自信を失ったのは、些細な事がきっかけだった。
あるハンターとパーティーを組み、狩猟に赴き、そして怪我をさせてしまった。それも、自分の失態のせいで。
それからというもの、他人と狩猟に臨むのが怖くなった。モンスターへと恐怖ではなく、相手に怪我をさせてしまうかもしれないという恐怖に太刀打ちできなかったのだ。
その先の時間はいとも短く過ぎ去ってしまった。たった一人で狩猟に臨んでも、所詮は下位クラスのガンナー。前衛でモンスターの気を惹きつけてくれる仲間がいなければ、まともな結果は出せなかった。
例えパーティーを組もうとも、本来の立ち回りをすることはない。援護に徹し、攻撃を仕掛けようとすることはほとんどなかった。
自分でも情けなかった。あれだけ注目を浴びていたにも関わらず、無様な結果は周りに大きな変化を呼んだ。見損なった、所詮はその程度、などという目があれば、その立ち回りを別の意味で取った人々もいる。周囲から浴びる期待が大きければ大きいほど、堕落した時に浴びる視線は冷たい。そんなことを、いつの間にか痛感していた。
そんな時だっただろうか。いつからか口にされてきた『天使』の姿を初めて理解したのは。
ハンターを辞めたい。その頃からそんな気持ちが心の内で芽生えだし、日々が憂鬱になっていた。
そんな時だったのだ。ヴァイスの名を聞いたのは。
聞けば、ヴァイスは若くしてギルドナイトになった天才らしい。そんな彼なら、何か助言をくれるかもしれない。小さな希望に賭けたのだ。ユクモ村を訪れ、彼とその仲間たちと狩猟に出た。
――そして、ある一つの結論にたどり着く。
「はぁ……」
「珍しいね。ソラさんがため息なんて」
「そ、そうですか?」
「うん。あっ、私が付き合わせちゃってるせいかな? だったら本当にごめんね」
「そんなことないです! わたしも、こうやってクレアさんを手伝えるのは嬉しいです」
もうすぐ正午になろうかという時間帯、クレアとソラは二人並んで台所に立っていた。当然、ソラがクレアに料理を教えるためである。
「ソラさん。次はどうするの?」
「えっと、これをこうして切るです」
「へぇ~」
ソラが実際に食材を切り、クレアはそれを観察する。そして、見様見真似でクレアが覚えようとする。ソラは、その間もアドバイスを続ける。
クレアも食材を切るところまでは何とか出来たようだ。だが、ソラのものと比べると若干形が不恰好に見える。
「う~ん、案外難しいんだね」
「大丈夫です。クレアさんも練習すればすぐにできるようになりますよ」
「うん、ありがとう! でも、やっぱりソラさんは頼もしいな」
「えっ?」
不意に発したクレアの言葉にソラが驚きを露わにする。
「そ、そんなことないのです。わたしなんて、褒められるほど立派な人間じゃないですよ……」
「そうかな。私はソラさんは十分立派だと思うな。それに、実際頼もしかったのは事実だもん。ソラさんのおかげでこの前の依頼も成功させることができたんだから」
「そんな、大したことじゃありません……」
ソラの結論。それは、言ってしまえば自分はハンターには不向きだったということ。
ソラも、最初から自分の実力に自信が無かったわけではない。だが、ハンターとして必要な集中力、精神力などが欠けている。自分はヴァイスなどを始めとする天才とは違う。才能があるかどうかの問題なんだということだ。
ハンターを辞めたいと思ったのも、それに繋がる。人にはそれぞれ相応、不相応というものが必ずしもある。理不尽なことに、この世界は才能があるか否かの違いが自分の運命を左右してしまうことがほとんどだ。
「……」
気まずくなったソラが黙り込む。何か喋らなくてはいけない、そうは思っても何も別の話題は浮かんでこない。
すると、クレアがふと疑問を口にした。
「そういえば、ソラさん。グレンさんと何かあったの?」
「へっ!?」
またもや、ソラは意表を突かれた。
先日、グレンが話した内容が脳裏に蘇ってくる。その時、ソラは自分がユクモ村にやってきた経緯をグレンに明かした。そして、ソラはグレンの前から立ち去った。それは、グレンに何を言われるかを恐れたからの故である。誤射をしてしまったガンナーなど、グレンは信頼してくれないだろうと思ったからだ。
いずれ、ここにいるクレアやヴァイスにも話さなければならない。自分は信頼するに足らないハンターなのだと。
「別に、何でもありませんよ……」
ソラは静かに告げた。クレアも何かを察したのであろう。このことについては、何も闡明しようとはしなかった。
そして、無事にクレアに料理を教え終わったソラは帰路についた。
時は、昨日に遡る。
グレンは、複雑な心境で朝を迎えた。夜更けまで寝付けず、まだ若干眠り足りなく感じる。しかし、グレンは身体を起こし身支度を整える。
昨日のソラの話を未だに鮮明に覚えている。誤射をしてしまったのは紛れも無い事実だ。しかし、そのせいで同行していたハンターが怪我をしてしまったわけではない。そう、グレンは教えたかった。だが、結局それは叶わず今に至るのだ。
朝食を済ませたグレンは、まだ太陽も昇りきっていない内から家を出た。しばらく石段を上り、ある人物の元を訪れた。
「ヴァイスさん、俺です。いますか」
グレンが目的としていた人物、ヴァイスからの返事はない。ヴァイスのことだから既に起床していると思ったのだが、読み違えたのだろうか。
と、その時、グレンは自らの家へ戻る道ではなく、ヴァイスの家の裏に回るような道に歩き出した。そして、すぐに開けた場所に出た。そこには、鍛錬をこなしているヴァイスの姿があった。
「おはようございます。朝から鍛錬ですか」
「ああ、グレンか」
グレンの存在に気づいたヴァイスが太刀を振るう手を休める。
「鍛錬と言っても、軽い運動程度だけさ」
「そうですか」
グレンが納得したように首肯する。
「ところで、どうしたんだ? こんな時間から」
太刀を鞘に収めたヴァイスが、額に浮かんだ汗を拭いながらグレンに問いかける。
「ヴァイスさんに聞きたいことがありまして」
「俺にか? 答えられる範囲のものなら答えるが……。とりあえず家に上がってくれ。立ち話も何だ」
「ありがとうございます」
グレンを家に上げ、ヴァイスは素早く格好を整えた。机を挟み、グレンと向かう形でヴァイスは腰を下ろした。
早速、グレンが本題に入る。
「聞きたいことは単純なことです。ヴァイスさんの自信はどこから湧いてくるのか知りたいんです」
単刀直入にグレンが切り出す。その質問を聞いたヴァイスがふむ、と頷く。
「それは、ソラのことに関係していると捉えていいのか?」
「ええ、そうです」
「なるほど」
ヴァイスは椅子に深く座り直し居住まいを正す。そして、一つ息を吐くと口を開いた。
「自信、か……。俺もあまり深くは考えたことはない。強いて言うならば、俺には自信を与えてくれる人がいたということだ」
「自信を与えてくれる人、ですか?」
「ああ。俺がハンターになる前の仲間。そして、ギルドナイトという道を示してくれた人。特に後者の人は、俺の尊敬するハンターだった」
「尊敬ですか。じゃあ、ヴァイスさんはその人に憧れてハンターを志したということですか?」
「違う、とは言い切れない。だが、その頃の俺には、ハンター、いや、ギルドナイトを志す明確な理由なんてなかった。その人を尊敬し、ギルドナイトを志すようになっていたのは、気づいた時からだった」
そう言ってヴァイスは肩をすくめる。
「俺は、あることをきっかけにその人から知恵を授けてもらった。グレンの言う自信とは程遠いかもしれないが、俺はその人に授かった知識があるからこそ、自信があるんだと思う」
ヴァイスには、クレアやグレンの姿がその頃の自分に重なって見えるときがある。
憧れや尊敬という気持ちは、ハンターを志すのに大きな力となる。どんなに辛かろうと、その気持ちがあるからこそ挫けずに進むことだってできる。そう、それはヴァイスが見てきた“彼女たち”から初めて理解できたことなのだ。
数年前の自分も、今の自分から見れば同じように映るはずだ。
「ヴァイスさんがそこまで言うなら、本当に凄い人なんだと思います。俺は、その人の名前も気になります」
グレンの真っ直ぐな問いにヴァイスが苦笑いを浮かべる。
「悪い、今は話せない。話すべきではないと思うんだ……」
「そうですか」
表情では平静を装っているヴァイスも、本心では歯がゆさを覚えていた。だが、そんなヴァイスの内心など知る余地もないグレンは、大層残念そうな表情をする。これにはヴァイスも、申し訳なく思ってしまう。
「その人は『女神の騎士』という異名を持つ。今教えられるのはこれくらいなんだ」
「女神の騎士……」
グレンは、その異名を噛み締める。
ヴァイスの憧れた存在。ギルドナイトを志したその人がどういった人物なのか知りたい。だが、今はそれ以上に大切なことがあるのを忘れてはならない。
「ありがとうございました。おかげで、答えが見えてきました」
「役に立てたなら何よりだ。それに、今度はお前の番だからな」
「えぇ、分かっています」
ヴァイスの言いたいことは理解できる。
おそらく、グレンは自分の言ったことを参考にソラの自信を取り戻そうとするだろう。集会浴場での出来事もヴァイスの耳には流れてきていた。ならば、ヴァイスは当初の思案どおりグレンの手助けをするだけだった。
「幸運を祈る」
そんなヴァイスの言葉に見送られ、グレンはヴァイスの家を後にした。
何となくではあるが、ソラの自信を取り戻す手立ては見えてきた。必ず、ソラとの約束を果たす。グレンの足は、自然と早足になっていた。
それから、一日が経った。
グレンは現在、ソラの泊まる紅葉荘に来ていた。レーナに頼み込みソラの部屋の場所を教えてもらったのだ。さらに、レーナ曰くソラは宿に戻ってきているのだという。これ以上の機会はない。
グレンの表情は強張っていた。だが、迷ってる暇ではない。意を決して扉をノックする。
「はい、誰ですか?」
中からソラの声が聞こえていた。
グレンは、一旦深呼吸すると自分の名を述べた。
「グレンだ」
「グレン、さん……?」
「ソラは俺と顔を合わせたくないかもしれない。だけど、俺の話を少し聞いてほしい。本当に少しでいいんだ」
すると突然、扉が勝手に開いた。扉の隙間から申し訳なさそうなソラの顔がでちょこんと出てきた。
「あの、グレンさん。先日はすいませんでした……。わたしも、あの時は動揺してて……」
「いや、俺の方こそごめん。ソラに辛い思いをさせて」
両者が互いに謝罪する。
とりあえず、ソラはグレンに対して閉塞した様子ではない。これで、ほんの少しだが安堵できた。
ソラに招き入れられ、グレンは部屋の中に足を踏み入れた。
この宿の部屋自体、それほど狭い作りをしてるわけではない。だが、ソラの場合、狩猟に使う荷物などにスペースを取られており、あまり広いとは言えない状況だった。
「話したいことって一体なんですか?」
ソラに勧められ椅子に座ると、早速ソラが本題を切り出してきた。
「……ソラ。俺はお前を信頼している」
「き、急にどうしたんです!? わたし、そんなこと言われても……」
「俺は本気だ。ソラが自信がないのは俺だってわかってる。だけど、今のままじゃ駄目だ! 一昨日言ったとおり、俺はソラに協力したい」
「グレンさん……」
ソラは黙り込んだ。
グレンの気持ちは嬉しい。彼が、心から自分の自信を取り戻そうとしてくれているのは目に目えて理解できる。だが、ソラはその施しを受けようとは思えなかった。
「気持ちは嬉しいです。でも、わたし……」
ソラが思い悩んでいる選択。だが、それをグレンに最初に伝えることには大きな決断が必要だった。
こうやってグレン、クレアも自分に協力しようとしてくれている。それを断ってまでこの選択肢を選ぶならば、それは二人に対して不行儀なことだろう。
「……わたしは、ハンターを辞めようと思っているです」
「なっ!?」
グレンは大きな衝撃を受けた。一瞬、ソラが何を言っているのかすら理解できなかった。
「お、おい。冗談だろ……? 突然ハンターを辞めるなんて、一体どうしたんだ?」
「わたしは、人に迷惑をかけてばかりです。ろくに護衛もできないわたしは、どうすれば分かりません。ハンターを辞める、それがわたしの思い至った一つの決断です」
静かに、そして淡々とソラは理由を告げた。
ソラは、もう人に迷惑をかけたくないのだ。いずれ、それは取り返しのつかない事故を招いてしまうかもしれない。そんなことは、どうしても避けなければならなかった。
だが――、
「何言ってるんだよ……! そんな理由でソラがハンターを辞めなくたっていいじゃないか!」
だが、グレンは納得するわけがなかった。
先日の狩猟から、ソラが他人の足を引っ張るような真似はしていないと分かっていた。ソラの発言をグレンは真っ向から否定できる自信がある。
それに、このままではソラはきっと後悔することになるはずだ。このままハンターを辞めたとしても、後に残るのはもやもやした心残りと後悔だけだ。ソラに、そんな思いはさせたくない。
「ユクモ村に来た理由は何なんだよ! 自信を取り戻したいんじゃなかったのか!? そんな簡単に諦めたら、後で後悔するだけだ!!」
「そうだとしても、わたしは他の人に迷惑をかけたくないんです!!」
互いの意志が真っ向から衝突する。
しかし、グレンもソラも自分の言っていることが正論ではないと分かっていた。
グレンは、ソラの決断を自分の意志で変えるのは見苦しいということを。
ソラは、自分の言っていること自体が苦しい言い訳で、単に現実から目を逸らしているということを。だが、二人とも退けなかった。互いに退くに退けない理由があるのだ。
部屋に沈黙が流れる。どちらとも、自分からその沈黙を破ろうとはしなかった。
――その時、
「た、大変だあああああああ!!」
宿屋の外、村の広場の方から男の声が聞こえてきた。その男が何とも慌てた様子だったため、村人たちも何事かと集まってきていた。
グレンも、その様子を窺おうと窓際へと向かおうとした。しかし、それよりも早く、何者かが部屋の扉を開け放ち中へ入ってきた。
「レ、レーナ!? どうしたんだよ。そんなに慌てて」
やってきたのはこの宿屋の娘、レーナであった。
グレンの言うとおり、レーナも相当慌てた様子である。呼吸は荒く、肩を上下させている。
レーナは、グレンの問いかけには答えなかった。そんな余裕がなかったのだろう。その代わり、レーナが用件を述べる。
「二人とも、ヴァイスさんが呼んでるわ! すぐに集会浴場に来てほしいって!」
「ヴァイスさんが? どうして」
「理由は、あたしよりもヴァイスさんから聞いた方がいいと思います。それよりも、急いで集会浴場に向かってください!」
結局、詳しい話は聞きだせず、言われるがまま二人は集会浴場にやってきた。
既に、ヴァイスとクレアは集会浴場に来ていた。他にも、複数の村人、村長の姿もあった。そのほとんどの人は、暗い表情をしていた。
二人は、ヴァイスとクレアの元に歩み寄った。
「悪いな。急に呼び出して」
「いえ、構いません。それで、一体何があったんですか?」
グレンの問いにヴァイスは一旦間を空け、こう切り出した。
「単刀直入に言おう。この村にジンオウガが接近している」
「ジンオウガ?」
グレンもソラもジンオウガについては知らないらしい。
そこで、村長が補足する。
「ジンオウガとは、
霊峰。渓流のさらに奥深くに位置している場所だということは、グレンも一応知っていた。
しかし、ジンオウガというモンスターがどれほどの存在なのかよく分からないのは確かだ。古龍に分類されるモンスターなら、ユクモ村は大きな被害を受けてしまうだろう。
「師匠。ジンオウガは、それほど手強い相手なんですか?」
同じことを思ったのか、クレアがそう質問した。実際、ヴァイスは首を横に振った。
「俺にもよく分からない。だが、ジンオウガは以前、この村に入り込んだらしい。何とか撃退したらしいが、村人たちにはジンオウガの恐怖が根付いているはずだ」
「撃退って、一体誰が……」
「シュットたちだ」
「えっ、シュット先生たちが!?」
クレアが心底驚いた様子だった。
しかし、それも無理はないだろう。クレア曰く、シュットの実力を目の当たりにしたことはないらしい。訓練所の教官であったとしても、ある程度の実力は把握できるが詳しいところまでは理解できなかったらしい。
シュットの話が持ち上がった所で、ギルドマネージャーもかっかっと笑った。
「アヤツたちには本当に世話になったものだ。まぁ、シュット以外の者の実力も高く評価できるがな」
「そ、そうだったんですか」
確かに、村にまで入り込んだジンオウガを撃退したのは名誉なことだ。しかし、今回も同じような結末を辿り、同じように撃退できるかどうかは分からない。ならば、渓流に居座っている今の内に討伐、あるいは撃退してしまうのが上策だろう。
しかし、肝心のジンオウガの情報は不足していた。現地に派遣された調査団も細かな詳細は掴めずじまいだったようだ。これでは、こちらが一方的に不利なのは明確だ。
しかし、ここでグレンがあることに気がつく。
「先日の雷光虫の噂。もしかして、それはジンオウガに関連しているものなんでしょうか」
そう。ジンオウガの二つ名は雷狼竜。雷と相性のいいモンスターだと推測するならば、雷光虫の一件も多少は紐解くことができる。
「グレン様の推測は正しいと思いますわ。調査団によれば、渓流には雷光虫が大量発生していたらしいですわ」
「やっぱり……」
情報は限りなく少ない。だが、ジンオウガが雷属性の攻撃を得意としているのはこれで確実だろう。現状では、少しでも分かること多いほうがいい。
「決まりだな」
ヴァイスが静かに呟く。
緊急に張り出された依頼書をカウンターに持っていき、依頼を受注しようとする。
「師匠!」
そのヴァイスをクレアが止めた。理由は、グレンにも分かっていた。
「私たちも行きます!」
ヴァイスが「やはりか」と言いたげにため息をついた。
危険なことは承知している。だが、クレアも、もちろんグレンもこの狩猟には同行したかった。
この狩猟にはユクモ村の安危がかかっている。同じハンターであるのにも関わらず村の存続をヴァイス一人に託すことはしたくなかった。
ヴァイスは、観念したように今度は深いため息をついた。
「わかった。同行を許可する。だが、危険だと判断したら無理矢理にでも連れて帰るからな」
「わかりました」
ヴァイスの許可は下りた。
残るはソラの意志。グレンがソラに向き直る。
「ソラ。さっきはごめん。俺は、ソラの意志を尊重すると言ったのに……。でも、これが最後で構わない。ソラの力を貸してくれ」
グレンが頭を下げる。
ソラも多少は躊躇う様子を見せた。だが、しばらくの後、ソラは力強く首肯した。
「わかったです。村のみんなの為にも、わたしは頑張るです」
「……ありがとう。ソラ」
グレンは嬉しかった。ソラが村の為に力を貸してくれたことに。
これがソラの最後の狩猟になるかもしれない。だが、その時は、笑顔で「お疲れ様」と言ってやりたい。それが、ソラの意志を尊重することならば。ソラには、ソラ自信の運命があるのだから。
「同行者は三人だ」
ヴァイスは、その言葉と共に依頼書を受付嬢に手渡した。
「皆さん、くれぐれもお気をつけて」
「私からも、お願いします。どうか、無事に帰って来てください」
「ええ。わかっています」
村長を始めとする人々は、口々にヴァイスたちの無事を願った。それは、命を賭して村を救おうとするハンターたちを尊敬しているからでこその感謝の気持ちであった。
四人は手短に準備を整え村を後にした。遠雷が轟く中、村人たちに見送られながら一向は渓流へと急いだ。