スーパーハイスクール   作:生き残れ戦線

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第一話

「死んだアアアア......あ?」

 

意識の覚醒と共に勢いよくライフは跳び起きた。

元気よく吐き出される絶叫と共に。

しばし呆然とする。

あんぐりと開けた口を開閉しながら頭に手をやる。

穴はあいていない。

 

「.....生きてる?」

 

そう考えて首を振る。

いやありえない、確かに俺は殺された。

数秒前の出来事だ。今も鮮明に覚えている。

弾丸が目を貫いて頭蓋を貫いたあの感触を。

あれが夢なわけがない。

確かにアレは現実で俺は死んだんだ。

じゃあここは天国かというとそうでもない様相だ。

ここは俺が在籍する教室の中だ。

遅れて気づく、教室には俺を含めて六人いた。

 

倒れている生徒達を見て驚いた。

その中に死んだはずのシェンとユウがいた。

駆け寄って助け起こす。

 

「大丈夫か?おい!」

「うぅ....あれ、どした?」

 

シェンが目を覚ました。

もう呼びかけに答えてくれないと思っていたはずの彼の口が動いた。安堵のため息をこぼす。

 

「よかったぁ.....!」

 

無事だった。どこにも外傷は見当たらない。

みんな生きてる。

介抱して回ること十分後。

全員の意識が覚醒した。

みな多少の記憶の混乱があったが話が出来る状態だった。

それで分かった事だが全員に共通点がある事が分かった。

それはみんながあの殺人鬼に殺されていた事だ。

 

「つまり私達は一度死んで生き返ったという事でしょうか?」

 

状況を分析してそう言ったのはユウ=アメリアだ。

白い肌に黒髪の少女。

殺されたはずのクラスメイトは冷静そのものと言っていい。

この状況に対して畏れや怖がった様子はない。

その事実に驚くばかりだ、なにより頼もしい。

 

「駄目だな他の教室にも誰もいない。いや、この学校には俺達しかいない」

 

そう言って報告したのはリンク=ハワード。

金髪碧眼おまけに筋骨隆々、笑顔の似合う良い男だ。

短い時間で学校中を見て来てくれた。

その結果、現在この学校には俺達しかいない事が分かった。

明らかな異変である。

俺達の置かれている状況がより不可解なものになった。

 

「じゃあ私達は本当に死んでしまってここは.....天国?」

「にしちゃあ夢のない人為的な天国だな」

「でもそうとしか思えないような状況です。全員で集団幻覚を見ているなら別ですけどね」

 

リンクと話すのはケミス=ミケラ。

眼鏡をかけた秀才風の青年で、この人も筋肉が凄い。

黒い肌も相まって前腕筋の彫りの深さは惚れ惚れする。

眼鏡をくいッと上にあげる仕草が絵になる男だ。

 

「時刻はちょうど昼の十二時、犯行が起きた直後ですね」

 

腕時計を見てそう言ったのはドギー=フローゼン。

モデルのような均整の取れた筋肉美を誇る褐色肌に金髪の少女だ。

彼女もまた落ち着いた様子だ。

 

何だか凄い子達だな。

自分以外の五人を見てそう思う。

成績首位のシェンは言うに及ばずみんな落ち着いて解決の糸口を探ろうとしている。

俺も彼らに協力しないと。

 

——約定の刻きたれり。

 

どこからともなく声が木霊した。

違うこれは頭の中に?

全員がその声を聞いていた。教壇の上からだ。

 

「おいあれ」

 

リンクが壁を指さす。壁一面に血が浮き上がる。

俺達の視線が集まる中、壁に描かれた血は文字の形をなしていく。

 

『因果律によって選ばれし贄達よ。これより賽を執り行う。

羊であり狼であるお前達には死と生の権利が主によって約束されている。

生き延びたくば戦うがいい、死にたいのなら我が使徒に殺されるがよい』

 

およそ非現実的な出来事が連続している。

なのに妙に納得していた。

こんな事が出来る奴なんて天使か悪魔の仕業に違いない。

 

「質問があるお前は誰だ?」

 

ケネスが虚空に向かって問う。

だが返事はない。くいっと眼鏡をあげる。考する際の癖なのだろうか。

おもむろにシェンが教壇にあがり壁の血文字に手を押し当てる。

 

「大丈夫なのかよ呪われたりしねえ?」

「その心配はないようですね、ただの血ですよ」

 

だとしても平然と不可解な現象の一端に触れる事の出来る胆力に恐れ入る。

 

「生きたいなら戦えと書いてあるわね、つまり私達はまだ死んでいないという事よね」

「確かに」

「使徒って何のことだ?戦えってどうやって?おいどうやって戦えばいいだよ!」

 

リンクも虚空に向かって叫ぶ。

答えはないと思っていたが途端に教室全体が歪みだす。

変化が終わると——壁一面に多種多様な武器が飾られていた。

これには彼らも面食らう。

 

「....ずいぶんと準備いいじゃねえかよ」

 

ぽつりとリンクが呟く。

確かにと内心で頷いた。まだ状況は理解できていないけど、各々武器を手にすることにした。武器と云っても原始的な物ばかりで、まるで中世に出てくるような剣ばかりが置かれている。

とりあえず適当にロングソードとシールドを選んだ。

シェンは大盾、ユウは錫杖のようなものを。

 

「それでいいの?」

「うん、これでアオを守るよ」

 

気障な事を戸惑いなく言いやがった。

おいおい惚れちまうじゃねえかよ。

なんて冗談を言い合う。

 

「楽しそうね貴方たち」

「楽しいわけじゃないけどさ、いつも通りでいようと思って」

 

俺一人取り乱してる場合じゃない。

彼らを見ていたらなんとかなる。自然とそう思えた。

その時、バンと銃声が鳴った。

 

「っ......!」

 

あの音だ。聞き間違えるはずがない。

まさかあいつもここにいるのか!?

全員が緊張する。リンクもケネスもだ。

凄惨に殺されたばかりだ無理もない。

 

「まさかあいつと戦えってのかよ!上等じゃねえか!」

 

真っ先にリンクが動いた。

制止する間もなく教室から飛び出すと走り出していった。

殺人鬼の元に向かったのだろう。

 

「待てリンク一人で行くな!」

 

ケネスとドギーが追いかけて行った。

二人が出ていくのを見て俺もシェンとユウに言った。

 

「俺達も行こう」

 

二人は頷いた。

 

 

教室を出ると廊下は予想に反して静まり返っていた。

先に行った三人は大丈夫だろうか。

心配を胸に廊下を曲がると直ぐにケネスとドギーが見つかった。

止まれと合図をしてくる。

良かった無事だったと安堵する。

 

「リンクは?」

 

リンクが居ない。疑問を口にするがケネスは口に一さし指を当てて喋るなの合図。指示通り口を噤む。曲がり廊下を見ろと合図をしてくる。

そっと覗き見ると奴だ。あの殺人鬼が立っていた。手には拳銃もある。リンクは見当たらない。

奴はその場で突っ立っている。

静観していると状況は動いた。どこからともなく投擲物が飛来する。

何だろうと目を凝らしてみるとクナイの様な物だった。

深々と殺人鬼の頭に刺さっている。

今度は廊下の窓が割れてそこからリンクが現れた。

 

「キィエエエエイイイ!アイムNINJAだぜ!!」

 

という言葉と共にリンクは腰に装着していた刀を抜くと一刀両断。

袈裟掛けに切り裂いた。血しぶきを上げて倒れる殺人鬼。

.....強い。

 

「お前なんか不意打ちじゃなきゃ負けねえんだよ俺は忍者だぜい?」

 

忍者かどうかは知らないが無駄のない動きだった。

実際もう殺人鬼を倒してしまったのだから。

ケネスがやれやれと首を振る。

 

「.....あいつ俺が囮になるからトドメはお前たちがさせとか言っておきながら全部自分でやってしまうとは」

「まあリンクらしいと言えばらしいわね」

 

勝鬨を上げるリンクとその様子を呆れた目で見ている二人。

勝ったのか?こんなにも簡単に。

あの殺人鬼を殺した。

ライフにはそれが信じられなかった。

 

こちらに笑顔を向けるリンク。その背後でゆっくりと立ち上がる殺人鬼を見てライフは自分の考えが間違っていなかった事を知る。

途端に叫んだ。

 

「リンク後ろ!」

「お?」

 

その前に殺人鬼の銃は撃鉄を鳴らした。

瞬間リンクの腹に風穴があく。そこから冗談のように大量の血が漏れ出す。

膝から崩れ落ちるリンクを見てケネスが動いた。

肩にかけていた弓を構えてすぐさま矢を番えると放つ。

矢は一直線に殺人鬼の胸を射抜いた。

 

「ドギーとどめだ!」

 

直後にドギーが地面を蹴る。

しなやかな筋肉からなるランは瞬く間に彼女の体を殺人鬼の元に届かせた。

肉薄し持っていた見るからに鋭利なナイフを閃かせる。銀色の刃が殺人鬼の首を切断した。

喉からごぽりと血があふれる。

普通の人間なら確実に死んでいるダメージの数々だ。

 

それでも殺人鬼は死ななかった。奴の手が動いたのだ。

 

まずドギーの足が撃ちぬかれた。

痛みに悲鳴を上げるドギーの顔を平手打ちにする。彼女の体が吹っ飛び教室のドアを壊してその中に。それを無視してケネスに向かって発砲する。苦悶の声を上げてケネスが倒れる。

その一連の光景を俺はただ黙って見ていた。

瞬く間に三人が倒されたのだ。

俺は何も出来ないでいた。

 

.....動け頼む動いてくれ。俺は何のためにここに来た、

コミックの主人公みたいに恐怖に立ち尽くす為か?誰かが助けてくれるのを待っているのか。違うだろ。

生きるために。あの理不尽な殺人鬼から大事なモノを守る為に。

 

「っ動けえええ!!」

 

気づけばライフは走り出していた。

お世辞にもフォームは崩れていてドギーの様に足は早くない。

それでも奴との距離を埋めるには十分だった。

 

「くらえええ!!」

 

恐怖をかき消すかのように吠えて切りかかる。

首を切断しようと動いたその攻撃は、あっさりと躱された。

俺の体は切りかかった方向によろける。

殺人鬼が楽しむように銃口を向けた。

 

こんなにも剣が重いなんて知らなかった。

平和な時代に生まれて命の取り合いなんて事もしてこなかった。

こんな事ならもっと鍛えておくんだったな。

最後に考えるのは他愛もない事だった。

 

ちゃんと妹に別れの挨拶しとくんだった。

プリン勝手に食べてごめんな。

 

父さん母さんごめん.....おれ今度こそ死ぬ。

死に際に家族の姿が脳裏をよぎり。

 

「.....なに諦めてんだ俺ええ!!」

 

咄嗟に剣を手放してもう何も考えず盾を前に突き出した。

銃声と一緒にガキィンと甲高い音が鳴り響く。

その衝撃で俺は後ろに転がった。

 

頭を打ってめちゃくちゃ痛かったけど助かった。

生きながらえている事に神様に感謝したいが、そんな暇はなかった。

次はどうする。態勢を崩した次は躱せない。直ぐに次の攻撃が来るぞ。

そう考えていると後ろから誰かが迫って来る。

ほぼ無音で静かな足音に俺は感謝していた。

 

ありがとう、来てくれて。

 

迫りくる敵対者を見て殺人鬼が銃弾を発砲する。

硝煙の匂いがここまで飛んだ。

放たれた弾丸を新たな来訪者は全てはじいて見せた——のだと分かったのは殺人鬼の目が見開き、俺の横を一陣の風が通り過ぎたからだった。風はそのまま殺人鬼の目の前に肉薄しその手にもつ大盾で攻撃する。その威力は凄まじく殺人鬼は自動車に当たった様に吹き飛んだ。

 

「ふー.....怪我はないかアオ?」

 

そう言って前を見据えるのはシェン・フーだった

言い忘れていたが彼は中国拳法の使い手だ。

友人にならと色んな技を見せてくれた事がある。

俺が知る中で最も強い男の背中が頼もしく映った。

 

「ああ、ありがとうシェン。奴は....」

 

見て瞠目する。

恐らく内臓が潰れたであろう一撃を受けて普通の人間なら病院送りだが、倒れ伏す殺人鬼がゆっくりと立ち上がるのを見て俺は理不尽だと吐き捨てるように言う。

 

「どうやったら倒せるんだよあんな化け物」

「古今いかなる伝承の化け物も首を断ち切れば死ぬ。アオ....君がその剣で奴の首を斬れ」

「......っ」

 

歴史ある彼の故郷の常識だろうか。

シェンの言葉通りどうやらそれしかないようだ。

淡々と紡がれるシェンの言葉の意味を理解し重く頷いた。

 

「私が奴の気を引く、その隙に」

「.....よし、分かった」

 

よしと言う前にシェンはもう駈け出していた。

独特な歩法で距離を詰め敵との交戦を開始する。

無尽蔵ともいえる敵の銃撃を大盾で大盾で防ぎながらチャンスを伺いここぞとばかりに足を駆使して奴を蹴り飛ばす。体がぐらついたその隙を見逃さずライフも動いた。

 

地面を蹴り自分が出来る最高速で体を動かし。

態勢を崩した敵の前に飛び出すと、俺は剣を両手で握りしめ高く振り上げた。

そして——。

 

「ここだ!」

 

言下に振り下ろされた刃は敵の首を断った。

ずるりと頭が落ちて地面に転がった。

勝利を喜ぶ気持ちはなかった。生々しい肉を断つ感触に耐えられず思わず剣を手放す。肩を落として落ち込んでいるとシェンが肩を叩いた。

 

「よくやったなアオこれで皆を守れた」

 

その言葉に救われた。友達を守る為とはいえ人を殺めてしまった罪悪感が少しだけ薄れた。

そうだ俺は人間を殺したんじゃなくて友達を守ったんだよな。

だが、そんな罪悪感すらも吹き飛ばす様な変化が起こっていた。

終わったと思っていた殺人鬼の体が動いたのだ。

 

「まさかそんな嘘だろまだ死んでいないのか!?」

 

ぶるぶると体を震わせると殺人鬼のうなじから触手が現れる。

それが拳銃と融合した。ピンク色の肉の触手と銃という異様な組み合わせの、もはや人とは言えない何かが出来上がる。

それはもう悪夢の生物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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