モンスターハンター ~流星の騎士~   作: 白雪

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EPISODE40 ~想いと決意~

 長く、そして辛い狩猟が終わった。

 ここまで長いと感じた狩猟は今までになく、その分ユクモ村に僅かながらの懐かしさを抱いてしまう。

「皆さん、お疲れ様でした!」

 集会浴場のカウンターの向こう側から受付嬢の笑顔が送られる。

「だいぶ大変だったようですけど、無事に依頼も達成されたのでよかったですよ」

「だいぶどころか、かなり大変という感じだったな」

 ヴァイスが苦笑いを浮かべながらそう言う。

 おそらく、その主な原因となったと感じているグレンは「すいません」とこちらも苦笑いを浮かべながら謝罪する。

「まあ、いいじゃないですか。無事に帰ってこられたんですから。終わりよければ全てよし、っていうことです!」

 色々と問題が勃発した狩猟ではあったが、クレアの言うとおり無事に帰って来ることが重要なのだ。それを思えば、こんな問題は大したことはない。

「では、こちらが報酬になります。依頼を達成した分と乱入された分を含んでいます」

「ああ、すまない」

 三人分の報酬が入った麻袋を受付嬢から渡される。

 ゼニーが入った麻袋は予想よりもずっしりとした感触がある。

「こんなにもらえるんですか?」

「はい。乱入された場合は、その分報酬も上乗せされる取り決めになっていますので」

「そうなんですか」

 クレアやグレンにしてみれば、この報酬はかなり実りのあるものとなるだろう。武器や防具を新調することを考えればとても嬉しいことである。まさに、苦労した甲斐があったというものだ。

「取りあえず、これからどうしましょう」

「二人とも疲れているだろ。今は疲れを取ることだけを考えるんだ。しばらくは狩猟には出ないつもりだから」

「そうですね。では、俺は温泉にでも……」

 ここの温泉は疲労回復などといった効能には大いに期待できる。疲れた身体もすぐに癒されるはずだ。

「ふふっ、楽しそうですね」

 受付嬢がさぞかし楽しそうに笑う。

 以前と比べ、ぎくしゃくした雰囲気が無くなり互いに本心をさらけ出せるようになったことで仲がいいように見えるのだろう。

「じゃあ、私は行きますね。私も早く温泉に入りたいなって思っているので」

「ああ、お疲れ」

 そう言い残すとクレアは集会浴場の外へと歩いていった。

「では、俺もこれで。今回はありがとうございました」

 生真面目なグレンも、クレアと同じく集会浴場を後にする。

 残ったヴァイスが、それまで三人の様子を傍観していたギルドマネージャーへと向き直る。

 ヴァイスとマネージャーはクレアたちが集会浴場を後にする時を待っていた。この会話はあまり他人には聞かせられないためである。

「さて、ようやく話せますね」

 ヴァイスが切り出す。そうすると瓢箪の酒を呷る手を止め、マネージャーが口を開いた。

「ああ、やはり今回もアタシの予想通りの展開だったぜ」

「と言うと?」

「なぁに、チミならグレンという少年の道を正してくれると確信していただけさ。そしてチミは、見事にその期待に応えてくれた」

 マネージャーが満足げに頷く。

 しかし、ヴァイスには妙な違和感があった。

「その物言いからすると、まるでグレンが俺のところへ来るということも予想済みという感じですね。あなたが俺とグレンを引き合わせようとしたんじゃないですか?」

「さぁ、アタシは何もしてないぜ?」

 ヴァイスの問いにマネージャーは惚けてみせる。しかし、張本人がこの人物であるということに変わりはないようだ。

「まったく……。クレアといいグレンといい、厄介な頼まれごとが俺のところには流れ込んできますね」

 口でこそ、そうは言っているヴァイスだが彼の表情は険しくはない。寧ろ、少しばかりか喜びを帯びているようにも見える。

「チミなら容易いことのはずだ。現に、チミはアタシの期待に応えてくれたじゃないか」

「容易いかどうかは、正直微妙なところですね」

 ヴァイスが肩をすくめる。

 容易いかといえば嘘になるが、だからといって困難というわけでもない。だが、それが厄介なことであることは変わらない事実だ。

「……でも、俺も嫌々頼まれているわけではありません。自分の意志で動いている部分もありますからね」

「なら、これからも頼もうかのう」

「人使いが荒いですね」

 冗談交じりにそう言ってみせる。マネージャーはかっかっか、と豪快に笑うばかりである。

「まあ、これからは二人の跳躍に期待しようかのう。無論、チミにもするわけだが」

 マネージャーが意志の強い瞳でヴァイスを見つめる。そこから、マネージャーがどれだけ自分に大きな期待を寄せているかが理解できた。

 ヴァイスは迷うことなく即答した。

「前にも言ったとおりです。俺は、あなたの期待には必ず応えてみせます」

「さすがじゃのう。それでこそ、『女神の騎士』の意志を継ぐ者だぜ」

 そう、ヴァイスの最初の目的はそれだった。それが故に、今までただ漠然と力を求めていた。

 だが、今はどうか。

 ここに来て、新たな仲間ができた。守るべきものができた。この地に赴き成すべきことがある。それこそが、真の目的なのではないだろうか。

「ええ。でも、もう俺は昔の俺ではありません。今の第一の目的はそれではありません」

 ヴァイスの言葉に、マネージャーはわずかながらに表情を曇らせた。

「……彼との間に何が起こったのかアタシにはわからない。だが、チミ一人で全て背負うことじゃないと思うが」

「その件については、時が来れば話します」

 暗い瞳がヴァイスにはあった。だが、それをマネージャー以外の誰かに見られるわけにもいかず、すぐに表情を引き締める。

「話が逸れましたね……。とにかく、俺はあなたや村人の期待には応えてみせます。今、俺が言いたいことはそれだけです」

 そう言い残すと、ヴァイスは集会浴場から立ち去った。

 マネージャーは、ヴァイスが消えた扉の先を自愛に満ちた様子でいつまでも見つめ続けていた。

 

「はぁ、やっぱり最高だなぁ」

 高い天井に向かって白煙が立ち上る。それが、外に向かって流れ拡散していく。集会浴場は、普段どおりのにぎわいを見せていた。

 狩猟も終わり、疲れた身体を回復させるためにグレンはここへやってきた。

 首筋までゆっくりとお湯に浸かる。全身に纏わり付くような鎖が一気に解かれたように、身体の疲労が嘘のように消えていく。

 まるで、全身がとろけていくようだった。程よい心地よさがローブのように優しく身体を包み込んでくれる。

「あっ、グレンさん」

 更衣室へと続く道からクレアが現れた。彼女も、グレンと目的は同じだ。

「隣に失礼しますね」

 一言断ってクレアがグレンの隣に腰を下ろす。

 その時、グレンはクレアの首筋に光る何かを捉えた。

「なあ、クレア。その首飾り取らなくていいのか?」

 グレンに言われようやく気づいたのか、クレアは大慌てで更衣室へと戻っていく。しばらくして戻ってきたクレアの首筋には、ネックレスの姿はなかった。

「案外抜けてる所あるんだな。クレアって……」

「そ、そんなことはどうでもいいじゃないですかぁ!」

「冗談冗談」

 おどけた様子のグレンに、すっかりクレアはペースを握られてしまった。「ぐぬぬ」と唸り声を上げるクレアを尻目に、グレンは話を別の話題に逸らす。

「けど、クレアもああいう洒落た小物を好むのか。でも、あんまりクレアがそういうのを好きっていうイメージがないから正直驚いたよ」

 グレンが自分をどういった見方をしていたかは気になるところだが、それは聞かなかったことにする。

「あれ、元々は私の物じゃなかったんです」

「へぇ、じゃあ誰かから貰った物?」

「はい」

「ヴァイスさん?」

「し、師匠があんなものをプレゼントしてくれるわけがないじゃないですか」

 クレアの言葉に対してグレンは「うーん、どうかな」と首を捻る。

「ヴァイスさん、結構洒落た人じゃないか。それこそ、女の子の喜びそうな小物の一つや二つくらいはプレゼントしてるんじゃないか?」

「そ、それは……」

 言われてみればその可能性も否定できない。

 ヴァイスほどのルックスの持ち主なら、過去に女の子の好むものをプレゼントしていても不思議ではない。だが、このネックレスは好む好まないの問題でプレゼントされた物ではない。

「で、でもでも。これはそういった用途で渡された物じゃないですから!」

 クレアは、このネックレスを貰った経緯をグレンに洗いざらい話した。

 一通り話を聞き終えたグレンは納得した様子で頷いていた。

「なるほどなぁ。クレアはその人に憧れてハンターを目指すようになったのか」

「はい。あのネックレスも、その人が御守り代わりに私に授けてくれたものなんです」

 

『あなたみたいな人に私はなりたいんです! 命を賭してまで生きる希望を与えてくれたあなたみたいに。だから――!』

 

 それが、まだ現実の厳しさを知らなかった自分の想いだった。

 成長するにつれ、自分が目指しているものがいかに困難を極めているかが理解できるようになっていった。だが、それでも決して諦めようとはしなかった。あの人の言葉を信じ、ここまで歩いてきた。例え困難な道のりだとしてもいつかたどり着きたい。

 そして、いつか目的を達成した時、あの人に面と向かい合って言いたい。「ありがとう」と。

「あの人には感謝しきれません……」

 この様子を窺う限り、クレアがどれだけその人物に感謝の意を示しているのかが理解できる。それだけ、道を示してくれた彼のことを尊敬し憧れの人物としてその背中を追っているのだ。

 だが、少しだけ引っ掛かる気がした。

「なぁ、クレア……」

「はい、なんですか?」

 じっとクレアに見つめられる。そうさせるとなかなか話しづらくなる。

「えっと、いや、その……」

「?」

「な、なんでもない! ごめん、気にしないでくれ」

 場を紛らわせようと、グレンは勢いよく湯船から立ち上がり温泉から上がろうとする。

「俺、もう上がるよ」

「あ、はい」

 状況が飲み込めずきょとんとしたクレアを残し、グレンは更衣室へと向かっていった。

 そして、真実を確かめるためグレンは集会浴場を飛び出した。

 

 一方、ヴァイスはレーナのところにいた。

 今回の狩猟の報告とグレンについて話すためである。元々、レーナはグレンの様子を気にしていたところもあったので、グレンのことは話しておこうと思ったのだ。

「そう、大変だったんですね……。でも、よかったです。ヴァイスさんも、グレンさんも無事で。さすがはヴァイスさんです」

「別に、俺は大したことはしていない。これは、グレン自信が見つけ出した答えさ」

 レーナに淹れてもらった紅茶を口に運び喉の渇きを潤す。程よい甘さと苦味が絶妙に合わさり上品な風味を引き立てる。

 以前、グレンにも紅茶を淹れてもらったことがあるが、それとはまた別の風味がある。

「どうですか。この辺り一帯では手に入らない茶葉で淹れた紅茶は」

「甘みと苦味のバランスが取れていて飲みやすい。美味しいよ」

「そうですか。気に入ってくれてよかったです」

 どうやら、この紅茶は宿屋に宿泊客に出しているものらしい。その分、紅茶にも高級感を求めこのような上品なものを出せるのだ。

 無論ヴァイスはこの宿の宿泊客ではないが、レーナの頼み事を引き受けてくれたお礼としてこの紅茶をもらっている。

「これからグレンさんと本格的にパーティーを組むことになるんですよね」

「そういうことになるな」

 彼に期待を寄せているのはヴァイスだけではない。クレアやレーナ、マネージャや村長などといったさまざまな人々がグレンに期待している。その期待に応えられるほど成長させることがヴァイスの役目となる。

「楽しみにしてますね」

 ヴァイスは無言で頷いただけだが、レーナにはその決意が読み取れた。

 ヴァイスもまた期待を寄せられている人物の一人であり、まだ未熟のグレンたちを成長させる役目を負っている。そして、その重圧にヴァイスは平然と耐えている。人としても見習う部分が幾つもあり、レーナはいつしかヴァイスに微かな憧れの意を抱いていた。

「さて、俺もやらなきゃいけないことがそろそろ行くな」

「あ、はい。お疲れ様でした」

「紅茶、ご馳走様」

 そろそろ宿泊客が入ってきてもおかしくない頃合いなので、邪魔にならないようお暇させてもらうことにした。

 見送ってくれたレーナに礼を言い自宅へと戻る道を行く。

 相変わらず人の行き来が激しい。ドンドルマのそれには到底及びはしないが、村としての活気には十分過ぎるものであった。

 道行く人とぶつからないよう気をつけつつ、これからどうしようかと考え始める。

 こちらとしても疲労の回復を優先したいところだがボルボロスについての資料も纏める必要がある。疲労を回復してからでも遅くないが記憶が新しいうちに書き記したいことは多々ある。優先順位は、どうやらこちらにあるようであった。

 続けて資料に記す内容を頭で交錯させていると、目の前からグレンが走り寄ってくるのが見えた。方向的にもヴァイスに用があるらしい。

「どうした」

 石段を駆け下りてきたせいか、グレンは肩を上下させている。一旦呼吸を整えさせ用件を聞き出す。

「突然すいません。実は、ヴァイスさんに一つだけ窺いたいことがあるんです」

「俺に?」

 わざわざヴァイスに訊かなければならないことというならば、それだけ重要な用件だという解釈ができる。確信はないが、そんな気がした。

「こんな道の真ん中で話すのも何だ。俺の家で話そう」

 ヴァイスはグレンと連れ立って自宅へと向かっていった。

 武器や入手した素材などをボックスに納める。そして、話を聞ける体勢を整えグレンの話を聞く。

「先ほど、クレアがどうしてハンターを志すようになったのか、その経緯を聞きました。その中で、クレアはある一人のハンターに憧れを抱いているようです」

「そうらしいな。それが、どうかしたのか」

 一旦間を空けると意を決して切り出した。

「そのハンター……、それはヴァイスさん。あなたではないんですか?」

 その瞬間、まるで凍りついたかのような沈黙が場を制圧した。ヴァイスは無言を貫き、グレンはヴァイスの返答を待っている。

 しばらくの後、駄目か、と考えたグレンであったがヴァイスがついに口を開いた。

「……そう、その通りさ」

「やはり、そうでしたか……」

 事実を述べたヴァイスが大きなため息を漏らす。

 本当は何となくわかっていた。このことについてヴァイスが容易に触れられて欲しくないと思っていることを。だが、どうにも腑に落ちない。

「勘が鋭いな。クレアの奴、感づいているかもしれないが、まだ俺だとは断定できていない様子だ」

 さすがだな、とヴァイスが半ば呆れ半分に、だがどこか関心しているような佇まいでそう言った。そして、そのままベッドに腰を下ろす。

「理由、聞いてもいいですか。どうして、クレアに真実を伝えないのかということを」

 もしかしたら、ヴァイスに怒られるかもしれない。そんな恐怖に晒されながらもグレンは質問を続けた。

 今度は、思いのほかヴァイスも即答してくれた。

「それがあいつのためだからさ」

「クレアのため? どうして、真実を隠すことがクレアのためになるんですか」

「フフッ、それはいずれわかるさ」

 意味ありげに静かな笑みを浮かべる。

 それ以上、ヴァイスは何も話そうとはしなかった。だが、これはある意味予想以上の収穫だった。真実を確かめられただけでも大きい。

 これ以上、グレンも話すことがなくヴァイス宅を後にした。

 一番重要な部分は聞き出すことができなかったが、それはもう気にしない方針で生活することにした。ヴァイスなりの考え、というものがそこには存在するのだろう。

 翌日からもヴァイスの態度は変わらない。彼の表情には影がなく、至って普段どおりだった。

 グレンは待つ。ヴァイスが真実を語ってくれるその時まで。

 

 それから数日が経った。

 ユクモ村はいつもと変わらない平穏な雰囲気に包まれている。幾人ものハンターがこの地を訪れ、その噂が更に人を呼び込む。そうした無限の連鎖が続きユクモ村は今に至る。

 ここのところヴァイスたちは狩猟に出ていない。皆がそれぞれ、好きなことをして過ごしている。

 ヴァイスは最近家の中に篭もりがちだ。何でも、ギルドから調査書のような物を纏めてほしいという旨の通達が来たらしい。狩猟に出なかったのも、それが主な原因であった。

 その間、クレアは凝りもせず料理の練習を行っていた。独学で練習しているらしいが、時折クレアの家の中から彼女の悲鳴が聞こえるのは余談である。

 さて、グレンはどうだろうか。

 グレンのことだから朝から夜まで楽器で演奏しているだろうと思ったが、どうやらそうではないらしい。机に突っ伏しうーうーと唸っているばかりである。

「うぅ……、書く内容がない……」

 目の前に広げられているのは一枚の紙。多少文章が綴ってあるが、あとはまっさらな白紙である。どうやら手紙を書いているらしい。もちらん、故郷の村の人々に宛てて書く手紙だ。

「はぁ、何を書こうか。内容があっても、中身は問題だらけだからなぁ……」

 作曲などのセンスはあってもこの手の文章の製作はあまり得意ではないようだ。

 実際、問題だらけというのも強ち事実である。変なことを書けば、それこそ誤解を招きかねない。だが、事実は述べておくべきだ。

「うん。取り合えず頑張ってみるか」

 迷っているだけでは何も進展はしないと理解したグレンは、頭の中からいいアイデアを振り絞ろうと努力する。そして、浮かんでは書き直し、浮かんでは書き直しという作業を繰り返す。そうして徐々に一枚の手紙として完成が近づいていった。

 そして――、

「できた……!」

 それほど長い文章を書いたわけでもないがすっかり日も暮れてしまっていた。だが、それだけの時間を費やしただけの甲斐はある。

 グレンは、今までこんな手紙を書いたこともなく、出来栄えがどうだということはわからない。だが、肝心なのは相手に気持ちを伝えるということだ。それができれば、今のグレンには十分だった。

 丁寧に二つ折りにすると、苦労して書いた手紙を便箋に入れる。

 家の外へと飛び出し、いざ出発しようとしていた郵便屋をどうにか寸前で止めることに成功した。

「これ、頼みたいんだ。よろしく」

「任せるニャ!」

 郵便屋のアイルーに手紙を託し、グレンはその姿が見えなくなるまで佇んでいた。

 手紙を書き、現在の自分の心境を語ることで俄然やる気が漲ってくる気がした。グレンは、自然に握りこぶしを作っていた。

「よし、頑張ろう!」

 輝く星たちがグレンを淡い光で照らす。まるで、その決意を最後まで見届けるかのように。その加護を受け、グレンは自分の目指す場所へと歩み続けていくだろう。

 

 後日、グレンの故郷の村に手紙が届いた。

 宛て先はこの村人全員。差出人がグレンだと知り、村人たちはどんな内容なのだろうかと期待を膨らませる。

 内一人の村人が、その手紙を読み始めた。

 そして、一通り読み終えた村人が穏やかな笑みを浮かべた。中には安堵の息を漏らす者、嬉し泣きをする者もいた。

 彼の手紙は、十分すぎるほどの想いと決意を村人たちに伝えたのであった。

 

 拝啓 

 

 皆様、お元気ですか。

 今、僕はユクモ村という村に腰を下ろしていますが元気に過ごしています。そこで、僕は別大陸ではかなり有名な方とそのお弟子さんとチームを組ませてもらっています。やや厳しい一面もありますが自分のためだと思うと頑張ることができます。

 何度か狩猟に同行させていただきましたが、その方の狩猟に対する知識や動き全てが新鮮でした。その中で僕もまだまだ未熟者だと改めて痛感させられました。足を引っ張って僕が道を誤ってもその方々は正しい道を示してくれました。本当に素晴らしい方々に回り逢え僕は幸せ者です。

 僕が目指す場所までの道のりはとても険しいものです。でも、いつか必ず強くなりたい。強くなって皆様に恩返しをしたいと思います。そして、村に持てる力全てを尽くしたいです。

 その時まで待っていてください。必ず僕は強くなって帰ります。

 最後に、村に滞在してくれている方によろしくお伝えください。

 皆様のご健康とご多幸を心よりお祈りいたします。                             敬具

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