助けた女性の案内で別の建物に隠れたところで、俺はかなり焦っていた。
「テイラー、お前は一緒にいちゃダメだ」
最初に出た言葉はこんな情け無いことだった。
「お前は何も悪くない。一緒にいたら巻き込まれるぞ。天竜人をぶっ殺しちまった今、何が起きるかわからん。出来るだけ早くここから離れるんだ!」
ドカッ
テイラーに殴られて倒れる俺。
「お前は頭がいいのにバカだな。今から逃げてもこんなのもう助からないだろ。それに俺はお前を見捨てる気はないぜ。これまでずっと一緒にやってきただろ。二人ならなんとかなるって。とりあえずどうするか考えろ。」
そう言われて恥ずかしいやら嬉しいやらいろんな感情が渦巻く。
ごめんと謝ろうかと考え
「ありがとう」
それしか言えなかった。
テイラーはニッコリ笑って
「運が悪すぎて笑うわ」
そう言った。
「あのー、いい感じのところ申し訳ない。私のこと忘れてない?」
可愛らしい顔でコテっと首を捻りこちらを見つめてくる。
「私を助けるためにこんなことになって、なんかごめんね。」
意外にもフランクに話す彼女は天竜人とは思えないほどだった。
「あなたのさっきの動き、全然見えなかったわ!ビュンって!あなた強いのね!助けてくれて本当にありがとう。マジで結構やばかったんだよね。本当死ねかと思ったわ。私の名前はマーガレッタ!強い海兵さんとそのお友達さん?本当にありがとう。お陰でいろんな問題がぜーんぶ解決しちゃうかも。あなた達最高よ!あなた達大変なことになったし、この島から逃げるわよね?私も連れて行って!足手まといにはならないから。運動だって得意だし足も速いのよ!それに…」
マシンガンのように話し始めた彼女は止まらなかった。
俺は彼女の話を聞いてるうちに頭が痛くなってきた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。こちらこそここに匿ってくれてありがとう。俺はマックス。こいつはテイラーで相棒で親友さ。もう少し詳しくゆっくり話してくれ」
まだ時間はあると考え、マーガレッタに詳しい話を聞かないと後悔すると思い、続きを促した。
「ごめんなさい。興奮してしまって。マックスにテイラーね。改めて本当にありがとう。そうねー、私が天竜人なのは気付いているわよね?」
「ああ。」
「さっきあなた達が殺したのは私の婚約者なの。私は認めてないし無理矢理決められたんだけど。私は他に好きな人がいて、彼は多分もう殺されてしまったと思う…」
「どういうこと?天竜人が天竜人を殺したのか?」
「違うわ。彼は奴隷だったの。
私は天竜人だけど奴隷制度には反対だったわ。
彼らと私たち、あなた達もね。そこに違いなんて無いわ。
ただ生まれた場所、環境が違うだけ。それは偶然に過ぎないわ。
そう思って奴隷解放をしようとしたの。
でも父に見つかって無理矢理、私用の奴隷を買わされたわ。
それが彼だったの。彼は元海賊でいろんな話をしてくれたわ。
最初は怖かったけど、彼と話すうちに彼がどんどん好きになって。
そんなある日に突然婚約者ができて、彼を痛めて付けようとしたのを見てつい殴ってしまったの。それから彼を守るために私の出来ること全てをしたわ。
でも私には力がなかった。
婚約者はそれを見て笑っていたわ。
そして今日婚前旅行と言われて無理矢理ここに連れてこられたの。
でも奴隷の扱いに嫌気がさして無視していたら婚約者が激昂してああなってしまって。」
「そこに俺達が来たって訳か。」
「そうね。正直、彼がいないならもう死んでもいいやと思っていたの。
でも死ぬってなったときに彼が話してくれた冒険の話を思い出したの。
私も冒険がしたい!彼の言っていた場所や彼の知らない場所に行ってみたい。そう思ったの。
だからお願い!
私を一緒に連れて行って!」
そうして彼女は深々と頭を下げた。
「そっか、いろいろ大変だったんだな。」
隣でテイラーがそう言いながら目に涙を溜めていた。少し溢れていた。
こいつはこういう奴だ。たぶんマーガレッタも見捨てられないだろう。
「俺達だけでも、逃げ切れるか分からない。
本当に着いて来るのか?
おそらく一筋縄ではいかないぞ。」
改めてそう聞き返す。
「もちろん分かってる。それにこう見えて料理は得意よ。」
得意げに話す。