【短編集】五年の軌跡   作:黒マメファナ

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第一話投稿日:2020.2.23
話数:40話(第一部)
オリ主:なし
メインキャラクター:丸山彩、若宮イヴ、氷川日菜、大和麻弥、白鷺千聖
本編リンク:https://syosetu.org/novel/232853/


#7:夢想勇者☆パステルドリーム

 みなさんこんにちは! まん丸お山に彩りを! 『Pastel*Palette』のふわふわピンク担当の、丸山彩です! 只今私はアイドルとして絶賛売出し中のアイドルスターを目指す高校二年生! って言ってももうすぐ三年生に進級するんだけどね。

 ──そんな私には一つ、ファンの人には絶対に言えない秘密があった。ほとんどバレる心配のない秘密だけど。誰にも言えない、大きな秘密があった。

 

「ふんふんふ〜ん♪」

「アヤさん! 今から帰りですか?」

「あ、イヴちゃん! 一回事務所に寄ろうと思ってるんだけど」

「でしたら、お供いたします!」

 

 花咲川を後にして、同じパスパレのメンバーであるイヴちゃんと並んで歩く。雑談をしつつ、目的の事務所に向かおうとしている途中で、私たちの目の前に虚ろな目をしたサラリーマン風の、五十代くらいの恰幅のいいおじさんが立っていた。その異様な気配に、私とイヴちゃんは顔を見合わせた。

 

「う、うぅ……」

「ポップ」

「はい、悪魔です」

 

 カバンを開けるとそこからかわいらしい薄桃色のネコのぬいぐるみが飛び出して喋りだす。これについてはもう驚くこともない。だけど、私はそのぬいぐるみ状の生物──サンフラワー・ドリームポップと名乗っていた精霊の言葉に驚いていた。

 私たちは悪魔たちの首魁と戦い、色んなことがあって色んな悲しいお別れはあったものの、和解している。今じゃ悪魔のトップは私の師範として尊敬すべき人になっていた。

 

「ですね、どうやら師匠が言っていたのは紛れもない事実のようですね」

「だね……」

 

 でも、彼らが元いた世界──精霊界を守護していた神様みたいな存在がいなくなってしまったことで、こっちの世界の人間の夢を奪って成長する悪魔、区別するために私や師範は魔獣と呼んでる、この魔獣が現れるようになってしまった。その魔獣の狙いはより強い夢の力、そう、私やイヴちゃんの持つ力だった。

 

「う、うばう……くらう……ユメ……っ!」

「奪わせないよ、この世界の夢の力は、私たちが守るんだから!」

「アヤさん、行きましょう!」

「うん!」

 

 イヴちゃんの言葉と共に、私はパステルピンクの指輪を取り出して左の人指し指に嵌めると右手首にパステルカラーに輝くアステリスクを象ったバングルが出現する。アステリスク型の中央のボタンを押すことで、五色に明滅し始めたその花弁に指輪を重ねるとリングの宝石と同じパステルピンクへと変わる。イヴちゃんも同じ動作で、バングルがパステルパープルに輝き、同時に私たちの姿がアイドル衣装のような姿へと、私はおろした髪がツインテールに、イヴちゃんにも三編みにリボンがついて、キラキラの衣装姿、夢想の勇者の姿へと変身をした。

 

「煌めく夢への一等星、ドリームスター!」

「夢に舞うは雪の花びら、ドリームスノー!」

 

 私はドリームスターへ、イヴちゃんはドリームスノーへと変身する。それぞれ武器は私が手甲、そしてイヴちゃんは白く美しい日本刀、二人ともそれぞれの戦うという夢想(イマジネーション)を形にした魔法少女としての武器だった。

 

 

「ぐ、ぐ、グ、グググガァぁァああああああ!」

「す、すごい魔力、叫んでるだけなのに……!」

「絶望が、深いんでしょうか……やっぱり」

「やっぱりって何!?」

 

 ポップの言葉にツッコミを入れた瞬間、サラリーマンのおじさんの口から黒い、どす黒い液体のようなものが溢れ出す。それはおじさんを包んで姿をおぞましい魔獣へと変えていく。

 叫び声を上げるその姿は、みるみるうちに二メートルを越える巨漢の、黒い鎧をまとった戦士に変わった。人型に近ければ近いほど、魔獣は強大なことが多いことを知っていた私はその姿に身構える。最後に顔が骸骨から肉付けられていく。大剣を地面に突き刺し、靡く鬣は王の風格すら醸し出す、獅子頭の獣人が目の前にいた。

 

「──ウヌラ、勇者」

「しゃ、しゃべりましたよ、この魔獣……!」

「片言だけど、これは気を引き締めないと!」

「ワガ、絶望を……受ケヨ!」

 

 優に私の背丈を越えた大剣をすごいパワーで、しかも片手で振り下ろしてくる。幸い避けることに成功はしたけど地面に小さなクレーターができるほどの威力に身が引き締まる。パッと見た感じだとパワーはあるけど、スピードはない。それだったら私の脚で撹乱すれば、相手を釘付けにできるはず! 

 

「スノー! 頼んだよ!」

「お任せください、スター!」

 

 こっちには瞬間の攻撃力ならここにいない三人を合わせた五人の中でも最強と言ってもいいイヴちゃん(スノー)がいる。前後の隙を作り出せば必ず勝機はある。私はありったけの力を込めて地面を蹴り、急速に魔獣との距離を詰めていく。動体視力はいいようで、私を裏拳で払おうとするけど、それを避けて鎧をつけてない頭、顎の部分を狙って飛び回し蹴りを放った。

 

「はぁああ!」

「う、グァ……勇、者ァ!」

「わ、わわっと、思いっきり()()()はずなのに、丈夫だね──けど!」

「ヌ、グゥ……素早イ」

 

 相手の武装が大剣でよかった、小回りの利かない武器じゃ、相手に対して小柄な私を捉えることができない。どんなにパワーがあったって当たらなきゃ全部一緒だって、師範にも言われてるからね。そのまま、有効打にならないまでも、拳打や蹴撃で相手の意識を私に向けさせる。スノーの魔力の高まりを背中で感じながら、私はその時を信じて待っていた。

 

「オノレ、チョコマカ、ト!」

「スター! 」

「おっけー!」

「ナニッ!?」

「隙ありです、雪華流──崩天!」

 

 そしてスノーの準備が整ったところで私はめいっぱいの魔力、そして自分の能力である「インパクトの拡大」を使って地面への踵落としの威力の範囲を全体へと広げた。崩れる地面に脚を取られた瞬間にスノーが抜き身の刀を振り抜きながら、突進していく。スノーの能力は「万象切断」、文字通りなんでも斬るし、集中すれば斬りたいものを選べるというパワフルなものだ。事実上防御力なんて関係ない、これで終わりだと一刀両断された獅子頭に目を向けていた私たちは次の瞬間、驚愕することになる。

 ──左右に別れた獅子頭の魔獣はまるで「巻き戻し」を見せられているかのように元に戻っていく。

 

「な……再生能力持ち!?」

「そんな!」

「あ、危ないですスノー、スター!」

「腐、腐──腐ッテ、ユケ」

 

 今度は獅子頭の鬣から紅い煙のようなものが吹き出し、周囲がグズグズに溶け出していく。チャンスから一転してピンチと思った瞬間、その煙からほとばしるような雷が奔り、獣人が苦悶の声を上げた。そして突風が吹き荒れて煙そのものが吹き飛ばされていったと思ったら頭上からパイナップルに似た形のものが地面に落ち、そして轟音と共に爆発していった。この攻撃は、と私たちは後ろを振り返ると、そこには色違いでお揃いの衣装に身を包んだ三人が立っていた。

 

「武器構築・擲弾(グレネード)ッス!」

「おーい、二人とも大丈夫だった?」

「全く、魔獣に苦戦しているなんて、まだまだといったところかしら?」

「みなさん!」

「みんな、来てくれたんだ!」

「どうやら敵が強そうだったので、加勢させていただきました」

 

 麻弥ちゃん、日菜ちゃん、千聖ちゃんの三人、これで五人の勇者が全員揃った。だが、そんな希望に満ちた私たちの雰囲気をかき消すように、魔力の風を伴う咆哮が響き渡る。さっきの攻撃も恐らく全部再生しちゃったんだろう。爆煙を払うように大剣を横に払い、怒りの表情で私たちを見下ろした。

 

「増エタか……勇者」

「これは名乗らなきゃだね──夢を照らすお日様スマイル! ドリ〜ッム、サニー!」

「胸に抱くは夢の炎、ドリームファイア、ッス!」

「夢を阻むものに雷の鉄槌を──ドリームサンダーよ、覚える必要なんてないけれど」

「サンダー、それ悪役のセリフだよ」

「まだ悪役抜けてないのサンダー」

「あなたたち、緊張感を持ってくれないかしら?」

 

 日菜ちゃん、サニーがパステルブルーのロッドをくるりと回し麻弥ちゃん、ファイアがグレネードランチャーを構えつつ千聖ちゃん、サンダーが長柄の槌の先端で地面をカツンと鳴らしながら、それぞれ名乗りを上げる。

 五人揃ったことで、私たちはさっきよりもキラキラと輝く勇気を感じながら、獅子頭の魔獣に向き合った。

 

「よし、これで百人力だね!」

「ただスター? 再生能力を持ってる敵相手に闇雲に戦っても無駄よ」

「う……だ、だよね」

「どのくらい再生するのかな」

「それは──やってみましょうか」

 

 サンダーと軽い作戦を立てて、私は拳を合わせる。キィンと腕甲が鳴って集中力が上がっていく。魔獣の能力も結局はイマジネーションに左右される。だったら無限に再生し続けることなんてできるわけがないっていうのが千聖ちゃんと私の共通認識だった。そしてポイントが紅い煙、これがどういう能力なのかを解き明かさなきゃ。

 

「はいはーい、それはあたしとスノーがやるよ」

「お任せください!」

「ジブンは牽制と解析に務めます!」

「頼んだわファイア、スノー、サニー」

 

 三人が散って、スノーは獅子頭の腕を一瞬で斬り飛ばした。少なくとも、再生までにラグがあることはわかっているから、そこにサニーが楽しそうな顔でロッドを回転させて、再生する前の魔獣の拳にぶつけていく。直前、ロッドの先端が赤黒く変色しており、触れた魔獣の拳を文字通り粉砕してしまった。

 

「グゥ──何ダ!?」

「ふふん、破龍(ブレイクスルー)赤壊(アガートラム)!」

「それって、ティアマトの」

「うん、なんとか再現したよ」

 

 サニーの能力は「万物転換」で自分の魔力を好きなものに変換、模倣ができるという能力で、今のは以前戦った悪魔が持っていた触れたものを粉々にする「破壊の腕(デス・アガートラム)」という技を再現したものになっていた。ティアマトにそれで腕を砕かれた経験のある千聖ちゃんはちょっとだけ苦い顔をしていたけど。

 

「む、無駄ダ!」

「サニー、再生します!」

「ファイア!」

「はい──武器構築・狙撃(スナイプ)!」

「グ、ガ──!?」

 

 掛け声と共に再生した左肩にファイアの手にあったグレネードランチャーが分解されてできたスナイパーライフルの弾が命中する。ファイアの能力は「分解と構築」で武器や防具を魔力を注ぐことでイメージした形に作り変えることができるというものだった。続けて何発も放ち、再生を阻害しつつ、サンダーに情報を伝えていた。

 

「最初は時間的な干渉かと思ったんですが、どうやらあの瘴気と表裏一体の能力みたいッス」

「どういうこと?」

「恐らくなんですけど、ジブンの能力に近くて、再生も破壊も紙一重で、全て分解に能力を振り切れば恐らくあの煙の能力になるかと」

「良薬も度が過ぎれば毒、ということね──なら、簡単だわ」

「次カラ、次ヘト……!」

 

 サンダーはそう言うなり長柄のハンマーを構えて突進していく。両手で大剣を構え振り下ろした獅子頭にサンダーは戦闘中とは思えない微笑みを浮かべた。

 サンダーの能力は「回路と通電」というもので、自分の魔力を糸を伸ばす感覚で相手や別のものと繋げたりすることで回路にして、そこに電撃を流すことができる。そして、これは私と千聖ちゃんにしかできないことだけど、私たち二人には奥の手があった。

 

「はぁ!」

「ナニ、何処に、ソンナ力が!」

「触れたわね──天より奔れ、雷霆!」

「ガァアア──き、サマラァ!」

 

 サンダーの額にはシトリンの宝石のような角が生える。これが奥の手である悪魔化、私と千聖ちゃんは悪魔化することで別の能力を獲得することができた。サンダーは自分や魔力に触れたものに「避雷針(マーキング)」を付ける能力で、私は単純に「魔力の破壊」が付与される。大剣に雷を落とされた影響で痺れて、動けなくなった瞬間に私は駆け出す。紅い角を生やし、そして拳を構えて相手の後ろに放たれるオーラを砕くイメージを持ちながら正拳突きを放った。

 

「──星拳(スターブレイク)!」

「グア──コレが、勇者ッ!」

「そう、これが私たち夢想の勇者の力だ!」

 

 そのまま獅子頭の魔獣は遥か後方へと吹き飛ばされ、そしてまるで黒い液体に戻っていくように溶けて、中から元のおじさんが姿を現した。これで一件落着、魔力で出た破壊やものは勝手に修復されていく。地面とかまたボコボコにしちゃって毎度罪悪感はあるけど、まぁ元に戻るしいいよねと開き直る努力もしているところだった。

 

「相変わらず凄い威力だね、スターブレイク!」

「今回はとってもいい連携ができましたね」

「そうね、毎度こうだといいのだけれど」

「ワタシも、ブシドーに一歩近づきました!」

「じゃあさ、みんなでご飯食べようよ! なんかお腹減ってきちゃったし」

「彩ちゃんにさんせー」

 

 笑顔が溢れる。色々あって、傷ついたり挫けそうになりながら、今では信頼し合える仲間になったこのパスパレのみんなが私は大好きだって思えた。

 これから、どんな敵が来たって、私たちなら大丈夫、そうやってイメージできてる限り、私たちは絶対に自分たちの夢を撃ち抜いてみせるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 元は「声優ネタ×魔法少女」って詰め込んだら面白いんじゃね、みたいなノリで作られたこの話、今ではコアファンが集まる謎のバトルものになってしまいました。この話や公開されているものは悪魔との戦いである「第一部」ですが実は第二部が続いているので正確に言うと完結はしてないです。
 悪魔サイドや精霊サイドはほぼオリキャラです。精霊サイドは味方はリサだったり燐子だったりひまりだったりしてるのでそうとは言い切れないけど。

 次回は「なんとしてでも、推しは推しとして推したい! けどパンツは見たい!」ですので、よろしくお願いします。
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