話数:85話(高校編+大学編+特別編)
オリ主:
メインキャラ:氷川紗夜、白金燐子、松原花音
本編リンク:https://syosetu.org/novel/232861/
俺は清純派が好みです。これは譲らない、ええ譲りませんとも。例えばそう、羽沢珈琲店の看板娘の羽沢つぐみちゃん。彼女の天使のようなスマイルと純真無垢な仕草、ああいう子とちょっとずつお近づきになって、告白して、デートとかで手を繋いで、三ヶ月くらいで軽くキスして、そして半年かそれ以上、なんなら一年くらい時間を掛けて、まずはお互いの家で──
「──童貞の妄想はやめた方がいいですよ、カンベさん」
「う、うるさい! 童貞だからこその幻想ってのがあるんじゃい!」
「……とっても、いいと思います……ですから、まずはお互いの家でしっぽりしてから、一年くらい……時間を掛けましょう……」
「逆なんだよなぁ!」
だが俺は残念なことに真逆な女性に囲まれていた。性経験と思考回路がイカれたメンバーを紹介するぜ。
──まずは最初に俺を罵ったのがある意味の処女厨、氷川紗夜。俺のハジメテを奪うべく猛アプローチを掛けてきて一応受験が終われば恋人同士になろうと約束をし、名実ともにそのハジメテを射止めた人でもある。
「ちなみに高校生であっても交際からセックスまでの期間は大人とほぼ変わらず一ヶ月〜三ヶ月だそうですので、受験が終わったら入学前に一度交わることをオススメしますよ」
「交わるとか言わないでほしい」
「……まぐわう……?」
「どっちでもアウトだよ」
交わる、で人差し指と親指を合わせて○にしてからそこで人差し指を挿れる動作をするようなヒトとどうして付き合うことになったんだろうとすごく今までの感動したことや好きだなぁって思ったことが全て吹き飛びそうになったよ紗夜さん。
──そして、その後におっとりとした声で下ネタぶちこんできたのが、オフパコの女王、ベルさんことグラマラスビッチ、白金燐子。その男受け抜群の魅惑のボディで男を食い荒らし、俺に狙いをつけてきた二人目のビッチだ。
「そもそも白金さんが何故勉強会に参加しているのですか? 図書館で下ネタは控えてください」
「あなたが言ったらダメだと思うよ紗夜さん」
「……わたし、まだ……負けた、わけじゃない……ので」
「カンベさんは私がもらいましたけど」
「……二番目枠、残ってますし……」
「枠は一つしかないんですがあのその」
紗夜さんは見た目結構キツそうだし、スタイルはすごくいいけど男がナンパとかで寄ってきそうな見た目はしてないけど、燐子さんは駅前歩けば男たくさん釣れそうなんだよなぁと失礼なことを考える。燐子さんは人混みが苦手なので基本的にはSNSで待ち合わせてタクシーでホテルというルートが主流なんだとか、知りたくねぇよその情報は。
「ごめんごめん、遅れちゃったあ」
「花音さんまで」
「こんにちは松原さん、もう驚きませんよ」
「……どうか、されたんですか」
「ちょっと駐車場でセフレとヤっちゃってたよお」
──そして最後のビッチがこの人。愛されたいけど満たされない欲深い童貞キラー、松原花音。童貞大好きで、すぐ童貞に恋するんだけど基本的に浮気性で性欲が満たされないとダメな人間なので浮気をする。セフレとも関係を持つ、そして別れるを繰り返す業と欲の深いビッチだ。彼女もまた、何故か俺を狙いつけてくる。紗夜さん守って、マジで。
「カンベさんは私の恋人です」
「予定でしょ? だからあ、寝取っちゃってもいいわけだ♪」
「よくないです……順番は、守ってください……」
「私、燐子ちゃんみたいにイイコじゃないからなあ……?」
以上が、俺の童貞を奪うために争っている三人です。濃いだろうしビッチばっかりでどうしようもないけど、今日も俺は自分の貞操を保っています。よくもこの三人相手に半年以上もの間、童貞でいられたな。実はすごいことなんじゃないかと思えてきた。難攻不落の城みたいでカッコよくね?
「生殖機能を否定しても、生物学上で言うなら非生産的でしかないですよカンベさん」
「……不能、だと……思われますよ」
「確かに、どうしても一生童貞でいたいなら切っちゃえばいいんだもんねえ」
「怖すぎんだろ」
女子に総叩きとかカンベさん泣いちゃいますよ。女子の扱いは下手なんだから、あんたらの言うところのヘタクソ童貞なんだから。逆にもっと丁寧に扱ってください。そして勉強させてください。俺は割と判定厳しいんだからな。三人同じとこならそこ落ちちゃうんだぞと脅してみる。
「そうです、勉強の邪魔をするなら帰ってください」
「じゃあ、まずは前戯から?」
「知ってましたか花音さん、保健体育って受験科目にないんですよ」
「……適切な、おしりの、開発……とか」
「燐子さん話聴いてた?」
「燐子ちゃん使ったことある?」
「そういうのが、好きな……方も、いますから……」
「ああいうのってやっぱり──」
なにやら聞くに堪えない女子会が始まった。ただ会話のターゲットが俺から外れたため、そこから少し距離を取って再び勉強に打ち込み始める。終わりついでにデートでも、という紗夜さんのかわいらしい幻想が打ち砕かれたのだが、不機嫌だったり、理不尽だったりしないだろうかと顔を伺うと紗夜さんは真面目顔で、ほっとする。そしてこちらの視線に気づいて、そのキリっとした美しい顔のまま言葉を紡いだ。
「アナルの経験はないですよ」
「それが知りたかったんじゃないんだ」
「せいぜい指を挿れられた程度です」
「訊いてないよ」
「カンベさんは性教育よりも数学ですよ」
「わかってるよ……急に真面目にならないで」
「頑張ってください、私はあなたと通えるのを楽しみにしているわ」
「……うん」
紗夜さんも性行為をした人数なんていちいち数えてないようなビッチだ。すぐ下ネタを真顔で投下してくるし、なんならまだダメって言ってるのに俺のハジメテを奪おうと迫ってくる。俺の理想とする天使のような女の子、というよりは男を惑わす悪魔のような女性で、なのにいつの間にか惹かれていた。
「政経は、理解と知識……が大事です。識ることが……覚える近道、なんです」
「現代文は消去法だよ、問題になってる文章といらない文章を消すと、ちゃんと答えが出てくるようになってるんだあ」
そして、燐子さんと花音さんも。ただ単純に俺が童貞だからヤリたいとか、自分の本性と本当の名前を知ってそれでもいてくれるからとか、そういう感じでビッチだけど、ビッチなんだけど彼女たちが求めてるものはどこかで俺と同じものなんだってことを知った。
安心できる人、素顔だろうと、ビッチだろうと受け入れてくれる人を求めてる。
ビッチで浮気性の自分を、それじゃあダメだって愛も性欲も独占してくれる人を求めてる。
みんながみんな、あり得ないはずの理想を追い求めていて。だからこの人たちは諦めることなく、俺に迫ってくるんだ。
「白金さんも松原さんもくっつきすぎです、カンベさんは私のカレシなんですよ」
「まだ違うんじゃなかった?」
「受験が終わったらお付き合いをするって約束をしているので、同じようなものです」
「……カンベ、さん……」
「燐子さん、そんな泣きそうな顔しないでよ」
「何をイチャイチャしてるんですかカンベさん」
はっ、つい。燐子さんの甘える攻撃についつい頭を撫でてしまった。しかも燐子さん、やや勝ち誇った顔してる。これ以上は紗夜さんの精神衛生上よくないので、集中ができないという理由で解散することになったんだ。花音さんを送って去り際にキスをされて、燐子さんを送ってそこでまた抱きつかれて、二人は全く諦める様子がなさそうに笑顔で去っていった。後に残るのは、拗ねて小動物のようになった紗夜さんだけだった。
「紗夜さん」
「……今は、話したくありません」
「紗夜さん」
「そもそも、なんでまたさん付けに戻ったんですか」
「まだ付き合ってないから、かな」
「……それは、嫌」
どうやら紗夜さんは、一時期は紗夜って呼んでたのに元に戻ったことが気に食わないらしい。俺の手に自分の指を絡めて、静かに拗ねながら甘えてくる。なんて高度が技術なんだろうか、俺には一生できそうにない。でも、そんな彼女が俺はやっぱり好きなんだなぁって実感してしまえる。こういうちょっとだけ素直じゃないところも、紗夜のかわいいところなのかも。
「紗夜」
「……はい」
「うん、やっぱり恥ずかしいな……なんか、俺が呼んじゃっていいのかってなりそう」
「いいのよ、私はあなたのハジメテの女なんだから」
「そこでカノジョって言わないところあたりが紗夜さんなんだよなぁ」
またむっとした顔をする。どんどん焦れてるから、俺としても早く結果を出しちゃいたいんだよな。結果を出して、紗夜のことを堂々とカノジョですって言ってしまいたい。それに俺としても、紗夜をこれ以上不安にさせるのはよくない気がする。折角一緒に大学通えてもその頃にはギクシャクしてました、じゃ本当にバカすぎるし。
「今日は泊まりでみっちり、勉強するわよ」
「うえ……マジで?」
「カンベさん、そのくらいやらないといけないのだからしっかりして」
「……はい」
「ご褒美は、手かしら……それとも口?」
「普通に手料理とかでお願いできます?」
「手ね」
「おいこら」
一番大事なところを省いてきたな。紗夜は料理は余り得意じゃないのよ、とちょっと唇を尖らせた。器用そうでそういうところが不器用なところ、なんだかんだで夜這いとかはしてこないところ、でも明確にドキドキはさせてくるところが、クセになってるような気がする。本当に紗夜って真面目なんだよね、ビッチなのに。
「カンベさんと一緒にいるためだもの、今は我慢してあげるわ」
「ありがとう……紗夜」
「ええ」
俺は結局、童貞で、男としてはダメダメで、だというのに紗夜だけじゃなくて燐子さんや花音さんにも迫られて。嬉しくもあり困ってもいる。そこでふと、前は困ってばっかりだったのに、嬉しいとか思える自分がいることに気づいて思わず苦笑する。そしてランスが二学期終わりに言ってきたことをちょっとだけ思い出してしまった。
「カンベって、本来はトーマより僕に近いよね、甲斐性っていうのかな?」
「なにそれ、エイプリルフールにしては寒すぎるな」
「きっと分かる時が来るよ」
純愛から最も遠く離れたカノジョ複数持ちのハーレム男にそんなことを言われても嬉しくはない。俺は純愛派だし、もう無理かもしれないけど一歩一歩一人の人と愛を育むことを理想としてるからね。
──大学生になったからって、ランスみたいにみんながみんな愛してるなんて囲うような男には絶対にならないんだからな!
今年の三月に最新話が投稿されているくらいお気に入りの作品。実はカンベくんにも紗夜さんにもモデルがいるのですが、両者ここまでひどくはないです。
テーマは文字通り「童貞VSビッチ」で「まし僕」でも取り扱った恋愛の「キレイ」と「汚い」をこちらはコメディちっくに向き合った作品でもあります。友情に恋にバンドに、ある意味カレが作品群の中ではトップクラスの青春してるキャラではないかと。こちらも「NIGHT STORY」にR−18の短編がございますので興味があればどうぞ。
次回は「青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。」です。かつては黒豆の代名詞ともなっていたこちら、お楽しみに。