王子殿下とポンコツ忠臣達   作:もすそりゅーと

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忠義の騎士

私、アリアレット・クレイスは騎士である。

騎士貴族の家庭に生まれた私は、あまり人と関わるのが得意ではない性格だった。最強の訓練生なんて言われていたけれど、それだけ。友達なんて一人もいなかった。

……けれど。

 

「僕の剣になってくれ、アリアレット・クレイス」

 

あの日から。夕日に照らされた、あの人の横顔を見たあの日から。

 

「……ついて来てくれるね?」

 

私の剣は、我が王に捧げられた。

 

 

私の朝は早い。リオン様の近衛騎士である私は、朝早くから主をお守りせねばならない。夜はラントリス殿が守っているらしいが詳しくは知らない。

 

「お邪魔致します」

 

リオン様はよく眠るお方だ。私が入ったぐらいじゃ目覚めない……もちろん、これは私が信頼に足ると判断された事に起因するので危なくなれば直ぐに起きてくださる。

 

「……さて……」

 

まず行うことは、不届き者が居ないかの確認作業である。刺客が潜んでいた事があり、それからしっかりと探すようにした。これまでに不審者2人、ルシレーヌ殿1人が隠れていたのであの時気付かなかったらと思うとゾッとする。ベッドの下、クローゼットの裏、本棚の中……くまなく探したが見付からないので居ないものと判断した。まあ、私には自慢の嗅覚があるので変な匂いがすれば分かるのだけど。

 

「……リオン様!!!」

「ああ……ぉはよぉ……朝から声が大きぃ……」

 

リオン様の寝起きはかなり弱い。なのでこうして私が起こす。別にこの我が王を独り占めしたいとかそんなのじゃない。

 

「……毎度思うんだけど、なんで近衛騎士が起こしに来るんだ……?」

「近衛騎士ですので!!!ああ、お望みでしたら使用人の服を……!」

「そのままでいいよ」

 

なるほど騎士の私を求めているのですね!!ふふふ、少し照れますね!

 

「絶対君の想像通りじゃないからな」

 

 

お着替えとお食事を終えたらリオン様は執務に入る。お若いのにご立派だ、3歳下とは思えない程に。よく分からないけど、内政や外国との関係にいつも苦労している様子。だから私が安心させてあげるのだ。なので……

 

「リオン様!!こちら本日の刺客でございます!!」

「なんで見せに来ちゃうんだ……!!」

 

3人チームで来た刺客を制圧し、硬く縛って我が王に見せる。こうするとお褒めの言葉をいただけるのだ!

 

「反省した様子ですので!なっ!もうやらないな!」

「ヒィっ……もうやらないです……」

「ほら!!!」

 

もうやらないって言ってるのでもうやらないんでしょう。反省してるに違いありません。……それにきつく硬く縛っておりますので!前のように解けることもありません!!

 

「まあ、感謝しておくよ……よくやったね、アリアレット。……毎回思うけどさ。うちの国、治安悪くない? いっつも暗殺者いない?」

「それも……そうですね。鎮圧いたしますか?」

「やめろ……」

 

とても疲れた様子だ……あ!!これは私が癒して!!!差し上げなければ!!!!

 

「リオン様!!!我々獣人の匂いには癒し効果があるそうです!!!お試しください!!!」

「何を言ってるんだアリアレット……!」

 

お試しいただくため私は歩み寄り、『濃い』と言われる頭を差し出します!!!引かないという事は合意ですよね!!!さあ吸うのです我が王!!!!

 

「うゎ、やめ…………?」

 

私の目線より頭が下にあるため、地に膝をつき胸に擦りつけます!!!オラ!!嗅げ!!

 

「……これは……すん、確かに……落ち着く気がするな……」

 

強ばった身体から無駄な力が抜け、すんすんという鼻息がする。そして私の方も、リオン様の匂いに包まれており…………

 

「ふわぁぁ……」

「待て……なんで君が崩れ落ちるんだ……」

 

あまりの癒し効果にへにゃへにゃになってしまった。

くっ!!不覚!!私が癒すハズだったのに!!

 

「というか……もういいから、あの刺客を牢に……あれ? なあ!縄が解けてるように見えるんだけど」

「ああ、あれは……解けておりますな。仕込み刃でもあったのでしょうか」

 

まったく。反省したと言っていたのにまた悪いことをするつもりらしい。……許せない。

 

「アホ騎士!!!!」

「死ね!」

「愚王の!」

「息子!」

 

許されない。彼らは我が王を、リオン様を見ちゃいない。ただ自分たちが嫌いな王の息子であるというだけで殺そうとしている。そんな卑怯者のする真似を許せるものか。……だけど1度は許した、なら……

 

「早く片付けてね……??」

 

2度目を許す義理はない。

 

 

高く跳躍したアリアレットは、横に回転しながら男の顔面に爪先を叩き込む。

 

「あ……!?」

 

真後ろに吹っ飛んだ男は勢いよく床に後頭部を叩きつけ、動かなくなった。怪我で済んだか死んだかは後で確認すればいい。

 

「このアマ、よくも!」

 

残っている男たちは、ナイフを持った奴とサーベルを持った奴だ。そのナイフを持った方が、着地し背中を向けた騎士へ殺意を以て走り寄る。しかし……

 

「”丸見え”です」

 

振り向いた……いや、振り向いてすらいない。何も見ず、踵で腹を蹴りあげ浮かす。

 

「な……」

「幸運を」

 

無防備に重力から突き落とされる男の身体の側面に、くるりと回り遠心力の篭った槍のような蹴りが突き刺さる。

 

「が、ハっ!?」

 

何が起こったか分からないような顔をしながら、大理石の床に赤い筋を残しぴくりともしなくなる。

 

「……もう貴方だけですよ。どうしますか?プライドも情けも無く逃げますか?」

「クソっ……!くそったれ……!!」

 

そして最後の一人は。崩れ膝を付き、涙を流しながら降参した。

 

 

さてさて、そんな風に3人の刺客による王子殿下襲撃は私の活躍で事なきを得たのです。それにマーキン……いえ、私の匂いで癒されてくださる事も判明しました。つまり、今日は私の大活躍というわけです。

 

「……アリアレットさん、どうして執務室の前で正座してるんですか……?」

 

「ラントリス殿。これには事情があるのです。ポカして正座を言いつけられたわけでは決してないのです」

「(ポカして正座を言いつけられたんだ……)」

 

何か誤解をしている顔ですね。まあ私は忠義の騎士ですのでこれ以上の言い訳はしません。言い訳が出来ないというわけではないありません。

 

「あの、あまりリオンさまに迷惑をかけちゃダメですよ……?」

「無!!!論!!!」

「ひゃぅ……」

 

もう私は学びました。そう、不用意に見せに行くからダメなのです。油断するからダメなのです。ちゃんと反省させられなかったからダメなのです。……つまり。……次は、しっかり反省した上でガチガチに縛れば良いのです!!!!!!

 

「あの、言っておきますけど連れてくることがダメなんですからね!!」

 

 

夜になりました。私の職務はリオン様が起きてから寝るまでの間ですので、もう少しで終わりというわけです。

 

「リオン様!!私に寝かしつけさせてください!!」

「毎日言ってるけど一人で寝れるよ!!」

 

ですが!!リオン様と一緒にいたいからと言って寝かせないのは不忠義!!私は忠義の騎士なので!!

 

「そう遠慮なさらずに!さあ!!さあ!!」

「わっ……来るな!僕に近づ……ふわぁ…………」

 

こうやって頭を抱きしめ匂いを吸わせればすぐに力が抜けてしまうのです!!これも忠義の成せる技!!!

 

「さあ!!添い寝いたしますよ!!」

「はな……れろぉ…………」

 

密着したままベッドに飛び込み、ぎゅうぅっとしながら背中をとんとんしてあげます。……はい……はい……はい……

 

「ううぅ……すぅ……」

「ゆっくり、お休みください……」

 

そうしていると、ドアが開き……

 

「おやすみのところ失礼します、防衛魔法のセッティングに……」

「あっ」

「えっ。……何してるんですか、アリアレットさん……??」




アリアレット:アホ騎士。166cm。黒髪青眼の獣人で癒し効果のある匂いがするけど致命的にアホ。
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