VRMMOで遊ぼう! 作:between してう and 至
「あーーっ、うっぜぇ!!!遅延しないで正々堂々と勝負しやがれピンク髪っ!!!」
「うーん、これが俺のバトルスタイルだからなぁ〜? ウザくて上等よ」
残り100人に残ったプレイヤーは俺らのような『生き残ってしまった』枠こそ居たものの殆どが強敵だった。
無論ヒナゲシ氏は一対一でなら彼らにも安定して勝てるのだが、俺やポピーくんはそうはいかない。
まぁポピーくんはともかく俺は時間稼ぎくらいなら何とかできるのだが。
「
「てめぇ、ずっと槍チクしてて楽しいかよ」
「死ぬほど楽しい」
「そりゃそうだよなぁ!」
俺のジョブはヒーラーと槍使いの二つ。基本的に俺らのパーティーでは誰も回復役をやらないので渋々ヒーラーをやっているのだが、俺が最も得意なのは槍なのだ。
あと、「刀(剣)で槍に勝つならば三倍の実力が必要」なんてものを最近るろ剣の無料公開で読んだ。
つまり……、槍使いの俺はこのゲームで最も多い剣使いや刀使いに割と有利なのである。
というか、一般的なアタッカーのプレイヤーならスキル系統の回復(回復アイテムを出すワンモーションが必要ない)にリソースを割かないから、ある程度のマージン取ってリーチの違いを活かしながら槍チクして適度に回復していればだいたい封殺できる。
まぁその分凄い速さで近付かれすぎたり魔法による広範囲攻撃みたいなのにはマジでめっぽう弱いのだが。
──── お前みたいなのだぞ
「うわぁぁぁぁっ! クソっ、タイマンならお前なn」
今まで俺が時間稼ぎしていた相手をワンパンしたヒナゲシ氏は近距離も遠距離もこなせる化け物である。
……本当に彼が味方で良かった。 おかげで本来勝てるはずのない強敵が相手でも遅延さえすれば特殊勝利できる。
『プレイヤーが残り10人以下になりましたことをお伝えします』
おっと、ここで全体アナウンス。マジで残り10人まで生き残っちまったか。まぁヒナゲシ氏と一緒に40人くらい狩ってた筈だし仕方ない。
そう思って再度生き残り人数を見てみると、『残りプレイヤー』は"4人"と表示されていた。
「んー?? これってもしかして」
「うん、ボクとレタネアさんとポピーくん。それともう一人しか生き残ってないってことだね。あと多分残りのもう一人は何らかの範囲攻撃で最低6人以上を纏めて消し飛ばしたんだろう」
6人以上を纏めて消し飛ばす、そんなことは剣士や槍使いにはできやしない。ということは……。
「あと一人のプレイヤーは恐らく魔法使いジョブ。そして、ここまで生き残ってるってことは……」
「うん、ボクと同じタイプのビルドの可能性はある」
魔法全振りのヤツがここで仲間を裏切って全員キルした可能性ってのもあるけどね。なんてヒナゲシ氏は一応補足をした。
まぁ、最後の"プレイヤー"はその予想とはかなり違ったビルドだったのだが。
「あれ、どう見ても"二人"いますよね」
「うん。間違いなく"二人"いる」
遠目に見えるのは赤髪と白髪の二人。あちらも此方に気付いているようで睨み合いの状況になっている。
……不審に思い再度生き残り人数を確認するが残り"四人"のままである。
実に不気味である。バグか何かか? そう思ってしまうが自分の中では何かが「大切なことを見落としている」と主張している。なんだ、どうして二人いる? ……そういや
「なんかあの二人見覚えがあるような……。あっ」
──── 確かこの前見せてもらったブレイブのイラストに描かれた二人は赤髪と白髪の美少女キャラ。そしてあの二人も……!
脳内で色々なピースが噛み合っていく。一つ、どう考えても辻褄が合わないものもあったが相手の特異性を考えるのならソレもワンチャン無視できるのだろう。
「ヒナゲシ氏、アイツら話題のテイマーとユニーク精霊だ。そんでもって多分赤髪の方がテイマーだ」
「うん、そっか。レタネアくん、じゃあちょっとその精霊の方何とかしてくれない? ボクは本体狙うからさっきまでと同じように足止めを頼むよ」
「えっ、ちょっ」
そう言うなりヒナゲシ氏は件のテイマーに爆発系統のの魔法を放ち、凄い速度でテイマーの近くまでカッ飛んで行った。
──── 俺とポピーくんを両手に持った状態で。
「はぁ、はぁ、死ぬかと思った……」
せめて一言だけでいいから飛ぶって言ってほしかった。ポピーくんとか暫く使い物にならないにならないだろコレ。いや、元から使い物にはなってなかったが。
「うん、
そう言ったヒナゲシ氏の方を見ると、彼はテイマー氏と鍔迫り合いをしていた。
いや、なんであの速度で突っ込んできたヒナゲシ氏にテイマーの方も対応できてんだよ。違うか、アイツも人間やめたプレイングスキルしてるタイプか。
ユニーク精霊の方はまだ少し現状把握が追いついてないみたいだな。
「だ、大丈夫なの、ベル?」
「問題ないよステラ、ただちょっと手を貸してほしい……。この人絶対強い」
ふーむ、なるほど。テイマーの方がベルという人で、ユニーク精霊の方がステラという名前なのか。しかし近くで見るとマジでブレイブの絵って上手かったんだな……ってなるな。アイツ絵で飯食えるんじゃねぇか?
……よし、色々と考える時間は終わりだ。目の前のタスクをこなそう。一応、今の俺はヒナゲシ氏に言われた役割である『ユニーク精霊、ステラの足止め』という仕事をしなければならない。
「よーし、待っててベル、今助けるから!」
「させねぇよ」
ベル氏を助けようと近付く素振りを見せたステラ、それに俺は槍を突きつけて牽制をした。
────くぅ〜!キマった〜〜〜!!!! 今のマジでカッコよく決まったと思う!!
「何よアンタ、ウザったい。私はベルを助けたいのだけどサッサとどいてくれないかしら」
「へぇ、AIでもイラついたりするんだな。驚いたよ」
「貴女、ぶっ殺してもいい? というかぶっ殺す」
そう言うなりステラは刀を取りだしコチラに向けて一閃、ついでに魔法で俺の前以外に弾幕を作って逃げ場も塞ぎ距離を詰めに……。
待て待て待て、よく考えたらステラさん積んでるAIが高度すぎやしないか? このゲームのNPCこんな流暢に会話できないし、能動的に人間に敵意を向けるとかできないはずなんだが?
というかビルドが魔法剣士でヒナゲシ氏と似通っているんだが? 対応ミスったらワンチャン即死しかねんぞこれ!
鳴り響く金属音。散る桃色の毛束、間一髪、勘でガードした首元には刃がもう少しで届こうとしていた。
「あっぶねぇ! ツインテ切られた!」
「ちぇっ、一撃じゃ仕留められなかったか。残念」
──── 魔法剣士、それはヒナゲシ氏が考案した"理論上"単体で最強となれるビルドである。
対単体、広範囲殲滅、回復にガード、なんでもできる万能性がウリなのがこのビルドの特徴だ。
ただし、そんな一見なんでもできるように見える(実際なんでもできる)には幾つかの致命的な弱点とでも呼べるものが存在している。
まず一つ目の弱点にして最大の弱点はステータスの割り振りだ。
この魔法剣士ビルドは全ての動きを魔法を使って行う都合上そのステータスは必ず"魔力極振り"となる。
そのせいで『HPもDEFも低いのですぐ死ぬ』『MP切れたらただのゴミ』『魔術だよりなせいで動きが直線的』『素の攻撃力が無いから近接だとクリティカル頼り』『そのせいで初撃を外したりガードされるとかなりキツイ』『魔術の発生がちょっと遅いから先読みとか空間把握能力が必須』『マトモに戦うなら攻撃全回避が前提になる』『近接やるにしても速さが足りん』『普通に遠距離から魔法ブッパした方が強い』等々、様々な問題が発生する。
まぁ要するに"理論値"だけで見るなら最強なのだが、それをやるためには魔術という少しラグがあるものを使いながら様々な状況に常に最適解を出し続けねばならないということである。
……こんなの使えるのヒナゲシ氏か金髪幼女だけだろう。常人にはこんなの使えん。
そう、"常人"なら、だ。
煙幕代わりの爆発魔法、急加速して接近してきて首元狙い、それに対する俺のカウンターは命中こそすれどステラは意に介さずに急加速して退避、そうして放たれた火球の弾幕。本命だったであろう雷の一撃は火球の方にダメ覚悟で突っ込んで回避。
それがAIなら話はどうなのだろうか。少なくとも俺の前にいる
ヒナゲシ氏程洗練されてはいない動き、されどAIの処理能力と恐らくプレイヤーよりも高いステータスにより暴力的な強さが実現されている。まぁヒナゲシ氏の方が万倍強いから何とかなっているが。伸びしろに期待ってやつかな?
ただ、それでも槍チクしながら回復してダメージレースに勝つっていうスタンスの俺のビルドじゃなきゃ多分普通に押し切られていただろう。ヒナゲシ氏戦を見据えてか俺相手に高火力な技を使わないようにしているってのも俺にプラスに働いている。
「あー! 本っ当にウザったい! いつになったら死ぬのよアンタ!!」
「それはこっちのセリフだ! これくらいカウンターすりゃ普通の魔法剣士ビルドのやつはとっくに死ぬか魔力枯渇してんだよ! こんのインチキが! お前がつべで解説動画見てコピペデッキの回し方を理解した気になるガキと同レベの知能じゃなきゃ俺はとっくに死んでるわ!!」
戦闘開始してからかれこれ十合程度の攻防を繰り返した現状。
コピペ雑魚魔法剣士相手に鍛えた戦法でどうにか耐えて何発か攻撃を当てることもできているのだが、相手は一向に回復魔法を使う気配が無い。
一応俺の攻撃力×当てた攻撃回数ならレベルマの魔法剣士ビルドが3回くらい死ぬ計算になるんだが……。
これがユニーク精霊ってやつか。どうなってんだマジで。
「ちょっとよくわかんなかったけど今アンタ私の事結構侮辱したでしょ! ……もういい、アッチの強い方を倒す用に残してた私の切り札を見せてあげる!」
そう言って空へと飛んでいくステラ。
完全に浮遊する魔法はまだ実装されてないからアレは彼女がユニーク精霊だから使える技能だろう。
『
空に描かれたのは色彩鮮やかな天球儀、その中のおおぐま座の一部、北斗七星と呼ばれる星の集まりが光り出した。
しかし本当に悔しい。俺の手札は槍と回復魔法だけだから槍投げる以外マジで何にもできないんだよな。俺はノーコンだし槍投げたら普通に詠唱やめて殺しに来そうだからどうしようもならんし。
『
本当に何か、ギャフンと言わせられるような物がないかアイテムボックスの中を漁る。……おや?
「マジであったな」
そういや作ったはいいものの結局使わなかったんだった。
アイテム欄にあったそのアイテムを見て、半ば止まっていた思考を再度回し始める。
今すぐ放つのはダメだ。詠唱を使う魔法は別に動きを制限するわけじゃない。相手が飛行能力を持っている以上この切り札は普通に避けられそうだ。
ならばどうすればいいのか。簡単だ、相手が魔法を打つのと同タイミングでこちらも切り札を使えばいい。
……簡単か?????
『
知らない詠唱を
『
気付けばステラの手には大きな、それこそ彼女の身体程もある鎌が握られていた。
「さて、冥土の土産に教えてあげる! この
「……へぇ、つまり俺はそれに斬られれば確実に死ぬ、と」
相手がAIのクセに馬鹿で助かった〜!!! これマジで切り札を使えるんじゃないか?
「そうよ。よくわかってるじゃない。でも少し違うわ。これは『貴女に向けて振った瞬間に貴女が斬られたことになる』って因果を発生させるの」
「なんだそのインチキ魔法」
なんだそのインチキ魔法っ!!! ソロゲーで使うべき魔法だろそんなの。ただ、そのインチキ魔法のおかげで相手はひどく慢心してくれているようだ。「辞世の句を詠んでもいい」なんてことも言ってる。なんだそのムーブ。何を見て学習したんだか。
「焦らさないでさっさと殺れ。お前もさっさとご主人様に加勢しに行きたいんだろ?」
ステラを冷静にして「コイツにここまでの火力をぶつける必要があるのか? まず普通に魔法連打してれば勝てるのでは?」と気付かせてはならない。だから俺は諦めたフリをする。
ステラにこのまま行けば気持ちよく勝てると思いこませる。
「それもそうね。それじゃ、サヨナラ」
ステラが俺に向かって鎌を振り下ろす。 そのタイミングで ────
「お前もなーーっ!!! たーまやーッ!!!!」
俺は以前のイベントで作って結局使わなかった
次の瞬間、まず俺のHPが0になった。 身体が少しずつ光の粒子に分解されていき……。
少し遅れて空に
してやったりってやつだ。
1話を読み始めてから最新話まで読んでくださるのは単純計算で40人に1人らしいです。本当にありがとうございます。
評価はどうでもいい(普通に欲しい)のですが、感想は死ぬほど欲しい(死ぬほど欲しい)です。
感想ください(強欲)