目線を移す。

 

「まずは昨日話していた海軍支部での教練の話であるが、これはこちらで事務的な処理は済ませておいたため、週に2度ほど可能であれば指導にあたってほしい。また定期的に本部での人材も派遣したいと考えている。これは可能か?」

 

「いいわ。週に2度ぐらいであれば可能でしょう。だけど、良く海軍本部で海軍に所属しないものから教えを乞うなんて、問題にならなかったわね。」

 

「そこは、反対派よりも賛成派の方が多かったと言うのが正直なところで反対されなかったわけではない。」

 

詳しく内容を聞くと、現在の海軍部で取り扱っている技術は剣術メインに考えた指導状況やほとんどが実践での個人スキルでの組み上げがほとんどだそうで、その内容からか伸び悩んでいるものも多かったとのこと。

 

そこで取り上げられた新しい技術に伸び悩んでいたものや、より貪欲なものはまさに目から鱗の技術が多かったとのことだ。

加えて大将としてのセンゴクの実績からの信頼もあり、今回の話はすんなり通ったとのこと。

 

反対派の意見としては、海軍内部に部外者を入れるリスクを考えろとの意見だった。

それは現在までシェルズタウンでの強化の実績もあるため、問題なしとの判断だったそうだ。

 

「海賊もロジャーのやつが、起こした状況もある。年々、面倒な海賊が増えてきていることや、これからさらに加熱していくことを考えれば、海軍としてもなりふり構っている場合ではないのだ。これからよろしく頼むぞ。」

 

 

現代武術として、体の構造で一番力を発揮できるようにと100年単位で研鑽され続けた武術も現代武術としてあるため、期待される技術ではあるのだろうが、正直に重たい。重たすぎる期待だよ、センゴク!!

 

「前報酬と言ってはなんだが回収してきた奴隷はフェン殿に任せよう。元々、ガープもフェン殿に頼まれて動いていたと言っていたしな。そうだろう、ガープ。」

 

「そうだな。で、どうするんだ。」

 

控えている姉妹に目を向けると、戸惑っている表情が見て取れる。

それはそうだろう。助かったと思ったら、見ず知らずの人間が助けるために行動したと言った話が飛び交っているわけで。

 

面識もあるわけもない。

 

なんで助かったのか、今後の状況も含めて意味がわからないだろう。

 

「ごめんなさい、私たちだけに少しの間させてもらうことは可能かしら。もしくはこの子たち連れて部屋に戻ってもいいのであれば、それでも構わないのだけれど。」

 

「ここで話していけ。ガープ、久々に帰ってきたのだ。俺の巡回に付き添え、ボガードも付き合ってくれるか。」

 

「はっ!」

 

「嫌だ。めんどくさい。」

 

センゴクの部屋の戸棚にあった煎餅をボリボリと齧っているガープの近くまで、近づくと思いっきり拳骨を落とし、白目を剥いたガープを引き摺りながらいい笑顔、ボガードに声をかける。

 

「いくぞ、ボガードよ。1時間前後の時間で帰ってくる。それまでは、ここの部屋は自由に使っていい。巡回しているとわかれば、誰もこの部屋にくることはないだろうから、安心して話すといい。」

 

声をかけると、ガープの巨体を引きずり部屋を出ていった。

 

 

「怖がらなくていいわ。私はフェンっていうのだけれど、お名前を教えてくれないかしら」

 

声をかけるも姉の背に隠れてしまっている(仮定、サンダーソニアとマリーゴールドだろう)はこちらの言葉よりも、怯えてしまっていることもあり返答には期待できそうにない。

 

唯一話せそうなハンコックだろう人物に声をかける。

 

「妾の名前は、ボアハンコックじゃ。こっちはサンダーソニア、マリーゴールド。話を聞く限り、其方が我らの救出に力を貸してくれたのだろう。妹たちが怯えてしまって、挨拶がまともにできる状態でないことの非礼を詫びよう。」

 

その見た目は、12歳にしてすでに多くを魅了してしまうような美しさと幼さやあどけなさの残る可愛さが同居しているかのような風貌であった。

 

また皇帝の教育を施されているのか、口調は原作で見ていた通りのそのまま。

自身も不安だろうに、気丈に振る舞っているのが時折垣間見える不安そうな表情から伺えた。

 

「いいの。別に気にしてないわ。それに知らない奴隷で捕まって、終わったと思ったら知らない大人たちに囲まれて。不安な気持ちも全部わかってはあげられないけど状況はわかっているもの。」

 

ずっと張り詰めていた心持だったものが少し解けてしまったのか、こちらが心配そうに見ているのを感じて少し安心したのか、隠れていた姉妹が泣き出してしまった。またハンコックもまだ幼い。

 

気丈に振る舞ってはいるものの、年としては12歳である。

12歳の頃なんて、前世で言うなれば小学生である。

 

小学生で奴隷にもなったのに、これだけ気丈に振る舞わないと妹を守れない状況で生きなきゃいけなかったのだろうか。

そう思うといかにこの世界が子供や力を持たないものに、恐ろしい世界かと改めて前世との違いを実感する。

 

なんていうか、考えるだけで涙が出そうだ。

てか出ていた。

 

カオスである。泣いていないのは当事者の姉だけ。

それ以外は、妹たちはおかしいことはないのだがつられて私も泣き出す始末。

 

合計3人がビエンビエンと声を上げて泣いているのだから、ハンコックはひたすらにオロオロしていた。

 

「なぜお前まで泣くのだ!!泣きたいのは妾であろうが!!」

 

 

私個人としては現実の殺伐さと姉妹の境遇に関しての内容で、少々お見苦しいところを見せてしまったのだが、、センゴクが帰ってくる前になんとかしないといけない問題を片付けなくてはならないため、泣いているばかりではいられない。

 

 

「散々わけもわからぬ状況で泣きおって。泣きたいのは妾だ、全く!!」

 

「それで、なぜ妾たちを助けたのかを語ってくれぬか。状況も、見ず知らずのお主が妾を助けるに至ったのかも全くわからぬ。見当もつかないまま、お主を信用しろというのも無理がある。なぜ妾たちはここにいるのだ。」

 

ひとしきり泣き終わった後という状況もあって、姉妹も泣き止んでおり不安そうな目をこちらに向ける。

 

さて、別に理由もないわけだが。

まさか前世の話をするわけにもいかないだろうし。

 

それにさっさとこの話を終えて、奴隷紋があるのか否かの状況確認とかあるのであれば、治さなきゃとか、治すところはセンゴクやガープに見られちゃいけないとか。

 

やることは盛り沢山である。

完全な自己満であるのだが、奴隷紋があるせいで今後の推しの生活に支障が出るのは、せっかく助けたのに納得できない。

 

どうしよう。

 

考えれば、考えるほど全くもっていい理由がない。

あえて言うなれば、推し。

 

「あの方、ミンク族じゃないかしら。」

 

「そうよ、お姉様。あの方、本で見たことあるもの。ミンク族だわ!」

 

後ろの2人は目をキラキラとさせながら、こちらに目線を向ける。

 

「サンダーソニア、みんく?とはなんだ。」

 

「動物の見た目で、人にすごく寛容な種族だって書いてあったわ。」

 

「そうよ、お姉様!あの猫耳と尻尾触ってみたいのだけれど、怒られるかしら!」

 

尻尾を右に移すと、右に目線が。

左に尻尾を移すと左に目線がうつる。

 

「いいわよ。触っても。触ってみる?」

 

「お姉様!」と目線をハンコックに向ける姉妹に、ハンコックも負けたのかGOの許可が出ていた。

 

「ふかふかで気持ちいいのね、この尻尾!!」

 

「ほとんど人の見た目と変わらないのに、耳と尻尾だけあるの不思議ね!!」

 

なんだか真剣に悩んでいたのがバカみたいである。

元々、奴隷になる前は原作でもこうやって活発に楽しむことのできる女の子であったのだろう。

 

妹達と遊んでいると、気持ちハンコックも羨ましそうにみているのが目に入る。

 

「いいわよ。別に引っ張ったりしない限り触っても。興味がないのであればいいのだけれど。」

 

「美しい妾に触ってもらって箔をつけたいと。」

 

「別に興味がないならいいって。」

 

「是非触ってほしいと!?」

 

「あぁ、そうね。是非ともハンコックちゃんにも触ってほしいなぁ。」

 

「しょうがないなぁ。」と言いつつ、嬉しそうにするハンコック近くにくる。

ニヨニヨするなよ、顔に出てるぞ。

 

目的は理由はどうでもいいのだろうか。

近づいてきた時にチラッと背中が空いている服であるということもあり、みてしまうが奴隷紋はしっかりと刻まれていたのだった。

 

 

「ねえ、お姉ちゃんから一つお願いがあるの。聞いてくれるかしら。」

 

そう切り出すと、やはりかといった表情でこちらをみる3人。

締まらないから尻尾を握る手も離してもらっていいだろうか。

 

「難しいことじゃないの、この豆を食べてほしいのよ。毒も入っていないし、心配だったら先に私が食べて見せてもいいわ。私からはそれ以上何かお願いすることもないし、なんだったらあとは故郷まで送っていくのをさっきのおじさん達に進言もしてあげる。どうかな。」

 

「妾は構わぬ。ここまで連れてきてもらって、今更殺されるなど面倒な手配をする意味のない故な。ただ、妹たちが食すのは妾が食べて問題がなかったことを確認してからでもいいだろうか。それさえ許してくれるのであれば従う。」

 

それはそうよね。

会って、助かって、話したのも数分だもの。信用なんてしたくてもできる時間ではない。

 

「私が先に食べて毒味をしてもいいわよ?」

 

「それはいらぬ。解毒剤をすでに飲んでいる可能性も考慮するのであれば意味がない。その豆とやらを早くよこせ。」

 

腰に巻き付けておいた、ダサ可愛い巾着より仙豆を放る。

後遺症に関して、効く記述と効かない記述と両方がある仙豆だ。

昔試したことがあるのだが、何年も前の傷であると流石になんともならないこともある。ただ、わりと近々の傷だと治ってくれる可能性が高いことを既に実証している。

 

ボリボリと仙豆を口に含み、飲み込むや否や、奴隷として扱われた際に怪我をしたのか、あざだらけだった腕や足、加えて背中の焼き印でつけられている奴隷紋の綺麗さっぱりと消えていた。

 

ただ流石の満腹感でお腹をさすっていた。

背中の痛みや足、腕などの痛みが突如引いていく状況に理解が追いついていないのか呆然としているハンコックに、食べさせてもいいか尋ねる。

 

「これは、なんだ。こんな豆なんぞ聞いたこともない。痛みがみるみるうちに引いていく。妾に何を食わせたのか。」

 

「悩むのはいいけれど、ソニアちゃんとマリーちゃんにも食べさせていいかしら。できるだけ、おじさん達が戻ってくる前に済ませてしまいたいの。」

 

呆然としながらも、首を縦にふるハンコックを見て他2人にも仙豆を配る。

2人とも仙豆を噛み砕き、飲み込んだ後、傷のない腕や足に飛び跳ねて喜んでいた。

 

こっそりと背中を眺め、奴隷紋もしっかりと消えているのを確認して、ちゃんと消えていることに一安心した。

これでひとまずこの3人は大丈夫だろう。

 

「こんな豆なんて聞いたこともない。一粒で全身の怪我を治す豆なんぞ、よっぽど貴重なものだろうことは想像がつくのじゃ。なんでそんな貴重な豆を3粒も妾達に?」

 

ここで外から、帰ってきたセンゴク達の声が聞こえてくる。

 

「ガープよ!!お前は見込みのある兵士を見つけたら、とりあえず殴りかかるのをやめろとあれほど言っただろう!!まだその癖は治らんのか!!」

 

「すまんすまん!楽しくなってしまってな!!」

 

ガハハと笑うガープの声と、気苦労の絶えないセンゴクの声だ。

 

「さっきの解答は、別にお姉ちゃんは助けたかったから助けただけよ。別に深い意味はないの。可愛い女の子がゴミクズに良いようにされて、泣いているのがお姉ちゃんは許せなかっただけなのよ。可愛い女の子に傷なんて似合わないから、あれもあげただけ。全部お姉ちゃんのわがままなのよ。だから豆のことは内緒にしててね?おじさんに知られたら、お姉ちゃん怒られちゃうから。」

 

仙豆なんて、超常現象をあいつらに知られたら何があるかわからんからな。

仙豆だけは隠し通さないとなるまい。

 

「妾もそんな理由で助けられたとは思わなんだ。・・・・ふふっ。そうか、島の外にも温かいものはいるのだな。」

 

ボロボロになっていた体や髪までのツヤツヤになり、改めての仙豆の効果には驚かされる。

ただ少しおかしそうに、微笑むハンコックの笑みは柔らかく、見たものが見惚れるような笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。