今日も日向は暖かい   作:licop

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数年の時間を経て

 

アマゾンリリーで生活を送り始めてから、5年ほど結局、訓練や自己鍛錬などの時間に費やしていた。

子供だったハンコック、ソニアやマリーもしっかりと大きくなり、子供の頃の面影も少なくなってきている。

 

私の体に関してはまったく変わらないわよね。

いい意味でも悪い意味でも。

 

一向に身長も伸びなくなってしまった。

いきなり急成長されても、今まで感覚として掴んできた間合いだったり感覚がずれるのは怖さもあるので、悪いことばかりでは勿論ないのだけれど、今だに初めて会ったりする方がいると子供扱いされるのだから、この身長も考えものである。

 

現在での行きつけの八百屋のおばちゃんや、本屋さんなんかだと年齢のことを信じてもらえないのだから、この世界基準のスタイルの良さには恨みが募るばかりである。

 

 

 

この5年間で、しっかりと強くなった。

私もこの島の周りの人間もである。

 

3年前には、フィッシャータイガーの聖地マリージョアでの一件もしっかりと確認している。

このマリージョアの事件の影響は、ここアマゾンリリーにも起こっており奴隷として捕まっていたここアマゾンリリーの戦士達も、しっかりと帰還している。

 

それでも全ての戦士が帰還できたわけではなかった。

逆らって銃殺されたもの、女性の尊厳を失うほどに辱めを受け、心を失い自身で自害したもの。

毎日のように、行われる暴力により体が耐えられなかったもの。

 

果敢に同じ奴隷の尊厳を守ろうと行動し、敗れてしまったもの。

 

聞くだけで胸糞が悪く、今にも握る拳は張り裂けそうで口は歯が軋むくらいに強く噛み締めても、まだ胸の中にしこりのように黒い感情が渦巻く。

サクラさんと一緒に出迎えたが、サクラさんや島のみんなの気持ちを思うと胸が張り裂けそうだった。

 

少数でも奴隷から解放されて帰ってこれたのは、それでも救いだった。

この時には、騒動に乗じて脱出し路頭に迷っていたそうなのだが、自身の美貌や戦闘の勘までは失ってはいなかったそうで用心棒などをしながら食い繋ぎ、時を見て皆まとまって帰ってきたのだという。

 

帰ってきた時には子供は母親に保護され、大人は子供の手前強がっていたもののついた瞬間に糸が切れたように泣き崩れた。

それでも心や思い出、気持ちだけは失わずに帰ってきたことに、その強さに。本当の意味で感銘を受け、シキに対して打倒の意思をさらに強く誓った。

 

 

 

私個人の成果から上げていくのであれば、素の身体能力や筋肉の強化である。

この体は耳や尻尾の感覚からすると猫科由来のものだと思うのだけれど、持っていた身軽さや瞬発力などのアジリティに磨きがかかった。

 

ここにきて、初めておおよその感覚での走りを測っても以前のものよりも5割り増しで早く動けている状況である。

知識や勉強、研究さいていた時間を訓練に使っていたことが功を奏したのだろうと思っている。

 

勿論、薬学を疎かにしていたのかというとそういったことではない。

 

基本的な医術書や薬学の知識は、ココヤシ村に着く前におおよそ掴んでいるし、スーロンになるための丸薬に関しても研究し尽くした感があるからだ。

一応の成果として、丸薬成分を希釈して効果時間を1時間から30分程度に減らし副作用や、クールタイムを短く抑える方法は確立できているがそれ以上にすることはなかった。

 

 

また、チョッパー医師のようにランブルボール的な薬はできないのかと研究していたこともあったのだが、まったく原理が理解出来ないし、成分の当てもさっぱりわからない。

 

流石に主人公の船に乗るだけあって、彼もある種の天才なのだろう。

天才になりたかったと嘆いたものだが、私には俺TUEEEはできないのだろう。

 

まぁ、それでも武術知識やスキルがあってスーロンになれてと言ったものだけで、充分普通に生きれるので高望みしてもしょうがない。

 

素の身体能力が上がったと言うことは、エレクトロでの能力増強の幅も広がっており、当社比8倍ぐらいまでは許容範囲に収めることができた。

私も界王拳、8倍だって言える時代がついにきたのだ。

 

 

この世界では、攻撃するときに技名を語り相手を惑わしたり、わかりやすく威圧したりする文化があるのだけれど、その点は今だに取り入れることができていない。

 

前の世界ではやっていたのよ?

スーパーで忍者走りしたり、小さい頃だったら変身してみたり。

 

10年近く経った今でも、記憶もある程度あり常識を引き継いできているので抜けない感覚といったところだろう。

前の世界の感覚が全てなくなってしまうのは、なんとなく寂しいから私は変えずに行こうと思っている。

 

 

武装色はあまり進歩はなく、サクラさんやハンコック、果ては街のほとんどの人にさえ不憫なものを見る目で見られるのが悔しいのだけれど、才能がないのだろうあきらめた。

反面、あの忌まわしい生活で生を感じたことがきっかけになったのか、グングン見聞色は成長し、ここは一目置かれるぐらいなのでプラマイゼロであろう。

 

覇王色は、何回もサクラさんに付き合ってもらって耐性はできてきて、影響下でもなんとか普通に動けるぐらいにはなってきている。

勿論、上に立つ才能なんてカリスマ的なものは私に生えてきたりはせず、覇王なんて柄でもないので使えないのも納得のことであった。

 

ちなみに、今だになぜ尻尾が二又になっているのかはわからないままである。

神様のイタズラであるのか、また何かの能力がこの体に別途隠されているのか。

 

 

覚醒フラグなんてかっこいいフラグがあれば、幸せだよね。かっこいいもの。

 

 

「フェン、ぼんやりとしている暇があるなら手伝ってくださいますか。」

 

スイレンとは、隣の部屋ということもあり仲良くなった。

基本的にめんどくさがりな性分で、可愛いものに目がないなんて無表情からは想像ができなかったから、びっくりした。

私が暇そうにぼんやりとしていると、こうやって仕事を押し付けてくる。

 

5年も一緒にいるから、流石に隠すのも億劫になってきたと最近はめんどくさがりも可愛いと抱きついてくるもの布団にも潜り込んでくるのも慣れつつある。

誰かと一緒に寝るのは、安心できるから別に構わないのだけれど、仕切りに鼻息が荒いのが怖いから。

 

 

皿洗いに掃除、庭の管理や街の調査まで何でもござれの状況で動いているため人手がどうしても足りなくなる時があるらしい。

 

「今日は何を手伝えばいいのかしら。」

 

「最近、また人攫いが増えてきておりまして。定期的に見回りを強化しておりますが、対応しきれていないのが現状です。状況の把握と対策をと思っております。」

 

ここ5年間の間も定期的に、やはりというか人攫いは継続的にくる。

流石に人攫いが金獅子と繋がっていることがわかっている以上、私がそのまま直接対面できないので、顔を布で覆い隠して対策を打っている。

 

シキ本人が来たことはなく、戦闘の訓練を私たちのように専門に取り行っているわけではないので流石に最近は追い返している。

 

撃退はできるのだが、最近はさらに連中も過激化しており送ってくる人数を増やしてきたり、手練れを送ってきたりとこちらの対応がギリギリといったことも多くなってきている。

それで問題が起きるたびに、現場検証を行ったりしているわけだ。

 

 

 

本当を言うなら、そろそろ根本的な要因を取り除かなきゃならないのよね。

 

「スイレン、そろそろ私も今のままじゃいられないと思っているの。そろそろかなって思っているのだけれど。」

 

「わかりました。それでは、サクラ様や皆様に広間に集まるようにと伝えて参ります。」

 

 

ちなみに5年で変わったものというと、サクラさんは現役皇帝をハンコックへと去年譲り渡した。

これは、シキとの話の中で自分に何かある可能性を考え事前に譲っておきたいといった考えだそうだ。

 

スイレンに声をかけて、数分。広間にみんな集まったと報告があったために自身も広間に入る。

 

「フェン、そろそろかとスイレンに話していたとスイレンから聞いたよ。動いていくっていうことでいいのかな。」

 

「はい、そのように考えているわ。あれから、私がサクラさんと出会って5年という月日が流れた。私もサクラさんやハンコック達、それに街の人たちやスイレンも家族が連れて行かれるかもしれない恐怖に耐えて。過去に連れて行かれた可能性がある人は、その恨みや怒りを心に留めて。みんな、金獅子を打倒するために歯を食いしばって耐えてきたわ。そろそろ準備は整ったかなって思っているの。如何かしら。」

 

「余もそのように考えていたよ。今は警戒の範囲で抵抗できているからいいんだ。ただ、今後も今の状況が続くのかと思うと許容できるものではないから。加えて、過去に私の娘や家族に手を出しておいて、いまだに島民に継続して手を出してくるのは、余も看過できない。それに、このまま余とこの場所自体を舐められたままじゃあね。今まで我慢してきた分、しっかりとツケを清算しないといけないよね。」

 

いつもの家族のような優しい目でも、皇帝としての見透かすような目でもなく、戦士としての獲物を狙うような目。

猛禽類が獲物を見つけたときのような目。

 

その隣ではマリーやソニアも、鼻息荒く息巻いている。

あの解放された人員や、人々の様を思い浮かべるとその気持ちは私も一緒だ。

 

「それで今後、どうやって動いていくか。その内容が重要になってくるわけなんだけど。考えてあるんだよね、聞いてもいいかい?」

 

これからの動き方も、もちろん考えてある。

いくら鍛えた、強くなったからといっても相手は神出鬼没であり、行方知れず。

 

こちらがずっと警戒をしていて隙をつかれ後手に回るしかなくなる、なんてシナリオは1番最悪である。

 

「サクラさんが海軍直通のでんでんむしを持っていてくれて助かったわ。海軍にも話を通しておきたかったの。」

 

「それは、ハンコックに言ってくれるかな。ここに送り届けてくれた時にガープさんが置いていったものを、ハンコックが持っていたんだ。」

 

これからの内容には、海軍にも一枚噛んでいただく予定である。

流石に舵輪ジジイをインペルダウンから解き放った罪は清算してもらわないといけない。

 

「ここからの内容は考えてあるの。話していくから、疑問点があったらちゃんと教えてね。

 

まず私が考えているプランは

・私の存在が生きているという内容をばら撒くこと。

・海軍には、私のココヤシ村を守ってもらうこと。

・この島に来た奴隷商の大元を叩く

・私に関しては、警戒されづらいように常に個人で動き回ること

 

大まかにはこの内容に沿って動いていこうと思っているわ。」

 

「生きている情報をばら撒くっていう話は撒き餌は理解している。けど、フェンが捕まったらこの作戦は全てが失敗に終わってしまうと思うんだけど、どうかな。」

 

「それはそうね。だけど、私の周りが固められている状況下でリスクを取ってまで、シキが動くとは到底思えないの。普通の海賊とは違って、楽しい方にではなくてメリットとデメリットを天秤にかけて動く男よ。ここに関しては、私だけなら逃げるくらいはしてみせるし、できるぐらいの速さはあるつもり。」

 

5年前、わざわざ幹部ではなくシキ本人が私のところに飛んできているという背景は、おそらく他のものでは交渉は出来ても逃さず捕まえるという条件を確実に行える部下がいなかったのだろうと思う。

 

現在として、映画でのうっすらと残っている記憶を辿ってもそこまで突出した部下には恵まれていなかったように思う。

もちろんシキの島内であれば、ダフトグリーンや準ずる毒など怖いものはあるけれども、引っ張り出してしまえば戦い様はあるというもの。

 

加えて、思い出してブランクの状況を見るに日々鍛錬というような勤勉さはなく、対して私はここまで鍛錬を続けてきている。

私の武術のスキルや知識が多少伝わっているとて、逃げることもままならないといったことはないと睨んでいる。

 

「余たちは、フェンの考えではどこに配置されるのかな。」

 

「サクラさんやみんなには、各地のシキと繋がりのある奴隷商を片っ端から潰して欲しいの。ここはやはり人手が必要だし、海軍には頼めない部分になってくるわ。」

 

海軍軍部では、天竜人の意向が世界政府から伝達される。

そしてその命令は、込み入った事情がない限り絶対的な命令として海軍でも動かなくてはいけなくなる。

 

天竜人が奴隷を欲している以上、海軍が動くことはできない。

 

「なるほどね。それでフェンの懸念である故郷を守るのは、余たちではなく海軍にってことなんだね。」

 

「でもそれだけが理由ではないの。私が生きていることで、シキは少なからず私に意識を割くでしょう。出来れば、潰しておきたいでしょうね。少なくともシキの下に募っている者以外では、私が1番シキの情報を持っているから。無論、偽情報の可能性があると疑われるでしょう。」

 

「海軍を動かすことで、あくまで海軍にツテのある人物という点を強調するわけかな。」

 

ここまでちゃんと考えていることが伝わるのであれば、話が早くて助かるわ。

 

「そこで私が生きていることに関して信憑性を増したいの。ここまですれば、流石に私本人か、それとも相当シキに執着をしている鬱陶しいやつかぐらいになってくる、どっちにしろシキ本人からしたら目障りになってくると思うわ。警護以外にも、シキの確保にも人員をさいてもらうよう交渉するつもり。本当にガープさん直通の電話があって助かったわ。」

 

ただ目下の懸念事項は、ハンコックが懸賞金をかけられていることにある。

訓練もほどほどに、実践訓練じゃと九蛇海賊団と船を動かし海賊を狩っていたら、懸賞金がついていたと。まぁ、ガープさんなら私相手であれば話ぐらいは聞いてくれるぐらいの信頼関係はあると思っている。

 

 

「余もここまでは理解したよ。後半の部分も教えてくれるかな。」

 

「後半の部分は、あくまでシキの余力を削りたいところと、奴隷商だけがあっても今回みたいに連れ去られる人は出てきちゃうのだから2つの意味で潰しましょう作戦よ。」

 

奴隷商といった事業は、天竜人という天上のお金持ちが金に糸目をつけず人を買っていくという背景上、多額の収入や利益があがりやすい。

それは珍しければ珍しいほどである。

 

シキの能力や特性上、いろいろな地域、いろいろな人種や種族。無論、仕入れを行うことは非常に容易い。

それを売っていると考えれば、収入の多くを奴隷で担保している可能性は高い。

 

まぁこちらは建前もある。

奴隷なんて、近親のものや友達がといった話でなければ遠い話で別になんとも思うことはなかった。

ハンコックたちの過去の記憶や、奴隷に捕まっていた人の生の声がおまりにも聞くに堪えない内容だった。

 

故に、この場所が狙われるのがこれで最後になればいい。

ここのみんなが狙われるリスクを下げたいと浮かんだのが、これだった。

 

奴隷で捕まえれば、武装色を身につけた戦闘力の高い武人が集団で殺しに来るなんてわかっていたら、今後ここにはこなくなるだろうと考えてこの点も入れてある。

 

「じゃあ後は、どうやって世界にフェンが生きているってばら撒いていくのかだけど。ここの当てはあるの?」

 

「ごめんなさい、ここに関しては海軍に電話してみないことにはなんとも。世界政府が発行している新聞があるはずなの。センゴクさんに、シキを確保するチャンスを提供する代わりに掛け合ってみるつもり。これがうまくいけば、シキと会えるんじゃないかって思っているわ。ただ、ここまでは私の考えだけどセンゴクさんとうまく連絡が取れれば、もっと作戦も煮詰めていけると思うの。九蛇は海賊だけど、サクラさんは懸賞金かけられていないし、私は海軍との関係は悪くないし。進めてみる価値はあると思っているわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も進めないよりも一歩ずつでも。このまま進まないじゃ、余も死んでいった同胞に顔向けができないよね。よし、乗った!!!!!!!!!」


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