VRMMOで遊ぼう! 作:between してう and 至
地獄の責め苦は最短で約1兆6000億年、最長で約350京年らしい。新しい敵を出す度にインフレをするバトル漫画、もしくはすぐに環境の変わるソシャゲレベルで二つには数字の差があるが、人の一生に対してはあまりにも長すぎるという点でそれらはほぼ同じと言ってもいいだろう。
そうなるともしや、今やってるこの
────そんなことをパーティーメンバーの三人に話したらドン引きをされた。さすがにブロックに手を伸ばしているのを見た時は肝が冷えたな。
────しかしいかん、思考が変な方向へ飛んでいた。MMOに含まれるナーフや環境の変化という要素が無常感に重なったのだろうか。いつに無く哲学的なことを考えてしまっている。
「えっとさ、全部口に出てるよ。多分疲れてるんだろうけど思考と発言のリンクが酷いよ? 少し休んだらいいんじゃないかな……? あと、せっかく可愛いキャラ使ってるんだから可愛いムーブしようよ」
────は??????? 休むわけねぇだろ!? 今ここで休んだ時間でランキングが死ぬほど下がったらどうするんだ!今日は
「確かにそうかもしれない。でも
────
「
──── なんだ?
「誰がクソ花だ!? こちとら心配してやってるんだぞ??? 」
──── はいはい、ごめんごめん。あたしが悪ぅござんした。
「脊髄で喋るな、お前も文明人なら一回倫理とか道徳とか理性のフィルターを通して話せよ」
「今更取り繕う必要性ある?」
────ハゲが正論でしかないことを言ってきたので苦し紛れこう返すした。でも2ヶ月で彼らにも俺の人間性はだいたい見えてきているはず……。だからセーフ。問題なし!
「大アリだわボケ。親しき仲にも礼儀ありだ。あとハゲ呼びはやめろ。おれのプレイヤーネームは『サンライズ』だ」
「すまんすまん、サンライズ」
────結局光り輝いてる時点でハゲじゃねぇかハゲ。
「あ゛???」
「急にキレるじゃん怖っ……、……もしかして俺の心の声全部聞こえてんの?」
──── 俺は驚愕した。いや、まさかそんなわけは無い。今の今まで彼らとの円滑な会話が成立してたのは俺が口に出そうと意識していた言葉が発せられた結果であったはずで……。
「えぇ……? 気付いてなかったの?」
「……。すまんかった!」
────
「凄い、今度は三重に聞こえた。多分口と心の声が完全にリンクしたんだな」
俺の誠心誠意の謝罪に対して、クソ花は感心した風な顔でそうコメントした。
……、そんなことを思っていた時には俺の心の声はもう漏れていなかった。
そのタイミングで寝落ちしたからな。
ちなみにだが、俺が度々起こしていた"声が二重に聞こえる現象"、これはどうやら同時に二種以上の魔術を使う『二重詠唱』という技術の入口だったらしい。
この現象および技術はサービス開始からしばしば掲示板等で体験したと語る人物はいたのだが、どれも肝心の証拠がないorあっても捏造されたものだろう。ということで今まで相手にされてきてはいなかった。
ところが、それが覆ったのが今回のイベント。名前を『パーティー対抗殲滅戦』というのだが、その名の通りパーティ対抗で競い合うこのイベントは第一回の開催にして"地獄"と化した。
このイベントの事をざっくりと説明すると、事前に登録したパーティーで、期間中に開放される専用クエストでモンスターを狩ることでポイントを稼ぎ、パーティーで稼いだそのポイントの合計値で順位を付け 、最終的な順位に応じて豪華報酬が貰える。といったもの。要するに他ゲーで言うGvGをパーティー単位でやる、といったものになる。
豪華報酬の出る多人数対抗戦、あまりに予想が容易いことではあったが、前例に漏れず当然のようにプレイヤー同士の競走は白熱した。それも凄まじいレベルで。ある者は有給を取り、ある者はカフェイン漬けになり、ある者は開催期間中寝ずにボトラーとなった。
また、上記のような
そうして精神的に追い詰められた一部のプレイヤー達にストレスが溜まり、脳内麻薬が過剰分泌されるなどして起こった異常なハイテンション状態や、あまりの眠気から起こった半覚醒状態等により、彼らは摩訶不思議な現象に遭遇したのだった。それが"声が二重に聞こえる現象"。
流石に同時に多発したとなれば、それは実際に起きたことであると考えて間違いはない。そうしてやがて、彼らは一つの結論に達した。「「「これは使える」」」
有志の検証によると、"声が二重に聞こえる現象"を使用すると詠唱が必要な魔術を同時に放つことができることが判明し、それは『二重詠唱』と名付けられた。
これにより、もとよりDPSの高かった魔術師の評価も更に上がり、素晴らしき大魔道時代が始まる……。と思われていたのはイベント終了三日後まで。
『二重詠唱』はゲーム内のスキルでもなんでもないため再現性が低い事や、長めの詠唱は不可能に近いこと、安定して使うには二徹以上して疲れなければならないことが判明したため、『二重詠唱』を恒常的に使用するのは一部の廃人、もしくは偶然コツを掴んでしまった天才型のみとなってしまった。
かく言う俺も自分は天才型ではないかという淡い期待のもと『二重詠唱』を試してみたのだが……、普通に失敗した。
────