今日も日向は暖かい   作:licop

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間話 日常

フェンがいなくなって1週間。

 

ベルメールは、いつもの日常を過ごしていた。

 

朝は庭のみかん畑に赴き、枝葉の剪定を行い、実になって熟しているものをカゴに積んでいく。

軽く水を撒き、収穫したみかんを持って帰る。

 

終わったら、少し離れてるフェンの家へと行き牛の餌やりと、家の裏でのじゃがいもの収穫。

 

終わる頃にはお昼も過ぎる頃の時間になるため、家に帰ってナミやノジコのご飯を作り海軍で学んできた勉強をできる限りナミとノジコへ教えていく。

 

文字の練習や、ナミは航海術に興味を持ってきているため一緒に海図を作ったり。

ノジコは医術に興味を持っているため、本を読んで学んだり。

 

 

航海術に関しては、理由は知らないがフェンが山ほど家に航海術の教本を置いて行ったために買わなくても充実しているし、医術関連の本はフェンの家に置いてあるため、軽く拝借してきたものである。

 

「ナミ。ノジコ!!ご飯にするよ!!」

 

「「はーい!!」」

 

いつもの通り、みんなでご飯を食べ。

終わったら、気持ちのいい天気であれば散歩や乳搾りに向かったり天気が悪ければ家で勉強である。

 

ベルメールの日常は、あれからの日常も変わることなく過ごしていた。

 

 

「・・・・・ゔぉぇ!!」

 

最近はご飯が喉を通過してくれない。胃が受け付けなくなってるなぁ。

こんな姿、ナミやノジコに見せられるわけがないから外に出てきておいてよかった。

 

日課のタバコを吸ってくると、子どもたちにはご飯を食べてなさいと言って家から出てきていた。

ノジコなんか、医術書を読んでいるからか人の顔色で「大丈夫?」と心配してくるようになってきているから、化粧も少し厚塗りしないといけない。

 

 

ゲンさんなんてアタシがいくら美人だっていったって、ずっと見てくるのは流石に気持ち悪いから

 

「アタシに惚れたの?まぁ、アタシぐらいの美人はそうそういないもの。けど、見過ぎは気持ち悪いからやめといた方が良いわよ!」

 

と言ってやったら、「そんなわけあるか!!」と怒られた。

 

フェンがいつ帰ってきても良いように、フェンの家の中の掃除も欠かせないし。

ナミやノジコも綺麗好きだから、夜になったらフェンの家のお風呂を使ってみんなで風呂に入って綺麗にして寝る。

 

アタシの1日のスケジュールだ。

あとは空いた時間で簡単な自己鍛錬をするぐらいか。

 

1週間も経つと慣れてくるわけで、フェンがいない日常も大変忙しい。

 

「なに沈んだ顔してるのよ。ベルに暗い顔は似合わないわよ?」

 

フェンがいたら、きっとそう言われるだろうなぁ。

アタシはどっちかというと後先考えないで行動しちゃうから、フェンに師事していたときも、仲良く話すようになってからもフェンには頼りっきりだったような気がする。

 

何歩か後ろに下がって、私が取りこぼしそうなものとか失敗しそうな事とかをカバーしてくれるのがフェンはずっと上手かった。

それに面倒見も良くて、すっかりアタシはフェンに甘えてしまうことが多かったと思う。

 

それでも、嫌な顔や「面倒くさい」とかっていうけど、やってくれてたのよね。

 

アタシがナミやノジコを引き取ってきて、衰弱しているナミを見せたときだって誰よりも真剣にナミの看病につきっきりで見ていてくれて。

 

育てるって言ったときだって、ゲンさんには「不良娘が子育てなんてできるわけがあるか!!」って反対されたのに、フェンだけは「ベルなら大丈夫だよ。私ならベルみたいなお母さんいたら嬉しいし、自慢よ!」って考えるでもなく、返答が返ってきた時は、私がお母さんになるっていうのをわかっているみたいだったわ。

 

あの子はたまに、未来のことなのに知ってる風に話してくるところがあるし、当たるから怖いのよね。

 

 

ご飯が喉を通らない時には、じゃがいもとかみかんをすり潰して、飲むか牛乳をいっぱい飲むかで栄養を補給するようにしている。

 

「ご飯は食べなさい!!ベルには強くなってもらわなきゃダメなの。私がいなくてもある程度戦えるようにするからね!」

 

フェンには食べることの重要さとか、健康に悪いからタバコは控えろとか口うるさく言われたっけ。

タバコがないと落ち着かないし、イライラすることもあるけど。

 

ナミやノジコも大きくなってきたし、真似されると子供の健康に良くないって怒られたから、タバコもやめ時か。

寂しくなるね。

 

 

 

 

 

「・・・・・・こんなところで寝るな。ちゃんとうちに返って寝なさい、ベルメール。」

 

疲れていたのだろうか。

気づくと、フェンの家の椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏す様な体制で寝ていた様だった。

 

声の方向に目を向けると、辺りは暗く日は落ち、ゲンゾウがランプを持って佇んでいた。

 

「・・・ノジコがナミを寝かせた後に、お前が帰ってこないと私のところに来てな。ノジコも心配しておったぞ。」

 

「ノジコも最近、アタシのこと心配するようになっちゃって。子どもに親の心配は早いって怒ったのよ。」

 

暗闇でゲンさんの顔も陰ってしまっているけど、ゲンさんにも心配かけちゃってるかな。

声色はいつもより落ち着いて、言葉を選んで話している感じがする。

 

「ちゃんと寝れているのか。」

 

「今だって寝てたじゃない。それに、アタシの肌はツヤツヤよ?こんなに綺麗な母親はアタシぐらいのもんよ!」

 

アタシは元気だってば。

普段の通りに生活しているだけだし、どこが気になるっていうの。

 

「・・茶化すな、ベルメール。お前のことを小さい時から知ってる私に、目の下のクマも気づかんと思うか。体重も落ちてきているのだって、目に見えてわかるぐらいになってきているな。」

 

「やだ、ゲンさん!!そんなにアタシのことが好きだって??」

 

「ふざけるな、ベルメール!!私は真剣に話しているんだぞ!!!」

 

話すゲンさんの顔が見えると、その表情は心配しているような、悲しんでいるような。

いろいろな気持ちが混ざり合ったような複雑な表情をしていた。

 

なんでゲンさんが辛そうな顔してんのよ。

柄じゃないでしょう、ゲンさんだったら「子どもに心配かけるなんて親失格だ!!私が育てる!!」でしょ?

 

「・・ベルメール。私は村のみんなを、仲間であって家族であると考えているよ。」

 

「無論、お前も小さい頃から知っているしお転婆なじゃじゃ馬だった頃も知っている。私の顔を見て、小さいお前は、赤子の時のナミの様に泣きべそを掻いている頃も知っている。」

 

「何よ、いきなり。」

 

私が小さい頃から、ゲンさんは今のまま若くしたような見た目でめちゃくちゃ怖かった気もするわ。

若い時と、今だと別の怖さもある気がするけど。

 

「お前がどれだけ慕っていたのかは、どれだけ家族のように思っていたか。見ていれば分かる。」

 

「・・・私では頼りにならないか。お前が辛い時に泣かせてあげることもできないぐらい、私は頼りないかベルメール。」

 

 

やめてよ。

泣きたくないの。

 

「私には、きっとわかってやれないところもあるのかもしれん。全部理解してやることもできないだろう。ただ、お前は村のみんなで育ててきた私の子どもみたいなもんだった。」

 

私は幸せなの。

フェンが守ってくれたナミとノジコを目一杯可愛がってあげられる日常がしあわせでいっぱいだから。

 

「なぜ言わん。お前を私たちの娘だと思っているのは、私らだけか?」

 

そんなわけないじゃん。

ゲンさんだって、いっつもアタシの無理を聞いてくれる父親みたいだって思ってる。

 

「・・・・だって!!フェンは、アタシたちのためにいなくなったの!!」

 

「アタシだってわかってた。ここにきたあいつには、フェン以外じゃ相手にならないのだって。もしかしたらフェン1人だったら、逃れたのかもしれないことだって!!!」

 

「けど、フェンは大人しくついていったの。そんな中でフェンが守ってくれた日常で!!しあわせじゃないなんて、言えるわけないじゃない!!」

 

我慢していたつもりはなかったのに。

目からはボロボロと、こぼれ落ちてくる。

 

「私はナミとノジコを任されたの!!それに、ゲンさんも聞いていたでしょ!!海軍に連絡した時に、あの男は神出鬼没で探し出すのは至難の業だって。海軍総出で探しても、見つかるか否か不明だって!!」

 

泣きたくなかったの。

ナミやノジコに泣いた後なんて見られたら、心配かけちゃうじゃない。

フェンにせっかく守ってもらった幸せが、幸せじゃなくなっちゃうじゃない。

 

「どうしろっていうのよ!!絶対失いたくない家族だったの。いっぱい教えてもらって、いっぱい助けてもらって。恩返しだって、何も出来てないの。大切な家族なのよ。」

 

「あの子が辛い目にあっているよねって。耐えているよねって、思うだけで何も出来ないのよ!!自分が情けなくて、不甲斐なくて。」

 

「・・・・・・・・・フェンに会いたい。また笑ってみんなでご飯食べたいの。なんでよ、なんで置いていったのよ!!」

 

悔しくて、辛くて。

拳を握りしめすぎたのか、爪がつい込んだ掌からは血が滲み出していた。

 

そんな中、ふわりと頭ごとゲンさんの腕に包まれる。

 

「私らがもっと戦えたらと。こんなに後悔したことはない。お前にこんなに背負わせてすまんな。」

 

「今日はまず家に戻ろう。明日から、またフェンちゃんを探す方法を考えよう。」

 

 

 

 

 

 

海軍には捜索の依頼はかけている。

海軍内部でも、フェンが海兵たちを鍛え始めてより10年もこえる期間ともなると相当な数の教え子がいると話していた。

 

その教え子の子たちは、転属や配置換えなどもあり、イーストブルーだけではなく各地にその輪は広まっているらしい。

いろいろな場所でのシキ捜索の伝は回っており、中には辞職願まで持参して捜索活動に乗り出そうとしている方もいるとココヤシ村によっていったガープ中将が言っていた。

 

またシェルズタウン支部や、海軍16支部はさらにひどく、将校階級の者達が総出で説得に当たっているとも言っていた。

暴動を抑えるといった意味合いもあり、ここにくる前はシェルズタウンにも寄って来たそうである。

 

「インペルダウンからの脱獄はオレらの落ち度だ。オレの教え子までも!!腸が煮え繰り返っておるわ!!」

 

ガープ中将も報告当日に、こっちに向かってくれようとしたとボガードさんから聞いた。

ただガープ中将が動くとシキに勘付かれて先に逃られてしまえばどうしようもなくなってしまうとセンゴク大将に止められたらしい。

 

また私もフェン捜索に加わりたいと話したところ、船旅の時にどれだけ子供のことを大切に思っていたかや、アタシのことを信頼しているか山のように聞かされたと言っており、海軍で責任を持って捜索するからフェンが帰ってくる場所を守ってほしいと説明を受けた。

 

 

 

 

村のみんなも、ゲンさんも。

海軍の人たちだって、こんなに大切に思ってくれてるんだよ。

 

絶対帰ってこないと許さないからね。

 

 

 

 

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