「おっぱい童貞を捧げるのは……本物のおっぱいと決めているんだ!!」
俺の魂の叫びを聞いたヤツ──ココと名乗る魔物──は呆れ顔で言う。
「君さー、だからドーテイくんって呼ばれるんだよ」
俺がそう呼ばれることがあるのを何故知っているのか。
この街の童貞は俺しか居ないとかいう根も葉もない噂を聞いたことはあるが、まさか真実だとでも言うのだろうか?
ともかく。
「そう呼ばれたことがある事と、おっぱいに拘る事は関係ないだろ! 本物を知る前に偽物を知って、本物を触った時の感動が失われたらどうするんだ!」
「夢見すぎじゃない?」
「夢を見て何が悪い!」
おっぱいを揉むことは夢だ。
女性と心を通わせ、お互いに信頼を積み重ね、そうしてついに揉むことが許されたおっぱいを揉みたい。
俺の言う「おっぱいが揉みたい」とはそういう意味なのだ。
おっぱいの形をしていればいいわけがないし、ただ揉むことが出来ればいいというわけでもない。
「じゃあ揉まなくていいから、オドちょうだい?」
そもそも何故この魔物が俺の泊まる部屋にいるのかと言えば、結局はそれが理由だった。
宿では飯が出ないので、酒場で食事をしている時に声を掛けられたのだ。腕利きの冒険者と見込んで相談したいことがあると。
魔物であることはなんとなくわかっていた。今までちゃんとした女性からこうして声を掛けられた経験がないからだ。
なのに魔物からはそこそこ声を掛けられるので、今回もそうだろうと思った。
まぁ、わざわざ冒険者などに声を掛けなければならないような女性は珍しく、その必要があるとしても、俺のように目立たない奴は選ばれないというだけの話だ。
今まで声を掛けてきた魔物の要件は、直球の
あまり人に聞かれたくない、という言葉を信じて部屋に入れてしまった。
結果は言わずもがな。
「嫌だ! はじめては想いの通った相手がいい!」
魔物にオドの供給をするというのは、そういう行為をするということになる。
おっぱいを揉んだことがないのにヤった事はあるなんて、なんか嫌だし、ヤったら絶対勢いで揉んでしまうだろう。
「大丈夫だよ。私は魔物で、女の子じゃないんでしょ? なら、はじめてにはならないよ?」
そうだよね、とココがいやらしく笑う。
確かに。
魔物のそれはそれっぽい形をしていて、それっぽい動きをして、それっぽく濡れていたりもするが、っぽいだけでそれではない。
っぽいだけのそれに突っ込んだとしても、ホールやドールに突っ込むのと同じなのでは?
いや、納得しちゃダメだ。
「それに、練習になるよ? はじめての時に恥ずかしい思いしなくて済むよ?」
なるほど。
いやなるほどじゃない。
はじめてっていうのはその初々しさも含めてのものっていうか……。
このままでは言いくるめられてしまいそうなので、全力で抵抗することにする。
「何を言われても揉まないし、オドをやるつもりはない。俺は夢を捨てたくない、だから勘弁してくれ」
誠心誠意が伝わるよう、ココの目を見てしっかりと話す。魔物に伝わるかどうかは分からないが。
これでダメなら、どうにかして部屋から脱出するしかないが……。
「ふーん、わかった」
ココはそう言って服を整えはじめる。
……勝った……。俺の夢と貞操は守られた……。
深く息を吐いて脱力していると、ココが話しはじめた。
「私、今まで断られた事なかったんだよね。オドを貰う替わりに、気持ちよくしてあげる。それを嫌がる人なんて見たことない。逆に、ぜひぜひーって言ってくる人はいっぱい居たけどね。だから、君に興味出ちゃった」
「興味?」
嫌な予感がする。
オドをいかにして得るか、それにしか興味がないような魔物が、個人に興味だって?
「そ。目の前に差し出された快楽に抗う人なんて初めてだから気になっちゃった。君のおっぱいへの想いってやつは、それに抗えるほどのモノなのか? 君の夢は叶うのか?」
一呼吸おいて、にいっと笑う。
「
「……は?」
一緒に居て、とはどういう……。
服を整えたココは、見せつけるように両手を広げて笑う。
「近くで見るために、私、君についていくから! これからよろしくね? ドーテイくん」
脳が理解を拒んでいる。
つまりどういうことだ?
ココが、魔物が、ドスケベモンスターが、ついてくる。
拒否権は、無い。
人類は魔物に単純な身体能力で負けているし、その上ちゃんとした自我を持つココのような魔物が本気でついて来ようとすれば、俺のような一般冒険者が逃げ切れるわけがない。
つまり。
これから先、俺は、ドスケベモンスターと一緒に過ごさなくてはいけないという事らしい。
俺の童貞力でそれを乗り越えろと。
目の前で煽るようにゆらゆら揺れながら、機嫌良さそうに笑う悪魔。
だれかたすけて。
書いて実感する文章力と物語構築力のNASA