境界戦機 外伝:『最果てのニライカナイ』 作:野生のムジナは語彙力がない
作中に登場する他のオリジナルAMAIMの特性を考えた時……
ケンブが近接、
ジョウガンが狙撃、
レイキが空中・中距離
ビャクチが遠距離・万能?
となるので他と被らない特性をと考えると、もう残ってるのは『水中航行・対艦戦闘』しかないよなと思い至り、ニライカナイはこんな感じになりました。まあ本作の舞台となる沖縄は周りを海に囲まれた島国なので、丁度いいかなって
本格的な戦闘は次回から
それでは、続きをどうぞ……
12:20
沖縄近海
平日の午後……
朝早くから学校に休みの連絡を入れ、RLF本部の地下ドックから『ニライカナイ』で出撃した俺は、いつものように海中に身を隠し、ユーリが提示したオセアニア軍の予測航路上で輸送艦隊を待ち伏せていた。
ユーリからの情報によると、ターゲットとなる輸送艦は5隻、そして取り巻きの護衛艦が7隻。AMAIMを大量に配備できる揚陸艦はいないものの、船の数だけで見れば前回よりも大規模な輸送艦隊であると言えた。
前回の時と同様、攻撃深度へと浮上した俺は、7隻の護衛艦に囲まれている輸送艦隊へと狙いを定め、機体の前部アーマーに内蔵された魚雷を用いて攻撃を仕掛けた。
ユーリの精密誘導もあって、射出された2本の魚雷は周囲を固める護衛艦の間を超高速ですり抜け、1隻目の輸送艦を沈めることに成功……そこまでは良かった。
『敵水上型AMAIM、本機に向けて爆雷を投射』
「くっ……もうバレたか!」
しかし、オセアニア軍もこちらに対抗するべく入念な準備をしていたのだろう、自軍の輸送艦が攻撃を受けるや否や、付近に展開していた水上型バンイップ・ブーメランのAIが攻撃角度を算出、即座にこちらの潜伏位置を絞り込み、予測位置に向けてカウンターストライクとばかりに無数のロケット爆雷を投射してきた。
敵の攻撃を報せる淡々としたユーリの声を聞き、俺は2隻目の輸送艦を中央に捉えていたターゲットスコープから目を逸らし、トリガーに指をかけていた操縦桿を倒してすぐさま回避行動を取った。
すぐ近くで炸裂音。
至近距離で感じる振動と圧力に、コックピットが激しく揺さぶられる。まばらだった前回よりも至近弾の数が多く、オセアニア軍が使用しているAIの索敵精度に明らかな向上が伺えた。
「まずいな……ユーリ、回避ポイントを」
『サー、3セコンド下さい』
避けきれないと悟った俺はユーリを頼ることにした。ユーリは短く頷くと、すぐさま計測を完了させる。
『回避ポイント選定。方位5.0ー24.8ー32.4』
「あんな小さな間を掻い潜れと……!?」
『マスター、限界時間まで残り12セコンドです』
「くっ……やるしかないか!」
意を決した俺は、ユーリが提示した回避ポイントに従って機体を飛ばした。降り注がれる爆雷の雨をなんとか掻い潜りつつ、別の攻撃ポイントに移動しようとして……
『マスター、11時方向より敵機接近』
「くっ……」
しかし、逃げた先にも別の敵……
網膜投影によりユーリの目とリンクした視界の中に、水上を横並びで滑走する3機のブーメランの影が映り込む。頭部センサーの輝きは水中にいるこちらをじっとりと照らし、今まさにバックパックに搭載した対戦迫撃砲を放とうとしていた。
慌てて回避行動を取る。つい先ほどまで『ニライカナイ』がいた位置に多数の爆雷が降り注がれ、海中に衝撃が走る。
「誘導されてるか!」
思わずそう吐き捨てる。
激しいオセアニア軍の猛攻に、輸送艦の全滅どころか、これでは攻撃位置につくことすらままならなかった。
なら先に攻撃を妨害してくるAMAIMを仕留めようにも、戦闘海域に展開された水上型ブーメランの数は30近くあり、殲滅のためには魚雷の数が圧倒的に不足していた。
「それに加えて……」
『マスター、敵艦より飛翔体接近』
さらに輸送艦の周囲を固める護衛艦から対潜ミサイルが放たれた。本来であれば、鈍足な対潜ミサイルの回避など『ニライカナイ』の性能なら造作もない筈なのだが、今回ばかりはブーメランの苛烈な対潜攻撃と相まって、こちらが攻撃できる隙を見つけるどころか回避するだけでも精一杯だった。
『回避ポイント、方位85.2ー44.5ー27.2』
「…………分かったッ!」
『続いて58.8ー47.8ー55.5』
「…………!…………っ!」
『0.4ー12.5ー10.7。マスター、お早く』
「ダメだッ、間に合わな…………うわっ!?」
ユーリのルート指示は的確だったのだが、それに対するこちらの反応速度が追いつかなかった。次の瞬間、攻撃を受けコックピット内部が激しい振動に晒される。
『被弾』
「ッ…………ユーリ、損傷は?」
機体と自身のバランスを保ちつつ、そう尋ねる。
『爆雷は機体前方2メートルの地点で炸裂、直撃ではありません。ウィーヴァルアーマーへのダメージは軽微、潜行能力および耐圧システムに支障はありません。作戦継続を推奨』
「オーケー、だけど……」
一瞬だけホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、新たに投下された爆雷により、海中にさらなる爆発音が響き渡る。それにより、俺はまだ敵の包囲網の中にいることを嫌でも思い知らされた。
『マスター、敵の攻撃は激しさを増しています。気を緩めてはなりません』
「分かってる。けど、なんでこんな……最初から全力の攻撃をし続けて、敵は弾切れを起こさないんだ? そろそろ撃ち尽くしてもいい頃だろッ」
境界戦機 外伝:『最果てのニライカナイ』
第4話:変貌ーカウンターー
同海域
オセアニア軍海上輸送艦隊
旗艦:サラマンドラ
輸送艦の護衛につく7隻の駆逐艦。
大陸から遠路はるばる沖縄を目指す戦列の中央付近に、艦隊の旗艦となる駆逐艦 サラマンドラが展開していた。サラマンドラの艦橋には、艦長を始めとして複数の乗組員が集結しており、艦の航行に集中しつつも、今まさに目と鼻の先で行われている戦闘に気を配っていた。
「順調なようだな」
その中で、不敵な笑みを浮かべて佇む1人の男の姿があった。双眼鏡を用いて戦場となる海域を見渡し、刻一刻と変化する戦況に合わせてAMAIMの指揮統制を行っているオセアニア連合の指揮官、オーランド・ウィルソンである。
着ているオセアニア軍の制服には、大佐の階級章が取り付けられていた。
「大佐、第4および第5隊配置完了しました」
「よし、現在攻撃を行なっているAMAIM第2隊第3隊を下がらせろ。第4第5隊攻撃開始、敵に反撃の隙を与えるな! 第2第3隊が戻って来次第、順次補給! それが終わり次第、すぐに前線へ再出撃させろ!」
「了解。第4第5隊、攻撃開始します」
「第2第3隊帰還、直ちに補給を開始します」
オーランドは双眼鏡を下ろし、隣でAMAIM制御用の戦術ラップトップを前にするオセアニア軍のオペレーターたちに指示を飛ばした。
「大佐、コーヒーをお持ちしました」
「ああ」
「大佐の作戦、上手くいきそうですね」
「ああ。そうでなくては困る」
オーランドは余裕ありげな表情で頷いて見せた後、副官が持ってきたコーヒーを口にした。
「最初にバニップが現れてからと言うもの、沖縄に居を構える我々の補給線は大きく乱れ、我々は軍の体制を維持するために大幅な計画変更を余儀なくされてきた。3ヶ月だ……3ヶ月もの間、我々は堪え忍んできたのだ」
マグカップに入ったコーヒーを半分ほど消費したところで、オーランドは息を吐きつつ、そのままの勢いで悲願の言葉を口にし始めた。
「その3ヶ月もの間……我々は15回も敗北を重ねてきた。しかし、その敗北は決して無駄ではなかった。敗北の中でバニップの性能と行動パターンは少しずつ解析され、少しずつ蓄積された情報を元にバニップに対抗する手段を講じることが出来たのだ。新たに作られた戦術AIはこれまで以上に対潜能力に特化しており、また、それに対応した新型の対潜兵装を本作戦に投入した全てのAMAIMに搭載しているのだ。忌々しきバニップめ……16回目となる今日こそ、引導を渡してくれるわ!」
マグカップの淵越しに戦場となっている海域を流し見て、オーランドは苦虫を噛み潰したように眉を細めた。
そんな彼を見て、副官は涼しい顔をして告げる。
「それにしても、敵は一体何者なのでしょうか? 我々の保有する高性能ソナーをもってしても捉えられない超ステルス能力を持つ、所属不明の小型潜水艇。これ程のものを製造出来るとなると、やはり北米軍でしょうか……」
「位置的にアジア軍であるという線も捨て切れはしないがね。上手くいけば、今回の戦闘で何かが分かるかもしれんぞ?」
「しかし、バニップも馬鹿ですね。これだけの戦力を前にたった1機で攻撃を仕掛けてくるなんて……」
副官は嘲笑を浮かべ、肩をすくめてみせた。
「だからこそバニップが確実に動いてくれるよう、損害を覚悟で輸送艦を5隻も用意したのだ。どういうつもりかは分からんが、これまでの戦闘から輸送艦ばかりが狙われるのは知っての通り、それこそ補給物資を満載にした輸送艦であるならば奴にしてみても見逃す手はないだろう。例え大規模部隊の護衛がついていたとしてもな。
輸送艦だけではない、この戦いにはさらに7隻の対潜駆逐艦と大量のAMAIMを投入している。それもこれも全て、バニップを倒す為だけにな……だからこそ、この作戦はなんとしても成功させねばならない……」
「準備万端ですな。しかし、これだけ戦力差があるのなら勝ちは確実でしょう。現に、先ほどからバニップも防戦一方といった様子です。例え取り逃がしたとしても、我々は補給物資を沖縄のオセアニア軍基地に運び込むことが出来る……それだけでも兵の士気は回復することでしょう」
「……だと、いいのだがな」
早々に、当初の目的である物資輸送が完遂されることを疑う素振りも見せない副官を横目に、オーランドはそれ以上、何も言わなかった。
ーーーーー
同時刻……
作戦海域
オセアニア軍の猛追を受ける『ニライカナイ』
『マスター、水上に展開していた敵AMAIMが後退』
「後退……やっと弾切れ?」
『はい。水中で炸裂した爆雷の数を見ても、そう考えるのが妥当でしょう。しかし、9時方向より新たな敵AMAIMが接近中。二個小隊、合計10機です』
「なるほど、どうりでさっきから……」
水上を監視していたユーリからの報告を聞き、俺は敵の攻撃が止まない理由に気づくことができた。いくら水上型ブーメランの弾薬積載量が豊富とはいえ、延々と『ニライカナイ』の包囲網を維持することは出来ない。それが消耗品である以上、ロケット爆雷の弾薬と機体を動かすバッテリーはいつか尽きてしまうものだ。
そこで敵は、包囲網を維持する為に1つの方策を打ち出していた。弾薬とバッテリーの尽きたAMAIMを護衛艦に帰投させ、その間、待機していた別の二個小隊と役割を交代。先のAMAIM部隊は補給を、次の二個小隊は包囲網を再構築し、こちらに輸送艦を攻撃出来るだけの隙を与えないよう妨害を行う。そして交代した二個小隊の弾薬が尽きれば、補給を終えた最初の部隊と入れ違いになって攻撃を仕掛ける、あとはこの繰り返しだった。
『マスター。今計算してみたところ、我が方が被弾する確率は時間が経つにつれて上昇しています。この命中精度、敵AMAIMの搭載しているAIは、これまでに類を見ないほど性能が向上しています』
ユーリは回避ポイントを示しながら淡々と告げる。
『敵はこちらに対抗すべく、AMAIMに搭載した戦術特化型AIを対潜能力に特化したものへと改良している模様。武装に関しても、対潜攻撃を優先させているものと思われます』
「そっか……海の中から現れる俺たちに対抗するために、何度も敗北を重ねながらも、オセアニア軍は周到に準備を進めてきたってわけか」
ユーリの説明を聞き、俺は思わずため息を吐いた。敵に囲まれた今の状態では任務を遂行するどころか反撃の糸口すら見つけられず、ただ逃げ回ることしか出来ない。しかも、敵の攻撃は時間が経つにつれてより正確になってきている……このままでは、いずれ直撃を受けてしまうことだろう。
そう、今の状態では……
そこで視界の端に佇むユーリへ視線を送ると、彼女はいつも通りの落ち着いた表情を浮かべていた。こんな状態でも冷静さを崩さないその姿を見ていると、心の底から頼もしさを感じてしまう。
『しかし、マスター』
激しく振動するコックピットの中で、ユーリと目が合う。すると彼女は真っ直ぐに俺のことを見つめ、淡々と言葉を続けた。
『……これは絶好のチャンスでもあります』
「ああ、そうだな」
ユーリの言葉に俺はニヤリと笑った。
ユーリが分析したとおり、オセアニア軍は俺を倒すために研究に研究を重ね、努力して対抗手段を編み出したのだろう。そしてそれは功を奏し、俺たちは身動きを封じられ、こうして窮地を迎えている。だが、お前たちはまだ知らない。お前たちが知る怪物は、お前たちが見ているもののほんの一部に……それこそ氷山の一角に過ぎないということを。
さあ、今こそ『ニライカナイ』の真価を発揮する時だ。
「プランBに変更、海面に出る!」
『サー。アップトリム60、全スラスター出力最大……急速浮上』
俺の言葉にユーリは小さく頷くと、上方向に向けて手を伸ばした。すると機体が上向きに傾き、補助推進装置も含めた全てのスラスターが下方向に向けられる。次の瞬間、自分の体が海面に向かって勢いよく上昇していく気配を感じた。
海面へと上昇する過程で、視界を埋め尽くしていた深淵が徐々に明るいものへと変わっていく。それはまるで、闇が光によって追い立てられていくかのようであり、やがてどこまでも続く海の青さと天に揺らめく日の光が見えてくるようになった。
『トランスフォーム始動。ウィーヴァルアーマー左右連結解除、後部耐圧装甲を直立二足歩行モードへと移行、火器管制、武器システムを潜水艦モードから陸戦モードへとリプレイス……完了』
海面を見上げる俺の横で『ニライカナイ』を制御するユーリの淡々とした声がコックピット内に響き渡る。カブトガニにも似た形をした潜水艇は、海面に近づくにつれ登竜門に挑む鯉の如く徐々に姿形を変えていき……やがて海面を脱した時、それは変貌を遂げていた。
海底火山が噴出するが如く、盛大な水飛沫を伴って空中に打ち上げられる黒い影。超空洞技術(スーパーキャビテーション)により機体の上半身を覆っていたバブルが弾け、その内部より黒い人影が姿を現す。
黒のパーソナルカラーに、
青のラインが特徴的な、その機体
水抵抗を考慮し、装甲は全体的に丸みを帯びている
頭部には二本のブレードアンテナ
耐圧能力を持つ、逆関節の強固な二本脚
重量感のある脚部に比べて、小柄な胴体と腕部
機体の上半身を覆っていた、カブトガニのような耐圧殻ことウィーヴァルアーマーは中心部から左右に分かれ、機体の側面を守る盾となって、両肩部の端へとスライドする
「MAILeS『ニライカナイ』」
『陸戦モード、コンバット・オープン』
太陽を背に、天高く舞い上がった『ニライカナイ』は、敵対するオセアニア軍に対して、ここでようやくその全貌を晒した。そして、俺たちの意志を体現したネイビーブルーのツインアイが、太陽にも負けぬ力強い輝きを放った。
注記
ニライカナイのイメージとしては、『ケンブ』の両肩に水中型ガンダムこと『アビスガンダム』の肩アーマーをつけたような感じとなっております。
アビスガンダム↓
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ただし、中途半端なアビスのものとは違いニライカナイのアーマーは、機体の上半身をすっぽりと覆えるほど大きく、魚雷や携行火器など全ての武装はアーマーの内部に収納できます。