それから、2日の日にちが経ち
結局のところ、ちゃんとした挨拶もできずに出発することとなった。
ジゲスには
「そうか。拾った時はよ、可哀想な嬢ちゃんだったと思ったらあっという間に大きくなりやがって。元気でやってりゃあ、おれぁよ、それでいい。また帰ってこい」
と言われ、泣き
ロロさんには
「フェンちゃんがいないと寂しくなるわね。お母さんは大丈夫だから、元気にいっておいで。たまには顔見せに戻ってきてね!」
と言われ、大泣きし抱きしめられ
シジマのおばあちゃんには
「あんなに小さかったお嬢ちゃんが、もうこんなに大きくなったのかい。お婆も歳をとるわけだよ。お婆は大丈夫さ。孫も息子も近くにいるからね。こんなこともあるだろうって、フェンちゃんが好きだったお茶、袋に詰めといたから、足りなくなったらまたくるんだよ」
お婆ちゃんのお茶もらって泣いた。
ココヤシ村は、シェルズタウンと行き来できる距離にはあるため、また絶対帰ってくる。
私自身での私物はあまりなく、仙豆を生み出す巾着に、海軍より辞めると言った時にもらった薬を作る用のガラス瓶やガラス管などの製薬道具。そして冷蔵庫。こちらは辞めると言った時にないと困るだろうと、今日まで指導してきた海軍からの贈り物と渡してくれたものだ。
そして、私服が少々。
それらのものは移動用の船にすでにまとめて積み終わっていた。
「さっさと出港するよ、いいかい」
「うん、準備できてるからいいよ」
寂しくなるのは嫌だったから、今回の出港には来なくていいと釘を刺してある。
そしてココヤシ村までは船で半月も進めば到着する程度の距離であるため、会いに来ようと思えば来れる程度の距離であることもあり、また日をあまり開けずにくる予定だ。
「それじゃ、フェンは錨上げてきてくれる?私は帆を張ってくるから」
そう言ってベルは、甲板の上へと上がり、帆を止めている紐をほどきに行く。
私は私で船尾にある錨を上げに向かった
その時
「外部顧問官殿、ベルメール大佐殿、本日までご教授やご鞭撻いただき、誠にありがとうございました!」
「皆、シェルズタウンを島を立つ両名の今後の健闘を祈り敬礼!!!」
そこにいたのは、シェルズタウン海軍支部に配属している海兵たちが一堂に会して並んでいた。
海軍は、配属されては出向や出張も多くあり、私が鍛えた新兵も本部勤務に変わったり、かと思ったら本部から出向で配属されたりと出入りの激しい時期もしばしばあった。
そのため、入れ替わりも多いことから本部勤務となってからはあまり会わなくなった面々もたくさんいるし、現在の近況なんて全く知らない教え子も多くいた。
8年という月日は長く、連絡も頻繁に取れるわけでもないため仕方がないものと割り切っていた部分も正直多かった。
そんな中の面々が、どこで出発の日を知ったのかわからないが、面々の中に紛れ込んでいた。
「馬鹿だね、いっぱい扱いただけだよ?せっかくの休日なのに、私なんかの見送りに使っちゃって」
「あたしもだけどさ、みんなあんたに鍛えてもらって強くなって出世して。私なんて出向された時なんて少尉が知らぬ間に大佐までなっててさ。みんな感謝してたよ」
「外部顧問官殿のおかげで、家族や友人に自慢ができるって。メキメキと実力がついているのがわかるから嬉しいって。楽しそうだったしね。ほら、ちゃんと返してやんな!」
ほんと馬鹿だよなあ。
こんなところにあつまる暇があるんだったら、ちゃんと休めよな。
「すでに外部顧問官としての立場ではないが、君らの指導を賜っていたものとして言っておくことがある!」
「さっさと戻って仕事をしなさい!馬鹿者!」
また涙が出るだろうが。
こちとら、身内での別れでだいぶ泣いてるんだ。勘弁してくれ。
あとは振り向かずに錨を上げて、帆を張った。
帆に風を受け、ベルと私を乗せた船はどんどんを進み見る見るうちに島との距離は離れていった。
「ほら、よしよし。存分に泣け泣け。存分に胸を貸したげる」
「だって!あんなの卑怯!」
もう島も米粒より小さいくらいになり、別れを済ましてからしばらく経っている。
ベルメールの豊かな胸を借りながら、まだぐずぐずしていた。
あんなのずるいよね。
みんな集まるなよ。
そんな感謝なんてされたら、泣くだろ。
見送られたら泣くだろ。
泣くだろうよ!!!
別れは別れで寂しいものの、ベルメールと一緒にいることは楽しいため別にココヤシ村生活は普通に楽しみである。
ナミは赤ん坊だから、育っていくのを見るのは普通に楽しみだし、ノジコはノジコで小さい子供は普通に可愛い。
もう島が見えなくなる頃には、すっかりと涙もおさまって、今後の内容の整理をしていた。
まずの懸念は、原作との乖離である。
ベルメールは簡単にアーロンに殺されないだろうし、モーガンに関してはシェルズ支部の面々で簡単に負けてしまうことはおそらくないだろう。
また、ルフィに関してもシェルズタウンで詰んでしまう可能性すらあるのではないのかと心配している。
まあ原作開始は17年後であるため、ナミは海図に興味が湧くように
ルフィはシェルズタウンで負けないように。
モーガンから住民の安全が守られるように。
ベルメールは殺させないように。
対策を打っていく必要がある。
また赤髪と、ガープがイーストブルーに出入りしている話もチラホラと聞くためこことの距離感もどの位置につけておけばいいかも考えていかなくてはいけない。
ちなみにガープはすでに遭遇しているが。
こちらは本部勤務と栄転した知り合いの海兵が、たまたまガープの部隊に配属になり、イーストブルーの海兵にしてはしっかりと実力があることに疑問を抱かれたらしい。
これが今から1年前のこと。
その際に「メチャクチャな外部顧問がいて、毎日稽古だ実践だと毎日投げ飛ばされているうちに強くなった」と伝えたそうだ。
元々、東の海にそこそこ出入りしていたガープは興味を持ったらしく会いにきたのだ。
「おい、強い外部顧問がいるそうだな。興味がある、俺と死合いしようぜ」
いきなりの申し出と共に拳が飛んできたのだった。
私も全力も全力。
すでに英雄となったガープで原作とは違い全盛期である。
まさか秘中の秘であるスーロン化薬は使わなかったが、エレクトロでのバリバリ状態5倍マンで応戦した。
「お前、ミンクだったのか。その割に獣っぽくない気はするが」
私は頑張った。
現代武術は強いんだよ、だって相手の力を利用する中国武術だって私は使えるんだ。
例えば、発勁なんて相手の内部に、相手の力を利用した衝撃をそのまま与える技さ。
「生身だと痛えな」
「さすがミンクだ。イーストブルーにいるのがもったいないわ」
「速いじゃねえか。それにいい見切りだ」
コテンパンでした。
全く攻撃は効かないし、電気流しても平然としてるし、武装色対策で考えていた発勁も平然とした顔で受けやがったジジイ。
流石に武装色の覇気や見聞色の使用までは持っていったが、それ以上は歯が立たなかった。
「お前、見聞色の覇気は相当高いレベルだけど。攻撃が俺レベルになると弱いな。武装色は使えんのか」
そりゃあ、海軍の英雄と比べるな。
「お前、おもしれえな。外部顧問官なんてやめて、俺の部下になれよ。武装色使えるよう、鍛錬に付き合ってやる」
「バカは寝てから言ってくださいな、クソジジイ」
そこから1週間ぐらいは滞在しやがって、しこたま殴られた。
女を強いからっつう理由で殴り倒すか普通。
ちなみにベルメールも巻き添い食らっていた。
武装色は完全には身に付かなかったものの、武装色を使われても、発勁はある程度の有効打になることを掴めたのは大きい収穫だが。
またエレクトロも、ガープレベルの変態でない限りは通用するらしい(ガープ談)
また見聞色もどきも通常の見聞色に相当するレベルの動きだとお墨付きをもらった。
実力といっては、
新世界入門から中級編までは通用しそうだとの評価だ。
そんなこともあり、ガープは顔見知りである。
まあ何にも言わずに出向してやったがな。ボガードさん、ご愁傷様です。
いまだに会うたびに海軍に誘ってくるため良い迷惑である。
他にも、バギーなどの状況もシャンクスが動いていることから動き出していることは、間違い無いだろうし。
「フェーン!そんな面白い顔して、ずっと考え込んでるとシワも増えるよ。腹も減ったことだし、ご飯にしましょ」
「余計なお世話!ベルは何も考えなさすぎ!海王類だって出てくるかもしれないし、ガープだっていつ湧き出てくるか」
「それは流石に嫌ね。考えすぎよ。ほら、美味しいみかん酒でも飲んで初日はパーっとやりましょうよ」
まあ、今日のところはいっぱい泣かされて疲れたしな。
また後で考えよう。
「じゃ、早速料理の準備ね。ベルは何食べたいの?」
「今日は勝手に持ってきたステーキがあるから、焼いてお酒で豪勢に!」