境界戦機 外伝:『最果てのニライカナイ』   作:野生のムジナは語彙力がない

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お久しぶりです。ムジナです。
メインでやってる作品が完結したので、今回からまた執筆を再開していきたいと思います。

ところで『境界戦機』の新作の製作が決まったそうで
とりあえず、おめでとうございます。
コンセプトや機体デザインは秀逸だと思うので、本家で上手くいかなかった&視聴者から酷評された部分をちゃんと踏まえた上で、反省点を新作のストーリーなどに活かして頂ければと思います。そして願わくば、多くの人から評価される最高のアニメとならんことを……

ところで、今度こそ沖縄出してくれませんかね?
北海道出るんでしょ? なら沖縄も出さねば不相応というもの! なんならニライカナイの設定持って行ってもいいんですよ? 本作ってフリー素材みたいなもんですから、、、なんて言ってみたり(流石に調子に乗りすぎか)

それでは、続きをどうぞ……


第8話:狙撃ースナイパーー

 

 

 

17:30

沖縄近海

 

 

 

那覇港にあるRLF秘密地下ドックから出撃した俺たちは、ユーリが事前に入手していた航海計画書を頼りに、その輸送ルート上でオセアニア軍を待ち伏せしていた。

 

陽の光が届かない、暗い海の中に身を潜めること数時間……体力の消耗を抑えるべく、海中の音に耳を澄ませながら目を瞑っていると、敵の接近を感知したユーリが俺の耳元で囁き、優しく報せてくれた。

 

『音紋解析により、接近する物体は攻撃目標である石油タンカー「シエラ」であると断定。しかし……』

 

「護衛の駆逐艦がいない……?」

 

網膜投影された薄明かりが灯るコックピットの中、ユーリの目を通して水上を航行するタンカーの姿が大きな棒線となって網膜にリンク表示される。だが、その周囲にはいくつかの微細な光点があるくらいで、護衛につくとされていた駆逐艦と思わしき光点はどこにも見られなかった。

 

一応、護衛のAMAIM……水上型のブーメランらしき機影がタンカーの周囲に複数展開してはいた。しかし、巨大なタンカーを護りつつ危険な海域を通るにしては、これでも少なすぎる戦力だといえるのに、当初の予定にあった駆逐艦さえいないというのは一体どういうことなのだろうか?

 

『マスター、どうされますか?』

 

「……とにかく、もう少しだけ接近してみよう」

 

『サー、距離を詰めます』

 

タンカーの様子を伺いつつ、右側面から回り込むようにして巨大な船体へと接近する。その間、ユーリはタンカーのことをじっと観察し続けていた。

 

『マスター、もう1つ気になる点があります』

 

「どうしたの?」

 

『解析の結果、タンカーの喫水線が想定より大幅に低いことが分かりました』

 

「それって、つまり……」

 

『はい、あの船は何も積載しておりません。石油を満載しているどころか、何も』

 

「…………何もって、そんなこと?」

 

俺は頭に疑問符を浮かべた。

護衛がいないのをいいことに、接近してきたこちらを燃料気化爆発の爆風でタンカーもろとも吹き飛ばそうというのなら分からなくもない。だが、喫水線が下がっているところを見ると、どうやらそういうつもりではなさそうだ。また、タンカーに何か武器を隠しているという可能性も同様である。

 

俺たちを誘い出し、迎え撃つつもりか? いや、だったらそれ相応の戦力を用意するはずだ。ならば俺たちの留守を狙って拠点を攻撃しようとでも? いや、オセアニア軍には那覇港にある秘密ドックはおろか、まだRLFの存在すら察知されていないはず。もしくは俺たちの裏をかいて別ルートでの輸送プランがあるとか……? オセアニア軍の奇妙な行動について、俺は思いつく限りの可能性を巡らせた。

 

『マスター、どうされますか?』

 

「……魚雷で牽制してみよう。どう反応するのか見てみたい、でも当てないでね」

 

『サー、魚雷は直撃の2秒前に自爆するよう設定します。1番発射準備完了』

 

ひとまず、俺は様子を見ることにした。

魚雷の装填を確認した後、タンカーをサイトの中心に捉え、トリガーを引き絞る。『ニライカナイ』のアーマーに内蔵された魚雷が射出され、ユーリが算出したタンカーの未来位置へと来襲、巨大な船体を爆発範囲に捉える直前で自爆し、水上に大きな水飛沫を生み出した。

 

『魚雷の自爆を確認』

 

「タンカーの動きに何か変化は?」

 

『少しお待ちを……』

 

ユーリはしばらくの間ジッとタンカーの方を見つめ、それから小さく首を横に振った。

 

『目標、方向転舵および増減速ありません。デコイ等を用いた防御行動も見られず、依然として沖縄方面へ航行中。また、タンカーの周囲に展開する護衛と思わしき水上型AMAIMに関しても動きがありません』

 

「それは、つまり……」

 

『はい。目標は無人であると思われます』

 

「幽霊船だとでも? まさかタンカーの中でバイオハザードでも起こったとか……?」

 

ユーリの声を聞き、俺は迷った。

当初は石油による海洋汚染を心配していたのだが、タンカーに何も積まれていないのなら、このまま撃沈してもいいだろう。完全にリスクがないわけではないが、大きな海洋汚染を引き起こすことはないはずだ。しかし、オセアニア軍がどういった意図でタンカーを漂流にも近い形で出航させたのかが気になりはした。

 

そして罠である可能性もまだ捨てきれない。

もしこれが敵の策略であるならば、下手なことはせずここは満を持して逃げるべきだろう。撃沈か調査か、あるいは撤退か……これからの行動について、どうすべきか考えていた時だった。

 

『マスター、環境センサーに感あり』

 

「どこだ?」

 

『方位21、海面上に高エネルギー反応』

 

「なんだ……奴ら、何を……?」

 

突然、ユーリがそんなことを言い始めた。

淡々とした緊張感のない声、危険を感知するアラートは沈黙したままで何も異常を報せてこない。安全な海中にいることで、俺もユーリも完全に油断しきっていた。

そう、この時までは……

 

「……ッ!?」

 

次の瞬間、海中を航行する俺たちの直ぐそばを、海底に向かって縦方向に、何かが猛烈なスピードで横切る気配。ワンテンポ遅れて衝撃波が襲いかかり、機体が横転しかける。荒れた海でも感じたことのないほどの強烈な振動、コントロールを失いかけた俺に代わって、ユーリが咄嗟に姿勢制御をしてくれなければ、危うくそのまま海中深くに引きずり込まれるところだった。

 

「何だ!? 何が……っ!?」

 

『真上からの攻撃です。マスター、回避行動を』

 

「避けろって、どこに……!」

 

『敵の攻撃に関するデータが不足しているため回避ポイントの選定不能です。ランダム回避の試行を推奨』

 

「くっ……!」

 

アラートがけたたましく鳴り響くコックピット内で、俺は訳も分からず悲鳴をあげた。次の瞬間、なぜか俺の脳裏に浮かび上がったのは、幼い頃に俺を冷たい海の中から引き上げてくれた白いイルカの姿と、特徴的な甲高いその鳴き声だった。

 

「……ッ!」

 

まもなく、敵の第二射が飛来……

必死の回避行動も虚しく、それは正確にニライカナイの耐圧殻を捉え、着弾の衝撃は俺たちがいるコックピット内部に盛大な激震をもたらした。

 

 

 

 

 

 

数分前……

石油タンカー『シエラ』より数百メートル後方

 

 

タンカーの周囲に展開した数機の水上型ブーメラン。その中に混じって、一機だけ特徴的なカラーリングの機体がタンカーに追従していた。

 

フロートの上に『クリムゾン』と呼ぶに相応しい、真紅の人型機が片膝をつく形で鎮座していた。頭部にはV字型のメインカメラ、全体的に細身のシルエット、機動性を重視した軽量かつ柔軟なフレーム、全身に配置された紅色の装甲は陽の光を受けて美しく煌いている。

 

ライン同盟製AMAIM "ストーカー"

そのロングレンジカスタムタイプだった。

 

電子戦用レドームと索敵用複合カメラを備えたバックパック、腰部には長時間の作戦行動を可能にする高性能コンデンサーが搭載され、マントのように垂れ下がったシールドが左半身を覆っている。

 

そして何よりも特徴的なのが、長砲身の狙撃銃を右肩に担いでいるという点だ。機体全長をも上回るそれは、最新鋭の高性能光学スコープを内蔵し、鈍い銀色のフレームと紅いバレルも相まって近未来なイメージを彷彿とさせるAMAIM用の狙撃銃だった。

 

「そろそろ来る頃だよね」

 

真紅の機体の中には白髪の少女の姿があった。

傭兵部隊ウルフパック所属のスーパーエース、コードネーム『クリムゾン』こと、アリシア・ラインバレルは薄暗いコックピットの中で小さく呟いた。

 

「ローレライ、君の戦いを見させてもらったよ」

 

アリシアはモニターに表示された現在時刻と自分の位置座標を確認し、機体のスリープモードを解除した。V字型のメインカメラに白い発光が生まれ、バックパックの複合カメラとレドームが獲物を探す猛禽類かの如く首を振った。

 

「広い海の中に潜み、神出鬼没の如く姿を現し、たった1機でオセアニア軍の艦艇を何隻も沈めてきた。まさしく海の怪物と呼ぶに相応しい……なんてクールでミステリアスな存在だろうか」

 

もう間も無く戦闘が始まる……そう予想し、戦闘の準備を進めているにもかかわらず、彼女の瞳は期待に満ち溢れていた。それはまるで、これから始まるであろうローレライとの壮絶な殺し合いを楽しみにしているかのようである。

 

「君は恐るべき存在だよ。でも、あれだけ沢山の船を沈めておいて、犠牲者は最小限に留まっている。でも、それはただ単にダメージコントロールの面でオセアニア軍が優秀だったからじゃない。それはきっと、君が手加減していたからなんじゃないかな?」

 

海の中に向かってそう問いかける。

そこに誰もいないというのは分かっていた。

 

「船を攻撃する時にも、片側だけを狙うんじゃなくてあえて両舷を同時に潰していた。こうすることで浸水のスピードは早くなってすぐ沈んじゃうけど、その分バランスを保ったままだから、乗組員たちもスムーズに脱出することができた。それを長距離から動く目標に対してで、しかも少しでも着弾位置と爆破範囲の計算がズレればバランスを崩して転覆してしまうものを、ただでさえ当てるのが難しい魚雷で正確にやってのけている……凄いね、まさに神業だ。でも戦場でのあの動き方はAIじゃない、あのキックは有人機の動きだね」

 

これから戦う敵のことを高く評価しつつ、アリシアは先の戦闘でローレライが見せた、弾薬補給中のブーメランに対する空襲からの蹴り飛ばしを思い出した。

ブーメランが搭載するロケット爆雷はミサイルのような誘導兵器ではない分、低コストかつ大量に運用することができるが、悪く言えば爆薬の塊であるため、現代での運用は無人機に限定されてしまっている。

ただでさえ誘爆の恐れがある。そんなものに対して格闘戦を仕掛けるなど、言うまでもなく危険極まりない行為である。しかも自身の脚部を損傷してしまうかもしれないというのに……

前提として、全てのAIは自らの保護を原則としている。いくら機体の強度に自信があったとしても、前述の原則がある以上、よっぽどの事がない限りそのような思考に行き着くことはあり得ないと言えた。これらのことから、少なくとも攻撃を決定したのはAIではなくパイロットの意思であるだろう……それがローレライのオペレーターに対するアリシアの考察だった。

 

「それを想定してから察するに、きっとローレライのパイロットは心の優しい人なんだろうね。確実に船を沈めようとは思う、けど人的被害を必要最小限に留めたいって、そういう意気込みは伝わってくるよ」

 

でもね……

フッと息を吐き、続ける。

 

「戦場では時に、その優しさが仇となってしまうこともあるんだよ?」

 

そう言って暗闇の中で赤い瞳をギラつかせた。

その時、水上に巨大な水飛沫。

それは洋上を無警戒で航行するタンカーの意図を調査すべく、ライとユーリの駆るニライカナイが牽制のために放った魚雷だった。魚雷はタンカーの爆発範囲の外で炸裂し、船体へのダメージはない。それを見て、アリシアはニヤリと笑った。

 

「来た来た……! 予想通り!」

 

ファーストアタックは当ててこないことも織り込み済みと言った様子で、アリシアは魚雷の爆発位置を中心に、現在までのローレライとの戦闘で得られたデータを参考にして、大まかな魚雷の発射位置を逆算し始めた。

 

「さぞ心苦しかっただろうね。石油を満載したタンカーを攻撃するとなると、どうしても海を汚してしまう。いや、そうでなくとも環境問題に厳しいこのご時世だ、環境テロリストとして国際社会から非難を受けてしまうかもしれない、だからそうなってしまうのは出来るだけ避けたいところだ。でもオセアニア軍の企みをみすみす見逃すというわけにもいかない……きっとそういう葛藤があったんじゃないかな」

 

オセアニア軍が積み重ねてきた敗北の記録、そして若いながらもこれまでいくつもの戦場と死線を渡り歩いてきた経験を頼りに、アリシアはローレライの思考と行動を予測していた。

 

「でも、きっと不思議に思っただろうね。傍受した作戦計画書に記載されていた通りタンカーは姿を現した。けど、それを護る駆逐艦の姿は見受けられない……それにタンカーの喫水線が低くなっていることも気づいたはずだ。そうだよ、そのタンカーには何も積まれていないよ。燃料は沖縄までの片道で必要な量だけで、それ以外には一滴もね、さらに自動航行が適用されているから乗組員もいない」

 

魚雷の炸裂でいつも以上に荒れる波間、アリシアは機体のバランスを保ちながら肩に担いでいた長砲身の狙撃銃、もとい狙撃用レールガンを両手で構え、フロートの上で射撃姿勢をとる。

 

「そして君はこう思った筈だ。ひよっとすればタンカーを攻撃せずに済むかも、でもオセアニア軍の意図が気になるとね……だから奇襲と先制攻撃のチャンスを捨て、牽制攻撃と共に接近し、タンカーの様子を伺いたくなる」

 

レールガンの砲身を海面に向け、フレームに内蔵された高性能スコープを覗き込む。バックパックの複合カメラとレドームも機能し、戦場のありとあらゆる情報がクリムゾン機へと収集されていく。しかし、当然のことながらこれだけではコックピット内のモニターはただ夕陽で赤く染まった水面を映すだけに留まっていた。

 

「安易に魚雷で様子を見ようと思ったのが運の尽き! 大まかな位置さえ分かればこっちのもの……海中に身を隠しているから安全? あはっ、本当にそうかな?」

 

これだけやっても未だ敵の姿を捕捉出来ずにいる。しかし、アリシアの顔に焦りの色はなく……むしろ、この状況下においても余裕そのものだった。

 

「この私の前ではね……!」

 

レールガンの安全装置を外し、アリシアが小さくそう呟いたその瞬間……薄暗いコックピットの中で、彼女の赤い瞳が強い輝きを放った。

 

「……あはっ、み〜つけたぁ♡」

 

その僅か3秒後、甘くねっとりとした声がアリシアの口から漏れ出た。即座に砲口をその一点に向け、トリガーを1段階引き絞る。クリムゾン機の腰部に設置されたコンデンサーが稼働し、内臓されていた電力がレールガン本体へとチャージされる。

やがて膨大な量の電力が蓄積されると自動的に銃身が展開、レールガンは高出力モードへと移行、3つに分かれた砲身は激しいスパークに包まれた。

 

「さて、対潜攻撃は初めてだけど……」

 

そう言いつつ、無数のスパークが煌めくレールガンの先端を海面へ突き刺すと、クリムゾン機を中心にして円を描くように激しい水の波紋が生まれた。

 

「まあ一発でも擦ってくれれば御の字ってことで、やれるだけ……やってみましょ!」

 

そうして、2段階目のトリガーが引き絞られた。

その瞬間、レールガンの砲口から超高速で砲弾が射出され……しかし、どういうわけか砲弾は海面に衝突しても、水の抵抗を受けて破砕するどころか殆ど減速することなく、驚くべきことに水中をそのままのスピードで駆け抜けて行った。

 

「外した……! 誤差修正!」

 

その事実に気づいたアリシアは、レールガンに次弾を装填しつつ誤差修正の計算を行う。3秒後……反映したデータを元に照準を微調整し、そして赤い瞳を輝かせながら微かに唇を舐め、再びトリガーを引き絞った。

 

レールガンが吼え、再び海面に向けて超高速の砲弾が射出された。本来であれば決して命中するはずのない水中に潜む敵への狙撃、クリムゾン機のセンサーは着弾を観測できず、失中の判定をパイロットに伝えた。

 

「……あはっ、命中ぅ!」

 

それに対し、確かな手応えを感じたアリシアは思わず歓喜の声をあげた。




アリシアの計略に嵌められたライとユーリ
水中への狙撃を可能にしたクリムゾンの能力とは?
レールガンの直撃を受けたライたちの運命は?

そして、対峙する蒼色(ニライカナイ)と真紅(クリムゾン)
次回 第9話:真紅ークリムゾンー
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