【短編集】五年の軌跡   作:黒マメファナ

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第一話投稿日:2020.5.17
話数:16話
オリ主:桜田(さくらだ)翔太(しょうた)
メインキャラ:白金燐子
本編リンク:https://syosetu.org/novel/230498/


#6:捨てネコじゃなくて女の子拾っちゃったんだけど

 夏が過ぎて、秋が来た。とはいえまだまだ残暑の厳しい夕方の中、キャンパスを出て、まっすぐ()()の元へと向かっていく。セーラー服の女子高生とすれ違い、それも慣れたものだ、なんて考えながら女子校の門の前までたどり着くと、既に彼女は夏の終わりを感じさせる、やや湿度を含んだ風に髪を靡かせて──いや、黒のハンディファンを手に持って涼んでいた。

 

「おまたせ」

「……はい、あ……わたしも、今……来たところ、です」

「それ絶対嘘だよね」

「わたしは……待てる、優秀な、ペット、ですから……!」

「外でそれはやめようって言ったよね?」

 

 白金燐子、花咲川女子学園の生徒会長にして、巷で有名なガールズバンド『Roselia』のキーボード担当、そしてひょんなことから俺が拾ってしまった、かわいくてわがままで、頑固で強引、待てなんてできるはずがない欲張りなネコ系の恋人でもある。

 そんな燐子は俺に背を向けて長くて美しい黒髪を手で持ち上げ、項を惜しげもなく晒す。その最近できた新しいルーティンに俺はすっかり慣れてしまったように対応する。

 

「はいはい……よし、これでいい?」

「ん……ありがとうございます、翔太(しょうた)さん」

「自分で持ってていいのに」

「ネックレス、持ち込み……だめなんです……」

 

 ちょっと前に購入したネックレスを着けてあげることに幸せを見出しているようで、燐子はいつも、こうして俺が迎えに行くと着けさせるのだった。持ち込みだめだからって毎回毎回俺が着けることはないのにと思うわけだが、燐子は首を横に振ってこれに意味があるのだと熱弁する。

 

「……飼いネコに、首輪を着けるのは……ご主人さまの、お役目、です……」

「恋人なんだけど」

「でも……ご主人さま、です」

「なんでだ」

 

 なんとなく、本当にふわっとした感覚だけど、あのチョーカーが切れた日に、もうペットとご主人さまという関係は終わったと俺が勝手に思っていたんだけど、結局燐子はすぐペットを自称するし、ご主人さまと外だろうと甘える時はわざと呼んでくるし、家に帰ると構ってあげないと拗ねて俺の膝で動かなくなる。

 

「じゃあ帰ろうか」

「はい……ふふ」

 

 でも、手を繋ぐと嬉しそうに指を絡めてくる。好きと伝えると少しだけ恥ずかしそうに好きと返してくれる。こういう時はちゃんと恋人なんだなって実感できる。普段は恋人になる前とそんなに変わんないせいか、なんとなくスイッチが切り替わらない感覚がするけどね。でも、燐子はいつだって甘えん坊だから、抱きしめたり、撫でたりしてると結局また愛おしいって気持ちが溢れてしまうんだけど。

 

「それにしても、今日も暑いね」

「……ですね、九月もまだまだ……夏、です」

「本当に、先にシャワーでも浴びる?」

「わたし、汗、くさいですか……?」

「いや、そうじゃなくてそこそこ長い間待っててくれたんだし」

「そう……ですね、汗、は……けっこう」

 

 どうしてそこで胸を、と思ったんだけど、胸の下とか汗でムレるのか。特に燐子は、こう言ってはすごく変態っぽいけど、ボリュームがあるから大変なのかもしれない。俺はなら尚更シャワーを浴びた方がいいだろうと考えた。だが燐子はそれに対して首を横に振って否定した。

 

「翔太さんと、一緒なら……」

「え、それは……」

「……まだ、恥ずかしいん、ですか……?」

「まだもなにも、こればっかりは慣れる気がしないんだけど」

「そんな……ところも、翔太さん……らしい、です」

 

 くすくすと笑われて、ちょっとむっとしてしまう。元ストーカーで、ペットで、そして現恋人の燐子は繋いでいた手を離して、俺の腕に自分の身体を押し付けるようにして抱きついてくる。健全な男子には刺激的すぎるほどにたわわな果実が俺の腕を包み込んで、その大胆ながら恥ずかしい行動に俺は赤面してしまっていた。

 

「り、燐子……!」

「はい……あなたの燐子ですよ……ご主人さま♪」

「そ、そういう意味じゃなくて」

「恥ずかしいなら、水着でも……着ますか?」

「それはそれで、恥ずかしいというか、なんというか」

 

 お風呂で水着って、なんだか()()()()()()()みたいに感じてしまうんだよな。下手すると裸体よりも直視してしまえる分、燐子のスタイルを目に焼き付けることになりそうだし。だが、燐子は俺の前では本来の恥ずかしがり屋で、人見知りな性格を忘れてしまったかのように大胆になる。まるで自分の身体に恥ずかしいところが一切ないとでも言うように。

 

「翔太さん……わたしの身体は、お嫌いですか……?」

「そ、そうは言ってないけど……」

「わたしと、一緒にいるのは……嫌ですか?」

「そんなことない、燐子といるのはすごく嬉しい」

 

 前は、なんだか燐子が俺のことを好きで、ずっと好きだとアピールしてくれているような感じだったけど、ちゃんと恋人になった今ではその関係は明確に変化していた。

 俺は、燐子に傍にいてほしい。燐子が愛してくれるこの日常が愛おしいし、燐子が愛おしい。そして自分の理性を無視してしまえば、最低で下世話な男にすらなれてしまう。

 

「……わたしは、ご主人さまが……とってもえっちでも、平気です……むしろ、嬉しい」

「すぐそうやって煽る」

「ふふ、翔太さんが……求めてくださるのが、わたしにとって、何にも代えがたい、幸せです……」

「じゃあ、めちゃくちゃ最低なこと言うよ」

「……はい」

「燐子の身体触るの、すごく好き」

「もっと……包み隠さず、言って……ください」

 

 そんな言葉のタイミングで、俺と燐子は家の前に着いた。玄関の鍵を開けると燐子が先に入って、期待したような潤んだ瞳で、赤く蒸気した頬で俺を見上げている。後ろ手でドアを締めて、鍵を掛けてしまえば、もう──俺の変態性を隠すものは何もなくなってしまう。ゆっくりと燐子を抱きしめていく。そしてその腰に、背中に、頭に、脚に、触れていく。撫でていく。

 

「燐子が俺にだけはどんな視線をぶつけられても嫌がらないのが、興奮する」

「ご主人さまが……見たいと、おっしゃるなら……わたしは見られることに、悦びます」

「男の視線を集める胸を触っても文句言わないどころか、スイッチ入ったなって思う度に、優越感が半端ない」

「翔太さんになら、突然後ろから揉みしだかれても、わたしは受け入れます……」

「従順なところが、クセになる」

「あなたの、燐子ですから……」

「でも、やっぱりそういう全部の性欲の大本は、燐子がエロいからじゃなくて、俺の燐子だからだ」

「……はい、あなたが愛する、ただひとりの恋人(ペット)です……」

 

 言いたいこと、言いづらいこと、他の人に言ったらヤバいこと、全部言葉を放つと燐子は甘えるように顔を埋めてくる。その甘い匂いに、俺も酔ってしまったかのように燐子を抱きしめていた。冷房を付けることも忘れて、汗が出てくるのも関係なしに。

 離れた時には、俺も燐子も汗ですごいことになっていた。

 

「やっぱりシャワー浴びたいね」

「……それでは、一緒に」

「譲らないね」

「風邪を引いたら……困ります」

「そうだな」

 

 どうせシャワー浴びてる間にお風呂は沸かしてしまえるからね。時間はたっぷりある。燐子の言う通り水着でもいいと囁くとすごく興奮したような顔で頷かれた。いやそういうプレイがしたいって意味じゃなかったんだけど、まぁいいか。

 その後はお風呂上がりにアイスを食べつつ、いつものように燐子を構っていた。手を出すと頬を押し付けてきて、顎を撫でると気持ち良さそうに目を閉じる。こういうところは、なんだかいつまでもこのままなんじゃないかと思ってしまうね。

 

「……翔太さんは」

「うん」

「コスプレに興味は、ありますか……?」

「急になんの話?」

「恋人の……営み、の話です……」

「お風呂のこともう忘れたのかな?」

「……にゃあ」

「ごまかすな」

 

 ついさっきまで営んでて、今はアイスでクールダウンしつつの賢者タイムなんだけど。唐突にコスプレとか特殊なこと言い出したけど実質さっきまで水着だったんだから半分くらいコスプレみたいなもんでしょ。そんな文句を言うと燐子は逆にじゃあ興味があるんだと判断したようで、話を進めてくる。

 

「Roseliaの、衣装作成の、ついで……というか、趣味で、何か一つ……と思っていまして」

「普通に服でいいんじゃないの?」

「……そっちの、方が……お好みですか?」

「そうじゃない、そうじゃないんだよ燐子」

 

 普通の服でするのがいいとかじゃなくて、そもそもコスプレ、しかもベッドでという観点で話を進めるのはやめよう。それだったら健全にデートの行き先とか相談したいよ恋人としては。

 

「それは……それとして」

「流したな」

「最近、ちょっとしてなかったので……マンネリなのか、と」

「違うって」

 

 ちょとって本当にちょっとだし。燐子がサラサラとデザインしているの、明らかに露出度がコスプレの衣装というかもう下着なんだけど、よくもまぁ真顔で自分の裸のデザインにそのエロイラストめいたデザインラフ描けるもんだと変なところで感心してしまう。そしてなにやら首輪やら猫耳っぽいものを足しだした。

 

「……捨てネコなのに、捨てネコプレイしていないことに、気づきました……」

「なに捨てネコプレイって」

「拾っていただいて、お持ち帰り……」

「やっぱ訊いた俺がバカだったかもしれない」

 

 ダメだ、この子発情期入っちゃってる。こうなると燐子は止まらないのが常だ。その管理までこれからもさせられるのかと思うと、たしかにマンネリは避けた方がいいかもしれない。俺としては燐子の肢体に飽きるということがあるのか甚だ疑問でしかないんだけど。というかもっと健全な話もしたいな。

 

「そういえば、今度のRoseliaのライブ」

「ああ、そういえば遠方でやるんだっけ」

「はい……合宿というか、ホテルに泊まって……観光もついでに」

「いいんじゃない? 行っておいで」

「……え、ご主人さまも行くんですよ……?」

「えっ」

 

 今初めて聞いたんだけどその話。俺が驚いていると、燐子はタブレットを置いて再び俺の膝に頭を乗せて甘え始めた。ついつい撫でて甘やかしてしまっていると、燐子がそこから俺をじっと見上げて、ふふと微笑んだ。

 

「デート、できますね……ふふ」

「いいの、怒られない?」

「むしろ……今井さんと、氷川さんが……いなくて、平気かと気にして、いただいたので……よくないと」

「そこで大丈夫ですって言わなかったんだね?」

「……嘘は、いけないことです……」

 

 そこで正直者になるのはどうなのよ。だが、俺としても離れるのが嫌だったからありがたいと言えばそうなんだけど。

 段ボールの中で捨てネコ然として入っていた女の子、白金燐子。彼女には恐らく俺にしか見せない、見せるつもりのない大胆さを持って俺をあっという間に主人にして恋人にしてしまった。

 だけどまぁ、最近はそんなバカップルでもいいかと思い始めるほどには、燐子のアプローチにお手上げな自分が、不思議と嫌いではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 天才的な着想をパクって作られた隠れた問題作、それがこちら。元の作品はとある方のバンドリ二次創作だったのですが、途中で消してしまわれて、本人に許可と確認を取って正式にパクらせていただきました。白金燐子を変態として描くのはやめましょう。
 まぁその件についてご報告とかを怠ったため、やむなく途中で話を切り上げることになったのですが、まぁこれはこれで結果オーライということで。本来はこっちとしても新たなペット系ヒロイン! とかしようとか考えて至りもしました。丸山の予定ではなかったけど。たぶんパレオかな、あの子ペット系というか公式で忠犬扱いだし。そんなもしもの話でした。

 次回は「夢想勇者☆パステルドリーム」で、お会いしましょう!


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