モンスターハンター ~流星の騎士~   作: 白雪

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EPISODE55 ~月に吠えし雷狼竜~

 金色(こんじき)の満月が夜空に輝いている。

 これが狩場でなければいつまでも月を拝んでいたい、そうクレアは思った。しかし、その思考も束の間、クレアは頭の中を切り替える。

「今日もまた、不気味だな……」

 グレンが渋い顔で呟く。

 そう。この渓流にはジンオウガが依然と潜んでいる。以前、力が及ばなかったモンスターが。分かっていても、自然に身体は強張ってきてしまう。

「そうですね……」

 誰かに向けたわけでもないグレンの言葉にソラが答えた。

 皆、グレンの言うとおり、途轍も無い不気味な雰囲気を感じ取っている。以前体験したはずのこの感覚は、その時より更に強く感じられた。

 やはり、ジンオウガの出現により仲間の雰囲気も危機感を帯びている。

 そんな中、クレアはヴァイスに視線を移した。既に荷物の整理を終えていたヴァイスは、一人空を見上げていた。

「師匠、どうしたんですか?」

 クレアの問いにヴァイスが振り向き、答えた。

「月を見ていたんだ。あまりに綺麗だったから、な」

「そうですか。……何だか、いつもの師匠らしくないですね」

 クレアの思わぬ言葉に、ヴァイスが訝しげな表情になる。

「何がだ?」

「いえ、いつもの師匠だったら、狩場に入ったらあまりそういうことはしないように思ったので」

 ヴァイスは「そんなことか」と言うと再び金色の満月を仰いだ。

「……まあ、確かにそうかもな」

 ヴァイスは誑かすように言った。

 実際は、クレアはヴァイスの核心を突いていた。

 こういった重要な依頼にはギルドナイト同士で承ることがほとんどだった。だが、こうしてクレア達と共にジンオウガの撃退という重大な依頼を受けてみると、自分が彼女たちを守ってやらねばならないという意志に駆られる。

 いや、クレア達はもう子供ではない。その上、ハンターである。自分の身は自分で守るということを重々承知している。そうなると、最大限の手助けをしなければならないという言葉の方が適格だろう。

 ヴァイスが一人満月を仰いでいたのは、その決意を固めるためだったのかもしれない。

「……さて、準備はいいか?」

 ヴァイスの雰囲気も次第に変化してくる。そこにいるのはまさに、狩場を駆ける一人のギルドナイトとしてのヴァイスであった。

 その雰囲気に気圧されないよう、三人も気合を入れる。

 以前から、ヴァイスは武器を変更していない。今回も氷刀【雪月花】を携えている。しかし、他の三人は武器を持ち替えてきた。

 クレアの片手剣はアイシクルスパイクという名を持つ。その名の通り、刃には冷気が宿された氷属性の武器である。防具と同じくベリオロスの素材で作られたため、盾には氷牙竜の棘が使用され、ベリオロスの頭を模したようにも見える。

 ソラは愛用のヴァルキリーファイアからブリザードカノンへと変更した。

 これもアイシクルスパイクと同じくベリオロスの素材を用いて作られている。ソラはブリザードカノンに可変倍率スコープとロングバレルを装着させ、ガンナーながら攻めを重視させている。そして、このブリザードカノンは氷結弾の速射が可能なライトボウガンでもある。

 ヴァイスの氷刀【雪月花】、クレアのアイシクルスパイク、そしてソラのブリザードカノン。これらの武器は、ジンオウガの弱点である氷属性を突いている。ジンオウガに威力を発揮するのは明らかだろう。

 しかし、グレンの携える狩猟笛は攻めを重視したものよりも援護を優先させるために選択したものだった。

 見た目はそれこそコントラバスのようにも見える。しかし、その胴体は鮮やかな模様が描かれている。

 ブナハブラの素材を主として使い、脆い部分はシーブライト鉱石で補強を施した。それにより、強い衝撃にも十分耐えることが可能になった。

 セロヴィウノ。それが、この狩猟笛の名である。

 ヘビィバグパイプに比べ、このセロヴィウノの攻撃力は心許ない。しかし、グレンが着目したのは一撃の攻撃力ではなく、演奏によって得られる効果だった。

 このセロヴィウノは体力回復【小】、回復速度【小】といった旋律を奏でられる他、雷属性防御強化【小】という旋律も奏でられる。

 この雷属性防御強化【小】は、文字通り雷属性への耐性を高める効果を持つ。これにより、雷属性を帯びたジンオウガの攻撃を少しでも軽減しようという考えなのだ。そのグレンの判断力はさすがと言うべきだろう。

「大丈夫そうだな」

 クレアたちは無言で頷く。

 ヴァイスがその三人の様子を窺う。

 皆、気合の籠った顔つきをしている。同時に、撤退を余儀なくされたジンオウガを相手取ることに対し、緊張しているかのような表情もしていた。

「俺から言えることは少ない。落ち着き、深入りせず、自分らしく動き回ってくれ」

 ヴァイスの言葉に対し、それぞれが「分かりました」と返す。

 そして、ヴァイスは満月の照らす空谷を見下ろした。

 いつも以上に不気味に静まり返った渓谷だ。それは以前、昼間に渓流を訪れた時も同じだった。だが、ジンオウガによる脅威、威圧感はより強く感じられる。

 何より、今度こそジンオウガの撃退に成功しなければユクモ村――いや、その近辺の集落までもが危険に晒されることとなる。

 それだけは阻止しなくてはならない。その決意がヴァイスを突き動かす。

「……はぁっ」

 思考から余分なことを取り除くようにヴァイスが短く息を吐く。

 プレッシャーは当たり前のように感じている。だが、似たような場面を幾度となく経験してきた。ヴァイスはそのプレッシャーに押しつぶされるほど、軟な精神の持ち主ではなかった。

「行くぞ」

 歩き出したヴァイスに、その他の三人が続く。ヴァイスに続き、クレア、ソラ、殿はグレンが務めることになった。

 拠点を後にしてからしばらくして、グレンが前を行くソラに声をかけた。

「ソラ。ちょっといいか」

「なんですか?」

「俺は一つだけソラに質問したいことがあるんだ」

「質問、ですか?」

 ソラは疑問に思いながらも、グレンの言葉に耳を傾けたのだった。

 

 

「……ここにはいないようですね」

 エリア4。ここは、以前にもジンオウガと対峙したエリアだ。そこには、ジンオウガの姿は見られなかった。

「そうだな」

 グレンの言葉に同意し、ヴァイスが辺りを見回す。そして、ある一点に意識が集中した。

 エリアの真ん中辺り。そこに廃屋が点々としていることに変わりはない。だが、ジンオウガの攻撃によって倒壊した一部の廃屋の残骸は、そのまま残されていた。

「あれ、まだ残っているんですね。普段なら、ギルドの人が処理を行うのに」

 ヴァイスの視線から、その意図を読み取ったクレアが言った。

 狩場は区域別に分けられ、ギルドが管理している。ギルドは各狩場に人員を派遣させ、捕獲したモンスターの処理、拠点の整備なども行う。その一環として、狩場で障害物となり得る物を可能な限り撤去しようと努力をする。

 しかし、ジンオウガの一件でギルドも手一杯なのだろう。狩場の環境整備までは手が追い付いていないようだ。

「仕方ないな。この短時間でどうにかできるものでもない。狩猟中は注意しておけ」

「分かりました」

 ヴァイスは仲間に注意を促し、エリア5の位置する方向を向いた。

 以前は、エリア5でジンオウガと遭遇したのだ。今回もその可能性があるとして、ヴァイスたちはエリア5へ向かった。しかし、そこにもジンオウガの姿はなかった。

「外れか」

 だが、気を落とす暇など無い。ヴァイスたちはエリア5を抜けエリア6へ向かう。

 上流から降りてきた川がエリア上に流れているエリア6。水がエリアに存在し、かつそれが流れを成している。それだけで、ハンターの動きを制限するには十分な要素だった。

 できれば、このエリアでジンオウガと遭遇したくない。しかし、その思いが通じることはなかった。

 ヴァイスたちの前方。そこに、見覚えのある巨体がこちらに背を向け佇んでいた。

「ジンオウガ……!」

 改めてその姿を捉えると、自然と身体が震えてくる。誰もが、ジンオウガの強烈な攻撃の数々が脳裏を過った。

 しかし、ヴァイスは冷静に状況を判断し、クレアたちに指示を下す。

「俺が最初に斬り込む。クレアは俺の後に続き、グレンとソラは援護を頼む」

 三人が頷いたのを見て、ヴァイスは静かに動き出した。

 川の中を突っ切るのが一番効率が良い。だが、それではジンオウガに気づかれてしまう。ヴァイスは川の流れを避けるようにジンオウガに近づいていった。

 ちらりと背後の様子を窺う。クレアが少し距離を取りヴァイスに続いており、グレンが演奏体制に、ソラはブリザードカノンに弾丸を装填していた。

 準備はできた。自分が一撃を浴びせた瞬間、狩猟が始まるのだ。

 一歩、また一歩、ジンオウガとの距離を縮めていく。そして、あと数歩で太刀の間合いに入ろうかというところでヴァイスが動きを見せた。氷刀【雪月花】を鞘から引き抜き、足りない間合いを一気に詰め、その一撃を放った。

 氷刀【雪月花】の刃がジンオウガの甲殻を貫く。ヴァイスは更に斬撃を繰り出し、ジンオウガにダメージを負わせていく。

 ジンオウガもヴァイスの存在に気が付いた。振り返ると、ジンオウガはヴァイスを見下すかのように睨み付けた。

 また、懲りずにやって来たのか。ヴァイスには、ジンオウガの視線がそう物語っているように思えた。

 ヴァイスは動く。ジンオウガの注意を自分に向けさせつつ、間合いを取る。

 ジンオウガはその間合いを詰めようと一歩を踏み出そうとした。その寸前、後方に回り込んでいたクレアがアイシクルスパイクで斬りつけた。

「はあぁぁぁぁっ!」

 氷の刃がジンオウガの尻尾を捉える。

 ジンオウガは、標的をヴァイスからクレアに移した。クレアに背を向けたままジンオウガは大きく飛び上がる。

 この動きを見たクレアもすぐさま反応した。武器を納める暇がないと判断したクレアは前転をしてその場から退避する。遅れて、空中から振り下ろされた尻尾が地面を抉った。

 回避に成功したクレアはジンオウガから距離を取る。その穴を埋めるため、ソラが狙撃を開始した。

 ブリザードカノンは氷結弾の速射が可能だ。だが、この状況では、まだ氷結弾は温存しておくべきである。そのためソラはLv2通常弾を装填し狙撃を行った。

 銃口から放たれたLv2通常弾がジンオウガの胸部に命中する。その瞬間、ジンオウガの意識がソラに向けられた。クレアはこの隙を突き、ジンオウガに再び接近した。

 ジャンプして斬り込み、続けざまに斬撃を繰り出す。回転斬りが決まると、クレアはすぐさまジンオウガから距離を取った。

 そのクレアと入れ替わるようにヴァイス、グレンがジンオウガの懐に飛び込んだ。グレンは既に雷耐性強化【小】を発生させる演奏を終えていた。一旦は援護から攻撃に転じようということらしい。

 最初に一撃を与えたのはヴァイスだった。氷刀【雪月花】をジンオウガの左後脚に向かい斬りつける。一歩遅れて、グレンがヴァイスと逆の位置に回りセロヴィウノを叩きつけた。

「ウオオオオォォォォォォォォォッ!」

 しかし、ジンオウガは俊敏な体捌きで自身を取り巻くヴァイスたちから距離を取った。そして、低く身構えるかのような姿勢から一気に突進した。

 標的となったソラにグレンがいち早く警告を飛ばす。

「ソラ、狙われてるぞ!」

「分かっているです!」

 ソラもジンオウガの動きは冷静に見極めていた。狙撃を中断し、ブリザードカノンを肩に背負うと横っ飛びで突進をやり過ごす。

ジンオウガは突進が空振りに終わったことを気にも留めず、代わりに今度はヴァイスを標的とし動き出した。

 ジンオウガはヴァイスとの間合いを詰めると右前脚を持ち上げた。そして、力任せに振り下ろすと、続けざまに左脚を振り下ろしてきた。

 ヴァイスは自分がジンオウガに狙われていることを瞬時に察していた。事前に距離を取ろうと動いていたこともあり、ジンオウガの攻撃を無傷でやり過ごすことができた。

 だが――、

「しかし、これだと長続きしないな……」

 ヴァイスはジンオウガによって抉られた地面を見つめながら呟いた。

 と言うのも、ヴァイスはジンオウガが攻撃を繰り出すよりも以前に回避行動を取っていた。にも関わらず、ジンオウガの攻撃を避けるのにあまり余裕はないように感じられたのだ。つまり、ジンオウガが動いてから回避行動を取っては、回避が間に合わないということだ。

「チッ、何か打開策が必要だな」

 氷刀【雪月花】を鞘に収め、ヴァイスは後退する。

 そのヴァイスに代わって、クレアとグレンがジンオウガに接近した。互いに武器を抜き放ち、攻撃を開始する。

 一方、接近を許したジンオウガは尻尾を攻撃していたクレアに目を付けた。

 先ほどと同じように、ジンオウガはクレア目掛けて右脚を振り上げた。もちろん、その動きを見たクレアは距離を取ろうと後方へ回避行動を取る。一撃は何とか回避に成功する。だが、続けざまに繰り出されたもう一撃は回避できるほどの余裕が無かった。

「くっ!」

 そのことは、クレアも理解していた。

 クレアは瞬時に体制を立て直し身を翻した。そして、右手に構えた盾をほぼ反射的に突き出した。ここでは、紙一重の差でクレアに軍配が上がった。ジンオウガの振り下ろした左脚はアイシクルスパイクの盾に阻まれ、クレアを捉えることはできなかった。

 攻撃を完全に受け止めることは不可能で、クレアは若干ダメージを受けてしまう。しかし、その程度の傷は動きに害を及ぼすことなく、クレアはすぐさま後退した。

 ジンオウガは捕らえ損ねたクレアに追撃を加えようとする。だが、背後からヴァイスに攻撃を仕掛けられるとジンオウガの気は変わった。

 ジンオウガはヴァイスに向き直り頭突きを繰り出す。しかし、ヴァイスはそれを回避する。

「オオオォォォォォォォォォッ!」

 ジンオウガは、自分に敵対する者たちの中でヴァイスが最も厄介な存在だと認識したのだろう。ジンオウガはヴァイスを執拗に追い回す。

 距離を取ったヴァイスにジンオウガが飛び掛かる。だが、ヴァイスはこれを容易く回避して見せた。

 ジンオウガも逡巡としているわけではない。だが、そうでなくてもヴァイスを捕らえることは難しいと判断した。

 そこで、ジンオウガは再び標的を移す。今度は、遠距離から狙撃を行っているガンナー――ソラに目を付けた。

 一方、ソラは異変に気づき、すぐにでも動き出せるよう身構えた。そのソラの目の前でジンオウガは動いた。

 背中の蓄電殻が淡い光を帯びたかと思うと、そこから一発の雷光弾を繰り出した。

「やっぱり、あれはただの雷撃じゃない!」

 クレアは以前、この雷光弾が緩やかに進行方向を変えてくることに驚愕しダメージを受けてしまった。あの時は確信を持てなかったが、改めて見てみて分かった。

 あれは背中に集積させた雷光虫だ。ジンオウガは雷光虫を飛び道具として用いソラ目掛けて放ったのだ。

 ブレスが意志を持ったように、その雷光弾はソラに吸い込まれるよう進行方向を変えていく。

 だが、ソラも冷静だった。雷光弾の動きを見極めると横っ飛びを行った。これで難を逃れたとソラは思った。だが――、

「ガアアアアァァァァァァァァァァァァッ!」

 ジンオウガは、ソラの動きを先読みし動いていたのだ。ソラに接近したかと思うと、ジンオウガは空中に身を躍らせ反転し、そのまま尻尾を叩きつけた。

「っ!?」

 ソラもジンオウガのこの動きには意表を突かれた。無意識の内に身体が動くことを止めてしまう。

 だが、それも一瞬だった。ソラはその時、何も考えていなかった。しかし、頭では考えられなくとも身体は勝手に動いていた。以前、驚愕のあまり同じ攻撃を喰らったことを、その痛みを身体は覚えていたのだ。

 尻尾が地面を抉る寸前、ソラは横っ飛びを行っていた。まさに、間一髪の差で回避に成功したのだ。

「はぁ……、はぁ……」

 短時間でスタミナを消費してしまい息遣いが荒くなる。だが、ソラは身体に鞭打ちジンオウガから離れる。

 後退する間にソラが狙われぬよう他の三人がジンオウガに接近した。

 ジンオウガは早々にソラに興味を失ったようだ。代わりにグレンを正面に捉え突進する。

「くそっ!」

 重量のある狩猟笛を構えていると幾分と動きは衰えてしまう。グレンはセロヴィウノを背負わずに突進を回避する。そして、ジンオウガが追撃してこないことを確認すると演奏を開始した。

 自身を強化する演奏効果、移動速度UPとはじかれ無効を発生させる演奏を行った。これにより、グレンは攻撃面でも活躍できるようになることを狙っているのだろう。

 突進を終えたジンオウガが身を翻した。剣士の三人はジンオウガに接近しつつ、ジンオウガがどう仕掛けてくるか警戒した。

 呼吸を整えたソラは既にブリザードカノンを構え狙撃を開始していた。そして、ソラが弾丸を装填しようとした刹那、ジンオウガは動きを見せた。

 攻撃を仕掛けてくるのではない。ジンオウガは暗鬱の空に浮かぶ満月に向かって咆哮した。それを合図にジンオウガの身体が青白く発光していく。

「ウオオオオオオォォォォォォォォォォォォン!」

 ヴァイスたちだけではない。この空間にいる生物を、渓流を恐れ戦かせるかのような咆哮が響き渡る。木々は揺れ、風が騒めく。以前も体験したあの感覚が全身を走った――。

 その矢先、視界が真っ白に染まった。反射的に目を庇ってしまう。ジンオウガが一際強く発光したわけではない。

 この光は閃光玉だ。ヴァイスが閃光玉を投擲したのだ。

「冷静になれ。まだ、狩猟は始まったばかりだ」

 ヴァイスの一言で、それまで震えていた身体は嘘のように治まった。

「そうか。閃光玉か」

 グレンが納得したように頷く。

 ジンオウガは帯電行動を行う際、行動出来なくなるらしい。最も、これは最大の好機である。この隙を逃さずジンオウガの懐に飛び込み、一気に畳みかけるのも一つの手段だ。

 だが、ジンオウガが超帯電状態となった場合、逆にこちらが不利な状況に追いやられてしまう。ヴァイスはそれを避けるため、ジンオウガを超帯電状態へと移行させない――つまり、一気に仕留めるのではなく、より確実な方法でジンオウガの体力を削っていこうという魂胆なのだ。

「ガアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 視界を潰されたジンオウガが闇雲に攻撃を繰り出す。しかし、それがヴァイスたちに命中することはなかった。

「さあ、行くぞ」

 この時間もそう長くは続かない。ヴァイスは先陣を切って無茶苦茶に動き回るジンオウガに接近していった。後にクレアとグレンが続き、ソラが援護射撃を開始した。

 月下にジンオウガの咆哮が再び轟いた。

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