今日も日向は暖かい   作:licop

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間話

 

 

 

この宮殿に勤め初めて数年が経つ。

ここアマゾンリリーでの仕事は基本は戦士や警備になるか、島の周りにいる海王類を仕留め食糧を確保する漁師になるか、果樹や作物を育てる農家になるのか。

 

または、ここの城での給仕になるかと造船をする大工か。

大まかには選択肢は多くはない。

 

もちろん、幼少期より戦士としての稽古や訓練は当然の如くあるため延長線上にある戦士にと考えるものが大半。

それ以外の職につくものは珍しい。

 

そんな中、私は給仕の仕事をしている。

 

 

私に戦士としての素養がなかったわけではない。

戦士長にも素養があるとお墨付きをいただいていたし、同年代の子供達に遅れをとったこともないくらい。

年上との戦いとなると、流石に負けてしまうこともあったけれど、それでも戦士になることを望まれていたし、戦士にならないと断った時には相応の反対があった。

 

それでも、給仕の業務について居るのには理由がある。

 

 

 

「ここにいたの?探したよ。」

 

見慣れた赤い髪が、後ろにいることに気づき振り返って頭を下げる。

 

「失礼致しました。こんな場所までいかがなさいましたでしょうか、サクラ様。」

 

「驚かせてしまったかな。そんなつもりはなかったんだけど。」

 

こちらは、私が支えているこの島の皇帝でいらっしゃるサクラ様である。

私の小さい時は、城で勤めるなんて思ってはいなかったし遠くで眺める存在だったのだけど、この方は誰彼構わず話しかけるような好奇心旺盛で、分け隔てなくかまってくるような困った方だから現在は気安く話しかけてくるのも日常である。

 

「別に急ぎの用事があったわけではないんだ。島の様子や状況に変わったことはないかなって聞きに来たぐらいさ。」

 

「サクラ様が気になさるような事象は、現在確認できておりません。何か気になることでもございましたか?」

 

私こと、スイレンは給仕の仕事とは別に一つ仕事をサクラ様より賜っている。

それは街での状況の定期調査と人員の管理である。いわゆる情報収集といった方が早いだろうか。

 

島内では、定期的に名簿での人員の管理を行なっている。

いつどこの家庭で生まれたとか、どこの人が死んだとか。

 

島内に関して、それほど広い敷地があるわけではない。

それでも方向音痴の人間からすると、一度道を見失うと迷子になったり帰って来れなくなったり。

 

崖から落ちて、海になんてこともある。

 

人員を管理することで、いち早くトラブルに気づき対処をしていくことだったり、国が存続するために出生率や戦士の数だって把握しておいた方がいいことだってある。

 

それから始まったのが、今の人員の管理だ。

1日の終わりに、それぞれ決められた広場に集結し点呼する。

 

人員が足りなければ捜索を。足りていればよし。

足りなかった時に、日に一度、私が巡回をして居るのでその際に報告。

何か急ぎの内容があった場合は、城に直接報告をといった段取りになっている。

 

 

まさか現皇帝が定期的に巡回に回ってこようものなら、街のものも気が気ではないだろうことや、サクラ様の負担を考えて「余がいくからな、絶対!!」と話す言葉を聞き流して居るうちに、私の業務になった。

 

別段、散歩がてら街に行くぐらいなので苦ではないのだが、昔から働かない顔のせいで「怒ってる??余が無理言ったから怒ってる??」なんて顔を伺ってくる皇帝がいる。可愛い。

 

ごほんっ。本音が漏れました。

気を使わせてしまって居るのだが、動かない表情が悪いので私は悪くない。

 

 

話が逸れたので、戻すのだが少し前に原因不明で突如行方がわからなくなってしまった島民がいた。

それは神隠しにでもあったかぐらいに前置きもなく、起こったそうだ。

 

家族のものから聞いた話では、前日の夕飯は一緒に団欒し、美味しいご飯をみんなで食し、普段通りの日常を終え眠ったのだという。

次の日もいつも通り訓練に行ってくると送り出し、帰宅を待っていたと言っていた。

 

ただ待てど暮らせど、家には帰って来なかったのだという。

友人の家に泊まり込んでいるのだろうと、交友のある友達の家族や知り合いに聞くも知らないと言われた。

 

訓練に行った時に何かがあったのではと戦士長や訓練仲間に聞くも、その日は普通に帰って行ったという。

 

アマゾンリリーで訓練しているものの多くは、武装色の覇気を身につけるぐらいには訓練を行なっておりその練度も高い。

その辺の動物に負けるとも、ちょっとした海王類に負けるとも思えない。

 

私に相談が持ちかけられ、戦士長やその子の知人らを含め島内全域を捜索するも見つからなかった。

 

 

痕跡も見つからないなんてことがあっていいのかと、過去に同じような話がなかったのかと話を聞けば、若い女性戦士が多くいなくなっていたとのことが発覚した。

 

それまでは、海王類に食われたのだろう。

弱い戦士だとか、海に落ちたのだろうなどと考えられていたらしいが、突然何事もなく消えてしまったとされる話が次々と発覚してきたのだ。

 

そんな適当でいいわけがないし、原因を究明する意味がきっかけとなり、他の理由も加味した上で始まったのがこの取り組みである。

 

サクラ様が話して居るのは、神隠しは起こっていないかという話だった。

 

 

「いや起きていないのであればいいんだ。ほら、ハンコックや娘たちも落ち着いてきて、やっと普通の日常に戻りそうなのに嫌なことを思い出させるようなことは起きない方がいいと思ってさ。」

 

「今のところは、そのような事象は怒ってはいないと聞いております。また、何かあった時には至急こちらにと話もしておりますので、きていないということであれば問題はございません。」

 

目尻を下げながら、ほっと一息をつくサクラ様。

 

「本当に、余の杞憂だったならいいんだ。非常に腹立たしいことではあるんだけど、奴隷に売られたのは娘たちだけ。他の島民は事故だったのであれば、実力がたりなかったと諦められる。娘たちも帰ってきたしね。」

 

「だけど、もし他の島民も余が気づかないところで、娘たちと同じように奴隷にされていて、今も苦しんでいるかもしれないなんてことだったらと思うといてもたってもいられなくてね。」

 

この方、サクラ様は非常にお優しい方だ。

今もこうやって血縁もない島民や臣下の者のために考え、安心した表情や眉間に皺を寄せ、心配の言葉を漏らすのだから。

 

私の両親はいない。

すでに両親ともに私の幼少期に他界したそうだ。

 

父なんて文化がこの島にはないために、他の島で強い因子を授かってきたのだろうと思っているし、母は戦士の中でも病弱で私が物心着くまでは母親として愛情をくれ、その後に他界した。

 

そのあとは、この島での生活は身に余るほどの食料に溢れて居る家庭ばかりではないため、親戚や知人に迷惑をかけるつもりもなく、母が住んでいた家で1人で暮らした。

 

訓練には身が入らなかったが、それでも同世代の中では一番の戦歴だったと思う。

同年代の戦士たちには疎まれ、上の戦士たちには将来を有望視される。

 

板挟みで、戦死なんてやめてやると家を飛び出しあてもなくブラブラとしていたところで給仕にスカウトされた。

皇帝様直々に。

 

 

こんな身寄りはなく、同世代で強いだけの子供を

 

「うちで余の給仕になってくれないか。娘たちとも同じくらいだろうし、友達になって欲しいんだ。皇帝の娘だっていうと、みんな気を遣ってくれちゃうからさ。」

 

ほぼ拉致だった。

いきなり話してきたと思って振り返ったら、赤い髪に気づく。

この島で赤い髪なんて皇帝様ぐらい。

 

皇帝様??なんで??スカウト???

 

あわあわして居る私に、「拒否しないってことはいいってことだよね!!表情はわからないけど、いいってことだよね!!!」と迫ってくるのだから、もう首を振るしかない。

 

首を振ったら最後、横に俵抱きで持ち帰り。

これを拉致と言わずして、なんなのだろう。

 

宮殿内に私室をすぐに用意をしていただき、家具はもともと宮殿にあったものを使用していいと話された。

非常に高価なものであると予想されるため断りたかったのだが、自由にしていいと話があり「ここでは家族だと思って話して欲しいな、娘の友達になるんだから、余の家族も同然さ!!」なんて語っていった。

 

あぁ、家族を亡くして無気力になっていた私に気づいていたのだろう。

同じ年齢くらいの娘が重なったのかどうかはわからないが、助けに来てくれたのだろう。

 

なんとなく、きっとそうなのだろうなと宮殿で暮らし始め、給仕の仕事を教わったりハンコック様のお相手をして居るうちになんとなくそう思った。

 

見ず知らずのいち島民の私に手を差し伸べてしまうこの方は、きっと非常に優しい。

 

 

少しでもお役に立ちたいと思って居るのだが、表情にはそれを表すことを顔自体が許してくれない。

表情は一切変化はないので、行動で伝えるしかない。

 

そう意気込んで数日。

 

いつも通り宮殿で働いている私宛に、町から戦死長。いや、いつか死にそうな方ではあるけど失礼だった。

戦士長が私の元に直接走ってきたのだ。

 

「スイレンはいるか!!スイレン!!!!!いないのかッ!!!!」

 

「こちらにおりますので、そこまで大きな声を出さずとも聞こえております。あなたが直接来るなんて、いかが致しましたでしょうか?」

 

はぁはぁと切らしている息から、非常に急いでこちらまで来ている状況を察する。

 

「ハンコック様から黒耳で黒い尻尾の御仁の話を聞いたことはあるだろうか。腰に奇妙な袋を下げたちんまりとした女だ。」

 

「特徴から察しますと、ハンコック様よりよく聞くフェン様と言った方の特徴に似ているかと思います。それがどうしたというのでしょう。」

 

「私の訓練している街に、その特徴を持つ御仁がハンコック様との面会を求めいらっしゃっている。ただ格好が非常に見窄らしくとてもハンコック様を助けた御仁とは思えず、可能とあらば先先代様や皇帝様に意見をいただきたいと考えて走ってきたのだ。スイレンはどう思う。」

 

常日頃から訓練で自身の体を痛めつけて、生を感じているぐらいに訓練をしている戦士長がこれだけ息を切らしているのだから、疑う余地もなく本当のことなのだろう。

 

「ひとまず私は見ていないので、判断が難しいところではございますが。本日は皇帝様やグロリオーサ様、ハンコック様を含め皆様広間で訓練かくつろいでいらっしゃる頃合いかと思います。お話を通して参りますので一緒に来ていただけますか。特徴などを直接ハンコック様に申し上げた方が確実かと。」

 

 

戦士長をつれて、広間まで歩いている中で詳しい詳細を聞いておくもボロボロの衣服。

運動後の戦士たちよりはマシであるが、多少泥に塗れたような色黒さにツンと刺すような身体から漂う匂い。

 

特徴といえば、その点が大きかったと言う。

あとは、頭部に人の耳とは違う獣の耳と腰には獣の尻尾。

 

漂流してきたミンク族だと言うところは濃厚である。

ただミンク族は体全体に獣的特徴が出ると言うのに、この方が出ているのは耳と尻尾部分だけ。奇妙なことに尻尾は二股に分かれているのだという。

 

ドアノッカーをコンコンっと4度ほど叩き、中からの返事を待っていると「入って良いぞ!!」とハンコック様の声が聞こえる。

 

「スイレンです。戦士長も一緒に来ておりますが、一緒に入ってもよろしいでしょうか。」

 

「いいよ。入っておいで。」

 

今度はサクラ様より返事をいただける。

グロリオーサ様も一緒にいらっしゃるのだろう、わいわいと声が聞こえる中に足を踏み入れる。

 

「戦士長も一緒なんて珍しいね、どうしたの?」

 

「本日、島内の集落の広場で訓練を行なっていた際に黒いミンク族の人物が現れたと戦士長より報告を受けました。今後の対応の相談に伺った次第です。」

 

バッとこっちを振り返り、ドタバタと慌ただしくこちらに詰め寄ってくるハンコック様と姉妹方。

圧力に引きそうになるのを抑える時は、この顔も便利だよなと考えながら状況を説明する。

 

「スイレン!!フェン殿がこちらに参ったと!!!」

 

「私が直接見てきたわけではございませんので、戦士長より伺っている内容をお伝えいたします。身長は小さく島の少女ぐらいの身長の女性で、頭部には人間ではなく動物の黒い耳、腰には二股に分かれた黒い尻尾があったと伺っております。また、こちらにハンコック様がいらっしゃることを知っているようで、ハンコック様との面会を希望されております。いかがなさいますでしょうか。」

 

サクラ様の様子を伺うと、戦士長に目を向け視線を合わせている。

戦士長も内容を汲み取ったのか、首を縦に振っているのが目に入る。

 

「母上、今の特徴を聞く限りフェン殿に間違いはない。マリーやソニアも会いたがっていたのだ、面会の用意を!」

 

はぁとため息をこぼしているサクラ様。

一度決めたら一直線のハンコック様の性格は、きっとサクラ様あなたに似たのですよ。

 

「戦士長も不審な点がなかったと確認しているようだしね。余もその辺のやつに負けるほど、柔な鍛え方もしてないから。スイレン、呼んできてくれる?」

 

「はい、おっしゃる通りに。ただ非常に汚れていらっしゃるご様子で伺っております。この広間に通す前に、身を整えてからと考えますがよろしいでしょうか。」

 

この広間も宮殿も掃除洗濯、雑務は私たちに回ってくるのだ。

 

「その点はスイレンの判断に任せるよ。不審だと思ったら、最悪殺してしまっても構わないから。」

 

ハンコック様を宥めるために、近寄ってきたサクラ様よりこっそりと耳元で囁かれる。

吐息が耳に当たってひゅんとしてしまうから、やめていただけますでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

街に来ている女性を見に行ったのですがとっても可愛い女の子でいらっしゃいました。

 

私がフェン様を宮殿にお招きするときに、無表情が近くにいると警戒されるかもとこっそりと近くで警戒する役目を賜りました。

その話し方や、立ち振る舞いを見るにある程度歳を重ねられている方というのは見て取れます。

 

また、その立ち姿には隙もなく戦闘に関してもしっかりとこなせる方なのでしょう。

海賊のような蛮族ではなく、しっかりとしたまともな会話をできる人。

 

ただ重要なのは、そこではございません。

 

お話をしている時、私を見て戸惑っている時。

話している間に、何か考えているであろう時。

 

湯浴みの準備をしていると説明の中で話した時。

 

いけないことをしているような気分で、少々の快感があったのですがじっとフェン様を見つめておりました。

はしたなくはないです。仕事ですから。

 

 

仕方なく、見ていたのですが。

感情に応じて、尻尾と耳の反応が豊かだこと。

 

湯浴みの話のように喜べば、尻尾はぴんと立ち、警戒をすれば毛が逆立ち多少なりとも尻尾がモフッと膨らむ。

戦士長と話を終え私が湯浴みを案内した時なんか、対面時は少々逆立ち、浴場到達時はピンと立ち、浴場から出る時は横にぶんぶんと振れておりました。

 

あら可愛い。

 

きっと、今前関わってきた人は誰も尻尾で感情が出ているなんて言わなかったのでしょうか。

今までの方々に頭を下げたい気持ちでいっぱいです。

 

そして、私の元にこんなに可愛らしい人物を送ってくれた神に感謝を。

あぁ、可愛らしい。これは今のうちに愛でておくべきですね。

 

給仕たるもの、湯浴みに入っていただいてからはしっかりと仕事をします。

そのボサボサだった頭髪や、尻尾や耳の毛並みはブレスダイアルやブラシでしっかりと埃や塵を飛ばし、ふんわりとした触り心地の良い毛並みにビフォーアフターを。

 

バサバサだった肌にはしっかりと、潤いを施し、どうにもならない部分は軽いメイクで誤魔化しておきます。

お召し物は、完全に趣味ですがハンコック様の召物の中から、黒い着物をチョイスしております。

 

和服少女、合法VERなんてなんて素敵でしょうか。

完全に私の趣味でございます。お黙りなさい。

 

出来上がった頃には、あら素敵。

ボロボロの少女から、綺麗な少女に早替わりでございます。

 

ここで働いていて良かったと心底思いました。

 

可愛いぃぃぃぃぃ!!!!!!!

なんて狂気はしません。

 

だって無表情ですもの。

 

話は、サクラ様の怒声と表情。

一同皆の力で、打倒金獅子。打ち払え巨悪で話が締め括られました。

流石の私もあの状況では、多少の苦悶の表情はでてくれるようです。

 

ここにきて、やっと働く表情に今更感は拭えませんが新発見といったところでしょうか。

さて、本日もロイアルブルーの自慢の髪を整えて。

 

可愛らしいサクラ様と、ハンコック姉妹の方々。

そして新たな獣女子、改めフェン様のお世話といたしましょう。

 

可愛いぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!!!!!!

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