モンスターハンター ~流星の騎士~   作: 白雪

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EPISODE9 ~二人の約束~

 薄暗く、閉塞感のあるエリア9。

 無論、ここは狩場であり、一般人が立ち入ることは滅多にない。だが、そのエリア9には、本来そこにいるはずのない人影があった。

 肩口の辺りで揃えられた黒髪。まるで、誰かの身を案じるかのような心配そうな瞳の色は茶色。年はまだ十五にも満たない少女。そんな少女がこの場所に一人で佇んでいる。もちろんのこと、この少女はハンターではないため、何とも奇妙な光景となっている。

「大丈夫、かな……」

 心配そうに少女が呟く。

 何も、少女は自分の意志で一人ここにいるのではない。

 時は数時間前に遡る。少女の両親は共に旅商人である。その両親と共に、少女はこの近辺に位置するという街を目指していた。そんな時、あのモンスターに襲われた。

 辛うじて振り切れたものの、その際に少女だけ馬車から振り落とされた。そして、少女はそのままこの場に取り残されたのだ。

 ここはモンスターのテリトリー内。戦う術を持たない者が踏み込めばその命を簡単に散らすこととなる。

 このまま何も出来ずに。もう二度と両親と会えないままなのか。そう思っていた時に“あの人”は現れた。

 ハンター。この世界に住まう、モンスターを狩る者達である。彼も、その一人であった。あのモンスターに狙われた自分を、彼は自身の身も顧みずに庇ってくれた。そのハンターに助けられたのだ。

 

『俺は、お前を必ず守ってみせる。だから、俺を信じてくれ』

 

 死に恐怖したあのモンスターの攻撃と共に、そんな彼の言葉がフラッシュバックする。

 信じれば助かる。その確信は無い。だが、少女には信じるしかなかった。否、信じることが出来れば、それは希望から確信に変わる気がした。

 守られるだけの自分に出来ることは二つ。自分を守ろうとしてくれる彼を信じること。そして、そんな彼の無事を祈ることである。少女は彼のことを想い、必死に祈り続けていた。

 その時だった。

 

 ――ガサッ。

 

 遠くで何かが動いた音がした。

 

 ――ガサッ。

 

 もう一度。

 これは足音だ。何かが、少女が逃げてきた方向から近づいてきている。

「ひっ……!?」

 人間の本能なのか、それとも先ほどまでのこともあるのか。少女はその物音に敏感に反応した。身体は強張り、途轍も無い恐怖に身体が支配される。

 まさか、彼は負けてしまったのだろうか。あのモンスターは彼を蹴散らし、逃した獲物――要は自分を捕らえに来たのだろうか。

 いや、それはないと信じている。彼の言葉を信じると心に誓った。だから、彼を信じて待ち続ける。例え、あのモンスターが舞い戻ってこようとも。

 その足音はもう近くまで迫っている。そして、その足音の主の姿が露わになる。

「よかった。無事か」

「えっ……?」

 それは紛れも無く、自分を助けてくれた青年だった。

 

 

「よかった。無事か」

 ヴァイスがエリア9に入ってすぐ、少女は見つけられた。ヴァイスは安堵の溜め息をついていた。

「えっ……?」

 その少女は安堵からか途端に力が抜け、へなへなとその場に崩れ落ちる。ヴァイスは少女を優しく受け止めた。

「大丈夫か?」

 ヴァイスの問いにこくこくと頷いて答える。

「一人で立てるか?」

「はい。もう、大丈夫です」

 少女は、何とか自力で立っていられるようになった。そうして、辺りをきょろきょろと見渡しヴァイスに質問した。

「えっと、あのモンスターは……」

「モンスター? ああ、リオレウスのことか。奴ならもう討伐してきた」

「そうですか……」

 少女が安堵の溜め息を漏らす。余程リオレウスに対し恐怖心を抱いていたのだろう。

 と、少女の様子が落ち着いたのを確認したヴァイスが今まで疑問に思っていたことを質問する。

「ところで、君はどうしてこんなところにいるんだ?」

「そ、それは……」

 少女は言いよどむ。

 この青年は自分を助けてくれた。だが、彼が見ず知らずの人物であることに変わりはない。果たして、自分の話をどこまで理解してくれるか。それが気がかりだった。

 と、少女が迷っているうちにヴァイスの方が先に口を開いた。

「まあ、君が俺を信用できないのも無理はない。知らない人間に自分の私情を話しづらいのはよく分かる。だから、無理して話せとは言わない」

 そう言ったヴァイスの言葉に対し少女が首を横に振る。

「い、いえ、そんなことないです! だって、あなたは私を助けてくれた。それだけで、私はあなたを信用できます!」

「……それは、ありがたいことだな」

 ヴァイスが思わず苦笑いする。

 それは、この少女が生粋な性格の持ち主だと理解したのもそうであるが、何より自分のことを信用してくれることが嬉しかったのだ。

 もちろん、ヴァイスはその信用に応えるつもりである。自分のできる範囲で、少女の力になるつもりだ。

「じゃあ、一旦拠点へ戻ろう。そこなら安全だ」

「は、はいっ!」

 ヴァイスは少女を連れ立って拠点へ向かった。その途中、少女からこれまでの経緯を訪ねた。

 それは、ヴァイスが森丘の拠点へやって来るほんの数十分前のことだった。

 少女は、少女の両親と共にこの森丘にやって来た。と言うのも、少女の父親は行商人であり、ここから向かって南東の街へ向かおうとしていたのだ。

 その最中だった。突如、上空から轟音が聞こえたかと思うとリオレウスが姿を現したのだ。その街へ向かうルートはリオレウスのテリトリー内だったのだろう。

 リオレウスから逃れるため全速力で荷車を走らせた。その際に少女は荷車から振り落とされてしまった。リオレウスから逃れることだけを考えていたためか、両親が気づいた時には手遅れだった。結局、少女は両親と離れ離れになってしまい、それをヴァイスが発見したのだ。

「そう、だったのか……」

 拠点へと戻り、その全容を知ったヴァイスは言葉を失った。

 この少女は両親と離れ離れになった。もし、あの場に自分がいなかったら。それは、少女と少女の両親との永訣を意味する。想像するだけでも心が痛む。

 こうして少女を助けられたのは不幸中の幸いとも言える。だが、もっと早く少女を見つけることは可能だったことに変わりない。その事実がヴァイスを後悔させる。

 その、償いとして。いや、当然の事として。ヴァイスにはこの少女を無事に両親に送り届ける義務がある。それが、少女が一番望んでいるこのなのだから。

「君は、もう一度君の両親と会いたいんだろう?」

 ヴァイスの問いかけに少女が弾かれたように即答した。

「もちろんです……っ! もちろんですっ!!」

 少女の瞳は潤んでいた。その瞳はヴァイスに訴えている。「自分を両親の元へ連れて行ってくれ」と。

「……分かった。約束しよう」

 ヴァイスが静かに口を開いた。

「俺は、君を必ず送り届ける。君が帰る場所へ、君の両親の元へとな」

「ほ、本当ですか!?」

「何を驚いているんだ。当然のことだろ?」

 夢でも見ているかのような縹緲とした表情の少女にヴァイスが言う。

 だが、少女にしてみれば、これは夢のように思えて当然かもしれない。一度、死を覚悟しているのだ。しかし、ヴァイスに助けられ、尚且つ両親とも再会させてくれるのだと言う。これが夢だと言わずに何と言うべきであろうか。

 ヴァイスには、少女のその気持ちが理解できる気がしたのだ。

「まあ、落ち着けよ。君の両親も森丘から逃れ、きっと君を探しているはずだ。おそらく、旅程通りの街へ向かうだろう。そこで捜索願いを出すはずだ」

「捜索願い?」

 あまり聞き慣れぬ単語だったためか、少女は頭に疑問符を浮かべていた。

「誰かが行方不明になった場合、ギルドという施設に捜索願いを出す。そうすれば、俺たちギルドナイトなどが捜索に向かうんだ」

「ギルドナイト……? じゃあ、あなたは私の捜索願いを受けてここへ?」

「いや、俺は偶然ここで狩猟をしていた。その途中で君を見つけたわけだ」

 使わなかった道具や素材を片付けつつ、少女の疑問にヴァイスが答えた。少女は納得したのか小さく頷いていた。

「……さて、準備は整った」

 荷物を荷車に乗せ終わったヴァイスが呟いた。

「えっと、これに乗っていけばいいんですか?」

「ああ、そうだ」

 少女を促し荷車に乗せようとする。すると、荷車を牽くアプトノスがゆっくりとこちらを振り向いた。

「ひっ……」

 少女が身体を震わせて怯える。やはり、モンスターに対する恐怖は残っているようだ。

 ヴァイスは、少女の恐怖を振り払おうとアプトノスの頭を撫でて見せた。

「こいつはアプトノスというモンスターで大人しい性格の持ち主だ。何もしなければ人に危害は加えないんだ」

「そ、そうなんですか……?」

 涙目になりなりながら少女が問いてくる。

「ああ。大丈夫だ」

 ヴァイスの言葉を信じ、少女は意を決してアプトノスの頭を撫でてみた。アプトノスは嫌悪感を見せることなく、気持ちよさげに目を細めた。

 少女の顔から恐怖感が薄れていく。

「言った通りだろ?」

「はい。まるで犬みたいですね」

「確かにそうかもな」

 少女の純粋さにヴァイスが笑みを浮かべた。

 全てのモンスターに対する恐怖が薄れるには時間がかかるだろう。だが、少しずつでもいい。多くの時間を要しても、少女から極度の恐怖心を取り除けられればいい。ヴァイスはそう願っていた。

「行こう。君を待っている人の元へ」

「はい!」

 少女と共にヴァイスは森丘の拠点を発った。彼女との約束を果たすために。

 

 

 

 アルコリス地方から南東へ四日。メタペタットと呼ばれる村を経由し、ヴァイスたちはジォ・ワンドレオへ辿り着いた。

 ジォ・クルーク海と外洋との海峡に築かれたその街は東西の貿易を支える拠点の役割を担っている。そして、その独特な技術は、現在愛用しているハンターも多い双剣を生み出した。双剣発祥の地とも言えるこの場所は、ヴァイスもよく訪れる土地であった。

「さて、とりあえず街の中心部へ行ってみよう」

 この街の中心には湖がある。その湖には筏が連結されており、その上に交易品を扱う市を開いている。

「すごい……」

 その光景に少女は思わずそう口にしていた。

「ここに来たのは初めてなのか?」

「はい。まだ、この辺りのことは分からないことばかりなので」

「そうか」

 二人はしばらくの間、街を歩き続けた。しかし、目的の人物を見つけることは出来なかった。

「メタペタットにいないと聞いたから、ここにいるはずなんだが……」

 ヴァイスが溜め息をつく。

 もちろん、このジォ・ワンドリオは街と言うだけあってそれなりに広い。探し回ってもなかなか見つからないのは致し方ない。

「仕方ない。一旦ギルドに行ってみるか」

 ヴァイスは少女を促し、この街のギルドへ向かおうとした。

 と、その時。

「……クレア?」

 誰かの名を呼ぶ声がヴァイスの後方から聞こえた。そして、少女が弾かれたようにその声のした方へ振り向いた。

 そこにいたのは夫婦と思しき二人組だった。

「お父さん……? お母さん……?」

 少女がその二人を捉えると確認するように小さな声を絞り出した。

 すると、目の前の人物たちの瞳が潤んでいく。

「あぁ……! クレア……。やっぱり、クレアなんだね……?」

「……うん、そう。私だよ……」

 互いにその表情は涙ぐんでいた。

 それこそ、最初は少女はそれを我慢していた。しかし、その我慢にも限界が訪れた。少女が二人の元へ駆けていく。

「お父さんっ! お母さんっ!」

 クレアと呼ばれた少女が母親の胸へと飛び込んだ。その胸の中で声を殺して嗚咽する。

 ――クレア。

 それが、この少女の名であった。

「本当にごめんな……。辛い思いをさせてしまって……」

 父親も目に涙を浮かべて謝罪した。しかし、少女は首を横に振った。

「……ううん、大丈夫。あの人がいてくれたから、私は大丈夫だったから……」

 それを聞いた彼女の両親がヴァイスに視線を向ける。

 涙を拭い、二人は深く頭を下げた。

「ありがとうございます……! 貴方の御蔭で、こうして娘と再会できました。貴方は、娘の命の恩人です」

「本当に……、本当に何とお礼を言ったらいいものか……」

 周りの人が何事かと注目している。

 口々にお礼を言われるのは悪くない気分だが、この状況では焦りを隠せなくなる。

「と、とりあえず頭を上げてください。俺は何もしていません。お二人が娘さんと再会できたなら、それで十分です」

 ヴァイスは慌ててクレアの両親に頭を上げてもらうよう頼んだ。

「し、しかし……」

「お礼は十分です。それよりも、今は娘さんと……」

 ヴァイスがそう言って身を屈めた。そして、クレアに向かって「じゃあな」と笑って見せた。

「では、俺はもう行きます。次の任務もあるので」

「ええ。この度は、本当にありがとうございました」

 クレアの両親が再び頭を下げる。ヴァイスもギルドガードハットを軽く持ち上げ会釈した。

 そして、クレアたちに背を向けヴァイスは歩き出した。

 ジォ・ワンドレオからドンドルマへはおよそ三日の旅路だ。この間には主要な街道も通っているので、その道を辿って帰還する。

 ドンドルマへと戻れば、また次の任務が待っているだろう。もちろん、これまでのヴァイスの行動の影響で上層部から何らかの処分が下る可能性も否めない。だが、これまでの失態を取り戻す働きをしてみせようとヴァイスは決心している。それこそが、ヴァイスの新たな旅路なのかもしれない。

 街の入り口で待機させていたアプトノスの荷車が見えてきた。荷車に乗り込み、出発しようとしたその時だった。

「待ってください!」

 不意にその声は聞こえてきた。

 ヴァイスは当然の如く、その声のした方向を振り向いた。そこには、肩を上下させているクレアの姿があった。息遣いもだいぶ荒い。ここまで全力で走ってきたことが窺える。

 荷車から飛び降りたヴァイスがクレアに声をかける。

「どうしたんだ?」

 当然の質問をヴァイスが投げかける。

 クレアは呼吸を整えると、ヴァイスに向かって顔を上げ、口を開いた。

「あの、あなたはハンターなんですよね?」

 至って平凡な質問にヴァイスがきょとんとする。

「ああ。俺はハンター……、ギルドナイトと呼ばれているハンターだ」

 ヴァイスが答える。すると、クレアは顔を俯かせた。

「ど、どうしたんだ?」

 意味が分からずヴァイスも心配になる。何もまずいことは言っていない。いや、先ほどの発言はクレアにとって悪い要素は何一つもないはずだ。

「そ、その……」

 歯切れ悪くクレアがもじもじと指を交錯させる。

 一体どうしたんだ。そう問いかけようとしたヴァイスの目の前で、クレアが意を決したように顔を上げ言い放った。

「お願いします! 私がハンターになったら、私をあなたの弟子にして下さい!」

「なっ!?」

 ヴァイスは愕然として、すぐには言葉が出なかった。その間に、尚もクレアの強い視線が浴びせられている。

「お、おいおい……。一体何を言ってるんだ?」

 どうにかしてヴァイスは言葉を紡いだ。

 クレアは強い意志の籠った瞳でヴァイスに言う。

「私は、あなたのような人になりたい……。命を賭してまで誰かを守ろうとするあなたの姿に私は憧れたんです!」

 未だに混乱しているが、ヴァイスは何となく状況が読めてきた。

 クレアが唐突に「ハンターになったら弟子にしてほしい」と言ったのは自分に憧れの念を抱いたため。まだまだ子供らしい――いや、子供なら誰もが抱くその気持ちを、クレアは同じように抱いたのだ。

 だが――、

「だから、お願いします! 私がハンターになったら――!」

 ヴァイスはクレアの言葉を手で制した。

「……君も見ていただろ。ハンターは常に生と死の狭間にいる。それこそ、軽はずみな気持ちなんかでハンターになれば、いたずらに命を落とすことにもなりかねない」

 ヴァイスは今までとは嘘のような冷たい声で現実を突き付けた。

 もちろん、クレアも最初は言葉を失った。だが、負けじとクレアも自分の想いをヴァイスにぶつける。

「私は軽はずみな気持ちじゃない。本気なんです! だからこそ、私はあなたのような人に、ハンターになりたいんです!」

「……」

 今度はヴァイスが言葉を失った。

 クレアが生半可な気持ちで、このような発言をしているわけではないことをヴァイスは理解している。

 だからこそ、ヴァイスはこの少女に知ってほしかった。ハンターという危険な立場を。幾多の危険と巡り会わなければならないその事実を。

 まだ幼い、いや、だからこそ知る余地のないクレアにヴァイスは事実を語り掛けようとした。だが、それを知っても彼女の決意が揺らぐことはないだろう。その意志の強さはヴァイスも認めてあげたい。

「……そうか」

 ヴァイスが静かに溜め息をついた。そして、今度はクレアを厭うような声色で語り掛けた。

「……でも、無理なんだ。俺はギルドナイト。ギルドから指令を受ければ遠方の秘境にだって飛んでいく。過酷な防衛戦にだって送り出される。俺には、君を育てられるような時間もなければ、君の師に相応しい器も持ち合わせていないんだ」

「そ、そんな……」

「……本当にすまない。だが、これは仕方のないことなんだ」

 ヴァイスの前半の発言は至極当然のことを、そして後半の発言は自分の力の無さを理解しているからこそ言ったことなのだ。

 ヴァイスも、ここまで決意の固いクレアの力になってやりたいと思っている。だが、こればかりはどうしようもなかった。

 クレアもがっくりと肩を落とし顔を俯かせてしまった。

「でもな、君を弟子にすることは無理でも、君のせめてもの力になってやることはできるかもしれない」

 ヴァイスは首からあるものを外した。銀色に輝くそれは十字架を模したネックレス。十字架の中央部分には蒼色に煌く宝石が埋め込まれている。

 それを、クレアの手の中にそっと収めさせた。

「……これは?」

「俺が子供の頃から身に着けてきた幸運のお守りだ」

「幸運のお守り……」

 静かに煌めく蒼色の宝石を見つめながらクレアは呟いた。

「俺と約束しよう。君がハンターになって成長した暁に狩場で会おうと」

「はい……。はい……っ!」

 ヴァイスから受け渡されたネックレスをクレアは大切そうに握りしめた。

 何故ならこれは、二人を繋ぐ、約束の証なのだから。

「頑張れよ」

 ヴァイスはクレアの肩を優しく叩いた。クレアは満面の笑みでヴァイスに応じて見せた。

「……また、逢えますよね?」

「……ああ。必ずな」

 二人は約束を交わした。

 いつかはハンターとなり、また狩場で会おうという約束を。それは、ヴァイスの託した物と同じくクレアの力になるはずだ。

「あの――」

 クレアが何かを訪ねようとしたその時、遠くからその名を呼ぶ声がした。おそらく、両親が探しているのだろう。

 クレアが声の聞こえた後方を振り向いた。その瞬間、ヴァイスは踵を返して荷車に乗り込んだ。

 荷車は、すぐに動き出し街の外へ向かっていった。

 クレアが気づいた時、そこにいたヴァイスの姿は既に消えていた。まるで、夢を見ているかのような感覚。だが、その手に握られていた幸運のお守りが、それが夢ではなく現実だったということを証明してくれていた。

「……必ず、追いついて見せます!」

 強い決意を胸に、クレアは自分の想いを口にした。

 大切に握られた幸運のお守りが、陽光を反射して煌びやかに輝いた。

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