王子殿下とポンコツ忠臣達   作:もすそりゅーと

1 / 4
アホとピンクと暴走列車

僕、リオン・ゼルハートは王子である。より詳しく言うならば、第三十二代国王グレイズ・ゼルハートの息子でありゼルハート王国王位継承権保持者。つまりは次代の王様だ。しかし父上が病床に伏し、前のように執務を行うことが難しくなったため、父上の判断を仰ぎながらも実質的に王の仕事は僕がやっている。……もちろん僕は14歳、子供だから1人だけじゃ難しい。だけど僕には仲間がいる!頼れる仲間……頼れる仲間が、いるはずなんだけど……

 

 

「リオン様!!!リオン様!!」

 

あの声が大きいのはアリアレット・クレイス。いつも声量が大きいとして有名だ。前は最強の訓練生、なんて言われていたらしい。……あと一応、僕の近衛騎士だ。……何か、縄でぐるぐる巻きにされた男が引きずられているけど……

 

「王宮に侵入していた暗殺者を捕まえてまいりました!!!!」

「なんで連れてきちゃったんだ……!」

 

あるだろう!弊害とか、色々!アリアレットに限ってうっかり手を離しちゃうとかないと思うけど!なんで連れてきちゃったんだ!?

 

「あっ……それもそうですね!こら暗殺者!我が王を殺すつもりなんだろ!殺さないって言え!」

「ひっ……こ、殺さない!」

「殺さないらしいです!」

 

なら良し!なわけないだろアホ!この状況でそれ以外言えるか!今か今かと僕のことぶち殺したくて殺意のボルテージ熱してるような顔してるじゃないか!

 

「…………」

 

アリアレットは何かソワソワしてるし……まあでも、功績をあげたのは事実。彼女は僕をいつも守ってくれている、最近は特に刺客だとか多いからね。窓の外から飛んできた矢を蹴り落としたのは流石に引いたけど。

 

「……まあ、よくやったよ。いつも守ってくれてありがとうアリアレット。でも早く牢に拘束してきなさい……」

「はっ!」

 

そう元気よく返事をしたアリアレットは、びしっ!とお手本のような敬礼を僕に向かって……向かって……あの、縄解けて……

 

「あっ。……死ね!!!愚王の息子!!!」

「アホ!アホ騎士!!」

「もうっっっっしわけございませんんんッッ!!!」

助けて!!!助けてアリアレット!!!!

 

 

さて。

開放された暗殺者を一瞬で鎮圧したアリアレットは牢に連行しにいった。まったく、とても怖かった……なので正座を言い渡しておいた。反省しろアホ。……足が震えて歩けないんだけど。ふざけるなよほんと……

 

「リオンさまぁ……」

「ひゅひぃっ!?」

 

後ろから話しかけるな!!なんだかとてつもなく間抜けな声が出た気がするが気の所為だと思いたい。……で、この子は……

 

「あのう、前話してた戦術魔法の件なんですが……」

 

ラントリス・シュヴァレイク。僕が勧誘し、王宮仕えになった魔法使いだ。数少ない魔導書が読める人間だからね、貴重な人材。あと数少ない頼れる存在でもある。

 

「ああ、あれ……進捗はどう?」

 

頼んでいた魔法というのは、無血で大勢を制圧できる催眠魔法だ。出来れば血を見たくない、殺したくはないから。甘ったれてるのは分かってるけど、無駄に大きな国なんだから甘ったれさせてほしい。

 

「魔法陣とルーンは完成したんですけどぉ……そのぉ、やっぱり王族専用の魔法教育を受けてらっしゃるリオンさまの助言が聞きたくてぇ……」

 

まったく、ラントリスはもう少し自信を持った方がいい。独学であの異国語と異国語と異国語を混ぜたみたいな怪文書を解読して、書かれていた内容つまり魔法を習得しているというのに。僕も1回教えてもらったけど、「私」か「貴方」か「アレ」かで文法が変わるなんて分かるわけないだろ。

 

「……うん、うん。よく出来てるじゃないか!やっぱりラントリスは凄いやつだな!」

 

差し出された羊皮紙に描かれた陣を覗き込み、その完成度に感嘆する。凄い精度だ……僕はこれを書くことは出来るけど、思いつくことは出来ない。魔法陣とは最終的に発動する魔法が複雑化すればするほど精度と工夫と知能が必要になってくる。

 

「(わわわわわっっ!?顔近ぁっ……!?い、いい匂いもするしっ……!!!あ、あたしにこんなに近づいてくれるなんてもしかしてリオン様あたしのこと……!!!)」

 

それにルーンも適切な物が適切な場所へ刻まれている。ルーンとは魔法陣に刻む補助装置のような物であり、陣の余白をかなりとる代わりにある程度の複雑な処理はそれだけで行うことが出来る。ルーンだけで魔法を扱う魔法使いも居るくらいだ。

 

「(は、鼻息荒くなってないかなぁ!? 心臓ドキドキしてるっ、聞こえちゃってないかなぁ!?)」

 

つまり何が言いたいかといえば、ラントリスは超優秀な魔法使いだってことだ。引き込んでおいてよかったよ、頼れるしポカしないし言うこと聞いてくれるし。

 

「実用化まであと1歩だね。試用実験の方は僕で準備するから休んでくれていいよ」

「はっ、ははぁ……!精進致しますぅぅ……!!」

 

……そう言うと、逃げるように走って出ていってしまった。……僕、嫌われてるのかなぁ……

 

 

さてさて。そう言えば今日は「あいつ」を見ていない。あいつが僕の前に姿を表さないのは大抵悪いことをしているときだ。そろそろ直接訪問しなきゃな、なんて考えているとドアが勢いよく開き銀髪の少女が飛び込んでくる。

 

「リオン様!」

「何……?」

 

噂をすればなんとやら。「あいつ」こと僕の参謀、ルシレーヌ・ミラヴィスの登場だ。心臓に悪いから突然飛び込んでくるのやめてほしい。今日は特にやめてほしい。

 

「扉の前でアリアレット卿が正座しておりましたが……どうされたのでありますか?」

 

扉の前でやってるのかよ。確かに場所は指定してないけどさ!

 

「刺客を僕の所に連れてきた」

「なるほど!それはああなりますな!」

 

……でも、ちゃんと反省しているみたいでよかった。後でちゃんと褒めておかないとな……ところで。

 

「何しに来たの?」

「こちらを確認していただきたく……」

 

そう言えばプロパガンダの思案をしているって聞いてたな。父上の政治は悪政だとは思わないけれど、貴族の地位は幾らか落ちた。貧富の格差を縮める為に必要なことだったけれど、それで1部の過激派からは反感を買っている。

 

「どれどれ……」

 

ふむふむ。「リオン王子殿下ワンマンライブ」……「ゼルハート中央音楽堂」……?

 

「……一応意図を聞いておこうか」

 

多分無駄だけど一応聞いておこう。多分無駄だけど。

 

「はっ!まずライブとしたのは国民達にリオン様のかわい親しみやすさを知ってもらうための物にあります!楽曲はゼルハート国歌ポップアレンジ、オリジナル曲『ぜるはぁと♡ずきゅーん』の2つであります!そして衣装ですが……!!!」

 

謎の鞄から取り出されたのは、白と水色でひらひらのついた服。色合いは僕の正装に似ているけれど、デザインがメルヘンちっくだ。なんというか、絵本の挿絵の王子様というか……

 

「僕やんないからね?」

「えっ!?」

 

えっ!?じゃない。なんで?みたいな顔をするな。困ってるのは僕の方だぞこのッ!

 

「お言葉ですがリオン様!!この計画が成功すれば民衆は必ずリオン様を支持いたします!!刺客を送る過激派貴族たちはまだ成人していらっしゃらないリオン様が死んでも民は何も言わないとタカを括っているのですありますよ!」

「計画段階で挫けてるんだよ!!正座してこい!!」

「そんなぁ……!」

 

そんなぁ!じゃない!ルシレーヌはこういう所があるから怖いんだ!まったく、なんでこうなってしまったんだか……しかしこのポスター、作り込んであるなこれ。本当にやらせるつもりだったのかな……やらせるつもりだったんだろうな……

 

 

こうやって、僕は3人の忠臣に囲まれて忙しくとも賑やかな毎日を過ごしている。しかし僕は気付かない、気付くはずもない。僕の日常へ、恐ろしい影が迫っていることに……




・リオン王子殿下
金髪紅眼の少年。身長145cm。短パンが似合う男の子。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。