VRMMOで遊ぼう!   作:between してう and 至

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1話:名も無きとかあらすじに書いたくせにプレイヤー名を出す

 ……暇だ。そう思いながら欠伸をすると十余年以上骨伝導で聞いてきた自らの声とは違う可愛らしい声のみが聞こえて、ふとこの世界が現実でないことを思い出す。

 

 なんとビックリ、今座っている木の椅子も、目の前にある噴水も、足元の土も、どれも全部ポリゴンの集合体なのだ。

 

 本当に凄い時代になったな……。まさか現実と殆ど変わらない仮想空間を人類が実現するなんて。いや、もしかして実はこちらが現実であちらが夢なのか? そもそも現実とはいったい? 実は俺が今存在しているこの世界自体が仮想現実か、シュミレーションか、はたまた物語の中で俺は真に思考をしておらず、考えていると錯覚させられているのではないか?

 

 ……まさかな。そんなことがあるわけはない。第一俺は今こうやって考え続けているんだ。「我思う故に我あり」だっけ? いい言葉だよな。意味は知らんが多分自分自身が確立していることを表したいんじゃないか? なんか違う気もするけどまぁ良い。

 

 ──────、いけないいけない。暇つぶしにしてもえらく変なことを考えてしまっていた。

 

 しかし全く、なんでゲーム、それも最新のニューテクなやつをやりながら暇しなきゃいけないのか。

 

 ……そうだ、これも全部待ち合わせにパーティーのメンバーが遅刻してるからだ。四人パーティーなのに自分以外時間に間に合ってないなんてことありえるか? 社会人になれないぞそんなことじゃ。

 

 なんてことを考えていたら待ち人のうちの一人が来た。「ようやく見つけた!」なんて言いながら一人の男キャラがこっちに手を振っている。そいつの頭に反射した陽の光が眩しい。

 

「お前さ、何遅刻してんだよ。しかも他のやつもいねぇし。このままじゃ俺が街の美しいシンボルになっちまうところだったぞ」

 

「そうだな、お前のそのアバター見た目だけはいいもんな。見た目だけはな」

 

 嫌味を言ってやったつもりだったのだが、普通に相手も言い返してきた。こいつ、遅刻したくせに何をこんな偉そうに。ごめんの言葉の一つくらい無いのか?

 

「それはお前が遅れたせいなんだが? レタネア(自キャラ)ちゃんに謝れ。そしてこの子に全財産貢いだ後にキャラリセして美少女になれよハゲ」

 

 俺はこのゲームをやるにあたり美少女アバターを使っている。普通に考えてなれるんだったら誰だって美少女になりたいだろ。少なくとも俺はそう思った。だから俺はそうした。

 

 だが、実際のところ他のプレイヤーはあまりそうは思っていなかったらしい。

 

 いや、むしろ正確に言うと彼らの大多数もそう思っていたのだろうが、それ以上に彼らの心を支配していた欲があった。……それは「美少女を侍らせたハーレムの主になりたい」という欲求。ヤツらはただ美少女に囲まれたパーティーが組めればそれでいいのだ。たとえ、その構成員がネカマであっても。むしろネカマだからこそいいとまで言う者さえいたな。中身が男だから緊張しないでいいんだとかなんとか。

 

 ちなみに俺は中身はどっちでもいい。てか寧ろ俺は見た目が可愛い女の子同士のイチャイチャが見たいだけなんだ。俺には見向きしないでもらっていいんだ。俺はゲームシステムが許すなら壁か床になりたかった。そう、百合を傍から眺める存在に。ただ、残念ながらこのゲームの種族に建築物は存在していない。だから俺はせめて百合を至近距離で見ていても殺されない存在である美少女としてレタネア(自キャラ)ちゃんを作った。勿論自分の性癖もふんだんに詰め込んだが中身が自分だって考えるとあんまり興奮できないんだよなぁ……。あと、俺も女の子の中身が男でも大丈夫なタイプだ。TS百合を百合に含めるかは学会でも議論が続いているが俺は含める派だからな。片方がTSで片方が本物でも味わいがあるし、両方TSなのもいい。薔薇で作った百合の造花プレイはいいぞ……。というか、俺はそれを見るのを期待してこのゲームを始めたフシもあった。……しかし、現実はそれほど甘くなかった。なんとこのゲームの配信開始時のキャラの性別の男:女は8:2だったのだ。なんで?諸説によると女キャラを使うは流石に恥ずかしかったとかハーレム願望マンが予想以上に多かったとか恥ずかしかったとかなんとか。恥ずかしがってるのがいいんだろうが! みんな分かってねぇな……。俺が普段パーティーを組むメンバーだってそうだ、四人から俺を除いた三人が男キャラにしている。内訳も、どう考えてもハーレム願望丸出しの量産型イケメンキャラに、美少女になりたいけど恥ずかしいと思ったのか最低限の予防線を引いた男の娘キャラ。ただ、目の前にいるガタイが良くスキンヘッドなマッチョキャラを使っているこいつだけは少し良いな。媚びないという姿勢を感じる。でもそれはそれとして美少女になってくれ。その姿から幼女になったりしたら俺が興奮する。あぁ、でもそうなるとパーティー内のキャラが見た目だけなら女キャラが三人になるからなんかハーレム願望量産型イケメンに負けた気分になるな、畜生っ!!!!

 

「あー、えっと、一人でヒートアップしてるところひとつ良いか? 」

 

「なんだハゲ」

 

 俺が脳内で早口オタクをしていると唐突にストップが入った。

 

「待ち合わせの場所はここじゃないぞ、別の場所だ。探すの大変だったし、理不尽にキレられてるしハゲって言われるしでそろそろ俺もキレそうなんだが? 」

 

「……すまん。レタネア(自キャラ)ちゃんの可愛さに免じて許してくれ」

 

 俺はそう言いながら全力で可愛らしい仕草をしながら謝った。

 

「中身がお前って考えると気持ち悪さを感じるなそれ。ともかく、他のやつらもお前のこと探してるし早いところ連絡して合流するぞ。……こんなこともあろうかと集合時間を早めにしておいてよかったわ」

 

 申し訳ないと心の底から思う。何せ今日はこのゲームがリリースされてから二ヶ月という節目であり、ユーザー参加型の大イベントが初開催される日、それにはパーティー単位で参加できるという話だったので集まって現地に行く予定だったのだ。

 

 しかし、本当にハゲがしっかりしていてよかった。いや、この場合俺がしっかりしていなかっただけ……?

 

 ……これ以上ネガティブなことを考えるのはやめよう。ポジティブに行くべきだ。何せこれから祭りが始まるのだ。

 大イベントがあるのなら新情報解禁などもあるはず。新ボス、新ジョブ、新武器、新イベ。そして俺の求める物……。

 

 そう、キャラクリやり直しアイテムが発表されてもおかしくはない。

 

 ヤバい、テンション上がってきた!これで男女比率が逆転するはず……!むしろ二ヶ月の間そういうものが無かった方がおかしかったんだ!

 

 

「おう、どうしたいきなりそんなテンション上げて」

 

 ハゲが神妙な顔をしてこちらを見ているがどうでもいい。

 

「俺の物語はこれからだ!」

 

「何言ってるんだよ。お前ちょっと今日おかしいぞ。いや、いつもの事か」

 

 ハゲが呆れている、というか馬鹿にされてるのか?……まぁいい、お前もすぐに女の子になるんだ。今回ばかりは許してやろう。はははははははははは────。

 

 

 

 結論だけ書こう。キャラクリやり直しアイテムは実装されなかった。

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