VRMMOで遊ぼう! 作:between してう and 至
透き通るような青空、遠くに見える積乱雲、照りつける日差しとそれが反射したマウンド。
頬を伝う汗、口の中に広がる鉄と塩の味、震える足、渇きを訴える喉、まるで凍ったかのように動きが鈍った腕、早鐘を打つ心臓、狭まる視野、目の奥がドクンドクンと鼓動しているように錯覚する。
手には白球、狙うは約2700cm²の針の穴。全身全霊を何十も、下手したら三桁代、精神はとうに摩耗している。
聞こえるのは声、声、声、声、声、歓声、野次、応援、悲観、数多の個性が連なり風物詩という一つの集合体へと昇華される。
気の所為かもしれない、声、声、声。声の中で僕は君の声を聞いた気がした。いや、間違いなく聞いた。君が僕にだけ言ったその言葉を、限界まで力を振り絞るための後押しを。
九回裏、同点、フルカウント、満塁、あまりにもできすぎていて笑ってしまうようなこの状況。
勝っても負けてもこの夏はここで終わる。この一球で全てが終わる。
汗は拭った、血と塩の味はスパイス、足には喝を入れて、喉には少し黙ってもらう。腕は動く、心臓はテンションMAXで浮かれ気分、視野は正面だけを見据え、目は爛々と輝いている。
完璧だ。気付いたら口角が上がっていた。あぁ、楽しいなぁ。
そうして手から離れていった白球は────。
「は〜、負けた負けた!」
俺は、いや、俺たちは負けた。
丁度先程終わったイベント、MUGEN甲子園 20XX:夏。
これは何を見たのか分からないが、とち狂った運営がいきなり発表したプレイヤーでチームを組んで戦う野球イベントだ。
システムは……、だいたいパ〇プロだ。栄冠〇インで三年回してできあがったチーム(ただしチームメンバーは全員一年の段階で加入する)で対戦するって言えばわかりやすいか。
もちろん育成される選手はプレイヤー、参加と同時にステータスを各々割り振られ、事前に登録しておいたチームで練習を積んでいくことになる。
あぁ、でも練習とは言っても本気で野球の練習をする訳ではなくパワ〇ロみたいな感じでステータスを伸ばしていくようなものだし、試合も基本的にはAIが動きを補助してくれる。野球未経験者でも大丈夫!ってやつだ。
VRMMOである必要性はあるのか……?いや、多分あった。メイビー。
今回のチームは俺ことレタネア、
確実にこのチームは俺が想像しうる限りのドリームメンバーだった。
……勝ちたかったなぁ。 練習期間は準備期間を含めても二週間程度、それも数日に一度の数時間だった。それなのに記憶に残る思い出がいくつも、いくつも出てくる。
そうして感傷に浸っている時だった。
「レタネアくん、本当にありがとうね」
ヒナゲシ氏……?
「今回は負けちゃったけど、最高に楽しかった。キミが誘ってくれなかったら僕はここまで来れなかったと思う」
いや、そんなことは。うちのチームはヒナゲシ氏という絶対的エースかいたからこそ準優勝できた。でも、ヒナゲシ氏は他のチームにいたら優勝だってできたかもしれない……。
「いいや、僕はここだから頑張れたんだよ。このチームは間違いなく最高だった。だから……、本当にありがとう」
ヒナゲシ氏……。
俺たちの夏は終わった、白球はもう手の内には無い。けれど、きっと俺たちは大事なものを手に入れたんだと思う。形のないもの、データの上にないもの。そしてそれはかけがえのないものだ。
きっと俺はこの先何度もこの夏を思い出すのだろう……。
あとがき(読む必要はあまり無い)(半ば日記)
ここまでお読みの方なら何となく分かってきていると思うのですが、この作者、直近で見たものに激しく影響を受けます。本当に受けます。多分次の話ではワンピネタかリコリコネタが飛び出します。(予言)
ということで、今年も「にじさんじ甲子園」が始まりましたね。楽しすぎてヤバいです(語彙力)。前話のあとがきで「他作品を書くので頻度が下がる」とか書きましたがにじ甲ばかり見てしまっていて筆が全く進みません。自己嫌悪。
さて、皆さんの推しはどの高校でしょうか? 私は推しが社長なので、当然のように「加賀美大附属高校」を推しています。初年度夏甲子園は激アツですよ激アツ。上田神は神でしたし、デビルズゲートはガバガバでしたし、日南はバッティングセンターでした。やっぱ激打です。(去年加賀美実業に脳をウェルダンにされたオタクの妄言)
うぉぉぉぉ!加賀美大附属頑張れぇぇぇ!!!
*この話の前に謝って別作品の話を投稿してしまっていたことをこの場で謝罪させていただきます。大変申し訳ございませんでした。
三日くらい気付かず放置してしまっていたようで正直心臓が痛いです。