2020.10.14
話数:57話(旧版コラボ含む)
80話(リメイク版)
オリ主:
メインキャラ:美竹蘭、氷川日菜、青葉モカ、白鷺千聖、氷川紗夜
今井リサ(リメイク版のみ)弦巻こころ(リメイク版のみ)
本編リンク(リメイク版):https://syosetu.org/novel/238759/
追記:リンク間違えてましたー! 申し訳ございません!
教師なんてロクなもんじゃねぇ──と何度言い続けただろうか。そんなの何度言ったって何か変わるわけねぇけど、オレは何度だって言ってやるんだ。教師なんてロクなもんじゃねぇってな。
結論から言うと、オレは生徒と関係を持ってる。それも複数、本当にロクでもねぇ。ただ、このおかげでオレは教師としての自信っつうか、覚悟みてぇなのが決まった気がして、そういう自分のこともロクでもねぇクズだって称してる。
「それじゃあ、冬の星空観察の計画を立てたいと思いま〜す!」
「冬の星空ねぇ」
「とーっても素敵ね!」
「でしょでしょ!」
「リサ、助けてくれ」
「あはは、アタシに言われてもね〜」
そんなクズ教師たるオレは羽丘の天文部の顧問をやってる。そして天文部にはたった一人の部員、氷川日菜がいて、色々あって最近は花咲川の唯一の天文部員、弦巻こころの面倒も見させられていた。ヒナだけでも手いっぱいなのにこころが加わると大抵オレの胸ポケットからタバコがなくなるので勘弁してほしい。こういう時はブレーキが必要ってもんだろ。
「アタシ、バンドとかで忙しいんだケドな〜?」
「マジで、リサくれぇにしか頼めねぇんだよ。奥沢は知りませんとか言って逃げやがったし」
「美咲が? なんかあったのこころ?」
「あたしは何も聴いてないけれど、よくないことがあって、その後にいいことがあったのは確かよ!」
なんだそれ、と思いつつとりあえず冬の天体観測、流星群の計画を立てることにした。春ならまだ過ごしやすいで済むんだが、冬の寒さは洒落になってねぇんだよな、しかも山登りするとか言い出したら更に。
リサは長机に頬杖を突きながら、なんやかんや言いながら話を聴いてくれている。忙しいのに悪いな、と声を掛けるとパッと椿の花が咲いた。
「いーって、センセーの本数を減らしてあげるんだし? 節約くらいさせてあげるって〜☆」
「バンド、休みにできるのか?」
「ふっふっふ〜、それは多分ね〜」
「えっ、じゃあおねーちゃんも来れそう?」
「そそ、紗夜も誘っちゃえるカモ」
「いいわね!」
ああ、また大所帯になりつつある。こういうイベントごとがあると最初の天体観測は途中ツアーの三人が増えて五人だったのが、夏休みの海では八人だからな、二学期終わりは九人ってだんだん増えていってるからな。今度は何人だ? 二桁はもうちょっとしたクラス単位だから引率にも無理が出てくるから絶対にやめろよ。
「まぁ増えて……七人でしょ」
「……オレ、計算苦手だったかな、ヤな予感しかしねぇんだけど」
「あら、じゃあちゃーんと誘っておくわね! 日菜も、それでいいでしょう?」
「うん、おっけー」
おっけーじゃねぇよおっけーじゃ。第一、この際四人は確定として、二人はどう出るかわからんが一人はまず間違いなく無理だろ。仮にも芸能人だろ。そう言うとヒナもそうなんだが、あいつはどうあってもヒナよりも忙しいからな、そんな突発で決まるような一泊二日の度について来れるほど暇じゃねぇだろ。
「──あら、一成さん早いのね」
「おう……お前もな」
「ふふ、会えると思ったら待ちきれなくて」
──そう思ってた時期がオレにもあったんだが、どうやらこの元子役で女優でアイドルの白鷺千聖はどうやら思った以上に暇なんだなということがよくわかった。バカじゃねぇのなんで来てるんだよ帰れよ仕事しろ。頭の中でぐるぐると渦巻く怨嗟の声を聴いたか聴かずか、丸レンズで金縁の細いフレームのサングラスを少しズラしながら魅惑と艶のある目でオレを見上げてきた。
「邪険に扱われるのは、嫌よ?」
「……別に、お前の女優としての将来を憂いてただけだよ」
「あら、そんなことまで考えてくれるのね、嬉しいわ♪」
「目立つだろ……寒いしな、先乗ってろよ」
「ええ、そうさせてもらうわ」
そうは言うものの、今回もまたオレの運転ではない。キャンピングカーとかバスとかじゃオレは運転できねぇからな。その辺は弦巻家の黒服さんの出番だった。オレはあくまで引率ってことだ。そもそも本来ならあくまでオレなんて必要ねぇんだろうけど。いっそ休みにさせてくれねぇかな。
「せんせ〜、ちょーぜつーびしょーじょの〜、モカちゃんが、来てあげたよ〜」
「モカ……その最初のいる?」
「いるでしょ〜、せんせーも、このネタ楽しみにしてるんだし〜」
「してねぇから」
次にやってきたのは青葉モカと美竹蘭の幼馴染コンビだ。モカはいきなりオレに向かって突進、ではなく抱きついてくるためそのまま受け止め、顔を埋めるモカをあやしつつ蘭の頬に触れた。てっきり恥ずかしがって払われると思ったのに、拒否されずに冷てぇ頬を撫でると段々と体温が上がってきた。照れるのは照れるんだな。
「な、なに……? アタシだって、ちょっとくらい……触ってほしい時とか、あるし」
「おおー、蘭がデレた〜」
「人前でデレの蘭は珍しいんだよな」
「ですな〜」
「う、うるさいっ、てかモカはいつまで一成に抱きついてるの?」
「あったか~い、蘭もおいで〜」
「それは嫌」
「モカ、後で構ってやるから入ってろ」
「は〜い」
「蘭もな」
「いらないし、わかってる」
ツンとしつつそのまま車に乗り込む蘭と、最後まで名残惜しそうに指を絡めてくるモカの対比にオレは笑っちまいそうになる。根っこはかなり似たもん同士っぽいんだけどな、どっちも素直じゃねぇし。次にやってきたのはギャル風のJK、オレが今回の天体観測で最もブレーキとして信頼している生徒、今井リサだった。
「おっはよーございます、カズセンセー」
「おはよ、リサ」
「アタシより早かったのは?」
「千聖と蘭モカだな」
「なるほどねぇ、千聖は絶対、楽しみにしてたと思うよ」
「だろうな、甘え方が半端じゃなかったしな」
「まぁセンセーは羽丘の先生だもんね〜」
世話焼きでよく気の回るギャルで、個性的過ぎてまとまりのねぇうちの生徒たちの架け橋的なポジションにもなってる。なんなら今回の参加メンバーの全員と直接の繋がりがあるんだからな。千聖や紗夜の二人と蘭とモカは本当にただバンド関係で知り合いだったって程度だからな。
「すると紗夜も」
「すごかったよ、食いつき」
「はは……紗夜らしい、ありがとなリサ」
「なにが?」
「お前みたいな生徒がいてくれると、助かること多いんだよ」
「……どういたしまして」
リサは一瞬だけ寂しそうな顔をした後にいつもの表情に戻ってキャンピングカーに乗り込んでいった。
それを見送りつつ、息を吐いたところでオレはいつの間にか真横に金色の太陽が降臨していることに気づいた。なにがってすげぇ嬉しそうにキラキラお目々でオレを見上げてるんだよな。
「……おはよ、こころ」
「ええ、おはよう先生!」
「いつからいたんだ?」
「千聖とおしゃべりしていた時から、かしら」
「ほぼ来てすぐだな、そりゃ」
こころはオレにとって、リサと一緒で身体の関係はねぇけど生徒っていう扱いな一方でリサとは違ってオレへの好意を明言している女でもある。そのせいか誰もいないこのタイミングを狙ってきたんだろうか、オレに抱きついてほうっと安堵というか、安心したような息を吐き出していた。
「
「いま絶賛あっためられてるな」
「ならこのまま抱きついていてもいいわよ!」
「はは、勘弁してくれ」
それは次にやってくるヤキモチ妬きのメンヘラクソ悪魔が拗ね倒して非常にめんどくせぇことになるからやめてくれ。隠された愛人枠を守ってくれよこころ。一応表向きはオレが囲ってるのは五人ってことになってるんだからな。
しばらく金ピカ太陽サマを構いに構っていると、満足したのかそれとも気配を感じたのかそれじゃあとあっさりキャンピングカーへと入っていく。
「カーズーくんっ! えへへ〜、おはよ!」
「おはようございます、一成さん」
「おう、おはようヒナ、紗夜」
本当にこころが戻ってからすぐ、ヒナと紗夜の氷川双子姉妹がやってくる。最後だぞと伝えると紗夜があなたの準備が長いからと唇を尖らせた。まぁこれでも時間よりも随分早いんだが。ところで今日は戸山とか、羽沢とか、前回いたメンツも呼ばなくてよかったのか? 訊ねるとヒナはうんと明るく笑った。
「今回はカズくんにも先生としてじゃなくて楽しんでもらおうと思って」
「だから日菜は私たちと今井さんと弦巻さんの七人に絞ったそうですよ」
「なるほどな」
要はこの七人なら多少生徒とイチャイチャしててもびっくりはしねぇってことだな。そりゃありがたい、ただその七人のうちたった一人を除いた全員がオレを困らせる元凶なんだがな。バカヒナ、バカモカはもちろん、千聖、そして蘭や紗夜ですらここのメンツにかかればバカになるし、挙げ句はこころが目を盗んで抱きついてきやがる。恐らくモカにしかバレてねぇんだよな、このことは。あいつはオレのストーカーだから別だ。
「まぁそんなことより、集まったなら出発しよ!」
「おう」
「席順は既に今井さんがランダムで決めてくれていましたよ」
「そりゃよかった」
そうして案内されたのは、リサとこころの間とかにしてくれりゃあ楽でいいんだが、よりによって千聖とヒナが隣なんだよなぁ。アイドルコンビに両腕をホールドされながらの移動はそれはそれは楽しく過ごすことができた。特に千聖は久々だからって完全に全てを無視して甘えてきやがる。捨て身になった
「まぁ、千聖ちゃんがカズくんラブになっちゃえるのはこのメンバーだけだもんね」
「だね〜、美咲とか花音を呼べないわけだ」
「あら、教えてあげてもいいと思うわよ!」
「流石に私だって無闇にこの素顔を晒すのにリスク管理はしているわよ」
「リスク考えるならオレとデートとかやめたらいいんじゃねぇかな」
「なぁに? 一成さんだって私の腰を抱いて誘ってくれるじゃない」
「それとこれは別だろうが」
わちゃわちゃとした車内を過ごし、そしてペンションでのことは割愛するか。昼間で自由時間ってことで、バカ五人がじゃんけんし始めて勝ったやつはオレの部屋で過ごすという争奪戦をしたからな。オレだって外の空気吸って散歩くれぇしたかったんだけど。リサとこころもじゃんけん参加してくれと言ったが二人には遠慮された。そして公平なじゃんけんを勝利したのはヒナだった。後はもう何が怒ったのかは察しがつくだろう。
「腰いてぇ……」
「バカじゃないの、こんなところに来てまで」
「じゃんけん参加したバカに言われたくねぇな」
「うるさい……アタシが勝ったら、別にそういうことしようとは思ってなかったし」
「嘘はよくねぇな、蘭」
「腰、蹴っていい?」
それはオレが再起不能になるからマジで勘弁してくれ。当の本人はご満悦で夕方の散歩に向かいやがった。夜メシはシチューでその後、各自家の中でとか、周辺で寒さ対策をバッチリしてから流星群を堪能するという予定で、オレは外で寝袋にくるまりながら眺める方に参加していた。蘭とモカは寒いのは嫌ということで二人部屋でのんびり見るらしい。千聖も冷えると明日に支障が出るからオレの部屋で待ってると言い残していた。マジかよ千聖と二人部屋かよ。
「なぁ蘭」
「なに?」
「いや……そろそろ一年終わるなと思ってな」
「そうだね……春が来たら、あんたに屋上で会って一年か」
「なんか、あっという間だな」
「そうかな、アタシにはすごく長い一年だった」
「……そっか」
オレと蘭の間に流れる時間の速さは違う。オレにはコイツらと過ごす時間は流れ星が流れるような一瞬に感じるものでも、蘭にとってはきっと、ずっとずっと長いもんなんだ。それだけ色んなことがあって、色んなことを感じて、笑って、泣いて、怒って、青春ってもんに心を動かした一年だったんだろう。最初に屋上で会った時よりめちゃくちゃ大人っぽくなった横顔にオレは、なんとなく寂寥を感じて名前を呼ぶ。
「蘭」
「なに……っん」
「悪い、キスしたくなった」
「ば、ばっかじゃないの……ホント、急に、するとか……なんなの」
「顔真っ赤だな、キスだけで」
「だ、誰のせいだと思ってんの?」
けど、確かに変わんねぇところもある。恥ずかしがりで、ツンツンしちまってるところとか、そのくせじゃあやめるかって言うと全然そんなことねぇところとかも。確かに変わんねぇところもある。
──蘭はきっとまた来年も青春を奏で続けるんだろうか。オレには来年なんて予想もつかねぇことだけどな。
「らーん〜、せんせ〜、お料理そろそろできるって〜」
「おう悪い、手伝うよ」
「ちゅーはほどほどにね〜」
「も、モカっ!」
「後で〜あたしにもちゅーして〜」
「後でな」
「はーい」
ヒナは順調に生徒会長になるために引き継ぎをしてる。あいつはムカつくが天才ちゃんだからな、きっと誰も見たことのねぇ生徒会になるんだろう。天才だけど、天災みてぇなやつだからな本当に。
紗夜も来年も風紀委員として生徒会に、なんでも白金が鰐部の後釜に指名されたらしいからそのサポートとして、そうやって誰かと関わろうと、優しい顔ができるようになっていた。
千聖はなんだかんだであんまり変化はねぇんだろうけど、マネージャー関連のゴタゴタが片付いたら、どうするかってのはオレも一緒に考えてやらねぇとな。アイドルとして、女優として、あいつは夢を追いかけ続けるだろうし。
モカは──モカはあんまりオレの予想ってのはアテにはなんねぇだろうな。いつだってあいつの深淵は誰も覗けねぇし、覗いたところで何かが見えるわけでもねぇからな。
「カズくんっ」
「一成さん」
「準備始まってるわよ、先生!」
「あ、センセー」
「あら一成さん、ふふ♪」
「せんせ〜」
「どうしたの、一成?」
リサもこころも混ざって七人と会話をしながら一緒に食うメシは、やっぱりうまいって思うんだよな。引率としての二学期終わりの天体観測とはまた違った、なんというか一つのコミュニティとして完成されてる感覚があるんだよな。
──だから、気の迷いみてぇに一瞬だけ思っちまうよな。このまま、このまま全員で過ごせる未来なんてものはねぇのかなってな。バカみたいな空想だし、博打に過ぎる。誰も選ばねぇ道、誰かを選ぶ道がちゃんと用意されてるのに、ノベルゲーで言うハーレムルートなんてものを一度しかねぇ人生で選ぶようなクズには成れそうにはねぇな。これは夢で、醒めなきゃならねぇ夢だってオレは知ってる。この関係が永遠じゃないとしても、オレは最後までクズ教師で、黄昏ティーチャーで居続けるんだからな。
かつて同原作で栄華を誇った、私の二つの代表作の片割れがこの「黄昏ティーチャー」です。内容がアンモラルかつ、日菜がタバコ吸うわ爛れた関係になるわと悪い意味でそれまであった「恋愛」というジャンルを叩き壊した作品です。投稿から二年後にリメイクした際は大幅に加筆した上に描き下ろしで話数が増えに増えて、個人的には満足できるものになりました。
なにが思い出深いってバンドリ原作のはずなのに「清瀬一成」への叱咤とか激励とか、過去が知りたい、最終話の後日談が見たいなど、やろうと思えばバンドリキャラ関係なしの話を求められるところですね。オリ主としての枠を越えて一人の人間として、クズ教師として歩んでしまったクズを私は一生忘れることはないでしょう。
残念ながら旧版は私の手元に残ってはいませんが、旧版読んでいてリメイク版を知らない方はぜひ読んでください。大元の話は変わってませんので。
次回は「氷川紗夜に優しい音色を届けるまで」です。お楽しみに!