出港から、半月の時間を経てココヤシ村へと到着した。
道中を無事に過ごしたとは言いづらい旅路であった。
女がいるぞと群がってくる海賊に襲われること、数回。
ヤソップの勧誘に来た、赤髪一行に遭遇すること一回。
どうして海賊というものは、女をみると獣の如く群がってくるのか。
別に街で襲えというわけではないが、自身の精力程度なんとかして欲しいものである。
定番の如く、
「女だ、上物だ。片方は子供みてえだが、暇つぶしにはなるだろ!」
これだ。
そろそろいい年である。
肉体年齢が具体的に幾つなのかは知らないが、こちらに来て最低8年。
当初の145程度の身長と幼い顔立ちより考えても、20前後の年齢ではあるはずだ。
胸がないのが、そんなに幼く見えるのか。
かかってくる輩に手加減する気は一切なく、また片方は先日までは現役軍人で将校だったのだ。
負けるわけもなかったわけだが、わざわざ海軍支部に引き返すのも億劫ででんでん虫も設置していないため、返り討ちにしたらそのまま逃げていくのを追う気もなかった。
「もう軍人じゃないしね」
とのベルメール談である。
途中、赤髪一行に遭遇するのは予想外だった。
原作でも今ぐらいの時期から、ヤソップの噂は広まってきている状況だったことをすっかり忘れていた。
私も確かにシロップ村での銃の名手での噂は聞いたことがあったのだが、あまり重要なイベントでもないと気にしなかった。
こちらはいつも通り、コンパスと地図を見ながらココヤシ村への航路を確認していたところだった。
「あと数日もあれば、ココヤシ村に着くわね。フェン食糧は間に合いそう?」
「うん、普通に食べてても問題ないかな。ただ、ベルが飲みすぎるから酒はもうないからね!」
「先に確認してたら、さっきの海賊の船から奪ってきてたのに。遅かったわ」
ちぇ、っと声を上げながらコンパスや海図と睨めっこを続けるベル。
食糧の確認も終わり、甲板に戻ると遠目に海賊船らしきものが目に入る。
「ベル、また海賊かも。どうする?私は流石に面倒臭くなってきたわね。」
はあと一つため息を落とす。
ため息をついても状況は変わらないわけだが、海賊に襲われたのは既に本日一回遭遇していることもあり、1日に何回も遭遇していたらため息もつきたくなる。
「フェン、酒よ酒。あなたならそこらの海賊にも負けないでしょ!それに、この船で逃げ切れると思えないし行ってきて!」
「もうめんどくさいって言ってるのに!もう少ししたら行ってくるわ。今日のご飯は、ベルが作ってよね!」
この船での分担は、航海術は全く知識がないため、航海術関連は全てベルに頼ってしまっていることもあり、料理や戦闘はこちらで請け負っている。
まあ船付近まで来れば、ベルも参戦してくれるものの私が多少の距離なら浮けることもあり、離れていても乗り込むことのできる私の方が都合が良かったということもある。
流石に本日2回目の戦闘という状況もわかっているため、料理はOKしてくれた。
「酒は忘れないでよ!あと、タバコも切れそう。あったら探してきて!」
うなづく事で了解の意を示し、甲板より飛び出す。
海賊船に近づいていくと、どこかで見たことがあるような緑と白の縞々と、いかつい長髪オールバックが目に入った。
「お頭、なんか女が飛んでくるんだが撃ち落とすか」
後ろからは、見覚えのある麦わら帽子で赤い髪まで出てきたもんだからびっくりした。
————流石に戦うってなったらまずいよね。
現在はまだ、ルフィが誕生程度の時期のためそこまでの実力ではない可能性もあるものの、原作の強さから考えると人数差も考え、やられる可能性が大いに考えられる。
「物騒なことを言うな、ベックマン。飛んでくるなんて、昔船長と見たミンク族か悪魔の実じゃないと見れない芸当だ。面白いだろう!」
「それに、敵だったとしても倒せばいい話だ。よお!あんた、いい酒があるんだ!一緒に話しよう!」
逃げられない状況であると悟ったからには、近くまで来ていたものの、流石に酒に誘われるのは予想外だった。
みる限り、あぁ、まただよって頭を抱えている船員がチラッと目に入る。
仲間も苦労するよ、こんな奔放な船長だもんな。
船員の何人かは警戒しているものの船長自身は、人の良さような笑みを浮かべて声をかけてくる。
何が起きても対処ができる自信なのか、考えてもいないのか。
「戦わないって言うなら、こちらとしてもありがたいのだけれど。なんで、酒なのかしら。私、あなたと面識はないわよね?」
「いやぁ、飛んでくるなんておもしれぇモンが来たと思ったら、話聞いて見てぇじゃねえか!話せなかったら倒せばいいしな」
ガハハと笑う赤髪の顔を見ていると、戦闘する意欲は失せていく。
「話すのはいいわ。もう戦う意欲もないから、船員に武器を下ろすように伝えて欲しいのと、うちの仲間も連れてきていいかしら。いつまでも帰らないと心配させちゃうし。1人だけだし」
「おう、じゃあそれまでに準備しておく。野郎ぉ共!酒の準備だ!」
伝えて、船内に戻っていく赤髪を見て、自身の船に戻るため引き返す。
「ベル、酒に誘われた」
「はあ!?ワケを説明しろ!!」
状況を説明し、流石に自分でも無事で済むかなんとも言いかねてしまう実力であること。
そして向こうから酒の誘いを受けたことを伝える。
「それで戻ってきたわけね。にしても、赤髪かぁ。難しい相手に遭遇したもんだ。」
「幸いまぁ相手も好意的なのと赤髪は悪い噂も聞かないものあるし、私ももう海軍じゃないしね。女は度胸だ、いっちょ行ってみるか」
納得してくれたベルメールを連れ、もう一度赤髪の船に戻る。
「そいつが仲間か!俺はシャンクスって言うんだ、よろしくな!」
「あたしはベルメール、この子はフェンって言うんだ。酒に誘われたって聞いたから来たけど、この子はあんたにあげる気はないからね!」
ババンと効果音がつきそうなぐらい堂々とした宣言をするベルメールを見て、呆然とする。
待て待て!!
どこでそんな勘違いに繋がったのだ!!
「ベル!違うから!!」
「シャンクスは、私が飛んできたのを見て話して見たいって思ったそうなの!そこに、そんな意味はないわよ!」
「おっ?お前、フェンっていうのか。強くて面白いなら勧誘しようかとは思っていたがな!」
「フェン!あんたはノジコが待ってるんだから、私とくるのよ!」
「娘でもいるのか。なんだ、娘もうちの船に状況によっては乗っけてもいいぞ!」
「「勝手に話を進めるな!!!」」
ベルの後ろからは、私が。
シャンクスの後ろからはベックマンが、それぞれの頭にゲンコツを落とす。
「ベル!!私、酒に誘われた以外に何も言ってないよね!ノジコのところに行くのも嫌だったら、初めに断っているわよ!」
「お頭、仲間が増えるのは構わねえが勝手に話を進めんな!」
説教をした後、落ち着いて話す。
「それで、今回はなんで酒の場に誘ったのかしら」
「その帽子といい、空飛んでくることといい、フェンはミンク族だろ?新世界以降、ミンク族なんて久々に見て珍しかったってものあるし、正直今の俺の実力がどの程度まで通用するのかの体感もしておきたかったっていうのが本心だ。」
「ミンクって生まれながらに戦闘種族だって船長が言ってたからな。それに、こんな田舎でミンクがいるなんてねえし、そこまで獣の特徴がねえってのも面白いから、単純に話して見てぇと思ったものある」
いう通りだ。
普段は隠しているものの、空を飛べて耳付き帽子をかぶっていたらミンクだってバレても不思議ではない。
イーストブルーにミンクを見たこともなければ、この体はハーフをモチーフにした設定で送られている。
ミンク族のハーフなんているのだろうか。
見たことのないため、興味を惹かれるのも納得がいく。
「理由はわかったわ。別に戦うのはいいのだけれど、怪我はあまりしたくない。それと身の上話なんてほとんどできないけど、それでもいいならいいわよ。」
「よっしゃ!そうこないとな!」
「おい、お頭!勝手に決めるなんて卑怯だろォ!実力みるってんなら、オレがやってもいいよな!」
「ルウ!俺が先に取り付けたんだ!フェンちゃんも、俺の方が良いよなぁ?」
「シャンクスの方がいい」
現在の実力を見ておいて、損はないし、ラッキールウの実力なんて原作での記載はないため指標にならないことを考えるとシャンクスの方がいいだろうと考える。
「ほら見ろ!ベックマン!船員をちょっと下がらせて、危ないとこがあったらある程度カバーしてやってくれ」
「了解」
船員が後ろに下がっていく中で、ベルメールに声を掛ける。
「ベルも後ろに下がってて。それと、これ預かってて欲しいの」
腰につけている仙豆の巾着をベルに渡す。
仙豆巾着はパンパンだ。
これ、生み出すのはいいけれど許容量が巾着に入るだけ。
おおよそ40粒ぐらいしか入らず、外に置いていると1週間ぐらいで腐ることが発覚している。
限界の40粒をパンパンに詰めているため、袋もパンパンに膨れている。
「この豆も不思議よね。お世話になってるけど、なんの豆なのよ」
「内緒よ。ほら、危ないからそれ持って離れてて!」
ベルには後ろに下がってもらい、シャンクスと向かい合う。
バレていることもあるため、帽子も外し、久しぶりに頭の上の耳も解放される。
シャンクスは剣を抜き準備を整え、自身も刀に斬られてはどうしようもないため、自身に電気を通し身体能力を引き上げる。
「いくぞ!!」
そういうと、間にあった数メートルの距離を一瞬で詰めてきて剣を振るってくる。
半身になってその剣をかわし、剣の間合いではなく、拳の間合いに詰めるべくさらに懐に入ろうとしてみる。
剣の使用や間合いに慣れていたのだろう。
すぐに後ろに下がろうとするものの、ここは身体能力を上げている私に分があることもあり、空いたボディにまずは一発で電気付きの拳を入れた。
「いってぇ!そのビリビリした拳はめちゃくちゃ痛え!」
「お頭、遊んでんならオレに変われよォ!」
「バカいうな!こんな実力者がこの辺にいることなんて滅多にねェんだ、変わらねえからな!」
そういうとシャンクスの表情が真剣な表情に変わる。
「悪い!少し舐めてた!こっからは真剣にやるから勘弁してくれ!」
「いいわよ別に。私が戦いたいわけじゃないもの。辞めてもいいぐらいだわ」
「そういうなって!じゃあ、いくぞ!」
なんてことがあったわけだ。
ちなみに、現在のシャンクスには勝ち越した。
まだ現在は仲間集めに奔走している状況らしく、ロジャー後の新世界にはまだ足を伸ばしてはいないそうだ。
どこまでの本気で戦ってくれたのか不明であるが、まだ見聞色らしきものが使えるくらいで武装色には至っていないとのこと。
ガープお墨付きであることを話すと、嫌な顔をされた。
それと、強ければ勧誘したいと話していたために勧誘を断る懸念を抱いていたのだが勧誘はされなかった。
自身より強い奴の私が乗ったら面目が立たなくなってしまうことが嫌だと言っていた。
「おもしれェ奴だとは思っていたが、ミンクとのハーフなんて聞いたこともない」
「な。ベックマン面白かっただろ!空飛んできた時にピンときたんだよ!」
「お頭はもう少し考えてから動いてくれ。こいつが面倒な奴だったら、最悪、ここで旅が終わっていた可能性だってあるんだぞ!」
とベックマンに調子に乗ったシャンクスは怒られていた。
あとは酒を酌み交わし、酒を飲んだベルメールがルウと騒いでいたのも印象的だ。
「あたしのフェンは、あんたらの船長になんてあげないよ!」
「誰があんな女の魅力もねえ、ちんちくりん欲しがるかよォ!」
「それならいいわ!でもフェンは魅力が満載よ!医術は詳しいし、料理はできるし、なんたって可愛いのよ!訂正しなさい!」
あの、私の魅力はどうだっていいから辞めてくれないかな
「ゔぁっ!?お前、医者までできんのかよ!やっぱりお頭、こいつ優秀だ。船に乗っけるか!?」
もう大騒ぎだった。
それにしても、そんなに魅力のない体だろうか。
胸はないけど、程よく柔らかい体やちょうどいい身長もいいと思うのだが
「ほら!あんたがそんな事言うから、見てフェンが落ち込んじゃったじゃない!」
その後ろから聞こえるのは、ガハハと大爆笑する陽気な海賊たちの声。
「今度、あったらまたヤロウぜ!今度はお前に負けねえ!」
「勘弁してよ。必要だったから鍛えたけど、それ以上でも以下でもないのよ。そこまで戦うのも好きじゃないし」
「おい!勝ち逃げは許さねえぞ、卑怯だな!」
「誰が卑怯よ!じゃあ、2度と会わないようにしてやるわ!」
「ひねくれのちんちくりん!ガキ!ちびっ子!」
「半分以上身長じゃないのよ!あんたなんて赤髪じゃない!年中仮装大会か何かかしら!」
お互いに、酒を飲んでいることもあり回らない頭をフル稼働だ。
ベーっとして、舌を出し変顔で煽ってくる顔に腹が立ち、毛を逆立てながら威嚇する。
「「「「ガキか、お前ら!!!!!!!」」」
たんまりの酒とベックマンよりタバコをもらい、自身の船に戻ったのだった。